トヨタ『RAV4 PHV』試乗速報〜プラグインの長所を走りで強調【塩見 智】

かねてより登場が明言されていたトヨタ『RAV4 PHV』が6月8日に発売された。RAV4のハイブリッド4WD仕様をベースに、外部からの普通充電が可能な総電力量18.1kWhの大容量バッテリーと、より高出力のフロントモーターを組み込んだモデルで、価格は同程度の仕様のRAV4ハイブリッドに対し約80〜117万円高の469.0万円〜。クローズドコースで試乗した。

トヨタ『RAV4 PHV』試乗速報〜プラグインの長所を走りで強調【塩見 智】

パワートレインにはプラグインタイプの「THSⅡ」を採用

トヨタはRAV4 PHVを特殊なモデルではなく、売れ筋SUVであるRAV4のトップグレードとして位置づけており、フロントマスクの意匠が多少異なり、専用ボディカラーを設定するものの、内外装はほとんどRAV4と変わらない。

パワートレインには、プラグインタイプの「THSⅡ」が採用された。ダイナミックフォースエンジンと名付けられた高効率の2.5L直4エンジンが生み出すエネルギーは、トヨタのハイブリッド車にはおなじみの動力分割機構を介して直接前輪を駆動するのに用いられるほか、発電用モーターを経由して駆動用のリチウムイオンバッテリーへ貯められ、必要に応じて出し入れされる。

プラグインハイブリッドシステム「THSⅡ Plug-in」

バッテリー総電力量は18.1kWh。外部充電が可能で、200V(16A)の普通充電で約5時間半、100V(6A)だと約27時間で満充電となる(※付属のAC200V・AC100V 兼用充電ケーブルを使用)。急速充電には対応していない。バッテリーの温度管理には、冷却機能を盛り込んだヒートポンプエアコンが装備される。

エンジンが130kW、フロントモーターが134kW、リアモーターが40kWの最高出力を発揮する。それぞれが同時に最高出力を発するわけではなく、システム全体の最高出力はRAV4ハイブリッドのそれよりも62kW増し、およそ4割増しの225kW。車両重量はRAV4ハイブリッドのそれに対し210kg増しの1900kgだが、実際に走らせてみると、重量差をものともせず鋭い発進加速、中間加速を見せた。0-100km/h加速は約6秒。ちなみにRAV4ハイブリッドは8秒弱だ。

RAV4の「最もエコなグレード」ではなく、「最も速く豪華なトップグレード」に位置づけるため、大容量バッテリーを航続距離延長のためだけに使うのではなく、速さや力強さの向上にも用いている。実際、胸のすくような加速力は魅力的で、燃費がいいから、電気だけで走行できるからといったこと以外にもこのクルマを選ぶ理由が盛り込まれているように思えた。

RAV4 PHVに用いられる車台はトヨタの新世代プラットフォームTNGAコンセプトにのっとったGA-K。先行してこの車台を採用したRAV4はハンドリングと乗り心地のバランスに優れており、高速巡航からワインディングロードまで、実に気持ちよく意のままに走らせることができ、価格から期待する以上に快適でもある。

TNGAを用いたクルマは総じて低重心だが、RAV4 PHVは大容量バッテリーを床下に搭載することでより低重心化されており、サーキットの高速コーナーでも車両の安定性は高い。加減速ともスムーズでシームレス。エンジンがかかった時の振動や音もよく遮断されているため、走行感覚はBEVとほとんど変わらない。

燃費はプラグインレンジ(一充電で可能なEV走行距離)が95km(WLTC ※EPA換算推計値約85km))、ハイブリッド時の燃費が22.2km/ℓ(WLTC)、ガソリン(レギュラー仕様)タンク容量は55ℓなので、22.2km×55ℓにプラグインレンジを加えると、満充電にガソリン満タンの状態からの航続距離は1300kmを超える。

AC100V(最大1500W)コンセントが標準装備。

またこのクルマには災害などの緊急時に備えて給電機能が備わる。最大1500Wの電力をバッテリーのみで最大約7時間、エンジンを始動すれば最大約3日間、供給することができる。キャンプ場の電源のない区画やフリーサイトなどでも快適に電力を使うことできるのは快適性重視のキャンパーには魅力だろう。

プラグインSUVの強力なオルタナティブ

PHVの先進的な部分のみならず、9インチモニターを用いてスマホのカーナビ機能を使えるディスプレイオーディオや、各種コネクテッド機能が使えるDCM(車載通信機)が標準装備されているなど、便利機能も充実している。また上級グレードの前席にはシートヒーターとシートベンチレーションが、ベーシックグレードにはシートヒーターが備わり、後席には全車シートヒーターが備わる。また昼夜の歩行者や昼間の自転車を検知可能としたプリクラッシュセーフティ機能が盛り込まれた予防安全パッケージ(トヨタセーフティセンス)が備わる。

これまでに市販されたPHVは、外部充電を活用して日常的にはEVとして、遠出する際にはHVとしてといった使われ方を期待されて選ばれたが、RAV4 PHVは力強く、快適で、便利な4WD車を選んだらそれがたまたまPHVだったというクルマかもしれない。長らくアウトランダーPHEVが孤軍奮闘していたプラグインのSUVカテゴリーに強力なオルタナティブが登場した。

(文/塩見 智)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. PHVにQCを装着する必要はないというのが持論です。
    トヨタもQCはEVを優先すべきと言っているのはマーケットをきちんと
    分析している証拠と歓迎します。

  2. PHVではノーマルと違い格上のプラットフォームを採用とどこかの記事で見たのはガセ?

    急速充電を採用しないのはコスト的にアメリカ市場での価格を意識?(補助金目当てとか)

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					塩見 智

塩見 智

先日自宅マンションが駐車場を修繕するというので各区画への普通充電設備の導入を進言したところ、「時期尚早」という返答をいただきました。無念! いつの日かEVユーザーとなることを諦めません!

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