フォルクスワーゲン『ゴルフ GTE』は熟成されたまろやかな上質感が魅力【吉田由美試乗記】

2015年にデビュー、2017年にマイナーチェンジを行ったフォルクスワーゲン『Golf(ゴルフ)GTE』に、カーライフエッセイストの吉田由美さんがじっくり試乗。充電体験を含めたレポートをお届けします。

フォルクスワーゲン『ゴルフ GTE』は熟成されたまろやかな上質感が魅力【吉田由美試乗記】

世界屈指のロングセラー車のPHEVモデル

1974年に発売された初代『ゴルフ』は、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)で横置きのエンジン、コンパクトなボディサイズと広い室内空間という高い実用性に、ジウジアーロのデザインをまとって、瞬く間に世界の「コンパクトカーのスタンダード」や「コンパクトカーのベンチマーク」と呼ばれる存在になりました。現在はトヨタ『カローラ』に次ぐ、累計3500万台以上の販売実績を誇る世界第2位のロングセラー車。

最新型は2019年にドイツで8代目の新型ゴルフが発表され、同年12月よりドイツ、その後、欧州で販売開始。日本へは2020年以降導入予定だとか。

現在日本国内での発売されているプラグインハイブリッド(PHEV)の『GTE』は、現行型7代目のゴルフ(ゴルフ7)をベースにしたもので、フォルクスワーゲンが手がけた初のPHEVモデル。2017年に一度マイナーチェンジを行っています。

1.4リッターで最高出力150ps(110kW)、最大トルク250Nmの直噴ターボエンジンと109psの電気モーターの組み合わせで、6速DSG(DCT)を採用。8.7kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載され、200Vの仕様で充電することができます。急速充電の機能はありません。

デザイン上の目印はブルーのアクセント。青のラインはフロント中央にある『VW』のエンブレムから左右に伸びたフロントのラインとサイドのライン、またリアやボディサイドには『GTE』のバッチが装備されています。

シートはゴルフシリーズの中でスポーティなハイパフォーマンスモデルの『ゴルフGTI』と同様、ファブリックのチェック柄で、ここにもブルーのラインが隠し味としてトッピングされています。GTEもGTIと同様に、ゴルフのラインアップの中でもスペシャルなモデルということですね。また、見逃しがちですがステアリングのステッチも青。

電動化が進むと、運転が楽しくないというイメージを持っている人もいるようですが、VWにとってはGTI同様にスポーティに走りたいときはモーターを活用して加速性能を強める「運転が楽しい」モデルでありつつ、通常時は燃費が良く、二酸化炭素の排出量を抑えて環境にもお財布にも優しいエコカー! という位置づけのようです。フォルクスワーゲンは「質実剛健」と言われるように、しっかりした作りで実用性が高く、インテリアその他を含めて遊びゴコロや色気があるというよりはクオリティや信頼性が高く、安定感で勝負!という感じなのかもしれません。

充電は簡単。EVモードも選択可能

充電ポートはフロントグリルの『VW』のエンブレムをパカっと開けるだけ。200Vの普通充電でほぼ空の状態からフル充電までの所要時間は約3時間。航続可能距離は満充電時で約45㎞(等価EVレンジ※WLTC)。しかし走行するコース、運転の仕方、車内エアコンの温度設定、交通状態などによっても電費は変わります。ガソリンでの航続可能距離は約796kmなので、EVモードとの合計航続可能距離と合わせるとなんと約841㎞!

アウディの「バーチャルコックピット」と同じ12.3インチのディスプレイをメータパネルに使用(Active Info Display)。真ん中には地図を表示できるほか、メーター系をズームアップするなどドライバーの好みに合わせて表示もアレンジも可能です。

またこの画面で「エネルギーフロー」を見ることができ、減速時に行われる回生されている様子がタイムリーに表示されます。そのときディスプレイに大きな丸が2つ。スピードメーターとタコメーター、モーターの出力を表示するパワーメーターなどの表示が走行モードと連動して動きます。また、走行モードによって表示の仕方が変わります。

走行モードは、電気モーターだけで走る「EVモード(E Mode)」と、3つのハイブリッド、そして「GTEモード」があります。

エンジンのスタートスイッチを押すと自動的に「Eモード」が選択され、バッテリーの充電レベルが残っている場合は時速130㎞/h以下であれば基本的に「Eモード」。(外気温が低いなど条件によって作動する場合があります)

バッテリーの充電レベルやドライバーの運転に合わせてエンジンかモーターどちらか効率の良い方法で動く「ハイブリッドモード」、現在のバッテリー充電量を優先的に行うチャージ優先で積極的にエンジンで発電しながら走行する「バッテリーチャージモード」、とバッテリーの充電量を一定に保つため、減速時にエネルギー回生するバッテリーの充電を行う「バッテリーホールドモード」があります。

そしてGTEならではの「GTEモード」。こちらはエンジンとトランスミッションがスポーツモードに切替わり、エンジンのレスポンスが素早く、エンジン音も力強くなります。また、アクセルペダルを踏み込んでキックダウンするとエンジンと電気モーターが同時に作動し、エレクトロリックブーストが発動されます。強い加速のときに感じられる痛快感も感じられるというわけです。

ちなみに回生ブレーキ量はシフトレバーで「Bモード」にするか、ステアリングのパドルシフトで行います。パドルシフトも「GTI」は走るための愉しみ、「GTE」は電気をコントロールする愉しみ(回生時の)という使い方もそれぞれの個性になっているようです。

また、前席センターにある9.2インチのナビゲーション用ディスプレイはスマホと連携を可能にするインフォテイメントシステム「ディスカバープロ」搭載で、ジェスチャーコントロールを採用。画面のかざした手を左右に動かすことでホームメニューの切り替えやラジオの選局などもできます。これだけでもだいぶ先進感を感じるはず。ただ、今回の試乗ではこのジェスチャーコントロールは使っていませんが…。

このジェスチャーコントロールで操作できる用途は限られていますが、現在のように新型コロナウイルス感染予防という観点から見ると、嬉しい装備かも。

運転支援システムは、渋滞時追従支援システム「トラフィックアシスト」を採用し、ステアリングの操作と加速、ブレーキなど駆動系を制御。

燃費もよくてパワフルで上質な走りを楽しめました。

今回は11日間の試乗で、充電は3回。まず乗り出しではEVでの走行可能距離表示が38㎞、ガソリンと合わせたトータルでの走行可能距離が648㎞でした。ちなみにこの時の気温は13.5℃なのでエアコンの温度は26℃に設定。

1回目の充電は5日後で電気での航続可能距離表示は2㎞、トータルの航続可能距離表示は502㎞。200Vの普通充電を1時間で電気での航続可能距離は19㎞に増えて、トータル航続距離は519㎞に。その後、10リットルのハイオクガソリンを給油。

次の充電は4日後。2回目の充電時も充電前は電気での航続距離は0㎞。200Vの普通充電で約1時間の充電によって電気での航続距離は19㎞となりました。

そして3回目の充電は200Vで2時間52分間。充電開始時は電気での航続可能距離は0㎞、トータル航続可能距離の表示は480km。充電後は電気での走行可能距離が34㎞、トータルの航続可能距離は514㎞。

11日間で、合計の走行距離は476㎞でした。給油したガソリンは22ℓだったので、単純に割り算すると、燃費は「476÷22=約21.6km/ℓ」になります。ただし、借りた時のEV航続距離と充電して回復した電気での航続可能距離を足すと約104km分は「電気代(充電料金)」を費やしたことになるので、それを差し引くと「(476―104)÷21=約17.7km/ℓ」がガソリンでの燃費、という計算になります。ちなみに常時エアコンはONでした。

乗り味はあらゆる速度域でスムーズでパワフル。エンジンとモーターの切り替わりや制御が実に滑らかです。

またセンターコンソールの「GTEボタン」を押すとエンジン、モーター、トランスミッションなどの特性が変化し、より繊細に、かつ大胆になってアクセルワークに敏感に反応。素早く、しかも最大限にパワーを使えるようになります。クルマの性格が変わるので、「ギャップ」を楽しめます。

電気モーターはエコドライブにもパフォーマンスドライブにも魅力を発揮してくれるので、シーンによって使い分けることができます。ゴルフGTEは静かで快適、それでいて上質さと活発さを併せ持つ「ゴルフ7の集大成」ともいえそうです。

(取材・文/吉田由美)

この記事の著者


					吉田由美

吉田由美

短大時代からモデルをはじめ、国産自動車メーカーのセーフティドライビングインストラクターを経て、「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の目線で、自動車雑誌を中心にテレビ、ラジオ、web、女性誌や一般誌まで幅広く活動中。

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