レクサスのPHEV『NX450h+ F SPORT』試乗レポート【吉田由美】

2030年までに全カテゴリーでBEVのフルラインナップ実現を目指すなど、電動化に前向きな姿勢を示すレクサスブランド。初めてのプラグインハイブリッド車(PHEV)である『NX450h+』に、カーライフエッセイストの吉田由美さんが試乗。充電も試したレポートをお届けします。

レクサスのPHEV『NX450h+ F SPORT』試乗レポート【吉田由美】

ラグジュアリーブランドのEVシフトに期待

2021年12月14日、トヨタが開催した「バッテリーEV戦略に関する説明会」で、レクサスブランドは「2030年までにすべてのカテゴリーでバッテリーEV(BEV)のフルラインナップを実現。欧州、北米、中国ではバッテリーEV100%、100万台の販売を目指します。さらに、2035年にはグローバルでBEV100%を目指します」と豊田章男社長は発表。

つまり、レクサスは2035年にはEV車のみを販売するブランドとなることを目指す。いわば、トヨタグループの中で電動車を担当するブランドになるということ。

でもこれ、当然と言えば当然かもしれません。

すでに発表されているメーカーとしては「ボルボ」が2030年には世界の新車をすべてEVにする「EVメーカー宣言」をし、国産車では「ホンダ」が含みは持たせつつも、2040年までに世界の新車をEVとFCV(燃料電池車)のみに切り替えると発表。他の自動車メーカーも続々目標を発表していますが、「なる」と断言するのと「目指す」とは、ちょっとニュアンスが違うのでそのあたりは要注意です。

確かに日本のエネルギー事情や住宅、カーライフ事情を鑑みると、地方でのラストワンマイル的な使い方もできる一方、都会でBEVを所有するには自宅ガレージに充電器を設置できるかどうかなど、いろいろな条件をクリアするのがベターであるのは事実。今のところはある意味、EVは富裕層のクルマ。そう考えるとラグジュアリーブランドからEVシフトを進めていくのは理にかなっているように思います。

UX300e

とはいえ、現時点でレクサスのBEVはまだ「UX300e」のみでした。2021年10月、新型NXにレクサスブランドとして初めてのプラグインハイブリッド(PHEV)モデルが設定されました。この後、レクサスではBEVである「RZ」も発売することを示しているので、今年から一気に電動化が進みそうです。

外部給電にもしっかり対応

そして新型「NX」のプラグインハイブリッドの話。

第一弾のPHEVだけに、トピックはたっぷり。

「新型NX」は、もちろんPHEV導入が一番のトピックには違いありませんが、プラットフォームは刷新され、新開発の4気筒ターボエンジン。新しい電子プラットフォームによるインフォテイメントの刷新などなど。

「新型NX」のパワートレーンは6つ。以下のように8つのグレードがあります。

●2.5リッター4気筒ガソリンエンジンの「NX250」と「NX250 versionL」。
●2.4リッター4気筒ガソリンエンジン+インタークーラー付きターボの「NX350 F SPORT」
●2.5リッター4気筒ガソリンエンジン+モーターの「NX350 h」と「NX350h F SPORT」」、「NX350h version L」
●2.5リッターガソリンエンジン+プラグインハイブリッドシステムの「NX450h+ F SPORT」と「NX450h+ version L」

価格は最安の「NX250」が482万円〜。そして今回試乗した「NX450h+ F SPORT」は最も高級グレードで738万円〜となっています。

こちらは「NX350h」の2.5リッター4気筒直噴ガソリンエンジンのハイブリッドに四駆システム「E-FOUR」のパワートレーンをベースに、大容量バッテリーを搭載したPHEV。名称の「NX450h+」の「+」が「プラグイン車」であることを意味していて、外から充電するためのバッテリーが加わりました。

PHEV用バッテリー。

一充電の最大航続距離はWLTCモードで88㎞とアナウンスされています。計算すると約4.9km/kWh程度の電費です。実用的には「70kmくらいはEV感覚で走れる」印象でした。
※EPA基準では37マイル(約60km)

ちなみにこのエンジン、新型「RAV4」と同じエンジンを若干パワーアップさせたもので、リチウムイオン電池も「RAV4 PHV」と同じ18.1kWhを搭載しています。充電は100V、200Vの普通充電のみで、急速充電「CHAdeMO」には対応せず。一般的な200V15A(3kW)で充電した場合、残量が0の状態から満充電までは約6時間程度掛かる計算になります。

NX450h+には標準装備のアクセサリーコンセントや普通充電プラグに装着する「ヴィークルパワーコネクター」を使用した外部への電力供給が可能です。PHEVの場合、エンジンと併用できるのでアウトドアレジャーの電源として利用するようなケースでも、バッテリー残量をあまり気にしなくてもいいメリットがあります。

走りも装備も高級感いっぱい

全車4WDで、最高出力は309PS。エンジンの最高出力は185ps、最大トルクは228Nm。フロントモーターの最高出力は182ps、最大トルク270Nm。リアモーターの最高出力が54ps、最大トルクが121Nm。0-100㎞/hは6秒という快速です。

エクステリアで印象的なのは立体感のあるレクサスの象徴、大型のスピンドルグリル。とはいえ、レクサスの他のモデルに比べると、むしろ控えめに見えます。そしてグリルの中のデザイン……、最近はむしろこの部分にこだわりや遊び心が感じられますが、Fスポーツはピアノブラックで引き締まった印象。そして写真などではわかりにくいですが、特にフロントの下部分は複雑な成形で凹凸が凄い! 薄型のシュッとしたライトの中にL字のLEDライトなども、手が込んでいます。

そしてリアの「LEXUS」というロゴが新デザインに。これはわかる人はわかる‘通’なポイントですね(笑)。

また、ドアの開閉を電動化! 外側は「eタッチアウトサイドドアハンドル」という名称で、ドアノブに手を差し込んだ瞬間、ストロークが無くいきなりスイッチ。さらに室内側のスイッチは「eタッチインサイドドアハンドル」という名称ですが、こちらは押す部分を間違えがちなので要注意。というか、この部分はもう少しわかりやすくしてほしいというのが私の希望です(笑)。もちろん何かしらのトラブルで電気が使えない場合の対応策も万全。

室内はドライバー側にレイアウトされた14インチの大型スクリーンが印象的。ちなみにグレードによってサイズは異なり、「Fスポーツ」と「バージョンL」が14インチ。そのほかは9.8インチ。

メーター表示は、中央にスピードメーター。その中にエネルギーフローや航続可能距離などが表示され、左側に電池の残量、右側にガソリンの残量が左右対称に表示されます。ヘッドアップディスプレイもあり、メーターがそのまま移動したようなわかりやすい表示です。

“F SPORT”専用TFT液晶式メーター(カラーヘッドアップディスプレイ装着車)

ちなみにFスポーツ専用はほかにシルバー塗装の三眼フルLED 、TFTS液晶メーター、カラーのパフォーマンスダンパー、バンパーロアのスポイラー、フロントガーニッシュ、ランフラットタイヤ、20インチ専用アルミホイール。室内では新開発の専用ステアリングホイール、フロントシート、アルミペダル、シフトレバーなど。

さらに滑りやすい路面などで駆動力やブレーキを統合制御してくれる「トレイルモード」を備えています。

走行モードは「EVモード」「オートEV/HVモード」「HVモード」「セルフチャージモード」の4つですが、注目は「オートEV/HVモード」。レクサス初の先読みドライブですが、電池の残量や走行時の状況に応じてEVとHVを自動切換えして、より効率の良い走りを実現するモード。すべてのモードを試してみましたが、電池が残っているときは「EVモード」、それ以外は「オートEV/HVモード」を選択しておけば間違いないという感じ。

ドライブモードは、「エコ」「ノーマル」「スポーツS」「スポーツS+」「カスタム」の5つ。なぜかただの「スポーツ」が無いのが不思議。

ドライブフィールは、床下にバッテリーが搭載されているせいか、全体的にどっしりとして安定感があります。基本的に私は「エコ」モードで乗ることが多いですが、「エコ」モードでもかったるさやもたつきは無いので、これで十分。もちろん他のモードはモードを変えていくとよりシャープにステップアップしていきます。モーターとエンジンの切り替えはスムーズで、どんなシーンでも気になることはありません。

ステリングに装備されているパドルでブレーキの回生量を5段階で変えることができ、左側の「-」を押すと「D4」から「D3」→「D2」→「D1」と順に回生力が強くなり、電気をより多く作ることが出来ますが、「D1」でも他社の同様のシステムを使っている車に比べるとそう強いわけではないような気がしました。これは「違和感なく」ということなのかもしれません。しかも「D1」まで行って信号待ちなどでクルマが完全停止すると、「D」に自動で戻るため、シフトチェンジをする手間やシフトミスもありません。

運転席周りで私が気になったのは、ルームミラー。試乗車は「デジタルルームミラー」でもありますが、ルームミラーの可動域が少なく、シートと体型によっては、ルームミラーを見にくいかも。あ、そういう人にとっては、むしろこのデジタルミラーはいいですね。

ちなみに、新型NXはアクティブコーナリングアシストやオートライトシステムなど先進の安全&快適装備がズラリと標準装備されています。なかでも最上級モデルであるNX450h+は装備充実。もちろんレーントレーシングアシストやレーダークルーズコントロールといった安全運転支援装備も最新&最強の「レクサスセーフティシステム+」を採用しています。

30分の普通充電では当然そんなに走れませんでした(笑)

今回、7日間の試乗で走行距離は286㎞。充電は2回行いました。

1度目、まずはEV走行可能距離の表示は 0㎞で充電を始めて約4時間半。EVの航続距離は53㎞になりました。HVと併せると346㎞の表示でした。

ちなみに充電器は「アウディ・ジャパン」が入ってる建物のアウディの電気自動車用に設置された地下の駐車場にあるアウディ充電器をお借りしました。メーターパネルには「充電完了までの時間」が表示されていました。

そしてその後、もう一度、別の日に別の充電器で30分普通充電。わずか6㎞分しか充電できず、これにはがっくり。しかも無くなるのはあっという間。急速充電器が使えるといいのに……と思ってしまいました。

なにはともあれ、今後のレクサス、楽しみです。

(取材・文/吉田 由美)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 初めまして。少々思うところがあったので、報告させて頂きます。

    NX450h+とほぼ同じシステム思われるRAV4-PHVを所有しております(購入1年余りで、約2万km走行)。コムテックのレーダ探知機をOBD2に接続して、HV電池残容量も数値で見ています。非適合機種ですが、多分正しい値と考えております。

    この表示によると、バッテリー満充電は90%で、EV走行OFFになるは13%です。従って使用可能容量は、
     18.1kWh×(0.9-0.13)≒13.9kWh
    と思われます。RAV4-PHVのEV走行距離カタログ値は90kmですから、単純計算では
     90km÷13.9kWh≒6.5km/kWh
    となります。計測したことは無いのですが、実走行では、もう少し悪い値です。しかし、5kmは切ることはないでしょう。

    前車はアウトランダーPHEV(17年式:2000cc、12kWhの最終型)で、RAV4-PHVのEV走行距離は両車の各諸元から考えるより随分良くなった気がします。

    参考までに、上記アウトランダーのバッテリー使用可能範囲は、数値では分かりませんでしたが、回生ブレーキの効き具合、2週間に1度の普通充電による満充電推奨(多分セルバランサによるバラツキ補正)、一部の急速充電器の表示等から100%~30%弱では無いかと思っておりました。

    1. 中野の住人様、コメントありがとうございます。また、OBD2よりのデータについて、貴重な情報感謝いたします。
      ハイブリッドが電池を半分くらいしか使っていないのに対し、トヨタのPHEVは77%とかなり拡大しているのですね。それでも火災を防ぐためトップを90%に抑えたりするところは正に日本メーカーですし、劣化を抑えることにもかなり注力しているようです。

      最近、RAV4 PHVの米国版PrimeのEPA電費が公開されました。
      https://www.fueleconomy.gov/feg/Find.do?action=sbs&id=44984
      これによるとEPA航続距離は約67.6km、電費36kWh/100mi = 4.47km/kWhです。
      貴殿の計算では、67.6km / (18.1 x 0.77) = 4.85km/kWhともう少し良くなりますが、EPAは充電ロスも含みますのでそんなものでしょう。大変勉強になりました。

      せっかくなので同等サイズのモデルXと比較してみますと、
      https://www.fueleconomy.gov/feg/Find.do?action=sbs&id=44984&id=38530&id=45020
      RAV4 PHV: 4.47km/kWh = 100%
      Model X P100D 2017年式: 4.13km/kWh = 92%
      Model X 2022年式: 4.88km/kWh = 109%
      ということで、ちょうどテスラの2017年式と2022年式の中間くらいの数値となりました。トヨタさん、この調子で電気自動車でも、世界最高を狙っていただきたいですね。あと9%で追いつける!

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この記事の著者


					吉田 由美

吉田 由美

短大時代からモデルをはじめ、国産自動車メーカーのセーフティドライビングインストラクターを経て、「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の目線で、自動車雑誌を中心にテレビ、ラジオ、web、女性誌や一般誌まで幅広く活動中。

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