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アウディ「A6 Avant e-tron」試乗レポート/後輪駆動ならではの気持ちいい走りを満喫

アウディ「A6 Avant e-tron」試乗レポート/後輪駆動ならではの気持ちいい走りを満喫

2025年7月に日本で発表されたアウディの新型EV「A6 e-tron」には、流麗な4ドアクーペの「Sportback(スポーツバック)」とコンサバティブなステーションワゴンボディの「Avant(アバント)」がラインナップされています。今回、Avantに試乗しました。

目次

日本で購入できる唯一のステーションワゴンBEV

EVはもちろん、ICEやPHEV、HVであっても、5ドアハッチバックやステーションワゴンは今や絶滅危惧種となっています。今や世界中の多くのクルマはSUV化が進んでいます。PHEVやHVへの派生を考えない純粋なICE車でもない限り、プラットフォーム設計では床下にバッテリーを搭載することが前提で設計されます。また、歩行者保護を考慮したパッケージングとするため、ボンネットを高くする必要があり、バッテリー搭載と歩行者保護を両立しやすいSUVという車型が選ばれることが多く、日本に導入されているステーションワゴンのEVはこの「A6 Avant e-tron」のみです。

A6 e-tron(イートロン)にはアウディとポルシェが共同開発したPPEプラットフォームが採用されました。ポルシェの場合、PPEはマカンに使われています。

ボディサイズは全長が4930mm、全幅が1925mm。全高はスポーツバックが1465~1495mm、Avantが1505~1530mmとなっています。Sportbackの1465mmは、現在日本に輸入されている新車のEVのなかではもっとも低い数値です。ワゴンのなかでもっとも高い車高の1530mmでも、1550mm規制の立体駐車場に入庫可能な数値となっています。

試乗車として選んだのはA6 Avant e-tronの「パフォーマンス・エアサス仕様」です。アウディといえばクワトロである4WDが有名で、クワトロでない場合はFWDとなるのが通常でした。新しいアウディEVのフィーリングをつかみ、そして世界的に珍しくなってしまったステーションワゴンを再評価するためにAvantを選び、駆動方式がRWDであるグレードとしました。

100kWhバッテリー搭載で航続距離は734km

システム概要を紹介しましょう。バッテリーはリチウムイオンの100kWh(ユーザーが使用可能なネット値は94.9kWh)で床下に搭載されます。前述の通りモーターはリアアクスルに配置され、270kW-565Nmのスペックを持ちます。

このモーターはドライサンプ式のオイルクーリングによって温度管理されています。WLTCモードでの航続可能距離は734kmとかなり長くなっています。グレード名に付けられる「パフォーマンス」は航続力の長さを示しており、動力性能を高めたモデルには「RS」の二文字が使われます。

A6 e-tronシリーズでもっとも航続距離が長いのは、A6 Sportback e-tronのレンジプラスパッケージで846kmです。レンジプラスパッケージとは、空気抵抗を低減するため車高を下げられるエアサスやデジタルミラーなどがセットとなったオプションです。

実際に走り出してみると、まずその快適さに驚かされます。A6 e-tronは基本の走行モードにDモードとBモードの2種が用意されています。

Bモードはワンペダルモードで、アクセルペダルの操作だけで停止までが可能です。かなり強めの減速度で、一般道を60km/h程度で走行中にアクセルペダルをいきなり戻すと、グーッと強い減速感を伴って停止します。信号停止などでワンペダルを使う際はアクセル操作を微妙に調整する必要があり、かえってストレスがたまりそうですし、強い減速Gは同乗者に不快感を与えます。一人で乗ってワンペダル操作を極めるといった目標を持ってのドライブは楽しいでしょうが、同乗者がいるときに使うのはあまりおすすめできません。

今回の試乗はワインディングを中心に行いました。ワインディングでは、このワンペダルモードがかなり使いやすく感じました。コーナーの進入に合わせてアクセルペダルを戻すと、ちょうどよい荷重移動が得られます。

コーナリングはカーブの回転半径に応じて速度を調整すればよいと思われがちですが、実際にはカーブを曲がる際に前後どちらのタイヤに荷重がかかっているかが非常に重要です。フロントタイヤに荷重がかかっている状態だとコーナーをスムーズに曲がれます。そして加速に移るときは、駆動輪に荷重がかかっていると加速がスムーズです。アクセルペダルを踏んでいくことで荷重が後輪に移っていきます。A6 e-tronは後輪駆動なので、加速フィールも非常に気持ちのいいものとなります。やはり操舵は前輪、駆動は後輪という役割分担ができている後輪駆動は、クルマとしての素性がよく感じられます。

回生量調整のパドルスイッチの使いこなし方

A6 e-tronはステアリングのパドルスイッチによる回生量の調整が可能です。この機能はDレンジのみで作動します。Bレンジでパドルを操作すると、メーターパネルに「Dレンジで操作するように」と日本語で注意表示が出ます。パドルスイッチというと、ワインディングを走りながらパドル操作で減速するような走りをしたがる人もいますが、そうした使い方にはあまり適していません。ICEモデルでのシフトダウンによる減速を模していると思われますが、実際にはICE車の場合、まずフットブレーキで減速し、その速度に合わせてシフトダウンを行うのが正しい手順です。

EVの場合はパドルで減速することで効果的に回生を働かせ、エネルギー回収を行うことが大切なのですが、A6 e-tronは強め回生・弱め回生・コースティングの3段階しかないため、パドル操作でのコーナリング進入減速&回生はやや操りにくい印象です。エネルギー回収のための減速はBレンジで行うのがよいでしょう。

では、このパドルによる回生量の調整をどう使うのかといえば、下り坂での回生量調整です。勾配がゆるく回生が期待できないときはコースティングでエネルギー消費を抑え、勾配に合わせた回生選択や、コースティングから回生への切り替えで惰性で上がった速度を落としつつ回生する、といった使い方が適しています。

試乗車のA6 e-tronはエアサスを装備しています。一世代前のエアサスは乗り味に節度感がなく、ステアリングを切った際の反応遅れなどを感じたものですが、現代のエアサス、特に重量の重いEVとの組み合わせでは好印象のものが多くあります。A6 e-tronも従来のエアサスに見られたような節度感の甘さはなく、ステアリング操作に対するクルマの反応もシャープです。

コーナリング自体の安定感も高く、懐の深いコーナリング感覚を楽しませてくれます。標準状態のドライブモードは「バランスモード」で、これでもかなりしっかりしていますが、「ダイナミックモード」にすればさらに引き締まり感がアップします。「コンフォートモード」はやわらかな印象で、高速クルージングなどではこのモードが適している印象です。「エフィシェンシーモード」では車高を下げ空気抵抗を減らすとのことで、長距離移動などで航続距離を伸ばしたいときに効果を発揮します。

Sportback は流麗なフォルムを持ちながらも、定員乗車時のラゲッジ容量(VDA)は502リットルをたっぷり確保しています。じつはAvantの定員乗車時ラゲッジ容量も502リットルで同一です。となるとスタイリッシュな Sportback に目がいきがちですが、リアシートを倒して2名乗車としたときのラゲッジ容量は、 Sportback が1330リットルなのに対し、Avantは1422リットルとかなり多くなります。VDA計測では視界を妨げないように(一般的にはトノカバーが閉まるまで)計測するため、実用面ではAvantのほうがはるかに荷物搭載力は高くなります。

A6 e-tron シリーズ価格リスト

価格(税込)一充電走行距離
(WLTCモード)
Audi A6 Sportback e-tron performance981万円769km
Audi A6 Avant e-tron performance1012万円734km
Audi S6 Sportback e-tron1440万円726km
Audi S6 Avant e-tron1471万円706km

A6 Sportback e-tron performanceのみが1000万円を切り、その他のモデルはすべて1000万円を超えるプレミアムクラスとなります。CEV補助金はA6 Sportback e-tronのみ68万8000円で、そのほかのモデルは52万8000円となります。

急速充電の受け入れ出力は最大135kWで、日本国内で増えつつあるCHAdeMO規格の最大150kW器の恩恵を十分に享受できます。カタログスペックの一充電走行距離(WLTCモード)は、前述のレンジプラスパッケージでなくとも706〜769kmと700kmを超えています。優れた急速充電性能と合わせて、快適なロングドライブが楽しめることは間違いありません。

取材・文/諸星 陽一

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この記事を書いた人

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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