ボルボ『XC40 Recharge』試乗レポート〜お買い得感のある高級EV

ボルボ・カー・ジャパンは10月上旬に、日本で販売している電気自動車の最新モデルに1日でまとめて乗れるメディア向け試乗会を実施しました。試乗できたEVは『XC40 Recharge』と『C40 Recharge』です。2回に分けてボルボのEVの今を紹介したいと思います。

ボルボ『XC40 Recharge』試乗レポート〜お買い得感のある高級EV

2025年には日本市場で新車の45%をEVに

秋の長雨とはよく言ったもので、机に向かっている今も雨が降ったりやんだりしています。そして雨が降るたびに気温が少しずつ下がって、冬が近づいていることを感じさせる陽気の中、EVsmartブログチームはボルボ・カー・ジャパンが開催したEV(とハイブリッド車)一気乗り試乗会に行ってきたのでした。

乗ることができたのは、EVの『XC40 Recharge PLUS』(FWD)と『C40 Recharge ULTIMATE』(AWD)、48Vハイブリッド車の『XC40 ULTIMATE B4』(AWD)の3モデルでした。このうち、EVsmartブログとしてはやっぱり、EVの2モデルを中心に紹介していこうと思います。

試乗に行く前に、少しおさらいです。スウェーデンのプレミアムブランド、ボルボは、2025年にグローバルで販売する車の50%を電気自動車(EV)にすることを目指しています。すでに本国では2022年7月に、EVの市場シェアが26.2%、EVとPHEVを会わせると49.9%と約半数を占めるまでになっています。

もちろん日本も例外ではなく、2025年に新車販売の45%をEVにすることを目標に設定しています。EVは、純電気自動車(BEV)を意味しています。

目標達成の第一歩として、ボルボ・カー・ジャパンは2021年にEV専用モデルの『C40 Recharge』を日本市場に投入しました。続いて2022年には、お買い得感のある『XC40 Recharge』を導入しシェア拡大を狙っています。

そんな狙いのもと、今回の試乗会が行われたわけです。

ワンペダルの操作感が秀逸

では『XC40 Recharge』の試乗レポートからいってみましょう。試乗したのは前車軸にモーターを搭載したFWDモデル『XC40 Recharge Plus』です。

今回の試乗会は、芝公園にある東京プリンスホテルからインターコンチネンタル横浜まで走り、車を乗り換えて2時間ほど走り、また乗り換えて横浜から東京に戻るという内容です。『XC40 Recharge Plus』に乗ることができたのは、横浜から東京に戻るルートでした。

走り出してすぐに感じたのは、ワンペダルの操作感覚の良さでした。

踏んだときのレスポンスの良さはEVなので当然なのですが、アクセルを緩めたときの回生ブレーキの効き具合が、強すぎず、弱すぎずでしっくりくる印象です。ワンペダルに慣れていれば、すぐに操作感覚がつかめそうです。

高速域ではすこしレスポンスが緩くなっているのか、それほど慎重に操作しなくても前後Gを強く感じることはなかったように思います。ワンペダルだと、ていねいにアクセルを踏まないと前後Gをきつく感じて、同乗者が気持ち悪くなったりすることがありますが、『XC40 Recharge Plus』ではほとんど感じませんでした。

やっぱりほしい、コースティング機能

アクセルから足を離せば停止までコントロールできます。首都高速の出口の下り坂でも、しっかり減速して止まることができました。他方、乱暴に足を離すとABSが効くくらい(雨中の走行だったせいでもあるでしょう)減速することがあります。

欲を言えば、ワンペダルのオン、オフがボタンひとつで切り替えられるようにしてほしいということと、コースティングできるモードがほしかったのでした。『XC40 Recharge Plus』もワンペダルのオン/オフの切り替えはできるのですが、メインモニターで操作する機能設定の奥の階層にあるため、少し面倒なのです。

ワンペダルドライブのオン/オフ切り替えは、ちょっと深い階層に……。

EVsmartブログの読者には釈迦に説法ですが、回生ブレーキは車の効率向上のために不可欠である一方、100%を回収できるわけではありません。だから、下り坂の先に上り坂があるのがわかっている時など、回生ゼロで、惰性で走った方が効率が良くなる場合があります。最近はフォーミュラEのマシンも電費を向上させるためにコースティング機能を使っています。

もちろん、ワンペダルなら中立のところでアクセルを止めていればいいのですが、微妙な操作を続けていると、筆者は脚がつりそうになります。脚がつるより、ボタンひとつで回生ブレーキをオフにしてコースティングできた方が、乗りやすいのは間違いありません。

全メーカーのEVに言えることですが、コースティングモードか、ワンペダルのオン/オフ切り替えは、ワンタッチで操作できるといいなあと思います。内燃機関の他車種と共通部品を使っている関係かステアリングにボタンがいろいろ付いていますが、『XC40 Recharge Plus』では使わないボタンがあったりするので、ぜひ搭載してほしいと思うのです。

ワンタッチでドライブアシストに切り替えは楽ちん

ワンタッチでの操作と言えば、『XC40 Recharge Plus』が採用している運転支援『パイロット・アシスト』は、ステアリングのボタンをポンっと押すだけで作動するのが、とても楽ちんでした。機能のキャンセルも、同じボタンを再押しするだけです。

基本的にはパイロット・アシストを使い、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)はメインモニターの機能設定で切り替える手順になっているのです。

考えてみれば、パイロット・アシストがあるのなら、わざわざACCだけを使うことはほとんどないので、これでいいじゃんって思いました。割り切りができているんだと思います。

なおパイロット・アシストの能力は、首都高速道路の中ではそこそこという印象でした。合流時などの大きなカーブだと車線をキープしきれなかったりします。一方で渋滞時の追従は好感がもてました。とはいえ短時間の試乗では確認しきれない部分はあるので、長距離試乗ができたら改めてリポートしたいと思います。

なお急速充電は、システムが同じとされる『C40 Recharge』で一応の動作確認ができました。SOC(電池残量)が70%で、受け入れ電力は61kWだったので、大黒PA 6口器のダイナミックコントロールにもきちんと適応していると考えられます。

電気ボルボの方がガソリンエンジンより高級感あり

その他に気づいたのは、以下のような点でした。

まず、『XC40 Recharge Plus』は、Aピラーがそれほど太くないこともあって、視界はとても広く感じます。Aピラーが太いと斜め前の歩行者が見えにくかったりするのですが、ほとんど気になりませんでした。

後席の足元、頭の上のスペースも十分に広くて、パソコンを開いて仕事するのも楽ちんです。ボルボ試乗記パート2で紹介する予定の『C40 Recharge』は、リアゲートに向かってルーフを下方に絞っているので、後席頭上が少し窮屈に感じることがあります。それに比べると、『XC40 Recharge Plus』は余裕でした。

フロントフードを開けると、そこは荷物スペースがあります。テスラに倣ってフランクって呼ぶことがあるようですけど、収納スペースが多いのは便利です。

フランクには内蓋も付いてました。

センターコンソールには、取り外しできるゴミ箱が収納されています。筆者はプラスチック袋をゴミ袋にすることが多かったのですが、こういうちょっとした小物は嬉しいです。そういえば、グローブボックスにフックが付いている(簡単に出し入れ可能)のも、気が利いていると思いました。

グローブボックスのフック。

細かなガジェットがいろいろありますが、余計だと感じるものはなかった印象です。ゴチャゴチャと飾り立てず、シンプルに必要十分なものを用意するのは、容易ではないと思うのです。

ところで、筆者が一番気に入ったのは、普通充電用ケーブル(コントローラ付き)と災害対応セットの専用バッグがカワイイことです。どちらもグレー基調のバッグで、災害対応セットはリュックになっています。無骨な充電ケーブルがトランクに入っているより、こんなオシャレな処理がしてある方が楽しくなります。

左が充電ケーブル、右側が災害対応セットの専用バッグ。(写真はC40 Rechargeのものを撮影しました)

お買い得感のある『XC40 Recharge Plus』

結構な雨に見舞われ時間に追われ、あまり高級感のある写真が撮れませんでした。反省しています。

最後にスペックと価格について概要を記します。

XC40 Recharge
Plus
XC40 Recharge
Ultimate
C40 Recharge
Plus(MY23)
C40 Recharge
Ultimate(MY23)
価格(税込)579万円679万円599万円699万円
電気系
駆動方式FWDAWDFWDAWD
モーター搭載位置前車軸(計1個)前後車軸(計2個)前車軸(計1個)前後車軸(計2個)
モーター種類永久磁石式交流同期永久磁石式交流同期永久磁石式交流同期永久磁石式交流同期
定格電圧370V396V358V396V
最高出力170kW(231ps)
/4919-11000rpm
前後150kW(204ps)
/4350-13900rpm
170kW(231ps)
/4919-11000rpm
前後150kW(204ps)
/4350-13900rpm
最大トルク330Nm/0-4919rpm前後330Nm/0-4350rpm330Nm/0-4919rpm前後330Nm/0-4350rpm
駆動用バッテリー
種類リチウムイオンリチウムイオンリチウムイオンリチウムイオン
容量69kWh78kWh69kWh78kWh
電圧/容量358V/194Ah403V/194Ah358V/194Ah403V/194Ah
バッテリーセル数9610896108
充電出力普通:9.6kW
急速:150kW
普通:9.6kW
急速:150kW
電費
一充電走行距離(WLTC)502km484km502km484km
一充電走行距離
(EPA換算推計値)
約402km約387km約402km約387km
電力消費率159Wh/km
(6.29km/kWh)
188Wh/km
(5.31km/kWh)
159Wh/km
(6.29km/kWh)
188Wh/km
(5.31km/kWh)
寸法・重量
全長×全幅×全高4440×1875×1650mm4440×1875×1595mm
ホイールベース2700mm2700mm
車両重量2000kg2150kg2000kg2150kg
最小回転半径5.7m5.7m
定員5人5人
補助金(CEV補助金)65万円65万円65万円65万円

『XC40 Recharge』には他に、前後車軸にモーターを搭載した電子制御AWDの『XC40 Recharge Ultimate』があります。

電費は、スペック上ではシングルモーターの『XC40 Recharge Plus』の方が少し良くなっています。実走行でどうなるかは長距離を走らないとわからないので、試乗車が借りられ留用になり次第、チェックしたいと思います。

急速充電は150kW、普通充電は9.6kWまで対応しています。日本の充電インフラは性能が追いついてないので、今はまだ猫に小判状態ですが、徐々に90kWや150kWの急速充電器、6kWの普通充電器なども増えていくはずなので、充電性能に余裕があるに越したことはありません。

メインモニターからは、充電時のSOCやアンペア数、充電スケジュールなどを調節できます。とくにSOCの上限を設定できるのは歓迎です。

69kWhのバッテリー容量があれば、1回の充電で400km前後は走れそうです。だとすると年間の走行距離が5000~1万kmくらいの人たちは1か月に数回しか充電しなくてもいいことになります。このくらいの使用頻度ならSOC80%くらいを上限に設定できると。バッテリーにはやさしいですね。

話は変わりますが、スマホも手動でSOCの設定ができるといいなあと、時々思います。100%じゃなくてもいい場合ってあるんですよね。車も同じではないでしょうか。

価格は、FWDモデルがAWDモデルに比べて100万円ほど安くなっています。スペックがほぼ同じ『C40 Recharge Plus』に比べても若干、抑えられています。

それでも税込みで600万円近いですが、購買力がある人にとっては選択肢の上位に並ぶように思います。もちろん、30万円程度の中古車しか自分では買ったことのない筆者にそんな選択肢はありませんが。

補助金は、自家用車の場合は経産省のCEV補助金が65万円に設定されています。給電機能がないのでこの金額が上限ですね。ヨーロッパの車は、なかなか給電機能が付かないですねえ。メルセデス・ベンツのEQS、EQEにはチャデモの給電機能が搭載されたようですが、もちろん、私には手が届かない価格です。

以上、ボルボの電気SUV『XC40 Recharge Plus』についてお伝えしました。感想の結論は、とても良い車だということです。いやー、やっぱり電動化は車の質を上げますよね。電動モーターの振動は、内燃機関で言えば36気筒くらいと同等なんじゃないかと、仲間内では冗談半分、本気半分で話していますが、あながち的外れではないことを、『XC40 Recharge Plus』でも体感できると思います。

次回は、日本でも昨年発売された電動SUV、ちょっとスポーティーなエクステリアデザインを持つ『C40 Recharge』の上位グレード、ツインモーターの『Ultimate』をご紹介します。しばしお待ちくださいませ~。

(取材・文/木野 龍逸)

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この記事の著者


					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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