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キャデラックのラグジュアリーな電気自動車『リリック』試乗記/このクルマでルート66を走りたい!

キャデラックのラグジュアリーな電気自動車『リリック』試乗記/このクルマでルート66を走りたい!

キャデラックブランド初の電気自動車(BEV)である『LYRIQ(リリック)』に試乗する機会を得ました。実感したのはアメリカ的なおおらかさ。このクルマ特有のいくつかのクセに惑わされつつも、2日間で600kmを共にした印象をお伝えします。

目次

リリックが示したキャデラックのBEV像

リリックはアメリカ本国では2023年にリリース、日本では2025年3月に発売になったモデルです。前後に各1個のモーターを搭載するAWD(全輪駆動)で、グレードはスポーツのみです(米国には6グレードあり)。

おもなスペックは、全長4995mm、全幅1985mm、全高1640mm、ホイールベース3085mmと威風堂々。車重は2650kg。システム最高出力は384kW(約522ps)、最大トルク610Nmを誇ります。95.7kWhのバッテリーを搭載し、一充電走行距離は510km(WLTPモード ※参考:2026年AWDモデルのEPA値は約488km)。車両本体価格は1100万円(税込)で、国のCEV補助金額は31.2万円(2026年2月現在)です。

リリックのエクステリアデザインを見ていきます。フロントバンパーの外側に縦に並んだライトですぐにキャデラックファミリーであることが分かります。その外側はDRL(デイタイム・ランニング・ライト)、内側の上部がロービーム、下部がハイビームという構成になっています。ウインカーはそれらの上に水平に配置されています。ライト類の内側のブラックパネルの中央にはクリアタイプのキャデラッククレスト(紋章)が鎮座しています。このクレストはリリックから始まったBEV専用デザインです。

本国仕様ではこのブラックパネルの外側が羽のように光るのですが、日本仕様ではキャンセルされています。

キャデラックの名にふさわしい高級感

サイドからリアにかけては1967年の「エルドラド」をオマージュしたテールランプが、フロントのDRLと同じようにバンパーの外側に縦に配置されています。ウインカーはリアガラスに沿うようなL字型の部分が光り、かなり特徴的です。ナンバープレートの上のキャデラッククレストを押すと電動バックドアが開きます。ルーフ後端とリアガラス下部の両方に設けられたスポイラーの相乗効果によりリアワイパーを不要とした、と謳われているため、リアガラス用のワイパーは装備されていません。

ボディカラーはアージェントシルバーメタリック。ほかにステラーブラックメタリックとクリスタルホワイトトライコートの2色もあります。この写真はブレーキランプが点灯していますので、リアスポイラー中央のハイマウントストップランプも光っています。アメリカ仕様ではL字部分もテールランプとして光るのですが、こちらも日本仕様ではキャンセルされています。

充電口は左フロントフェンダーに急速充電(CHAdeMO)と普通充電がまとまっています。右上のキャデラッククレストを押すと電動でフタが下にスライドします。

21インチの6穴ホイールには冬季のため、ピレリ・スコーピオン・ウィンターというスタッドレスタイヤ(275/45R21)が組み合わされていました。ブレンボ製パフォーマンスフロントブレーキが装着されたフロントキャリパーには「brembo」のロゴも入っています。

120年以上の歴史を有するアメリカの高級車の代表であるキャデラックらしくインテリアもラグジュアリーな雰囲気にまとめられています。

シート位置の調整はドアパネルのシート型のスイッチで、エアコンはインパネの物理スイッチでも操作でき、その右側にシステムのオン/オフスイッチが配置されています。

ドライバーを囲むように湾曲した33インチのディスプレイは、4種類の表示パターンが選択できるドライバーディスプレイ。その右側にヘッドライトとトリップ計のコントロール、左側(センターディスプレイ)は回生ブレーキやドライブモードの選択などの様々な設定画面、Apple CarPlayやGoogle Android Autoの表示も可能です。

トリップ計には電費が表示されるのですが、距離をリセットしてもなぜか電費はリセットされませんでしたので、センターおよびドライバーディスプレイに表示させることができる「電力消費量」の合計でトリップ距離を割って区間電費を求めました。

少し緑がかった黒のレザーシートはこの車両に唯一設定されているオプションである「フルレザー」インテリア(税込65万円)です。ドアパネルにある紫から黒へのグラデーションのような「KOMOREBI(コモレビ)」もこのオプションに含まれます。ヘッドレストにスピーカーが内蔵されているフロントシートは、ヒーター、ベンチレーション、マッサージ機能付きで、座るとふかっと沈み込み、このクルマのおおらかさを感じるポイントです。

リアシートもヒーター付き、2段階のリクライニングも可能で、下の写真は手前を倒した状態です。

身長172cmの筆者がドライビングポジションをとった運転席頭上には13cm、後席頭上は4cm、膝前には23cmの余裕がありました。固定式ガラスルーフは電動サンシェード付きです。

センターコンソールにはセンターディスプレイを操作できるローレット加工が施されたロータリーコントローラー、二つのドリンクホルダーの手前にはスマートフォンの「置くだけ充電」ができるスマホ入れスペースがあります。この「スマホ入れスペース」の横とアームレストのフタを開けた収納スペースにUSB Type-Cポートがあります。

センターコンソールの下にもバッグなどを置いておくのにちょうど良いスペースがあります。右側に大文字の「CADILLAC」の文字が光り、左側にはUSB Type-Cポートがあります。

荷室容量は793リッターもありますので、写真のように機内持込可能サイズのスーツケースとゴルフバッグを、余裕を持って収納できます。6:4の分割可倒式のリアシートは荷室左側にあるスイッチで倒すことができ、最大で1722リッターまで容量を増やせます。

荷室の最大幅は135cm、最小幅は107cm、奥行きは95cm、トノカバーまでの高さは41cmでした(いずれも実測値)。

回生の巧みさとパワーの上質さ

ステアリングコラム右側にあるシフトレバーを操作して走り始めようとしますが、ドライバーディスプレイに航続可能距離表示はあるけれどSOC表示がないことに気づきました。バッテリー残量はガソリン車のような0から100%で25%刻みの目盛りがあるバー表示のみです。結果的にこのクルマには、走行中のSOC表示はなく、システムオフ時と充電中のみSOCを確認できることが分かりました。

ロックトゥロックが約3.5回転とスローなギヤ比のステアリングとアクセルペダルはしっとり重めです。パドルはステアリングの左側にのみあり、回生ブレーキを操るためのものです。このパドルの操作感とそれに伴う回生具合の制御が巧みでした。まさに指で操作する第2のブレーキペダルという感じで、ストローク量はペダルよりももちろん圧倒的に少ないのですが細かい減速度の調整ができ、しかもテスラのような「0G停車」も可能です(洗練度と完成度はテスラに一日の長あり)。

アクセルペダルを離すと停車までする「ワンペダルドライブ」も可能で、そのモードは「強/ノーマル/回生なし」の3種類から選択でき、強とノーマルなら停車もします。「なし」は一切回生をしない滑空ドライブかと思ったのですが、わずかに回生していました。

ドライバーディスプレイで走行中の消費もしくは回生電力をkW表示で確認できるので、試しに3つのモードで60km/hからアクセルを離して回生の強さを確認。すると強は約100kW、ノーマルは約80kW、なしは約20kWでした。強でも割とすぐに回生具合に慣れますし、より多くの電力の回収もできる(航続距離を伸ばせる)ので街乗りは強がおすすめです。なお、リリックは「一般的な電気自動車のほぼ2倍の0.4Gの回生ブレーキ機能を有する」とアナウンスされています。

昼過ぎに車内が日光で暖かかったためエアコンをオフにして走った22kmの下道で、上記の回生の強さなどを確かめつつ、回生モードを強にして走ってみたところ、電費は7.3km/kWhでした。

車重は2650kgもありますが、システム出力384kW(約522ps)、トルクも610Nmと、エンジン車に例えると6リッターV8NAのようなパワーがあるので、何の不満も感じることなくドライブすることができます。

パワーの出方は踏み始めから一瞬で最大になるものではなく、ゆったりと滑らかに加速していく特性に感じました。それはドライブモードをスポーツにしても同じ方向性のようで、一気に「キャラ変」とまではなりません。これは高級ブランドであるキャデラックらしいと思います。スポーツモードでの全開加速では車内に宇宙船がワープする時のような音が響いていました。より過激な走りは、「史上最速のキャデラック」と謳われる「LYRIQ-V」(615hp、0-60mph加速3.3秒)が担っているのでしょう。

全体としておおらかな印象があるリリックですが、乗り心地は固めで、スポーツというグレード名のごとくスポーティさを感じられるものでした。21インチのホイールが大きすぎ、45扁平のタイヤが薄すぎるのかもしれません。アメリカ本国には20インチホイール(タイヤサイズは265/50R20)を履いたラグジュアリーグレードもあるので、もしかするとこちらの方がよりリリックに合った乗り心地なのではと思いました。

戸惑いの先にあった「おおらかさ」という魅力

今回、キャデラック初の電気自動車であるリリックに試乗することができました。アメリカ本国のウェブサイトを見ると、同ブランドのBEVはリリック(全長4995mm)の他にも、OPTIQ(オプティック、全長約4826mm)、VISTIQ(ビスティック、同5222mm)、そしてあのESCALADE(エスカレード、同5697mmと5804mm)とすでに4車種のラインナップが揃っています。日本では巨大だと思うリリックがアメリカでは小さい方から2番目という事実に、彼の地との大きさの概念の違いに驚くところです。

そしてこの2026年にキャデラックはオプティックとビスティック、リリックVのBEV3モデルを導入予定と、リリックの発表会でアナウンスしています(関連記事)。

左からオプティック、ビスティック、リリックV。右の2モデルのブラックパネル外側が羽のように光っています。

リリックには戸惑う部分がいくつがありました。ハザードスイッチが見当たらず、諦めて天を仰いだ時になんとルームミラーより上のヘッドコンソールにあったこと、走行中のSOC表示がないこと、区間電費を確認できないこと、LKA(レーンキープアシスト)の制御が今一つだったことなどです(高速電費とLKAについては後日別記事で報告予定です)。

しかし、運転席に座るたびに「ふかっ」と優しく受け入れてくれるシート、高速でも下道でも意外に良かった電費性能を目の当たりにして、「そうか、これがアメリカ流、キャデラック流のBEVの作り方なのか」とポジティブに受け止めることができました。

それはリリックから「そんなに肩肘張らずに、おおらかに行こうぜ、ブラザー」と言われているようでした。そのマインドに切り替わってからは、私の夢の一つであるルート66横断の相棒にリリックを選び、観光名所になっている「キャデラックランチ」を訪れてみたいなと思うに至りました。

アメリカで用いられている単位は、距離はマイル、速度はmph、ガソリンもガロンですし、気温は華氏(℉)と、そもそも日本と感覚の軸が異なります。国土の大きさも桁違いです。だから日本流の価値観と合わない部分が出てくるのは当然でしょう。素晴らしい日本車メーカーでひしめくこの国にあって、輸入車がユーザーから選ばれるために、安全性能が確保されていることは大前提です。それでも、個性は大きな強みになるはずです。

「安全なアメリカ車を追加試験なく受け入れることで合意した」と国交省の発表もあったことですし、リリック以外の3車種を含めて、個性的でアメリカンな魅力をもつキャデラックのEVを、なるべくそのまま日本に入れて欲しいと考えたリリックとの2日間でした。

主要スペック

キャデラック
リリック スポーツ
車両型式ZAA-L233
全長(mm)4995
全幅(mm)1985
全高(mm)1640
ホイールベース(mm)3085
トレッド(前、mm)1685
トレッド(後、mm)1680
車両重量(kg)2650
前軸重(kg)1350
後軸重(kg)1300
前後重量配分50.9:49.1
乗車定員(人)5
一充電走行距離(WLTP、km)510
EPA換算推計値(km)408
モーター数2
駆動方式AWD
モーター型式、フロントS76
モーター型式、リヤP9C
モーター種類(前後)交流同期電動機
フロントモーター出力(kW)170
フロントモータートルク(Nm)309
リヤモーター出力(kW)241
リヤモータートルク(Nm)415
システム最高出力(kW/ps)384/522
最大トルク Nm610
バッテリー総電力量(kWh)95.7
急速充電性能(kW)117(実測値)
急速充電時間90kW器で30分で190km分
フロントサスペンションマルチリンク式
リアサスペンションマルチリンク式
フロントブレーキディスク式(ブレンボ)
リアブレーキディスク式
タイヤサイズ(前後)275/45R21 107V
荷室容量(L)793-1722
フランク(L)なし
車両本体価格 (万円、A)1100
CEV補助金 (万円、B)31.2
実質価格(万円、A - B)1068.8

取材・文/烏山 大輔

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この記事を書いた人

1982年生まれ、長崎県出身。高校生の時にゲームソフト「グランツーリスモ」でクルマに目覚め、 自動車整備専門学校を卒業後は整備士、板金塗装工、自動車カタログ制作、 自動車雑誌カーグラフィック制作、ALPINA総輸入代理店のNICOLEで広報・ マーケティングと一貫してクルマに関わる仕事に従事。 現在の所有車はインテグラ・タイプR、ハイゼットとガソリン車のみだが、BEVにもFCEVにもとても興味を持っている。

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