クロカン4WDを代表するブランドのPHEV
今、自動車業界では大きくEVに舵を切り始めているのは知ってのとおり。EVsmartブログを読んでいる人に、今さらそんなことを言っても仕方ない。そしてもうひとつの大きな流れがSUV人気の上昇だ。今やロールス・ロイスもランボルギーニもSUVをラインアップ。SUVを用意していないブランドは、フェラーリやロータスなどほんの少数となっている。
SUVとはスポーツ・ユーティリティ・ビークルの略で、走りも楽しめ荷物も積め、人もしっかり乗れるクルマという位置付けだ。多くはオフロードやラフロードでの走行性能も考慮されているモデルである。以前、こうしたモデルはクロスカントリー4WD(クロカン4WD)などと呼ばれていた。クロカン4WDはそれこそオフロードでの走行性能を重視したモデルで、道なき未開地でも分け入っていけるような走破性を持ったクルマを指した。今はSUVのなかにクロカン4WDもひとまとめにしてしまう傾向があるが、私はジャンルを分けるべきだと思っている。
さて、そんなクロカン4WDのなかでもっともメジャーなブランドといえば、なんと言っても「JEEP(ジープ)」だろう。ジープの成り立ちについては省略するが、ジープと聞けばだれもがその高い走破性を想像できるブランドだ。現在、ジープブランドではもっとも走破性が高いヘビーデューティモデルのラングラーを筆頭に数種のモデルが用意されている。そのなかでもコンパクトで、まさにクロカン4WDというよりもSUVという呼び方がしっくりとくるモデルが「Renegade(レネゲード)」。日本では2015年から発売されている。この「レネゲード」にジープブランドとして初の電動化モデル(プラグインハイブリッド=PHEV)となる「レネゲード4xe(フォー・バイ・イー)」が設定された。
バッテリー容量は11.4kWhで普通充電のみ対応
「レネゲード4xe」は1.3リットルの直列4気筒エンジンを搭載し、フロントには53Nmのモータージェネレーター、リヤには250Nmの駆動用モーターを装備。バッテリーは11.4kWhのリチウムイオンを用いて、PHEVシステムを成立させている。
充電は普通充電のみ対応。バッテリー容量が11.4kWhなので、バッテリーが空の状態からの充電で3kW充電では約3.5時間、6kW充電では約2時間で充電が可能ということになる。日本導入グレードは「リミテッド」(498万円〜)と「トレイルホーク」(503万円〜)の2種で、リミテッドのエンジンは131馬力、トレイルホークは179馬力とエンジンの出力が異なる。モーターについてはグレード間での差はない。
俊敏な加速が印象的なEVモード
まずはリミテッドに乗って試乗に出る。当然、EVモードでのスタートだ。EVモードではリヤのモーターのみが作動、フロントはフリー状態となる。約1.8トンの車重をものともせずレネゲードは力強く発進する。タイヤから発せられるノイズ以外はほぼ気になる音はなく、スムーズで快適な加速感だ。アクセルペダルをグッと踏み込んだときのトルクの出方もかなり俊敏でグイグイ前にクルマを押し出す感覚を楽しめる。すぐ首都高速に乗って、より強い加速を試す、なかなかエンジンが始動しないと思っていたら、EVモードで130km/hまでカバーできるとのことだった。
走行モードをハイブリッドに切り替えるが、条件が揃っていたのだろう。なかなかエンジンは始動しない。少し渋滞気味になり速度が下がった状態から前方が開けた際にアクセルを強く踏み込むとエンジンが始動した。エンジン始動時のショックはなく、じつにスムーズでシームレスだ。フロントタイヤに駆動力が伝わるわけだがそれも感じない。加速力は力強く、エンジンの存在感を感じるものとなる。
同様の条件でハイパワーエンジンを積むトレイルホークを試してみると、さらに加速は力強いものだった。ジープはアメリカのブランドだが、このレネゲード4xeはイタリアの工場で製造されているモデルで、欧州でも販売される。つまり、ユーザーはアウトバーンを走る可能性もあるのだから、力強い加速と最高速も必要なクルマということだ。
今回は走行用バッテリーが空になるまで走ることができなかったが、走行バッテリーが空になったとしても、レネゲード4xeが前輪駆動状態になることはないという。バッテリーが完全に空になる前に積極的な発電が行われ、バッテリーを充電しつつリヤタイヤも駆動。ハイブリッド走行モードではつねに4WD状態を保つというのもジープらしいこだわりを感じることができる。
EVモードでの一充電航続距離は最長で48km((WLTP値約42km=EPA換算推計値約37km)となっている。
廉価モデルである「リミテッド」の乗り心地に好感
1695mmという全高をもつレネゲード4xeリミテッドだが、コーナリング時の不安はほとんど感じることがない。もちろん速度にもよるのだが、制限速度プラスアルファ程度のコーナリングなら難なくこなしていく。高速道路のインターチェンジのような回り込んでいるコーナーは、車高が高いクルマは苦手とすることが多いのだが、そうしたコーナーであっても臆することなく進入できる。
車高が高くサスペンションにしっかりしたストローク長をもつモデルだけに、乗り心地は十分にいい。静粛性も高く、ロングドライブにも向くタイプのクルマに仕上げられている。とくにリミテッドはトレイルホークに比べて車高が30mm、最低地上高が40mm低くオンロードよりの足まわりとなっていることもあり、乗り心地についても好感度が高い。
今回の試乗ではオンロードのみとなったため、セレクションテレインと呼ばれる駆動配分などをコントロールする走行モードは、デフォルトである“オート”とオンロードの走行性能を向上する“スポーツ”しか試す機会がなかった。“スポーツ”ではステアリングの手応えがしっかりすることもあり、オンロードでの走りがキリリと引き締まった印象となる。
セレクションテレインには“スノー”、“サンド/マッド”、“ロック”のモードがあり、4WDも“Lock”と“Low”が選べる。これらの走行モードに関してはオンロードで試すのは難しい。機会をもらいオフロードでその真価を試してみたいと思っている。
(取材・文/諸星 陽一)
クロスカントリー車(クロカン)は電動化が遅れてますね…やっとPHEVが出てきたとでもいうか。この市場はディーゼルエンジンが幅を利かせる世界だから尚更かもしれませんね。
ただ個人的にクロカンEVはアリだと思うのです。実際スズキジムニーをEVへコンバートしているグループがあるくらいですし(URLに該当サイトリンク張りましたのでご覧ください!)
クロカン電動化で得られるメリットは低速大トルクによる発進・回生ブレーキによる急坂の安定走破・排気ガス削減…意外に多いですよね。ガテン系で不整地走行必須の業務に就いてデリカバン4WD・ハイラックスサーフ・エスクードノマドなどをに乗った経験上、もっと電動化されるべきジャンルの一つと判断したもので!
ただこのジャンルはまだまだ保守的な人が多い!ジープPHEV参入でその保守的な概念を革新してもらえれば幸いです。