ボルボ『EX30』一番乗りレポート【第2回】買ってよかった! デザインや軽快な走りに納得

ID.4日記』連載中のモータージャーナリスト生方聡さんがサブスクで手に入れた2台目の輸入EVボルボ『EX30』について紹介する集中連載企画。第2回はデザインや走りについてのファーストインプレッションをレポートします。

ボルボ『EX30』一番乗りレポート【第2回】買ってよかった! 個性的なデザインや軽快な走りに納得

すべてが新しいボルボ最小の電動SUV

これから最長24カ月のあいだ、私の相棒を務めるのが、ボルボのニューモデル『EX30』です。日本には最初に、69kWの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載し、1個のモーターで後輪を駆動する『EX30 ウルトラシングルモーター エクステンデッドレンジ』が導入され、そのうちサブスクリプション(サブスク)用には、「モスイエロー」と「クラウドブルー」のふたつのボディカラーが用意されました。私が選んだのは前者で、この新色は北欧で見られる黄色の苔(こけ)をイメージしたものだそうです。写真ではすこしぼんやり見えますが、実車はなかなか鮮やかで、すぐに気に入りました。

「ボルボ史上最も小さな電気自動車(BEV)」を謳うEX30は、3サイズは全長4235×全幅1835×全高1550mmで、日本車ならトヨタの『ヤリスクロス』、輸入車ならアウディの『Q2』くらいのサイズ感です。全高がSUVとしては低めの1550mmで、車両重量も1790kgに抑えられているので、多くの機械式駐車場に対応するのは首都圏生活者の私にとって見逃せないポイントです。

小さいながらも存在感のあるエクステリアもEX30の見どころです。グリルレスのデザインにT字型の「トールハンマーヘッドライト」を組み合わせたフロントマスクは、遠くからでもボルボとわかるユニークなもの。リアの眺めも、左右のLEDテールライトを2本の線で結ぶことで、ひとめでEX30とわかるデザインをつくりあげています。

エクステリアにも増して、シンプルでユニークなのがEX30のインテリアです。モスイエローのボディカラーには「ミスト」と呼ばれるインテリアが組み合わされていて、ウールとリサイクルポリエステルでつくった「テイラード・ウールブレンド」をシートに使用。亜麻からつくられた「フラックス」のデコラティブパネルとともに、明るく暖かみのある雰囲気に仕立てあげられています。

その一方で、あまりのシンプルさには、正直なところ戸惑いを覚えました。上下フラットなデザインのステアリングホイールの先にはメーターパネルがなく、ダッシュボード中央に縦長のセンタースクリーンがあるだけ。そのまわりに物理スイッチはなく、必要な操作はすべてセンタースクリーンで行うことになります。センタースクリーンの上部は「ドライバーインフォメーショエリア」と呼ばれ、ここに速度やシフト、SOC、走行可能距離などの情報が表示されます。

このスタイルに違和感を覚えるのは私だけではないと思いますが、ふだんテスラに乗る人からは、このほうがしっくりくると聞きました。パワーウインドーのスイッチがセンターコンソールにあったり、ドアミラーの調整にステアリングホイールのタッチスイッチを使ったりと、これまでのクルマとは何かと違うところが多いEX30だけに、そのうちに慣れるといいのですが……。

なお、サブスク用に用意される車両には、ディーラーオプションのETC車載器とドライブレコーダーが標準で装着されていました。もちろん、追加費用はなく、95,000円の月額に含まれています。

楽しさ溢れる軽快な走り

この写真は20インチタイヤが装着された試乗車のものです。

EX30にはNFCアクセスカードキーと、「キータグ」と呼ばれるボタンのないリモコンキーが付属しています。そのいずれでも車両の施錠・解錠と車両の始動が可能です。コックピットにはスタートボタンは見当たらず、車両の始動はブレーキを踏みながら、ステアリングコラムの右にあるシフトレバーを操作するだけです。ふだん使っているフォルクスワーゲンの『ID.4』も右手でシフト操作をしているので、EX30のそれには違和感はありませんでした。

さっそくDを選んでアクセルペダルを踏むと、EX30は軽々と動きはじめました。このクルマには最高出力200kW(272ps)、最大トルク343Nm(35.0kgm)のモーターが1基搭載され後輪を駆動。車両重量1790kgのクルマを動かすには十分すぎる性能の持ち主です。

アクセルペダルの操作に即座に反応し、軽く踏むだけで必要な加速が得られるのもBEVならでは。高速道路などの合流でも、アクセルペダルを思い切り踏む込む必要はなく、もう少しパワーを抑えても良いのではと思ったほどです。いざという場面でアクセルペダルを深く踏めば素早い加速が得られますが、後輪駆動を採用するEX30では2本のリアタイヤがしっかりと強力なトルクを受け止めてくれるので、安定した加速が楽しめるのも、このクルマの強みでしょう。

回生ブレーキの強さは「ワンペダルドライブ」のオン/オフにより切り替えることが可能です。オフの場合は、アクセルオフで軽い回生ブレーキが利き、ブレーキペダルを踏まない状態ではクリープ走行を行います。一方、ワンペダルドライブをオンにすると、それよりも強く回生ブレーキが利きますが、減速は強力すぎず、適度な強さです。そのぶん、低速から停止するまでがわりとゆっくりなので、クルマにまかせずブレーキペダルを踏んで停まるようにしています。

ちなみにワンペダルドライブのオン/オフは、センタースクリーンで車両設定のメニューを呼び出し、そこで切り替えることになります。その操作が少し面倒でしたが、ステアリングホイール左の「カスタマイズボタン」にワンペダルドライブの切り替えを設定しておけば、ワンプッシュでオン/オフが切り替えられるのを知り、重宝しています。ただ、現在の状況がどちらなのかがドライバーインフォメーショエリアに明示されないのが玉にキズで、今後のアップデートで対応することを期待しています。

乗り心地については、納車時の走行距離が18kmということもあって、まだ足まわりは硬い印象です。実はその前の週のメディア向け試乗会でオプションの20インチホイールと245/40R20タイヤが装着された試乗車を試したのですが、タイヤの感触は硬めとはいえ、乗り心地は十分に快適なレベルを確保。目地段差を超えたときのショックもうまくいなしていました。私のEX30には標準サイズの245/45R19タイヤが装着されているので、もう少し距離が伸びてサスペンションの渋さがなくなれば、試乗車よりもさらに快適な乗り心地になると期待しています。

個人的にうれしいのがEX30のハンドリング。前840kg、後950kgという重量配分や、操舵輪と駆動輪が別々というレイアウトのおかげで、実に軽快な走りが楽しめるのです。SUVといっても床下にバッテリーを積むEX30は重心が低く、SUVにありがちな走行中の揺れも抑えられていて、ボルボ史上最も運転が楽しいクルマに仕上がっていると私は思います。

ということで、バルセロナのメディア向け国際試乗会のときよりも、さらに好印象のEX30。とりあえず「買ってよかった!」とホッとしています。電費や充電性能、装備の使い勝手などについてはこれからじっくりとチェックし、このEVsmartブログで紹介していく予定ですので、どうぞお楽しみに!

取材・文/生方 聡

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 初めまして、ハンドルネーム「リクリン」と言います。
    現在リーフe+に乗っていますが、間もなく5年目の車検前で色々EV車試乗していますが
    一番気になるEX30の試乗車がなかなかデーラーに無く、興味津々で読ませて頂きました。
    今後様々な場面でのインプレとても期待しております。
    ホンダEの試乗でもとても軽やかな運転が出来たので、RR駆動でこれだけのトルクがあればとても楽しそうな運転が期待できると思います。
    ただ、余りにもセンタースクリーンによる操作が多く、正直ついて行けるのかが心配です。
    これから電費、航続距離、加速など色々の掲載を楽しみにしています。

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この記事の著者


					生方聡

生方聡

1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職し、システムエンジニアを経験。しかし、クルマに携わる仕事に就く夢を叶えるべく、1992年から「CAR GRAPHIC」記者として、新たなキャリアをスタート。その後、フリーランスのエディター/ライターとなり、現在はモータージャーナリストとして自動車専門メディアに試乗記やレースレポートなどを寄稿する一方、エディターとしてウェブサイトの運営などに携わる。愛車はフォルクスワーゲン『ID.4』。

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