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4WDも選べるスズキのEV「eビターラ」長距離試乗レポート/庶民の味方のフラッグシップ~EVとしての実力は?

4WDも選べるスズキのEV「eビターラ」長距離試乗レポート/庶民の味方のフラッグシップ~EVとしての実力は?

軽自動車メーカーという印象が強いスズキがブランド初の電気自動車として発売した「eビターラ」で、横浜から南房総へ走ってみました。インテリアなどの質感が高く、全体的な感想としては「まさにスズキのフラッグシップ」。EVsmartブログ的な視点で、EVとしての完成度についてレポートします。

目次

試乗会で確認できなかった「急速充電」や「電費」をチェック

スズキとして初めての量産EVである「eビターラ」で、東京から南房総まで試乗してきました。1月末に開催された公道試乗会にも参加したのですが、限られた時間では急速充電性能や使い勝手を確認できず(関連記事)。実用的な電費もよくわからなかったので、試乗会終了直後に広報車を予約。丸一日しっかり走った電費を確認するとともに、高出力器で充電してみることにした次第です。

目的地にしたのは千葉県の館山市。新型モデルYを試乗した際(関連記事)に見つけた絶景スポット、沖ノ島ビーチを目指してみました。バッテリー残量(SOC)を20%以下くらいには減らして急速充電を試したかったので、広報ご担当者に「できるだけSOCが少ないヤツを」とお願いしてあったので、出発時のSOCは70%。外気温は3℃と寒い日でしたが、航続可能距離は「306km」と表示されていました。

広報車をお借りしたスズキ横浜研究所から目的地の沖ノ島までの距離は約110km、往復で220kmくらいの見込みです。走り方にもよりますが、高速道路を流れに乗って普通に走れば「SOC20%を切って戻れるはず」と想定し、eビターラとの一日ドライブに出発しました。

走りやインテリアなどの上質感はまさにスズキのフラッグシップ!

eビターラにはバッテリーの総電力量が49kWhの「X」と、61kWhの「Z」があって、「Z」には2WDと4WDのラインアップがあります。今回試乗したのは「Z 2WD」。車両価格は448万8000円(価格は税込)で、国のCEV補助金が127万円(2026年2月現在)になったから、実質323万円ほどで手が届くお買い得なEVです。「Z 4WD」でも492万8000円なので、実質約366万円で4WDのEVに手が届きます。

スズキといえば、47万円で日本国民の度肝を抜いたアルトや、ジムニー、ワゴンR、スペーシアといった個性的な軽自動車に強いメーカーというイメージです。eビターラはBセグメントの「コンパクトSUV」ではあるものの、堂々と3ナンバーの普通乗用車。BEV専用に新開発されたプラットフォーム「HEARTECT-e」や、モーター、インバーター、トランスアクスルを一体化した高効率な「eAxle」を採用……、などといった能書きは知らずとも、EVならではのスムーズな加速やキビキビした走りを堪能できることはいうまでもありません。

インテリアの質感も上々。試乗したモデルはガラスルーフも備えていました。さらに注目したいのが、AC100V(1500W)のアクセサリーコンセントが全グレードに標準装備されていることです。外出先でEVから電気を取り出して活用することをV2L(Vehicle to Load)と呼びます。私自身マイカーのEV車内でオンライン会議をやったり、たまのキャンプに出かけたり、イベント時の電源車にするなど、とても便利に活用していて、V2Lはマイカー選択の必須条件になっています。

エンジン車やハイブリッド車にもアクセサリーコンセントを備えた車種はありますが、電気を使うときはアイドリングしなくちゃいけなかったりするのは、なんというか、台無しです。

なにはともあれ、走りやインテリアの質感は期待以上。アクアラインをひた走りつつ「なるほど、これはスズキのフラッグシップだ!」と実感したのでした。

約220km走って平均電費は「6.0km/kWh」

館山に到着し、渚の駅たてやまの「館山なぎさ食堂」でランチ。ちょうどお昼前に着いたので並ばずに入れましたが、私が店を出るときはかなりの行列ができてました。

この時点で、走行距離は104km、平均電費は6.5km/kWhでした。晴天ながら外気温は10℃ほどで、まあまあ低い状況だったことを考えると、まずまずといったところでしょうか。

沖ノ島に到着した時点で、走行距離は約108km。SOCは42%で、航続可能距離表示が185kmになりました。70%からのスタートでしたから、片道に要したSOCは28%。復路を同条件で走れたとして、SOC14%程度で広報車返却場所に近い急速充電器に帰着できる算段です。BセグのコンパクトSUVということもあり、正直なところ電費は「7km/kWh」くらいを期待していましたが、不満に感じるほどではありません。

余談ですが、最近は市販EVのバッテリー容量が増えるなど性能が向上したことで、急速充電を含めた試乗がなかなか大変。今回も「バッテリー減らして貸し出し」をあえてお願いしたからこそ目的地が館山でちょうどよかった感じです。EVに対して「航続距離がぁ」といった懸念が時代遅れになっていることを感じていただけると幸いです。

ランチには「牡蠣と生海苔のクリームソース〜香草パン粉焼き添え」のパスタをいただきました。

30分間での充電量は「約32kWh」

急速充電は、EV充電エネチェンジアプリで車両返却場所のすぐ近くに「資源循環局都筑工場」の150kW器があるのを発見。先だっての試乗会で、eビターラの急速充電性能は「おおむね90kW相当」で、「49kWhモデルが55kW程度、61kWhモデルは68kW程度」という情報もあったので、90kW以上の機種であることを条件にしようと思っていたので、この150kW器で充電することにしました。

到着してみて驚いたのが、このスポット、以前の記事で紹介したこともある横浜市の社会実験として設置された「公道EV充電ステーション」だったことです。青葉区としらとり台駅前にあるのは知っていましたが、ここにも? と思って調べてみると、今年の1月20日に運用開始されたばかりでした。公道充電ステーションのあるべきカタチ、てな話を始めると長くなるので控えますけど、EV社会は着々と進展してますね。

充電器帰着時のSOCは11%。皮算用よりもちょっと少なかったですが、まったく問題なく「横浜=館山」を往復できました。

充電を開始して改めて確認できた(前回の試乗会でそのように聞いていました)のが、車内のディスプレイ表示では「出力はどのくらいで充電できているのか」がわからないことです。今回の長距離試乗後「急速充電中の出力などはスズキコネクトのアプリで確認できますか?」と確認してみましたが「ご確認いただけません」という回答でした。

150kW器30分間で充電できた電力量は、充電器の表示で「31.525kWh」。これも、車両側では「SOC11%が63%に増えた」つまり「総電力量が61kWhとして、その52%に相当する31.7kWh程度充電できた」と推計することしかできません。ともあれ「61kWhモデルは68kW程度」と聞いていた急速充電性能を額面通りに備えていることを確認できました。今どきのEVとしてパワフルと評するほどではありませんが、実用的に問題はないと感じます。

63%から90kW器での充電でも50kW超の出力を確認

公道急速充電器は30分で移動して、車両返却場所であるスズキ横浜研究所のすぐ近くのコンビニに設置されていた90kW器でも、出力を確認するために少しだけ充電してみました。

SOC63%からの充電スタートで、すぐに51kWの出力が確認できました。まずまず納得の数値です。実際の高速道路ドライブ時には、SOCが50%を切ったら90kW以上の急速充電器があるSAPAを狙って「トイレ休憩&15分充電」で繋いでいけば、ストレスのない楽ちんドライブができるでしょう。

「初めてのEV」としてオススメだけど、少し気になった点も……

それなりの長距離を走り、急速充電性能も確認できたeビターラ。全体としては、コストパフォーマンスが高く、降雪地域で人気の4WDモデルもあって、「EVに興味はあるけど、高いし不安」と買い替えに踏み切れなかった方の「初めてのEV」としてオススメできる実力でした。

ただし、EV大好き&細かすぎるチェックが身上のEVsmartブログとしては、いくつか気になった点もあります。

スズキの充電カードで高速SAPAの急速充電器は認証不可

まず、充電カードの注意事項です。スズキはeビターラ発売に合わせて「スズキ充電サービス」をスタート。今回の試乗車にも「SUZUKI CHARGING CARD」を用意してくれていました。が、今回利用した急速充電器は2台とも、e-Mobility Power(eMP)の施設です。「SUZUKI CHARGING CARD」は「エコQ電」に対応している公共充電器であればカードで認証できますが、eMPが独自に設置した充電器では認証できず、手順が面倒で料金も高めのビジター(ゲスト)で利用する必要があります。

最近、EVを発売するメーカーの充電カードがeMPではなくエコQ電連携となるケースが増えており、このあたりを説明し始めると長くなるので割愛しますが……。eビターラを購入する方は「スズキの充電カードで、高速道路SAPAの急速充電器はほとんどが使えない」ということを理解しておくのがいいでしょう。

EVとしての使い勝手にはさらなる改善を望みたい

さらに、「エンジン車から乗り替えて違和感なく」という方向を目指しているのだとは思いますが、EVとしての使い勝手はいくつか改善すべきと感じる点がありました。

先に指摘した「充電中の出力がディスプレイ表示でもアプリでも確認できない」のは、ぜひ改善してほしいポイントの筆頭です。

また、急速充電に備えてバッテリー温度を調整する機能を備えてはいるものの、車載ナビで充電スポットを目的地に設定したとしても、ナビ設定と連動してバッテリー温度管理(昇温や冷却)がオンオフになるような機能は「実装されていません」とのこと。加えて、ドライバーがディスプレイ表示などでバッテリー温度を確認することができません。

設定操作画面の階層が深いのも使いにくいと感じる点でした。

リアルなバッテリー温度の状況が把握できず、昇温や冷却にどのくらいの時間が必要なのかもよくわからないので、手動で活用するのはEVに慣れた私にとっても至難の業でした。これでは、せっかくの機能をまったく利用できないユーザーが多発するのではないかと思います。

あと、メーターディスプレイに指定した区間の「平均電費」は表示されるのですが、リアルタイムの電費がよくわからないのも「EV乗り」としてはちょっと不満に感じる点でした。

走るために必要なエネルギーの大きさに気づき、バッテリー(愛車EV)とのコミュニケーションを取りながら、自分なりの電力マネジメントを行えるのが「EVの隠れた魅力」だと私は感じています。エンジン車からの違和感を減らすことより、EVとしての魅力を広げる方向へ、さまざまな機能を磨きあげてくれることを期待したいと思います。

なにはともあれ「スズキにとって初めてのEV」は、日本の多くの自動車ユーザーの「初めてのEV」にオススメの1台であることは間違いありません。お近くの販売店で、ぜひ一度試乗してみてくださいまし。

取材・文/寄本 好則

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この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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