販売好調なボルボ『V60 T6 ツインエンジン』PHEV 2019年モデル試乗記

ボルボのステーションワゴン、PHEVモデルの『V60 T6 ツインエンジン』に、モータージャーナリストの塩見 智が試乗。乗り味などのインプレッションを紹介します。

販売好調なボルボ『V60 T6 ツインエンジン』PHEV 2019年モデル試乗記

試乗したモデルの電池容量は約10.8kWh

ボルボ「V60 T6 ツインエンジン AWD インスクリプション」に乗った。車名が長い。まずボルボの車名の法則を紹介しておきたい。「アルファベットひと文字+ふた桁数字」はクラス(サイズ)を意味し、現在40、60、90と3クラスが存在する。Vはステーションワゴン、Sはセダン、XCはSUVにそれぞれ用いられる。

「ツインエンジン」とはボルボの場合、PHEVであることを意味する。「アルファベット+ひと桁数字」はエンジンのタイプを指す。Tはガソリンエンジン、Dだとディーゼルエンジンを意味する。数字が大きいほどパワフルで、現在日本仕様のボルボのエンジンは、T2、T3、T5、T6、T8、それからD4、D5が存在する。おそらくこれがBEVになるとB6、B8といった感じになるのだろう。ただしICEのT5とPHVのT5ではエンジンの出力や特性が異なる。AWDはオールホイールドライブの略。インスクリプションは上級グレードであることを意味する。

ボルボのPHEVはT6ツインエンジンとT8ツインエンジンがある。いずれもターボチャージャーとスーパーチャージャーで二重に過給した2リッター直4エンジンを搭載し、T6は最高出力186kW/5500rpm、最大トルク350Nm/1700-5000rpm、T8は同233kW/6000rpm、同400Nm/2200-5400rpmを発揮する。どちらも8速ATとの組み合わせで、リアの車軸に最高出力65kW、最大トルク240N・mのモーターが搭載され、後輪を駆動するのは共通。エンジン性能の差の分だけT6よりもT8のほうが力強いはずだが、電動部分の性能は同じで、EV走行距離はどちらも45.1kmとなる。実質(EPA基準推定)は30km前後だろう。駆動用のリチウムイオンバッテリーは96セル。容量は30Ah。電圧の360Vをかけると総電力量は10.8kWhになる。

今回試乗したのはMY2019、いわゆる2019年モデルだが、間もなく切り替わるMY2020では、バッテリー容量が34Ah(12.2kWh)に進化する。その結果、EV走行距離が48.2kmとわずかに伸びる(国交省への申請予定値)。少しでもバッテリー容量が多い方がよいというのであれば、MY2020を購入すべし。ただPHVの場合、BEVほどにはEV走行距離性能の差は重要ではないので、何がなんでも34Ahを! とこだわる理由はないように思う。

まさに仕様が切り替わろうとしているタイミングで、変更前のモデルの試乗会を行うのはいささか不可解だが、広報車が変更後のモデルに切り替わってしまったら乗る機会を失うので、記録のためにもMY2019のインプレッションを本ブログに残せたという意味ではラッキーだ。

販売好調なボルボのPHEV

それにしてもここのところボルボは好調だ。18年のグローバル販売台数は64万2253台で、5年連続で過去最高を更新し続けている。日本国内でも14年に1万3264台だった国内登録台数は年々増え、18年に1万7389台に達した。18年も受注台数は2万台を超えていたのだが、モノが足りず1万7389台に甘んじたというわけだ。日本以外も好調なので、希望するだけ割り当ててもらえるわけではない。XC60で2016-17、XC40で2017-18と、輸入車として初めて2年連続で日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。

V60はボルボの新世代プラットフォーム「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」で開発されたモデルだ。スケーラブルというだけあって伸縮自在。90シリーズも同じプラットフォームでつくられる。その下の40シリーズはCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)を用いるのだが、こちらは中国のジーリーと共有する。忘れそうになるが、ボルボはジーリー傘下なのだ。

60シリーズは90シリーズよりも後から登場したため、どのモデルもこなれていて、90シリーズよりも乗り心地がよいのが特徴だ。ただし当然蓄積された知見は90シリーズにも注入されるだろうからその差はなくなるだろう。なかでもV60はとにかく乗り心地がよい。剛性が高いボディとよくできた足まわりの組み合わせによってのみ獲得できる上質感を得られる。エンジン横置きのFWDベースモデルとしては最高峰に位置する乗り心地と言える。

さらに静かだ。4気筒エンジンそれ自体はそれなりに低級な音を発しているはずだが、遮音がしっかりしていることに加え、エンジン作動中に車内のスピーカーからエンジン音をかき消す周波数の音を流すアクティブ・ノイズ・コントロールのおかげだろう。ちなみにダイナミックモードを選ぶとエンジンが2000rpm以上回っている時に限り、実際のエンジン音に連動し、ボリュームを増幅したサウンドがスピーカーから流れるのだが、これは増幅のさせ方が中途半端なこともあり、不要だと思った。

ただし乗り心地に関しては、ツインエンジンの場合、センタートンネルにバッテリーが搭載され、モーターユニットが加わり、さらに安全性確保のためサイドシルも強化されているなどの理由によって、車両重量がICEモデルよりも実に350kgも重い。バネとダンパー、それから細かく言うとタイヤも重い車重を支える仕様になっているため、ざらついた路面などではICEのV60に比べ、ややバタつく。バタつきを感じる場面は限定的だが、限定的なだけに慣れない。とはいえ、V60の絶対的な乗り心地のレベルは相当高いので、ツインエンジンであってもその辺のクルマよりはよっぽど乗り心地がよい。

ハンドリングに特筆すべき特徴はないが、問題もない。動力性能の面では車重増加分を電動ユニットがカバーして余りある。さらにモーターによる発進はなめらかで、エンジンが始動する際の振動も少ないため、パワートレーンの上質さもツインエンジンのほうが上。ATシフターはPポジションが独立したボタンとして存在し、シフターを前後することでRNDを選ぶタイプ。ポジションがDレンジにある際に一度手前に引くとBレンジに入り、回生ブレーキの効果をより強く得られる。さらに手前に引く度にギアが一段下がる。前へ押すとDレンジに戻る。つまりマニュアルでギアを高めることはできない。面白い仕組みだが、理にかなっている。

125km/hまでEV走行を最優先するピュアモード、エンジン、バッテリー、モーターをバランスよく使い燃費を最良化するハイブリッドモード、常時リアモーターを作動させて悪路走破性を高めるAWDモード、それに燃費を考慮せず動力性能を最大化するパワーモードなど、さまざまなドライブモードを選ぶことができる。また三菱アウトランダーPHEVなどと同様、走行中にバッテリー残量80%に達するまでできるだけエンジンを作動させて充電するチャージモードや、できるだけ現在のバッテリー残量を保持するホールドモードもある。バッテリー残量100%に近い状態でホールドモードを選ぶと、回生ブレーキを使えるようにするため、ある程度電力を消費するなど芸が細かい。

今回試乗した『V60 T6 ツインエンジン AWD インスクリプション』は759万円。よりハイパワーなT8 ツインエンジン AWD インスクリプションとなると829万円。T6 ツインエンジン AWD インスクリプションよりも装備を簡略化したT6 ツインエンジン AWD モメンタムは659万円。エコカー減税やCEV補助金を適用すると613.5万円となって、ICEのT5インスクリプションと14.5万円の差になる。数年後の下取り価格を考えればその差はないに等しいのではないか。内容を考えるとツインエンジンのモメンタムは戦略的価格と言えるだろう。自宅か勤務先で充電できるなら、もしくは電気仕掛けのクルマに関心があるならツインエンジンをオススメしたい。もちろんV60のスタイリングやパッケージングを得られればよいというのであれば、499万円から選べるICEもアリだ。

(塩見 智)


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