真冬の北海道で『サクラ』のレンタカーを借りてみた/遊びながら充電できる幸せを実感

札幌でEVを活用しているアストラゼネカのMRさんを取材すると聞き興味津々で同行。せっかく冬の北海道に行くチャンスなので軽EV『日産サクラ』のレンタカーを借りてみました。日産レンタカーでは「ZESP3」のカードを貸し出してくれます。充電料金精算方法の気付きも紹介。

真冬の北海道で『サクラ』のレンタカーを借りてみた/遊びながら充電できる幸せを実感

日産レンタカーでサクラを借りるのは初めてでした

2025年1月、EVsmartブログ執筆陣の木野さんから「アストラゼネカのMRさんに北海道で取材するアポイントが取れた」と連絡がありました。10月31日に開催されたクライメートグループ主催のカンファレンスで、日本国内で利用している約2000台の営業車をすべてEV化する取り組みと、積雪が多い寒冷地への導入が課題となっていることを知り、木野さんに取材を依頼。実際に現地で取材できるということで、興味津々で同行することにしました。

アストラゼネカの記事は木野さんが執筆するし、私もただ行って話を聞くだけじゃもったいない。せっかく真冬の北海道へ行くチャンスなので、新千歳空港の日産レンタカー店で軽EVの『日産サクラ』を借りてみることにした、というのが言わずもがなの内幕です。

取材中のひとこま。

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レンタカーにこそEVを拡げるべき! と最近いろんな記事で強調しています。エンジン車のような「満タン返し」は必要ないし、航続距離が不安だったり面倒と感じるほどの充電が必要な長距離を走ることはほとんどないレンタカーに、EVはぴったりです。京都の「エムケイハートレンタカー」でサクラを借りた記事を紹介したこともあります。私自身、地方取材などでレンタカーを借りるときにはできるだけEVを探してますが、日産レンタカーでサクラを借りるのは、実は今回が初めてでした。

はたして、EVに厳しいといわれる厳寒の北海道で、EVレンタカーのサクラは不便なく使うことができるのでしょうか。

カウンターで「ほんとにサクラでいいですか?」

私は日産レンタカーの会員になっているのでウェブサイトからの予約はスムーズ。新千歳空港に到着後、送迎バスで日産レンタカー新千歳空港店に移動。セルフチェックインのカウンターでスピーディに手続きも完了! したのですが……。対応してくれたスタッフの方から「本当にサクラでいいですか? EVがよければ、今日はリーフもご用意できますが」と確認されました。「いえいえ、サクラがいいんです」と答えつつ、ちょっぴり苦笑。充電が面倒だったとかクレームが入ることも多いのかと拝察します。

サクラに乗り込み、バッテリー残量などを確認。外気温は思ったより寒くなくて5℃。SOCは100%で、航続可能距離表示は124kmでした。せっかくなので大雪を期待していたのですが、一泊二日の行程はずっと晴天に恵まれてしまいました。日頃の行いが良すぎましたね。

取材場所に指定された北広島市役所までは一般道ルートで約30km。宿泊予約を取った札幌のホテルまでがさらに一般道で22kmほど。片道50km強なので、サクラでもまったく不安のない距離でした。取材したMRさんが充電しているシーンを撮影するために北広島市内で少し走ったりしたこともあり、ホテルの駐車場(充電器はなし。残念ながら充電器がある宿は高すぎて泊まれなかった……)到着時のSOCは36%、航続可能距離表示が54kmになっていました。

ホテルから空港のレンタカー店までは道央自動車道経由でまっすぐ向かっても約48kmなので、どこかで一度充電するのが無難です。バッテリー容量が倍のリーフなら無充電で往復できたでしょうし、このあたりが「ほんとにサクラで?」の理由なのだと思います。

とはいえ、泊まるホテルや近隣のコインパーキングに普通充電設備があれば、寝ている間に満充電。サクラでも「充電の手間」を感じることなく日程をこなすことができるはず。目的地充電インフラのさらなる普及に期待、ですね。

ZESP3の充電カードの貸出は無料。走行距離などに応じて精算となります。

充電器がある温泉施設でまったり過ごす

翌朝、路肩に凍結した雪の除雪というか除氷作業に遭遇。期待した雪は降らなかったけど、北海道の真冬の厳しさを感じました。

翌日、木野さんが「飛行機の予約を朝イチの便に変えて早く帰る」というので、私もそうしようかと思ったのですが、私がチケットを取っていたJALのマイレージ特典航空券では便の変更ができないことが発覚。予約していたのは17時過ぎの便だったので、サクラの雪道体感を含めて観光を楽しむことにしました。

どちらにしても急速充電は必要ですから、最初の目的地に決めた定山渓温泉に向かいつつエネオスチャージプラスのステーション(EneJet創成北36条SS)で急速充電。サクラと一緒に貸し出してくれたZESP3の充電カードで認証しました。外気温がー3℃と寒かったせいか、ホテルから充電器まで7kmほどの移動でもそこそこバッテリー残量が低下して。30分でSOC21%〜64%まで、充電器表示の電力量は9.21kWhの充電となりました。

ひとまずの目的地は定山渓に近い小金湯「旬の御宿まつの湯」という日帰り入浴可能な温泉宿。普通充電器が設置してあることは確認済み。上り坂の雪道ドライブを楽しんで、SOC36%で宿に到着。充電が開始されたことを確認してお待ちかねの温泉へ。

いつもは烏の行水気味の私も、雪景色の露天風呂をゆったり満喫。ちょうどお昼時になったので、宿の中の食堂でカツ丼のランチをいただきました。

さらに、隣接する「札幌市アイヌ文化交流センター」という博物館を見学。アイヌの伝統文化への知見を広げ。2時間ほどの充電で、SOC66%、航続可能距離表示79kmに回復しました。この後、まだ時間に余裕はあるので、前夜「どこに行こうか」検討しつつ「まだ行ったことがない」ことに気付いた札幌近郊随一の観光名所「羊ヶ丘展望台」を経由して空港へというプラン。

距離は65kmほどありますが、この温泉からは下り基調のルートです。復路は道央自動車道を走るつもりで、千歳手前の輪厚PAに急速充電器があるので、走ってみてヤバそうだったら少しだけ注ぎ足し充電すれば問題なくレンタカー店に到着できるはず。「まあ大丈夫でしょ」という算段です。

遊びながら、くつろぎながらEVに充電できるのは、やっぱり便利で幸せなことですね。

輪厚PAは充電スポットの写真だけ撮ってスルー。

充電料金の精算方法にバリエーションが

そんな感じで、まったりと真冬の札幌観光を楽しむ一日を過ごし、PAでの注ぎ足し充電をすることもなくSOC14%で日産レンタカー店舗に帰還できました。

残量14%で返却。

と、サクラの返却時にちょっとした気付きがありました。

実は、貸出時の説明で、充電カードは自由に使っていいけど、走行距離に応じてサクラの場合「7.7円/km」の「電気代」が必要だと聞いていました。以前、 日産の充電サービスがZESP2の頃は電気代(燃料代)などはレンタル料金にインクルードで、そのまま返却すればOKだったと記憶していますが、充電コスト負担の最適化は時代の流れです。

返却時のスタッフさんの説明によると「残量が80%以上で、貸し出した充電カードを使っていなければ精算は無料でOK」また「80%以下で返却の場合は不足%に応じて精算する」ということでした。後で日産レンタカーの公式サイトを確認すると、なるほど「電気自動車充電カード無料貸出し」という説明ページがありました。

さらに、話がややこしくなりますが、充電カードは使用せず80%以下で返却した場合は、不足分のSOCに応じて精算することになります。その場合の金額は公式サイトでは見当たらなかったのですが、改めて予約センターに電話して確認したところ、サクラの場合「14.3円/%」、リーフの場合は「28.6円/%」とのこと。つまり、走行距離や残量SOCによって、カードを使って80%以上に充電して距離精算するのと、カードは使わず80%に足りないSOC分で精算するのと「どっちが得か考えてみよう」的に、微妙な違いが生じることになります。

【日産レンタカーEV充電精算料金】

<充電カードを使用して距離精算の場合>
●サクラ=7.7円/km
●リーフ=8.8円/km
<充電カードを使用せず80%以下で返却の場合>
●サクラ=14.3円/%
●リーフ=28.6円/%

まあ、細かすぎるし、たとえばサクラで150km走ったとして距離精算の料金は1155円。エンジン車で10Lの給油が必要だったとすれば170円/Lとして1700円で、EVならではの安上がりですから、そんなに気にせず精算すればいいことですが。「充電せずにSOC精算」という方法もあるというのが、今回の気付きなのでした。

EVレンタカーはまだまだ発展途上だし、日産レンタカーもこうした仕組みは試行錯誤中という段階なのだと思います。個人的には「残量気にせず距離精算に一本化でもいいですよ」と感じつつ。わかりやすく合理的な仕組みとともに、EVレンタカーの数が増えてくれることを期待しています。

ちなみに、もしも今回の宿泊先がEV充電エネチェンジの充電器がある「小金湯温泉まつの湯」だったと仮定。約30%〜100%はおおむね14kWhで、サクラの普通充電は3kWですから約4.5時間(150分)で満充電。エネチェンジのアプリ認証による充電料金は27.5円/10分だから、充電料金は約412円。そのまま千歳に向かって50%で返却だと30%不足で、精算料金は429円。合計が850円くらいで、距離精算よりちょっぴりおトクって、細かすぎる試算もできます。

羊ヶ丘展望台から下る凍結した雪道もe-Pedalを駆使して快走。

ともあれ、軽EVのサクラで冬の北海道ドライブ。雪道でもe-Pedalが快適で、まったく不安なく走りきることができました。EVで雪道の快適さ、もっともっと多くの人に気付いてもらいたいと思っています。

取材・文/寄本 好則

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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