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日本で最も魅力的&実用的なコンパクトEV/ヒョンデ『インスター』で「東京=兵庫」往復実走レポート

日本で最も魅力的&実用的なコンパクトEV/ヒョンデ『インスター』で「東京=兵庫」往復実走レポート

ヒョンデ『インスター』で「東京=兵庫」片道約620kmを往復してきました。先進運転支援機能の使いやすさに加えて、バッテリー容量は49kWhで、航続距離性能や急速充電性能も十分に実用的であることを確認。補助金を使えば約300万円で購入できるコンパクトEVは「EVへの不安」を過去のものにする実力でした。

目次

往路は2回、復路は実質1回の急速充電で走破

2019年にEVsmartブログ編集長を引き受けて以来、自宅がある東京都世田谷区から郷里の兵庫県但馬地方までの往復を、さまざまなEVで走ってきました。片道は約620km。東京ICで東名高速に乗ったら、新東名〜伊勢湾岸道〜新名神〜中国自動車道〜北近畿豊岡自動車道とほとんどの区間は高速(自動車専用道)。一般道を走るのは自宅から東京ICまでの約6kmと、八鹿氷ノ山ICから実家までの約10kmだけ。2021年には実家にもEV充電用の200Vコンセントを設置したので、残量ギリギリでもたどり着ければ大丈夫という条件です。

今回の旅の相棒は、ヒョンデから4月に発売されたばかりのコンパクトEV『INSTER(インスター)』です。軽自動車より一回り大きいくらいのコンパクトな車体に、49kWhのバッテリーを搭載しています。コンパクトで扱いやすいのはもちろんですが、高速道路中心のロングドライブでの快適性はどうなのか。航続距離や急速充電性能の「実感」とともに説明します。

自宅ガレージのコンセントで充電してSOC100%からのスタートでした。

旅程/時間充電場所充電器出力充電時間充電電力量SOC
5月23日(往路)
18:15〜18:45浜松SA下り線150kW25分26.5kWh33%→82%
20:24〜20:45土山SA下り線150kW21分22.8kWh38%→81%
5月25日(復路)
19:12〜19:28浜松SA上り線90kW16分15.7kWh12%→41%
19:29〜19:53浜松SA上り線90kW24分21.2kWh41%→82%

まず、充電記録です。往路は新東名浜松SAと新名神土山SAの150kW器で2回充電しました。2回ともSOC(バッテリー残量)は30%以上あったからもっとギリギリまで走ることもできたのですが、インスターの急速充電性能は「最大238A」あるので、最大電流が200Aしか流れない90kW器ではせっかくの充電性能がもったいない。このルートで150kWが設置されているのは、東から順に清水PA、浜松SA、湾岸長島PA、土山SAということで、今回の2カ所を選択しました。

浜松SAではうな丼を奮発!

1回目の浜松SAではうな丼を食べて戻ったら80%を超えており、土山SAまで走るには十分だし80%を超えた急速充電は速度が落ちるので途中停止。同様に土山でも80%程度まで充電すれば実家に到達するには十分なので途中で充電を停止しました。30分の制限時間を常に目一杯使うのではなく、必要な電力量を補給して繋いでいくのがスムーズな経路充電のポイントです。

土山SAの150kW器を使ったのは初めてでした。

23時30分ごろ、兵庫県養父市の実家にはSOC20%で到着しました。出発したのは15時30分ごろだったので実質約8時間。「充電=食事やトイレ休憩」としてロスタイムを節約したこともあり、エンジン車でかっ飛んでいた頃(ベストタイムは秘密です)と所要時間はそんなに変わりません。航続距離に余裕があったので、それなりに快走してしまいました。

約385kmの距離がある浜松SA上り線を目指してみた

車載の普通充電ケーブルはまだ誰も使ったことがない新品状態でした。デフォルトで電流値が2Aとかになっているので、暗い中手探りで14Aに調整しました。インスター(ヒョンデ車)を利用の際はご注意を。

翌々日の復路は、実家のコンセントで充電してしっかりSOC100%からのスタートです。往路はテンポ良く2回充電しましたが、せっかくなので充電1回で完走を目指してみたい。そのために、約385kmの距離がある新東名浜松SAまで一気に走り、150kW器で30分、おおむねSOC80%まで充電するプランを想定しました。

実家を出発前。航続可能距離表示360kmで、385km先の浜松SAを目指します。

航続可能距離表示は「360km」になっていましたが、これは往路を「気持ちよく快走してしまった」電費が反映されています。インスターのハンドルを撫でつつ「キミはもっとできる子だよね」と褒めながら、ACCはおおむね85〜90km/h程度に設定、120km/h制限区間も100km/h程度に抑えて浜松を目指します。

湾岸長島PA通過時(実家から約273km)に「SOCが30%を切っていたら諦めて充電しよう」と警戒していたのですが、PA入り口通過時のSOCは余裕の「40%」もあって浜松への到達を確信。最後は制限速度の120km/hにペースを上げて、SOC12%で浜松SAにピットインできました。

浜松SAの150kW器は痛恨の故障中でした。現在は復旧しています(6/12)。

ほかに充電するEVの姿もなく、さっそく150kW器で充電しようと思ったら……。なんと、150kW器はカード認証にトラブル発生中ということで利用できない状態でした。念のためサービスセンターに電話して再起動できないか確認しても、やはり無理。ということで、90kW器で「150kW器で30分充電したくらい(SOC80%程度まで)」の充電量を目指し、おおむね「15分」と「20分」のおかわり充電を行った次第です。

合計の充電電力量は約36.9kWhと「少し入れすぎたかな」という感じではありますが、東京帰着時のSOCは14%ほどもあり。実質的に「150kW器1回」の充電で約620kmを完走できたと評していいでしょう。浜松SAから東名最高地点の御殿場を越えて自宅までの約230kmを走りきるには「80%くらい入れておきたい」と思っていたので、もし150kW器1回で80%に届かなかったら少しおかわりしただろうとは思いつつ、コンパクトEVにして兵庫〜東京を急速充電実質1回で走破できたのは素晴らしい結果だと感じています。
※冒頭写真は、トイレ休憩で立ち寄った新東名岡崎SA(上り線)で、日没前に撮影しました。

価格は倍以上の高級EVに引けを取らない快適さ

インスターの優れた航続距離&急速充電性能を確認できたのはもちろん、今回のロングドライブで強く実感できたのが「コンパクトカーのレベルを超えた快適さ」です。日本の道路事情を踏まえて足回りなどが念入りにセッティングされていることに加えて、高速道路走行時のアダプティブクルーズコントロールやレーンキープといった先進運転支援機能の信頼感が秀逸であることが、ロングドライブを快適にこなせる大きなポイントであると感じました。

ほぼ同じルート(その都度、若干のアレンジはしてますが)を、マイカーの30kWhリーフやコナカジュアルをはじめ、テスラモデル3、アイペイス、EQAやEQC、ボルボC40、BYDシールなどで走ってきました。車両価格が357万5000円(税込)のインスター(ラウンジグレード)の倍以上するような高級EVと比べても、完走後の「あれ、意外と疲れてないな」という電気自動車ならではの感覚にそれほどの違いはないというのが実感でした。

インスターへのCEV補助金は56万2000円(関連記事)ですから、おおむね300万円で購入できるのは「すごくお買い得」であることはいうまでもありません。

レンタカーなどにインスターが増えればEVへのイメージが変わるはず

実際に長距離実走を試してみて、コンパクトなボディに49kWhのバッテリーは現状の市販EVのコストパフォーマンスとしてベストバランスであるという印象が確信になりました。

「航続距離が足りない」「充電に時間がかかる」といったEVに対するネガティブなイメージは、バッテリー搭載量が少なく、劣化が進みやすかった「ひと昔前のEV」が作り出してしまったものでした。「充電スポットが少ない」といったイメージも、e-Mobility PowerやNEXCO各社がSAPAへの高出力器複数口設置を進めているおかげで、数年前とはまったく状況が変わっています。たとえば、レンタカーやカーシェアにインスターを導入すれば、EVの航続距離などに対するイメージは次第に変わっていくだろうと思います。

日本には「クルマは日本製がいい」という思いの方が多いのはわかりますが、日本のメーカーがこういうEVを発売してくれないのですからどうしようもありません。ユーザーとしては「より賢明な選択肢」として検討する価値があります。

アメリカでは、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスが支援するSlate Autoが発表した約2万ドルのピックアップトラックEV『Slate Truck』が短期間で多くの受注を集めて話題になっています。ここ数年、車種が増えたとはいえ「高級車」が中心だったEVですが、安くて魅力的なEVが発売されたら人気になるのは当然のこと。

インスターは「今、日本で購入できる最も魅力的&実用的なコンパクトEV」であることを改めて強調しつつ、さまざまなメーカーから、多くの方が「欲しくて買える」魅力的なEV車種が登場してくることを期待しています。

取材・文/寄本 好則

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この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 航続距離のことを気にし過ぎるじゃないですか、寄本さん。私は2016年初から電気自動車に乗って10年目ですが、航続距離なんてほとんど気にしていません。走れるだけ走って足りなければ充電すればいい、それだけじゃないですか。毎日のように東京大阪間を走るのが趣味みたいな人もいるのかもしれませんが、満充電にしても200キロに遠く満たないバッテリーでも気にせず日常に遠出に使ってきました。航続距離をとやかく言うのは電気自動車を全く知らないか、車好きだけでしょう。バッテリーは40キロもあれば十分と言い続けてきたわけだから、ヒョンデのバッテリーですらデカ過ぎじゃないですか?EV乗りたくなければ乗らなければいいだけです。無意味な中傷はシカトしてください。

  • コメントありがとうございます。おっしゃる通り、私もマイカーがKONAになってから、プライベートなドライブでは航続距離(バッテリー残量)はあまり気にすることはないし、経路の急速充電をすることもめっきり少なくなりました。レポート記事のネタとして、航続可能距離表示より遠い浜松を目指してみたら届いたので、「ね、もう大丈夫でしょ」とお伝えしたかった次第です。w

    インスターも、バッテリー容量としてはカジュアルの42kWhで十分だけどなぁと思いつつ。ヒートポンプ非搭載など、装備が控えめすぎてオススメしてないですけど。

    インスター、今回のレポートでは触れませんでしたが、回生ブレーキのオートモードがすばらしいです。

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