メルセデスEQC発表、発売は2020年

昨日2018年9月4日、メルセデスより完全電気自動車のミッドサイズSUV、EQCが発表されました。これで完全電気自動車のSUVはテスラモデルX、ジャガーi-Pace、そしてメルセデスEQCの三車種に。本記事では発表の概要と、ジャガーi-Pace・テスラモデルXとの比較について書きます。

メルセデスEQC フロントビュー(ハイテックシルバー)

世界の電動化の流れは止まりません。とうとう既存大規模メーカーでは初、メルセデスが完全電気自動車を発表しました。当然最初は売れ筋のSUVから。メルセデスは電気自動車をEQブランドで展開することを発表しており、EQCはこの第一弾になります。メルセデス以外にも、アウディやBMWが同セグメントのSUVを計画していますが、現時点では正式発表はされていないため、この記事では比較は避けたいと思います。

メルセデスEQC リアビュー(ハイテックシルバー)
メルセデスEQC リアビュー(ハイテックシルバー)
EQCはミッドサイズSUV。中国や米国では最も売れ筋のジャンルで多くの競合車種がありますが、EQCはルーフを低くした空力デザインを採用。テスラモデルX、ジャガーi-Paceと同様の形状をしています。電気自動車のスペックで最も重要なものは「航続距離」。一回の満タン充電で何キロ走行できるかです。これは、結局バッテリーをどのくらい搭載するかと、車両の効率にかかってきます。そして車両の効率のうち最大のものが空力、すなわち空気抵抗となるのです。空気抵抗は、全面投影面積xCd値(ボディがどのくらい流線形か)で決まります。しかしファミリーを乗せて走行するSUVですから、横転を防ぐため幅は狭くできません。結果として、全面投影面積を下げるために全高を下げ、Cd値を良くするために後ろをさらに下げています。Cd値は0.30未満とされています。

そして肝心の航続距離は、当サイトでいつも使っている米国EPA値がまだ正式発表になっていないのですが、プレスカンファレンスの内容を聞いているとおおよそ200マイル=320km前後とのこと。NEDC基準では暫定450km。近年の電気自動車の基準である、普通に100km/hで高速道路を320km以上走行できる、という基準をしっかり満たしています。前後2モーターで統合出力は300kW(402馬力)・765Nmと、さすがに電気自動車らしい充分なスペック。サイズ的にGLCと同等くらいだと思いますが、例えばガソリンのMercedes-AMG GLC 43が270kW・520Nmですので、AMGモデルの3.0lツインターボを軽く上回るパワーなのですね。
※AMG GLCのガソリン最上位モデルは4.0lツインターボで375kW・700Nmを誇ります。
動力性能は0-100km/h 5.1秒。最高速度は180km/hであれ?と思いますが、これはリミッターにより制限されているそうです。またワンペダルドライビングをサポートしており、D Auto, D +, D, D -, D –の5種類4段階から回生レベルを選択できます。「D +」はコースティング、だんだん回生が強くなり、「D –」は停止までの強い回生ブレーキとなります。これで、停止まで回生ブレーキをサポートしているのはBMW i3、新型日産リーフにジャガーi-Pace、そしてこのメルセデスEQCと4車種になり、回生ブレーキで停止までサポートするのがだんだん一般的になってきたようです。なお、この回生モードの切り替えはステアリング後ろにあるパドルシフトで行うとのことで、ちょっとマニュアル感がある運転になりそうですね。

メルセデスEQC バッテリーモジュール
メルセデスEQC バッテリーモジュール
80kWhのバッテリーの内部構成は48セルモジュールが2つ、72セルモジュールが4つとのことで、合計384セル構成となります。電池は408V 210Aとのことですから408Vx210A/1000-80kWh=5.68kWhがバッファー(電池の容量を使わず、安全のために残しておく容量)となります。しかし408V??リチウムイオン電池のセルは直列と並列につながなければなりません。そして、もし同じセルを使うなら(バランスの関係からそのはず)、48セルモジュールも72セルモジュールも並列数は同じはず。仮に4並列(4Pと書きます)なら384/4=96直列(96S)。これだと通常は4.2V x 96 = 403.2Vと、リーフやテスラのバッテリーと同じ電圧になるはず。3並列にすると384/3=128Sで537.6V、さすがにこれはあり得ないので、おそらく96S4Pは確定と言えると思います。すると満充電時は408V / 96S = 4.25V。一般的なリチウムイオン電池は4.2Vまでしか充電できないのですが、4.25V基準のセルのようですね。
結論としては、48セルモジュールは12S4Pで50.4V、72セルモジュールは18S4Pで75.6V。これらを全部直列に接続して、96S4Pの電池パックを構成しています。写真には水冷システムは写っていないように見えますが、冷暖房とバッテリー温度管理兼用として、1基のヒートポンプと2基のPTCヒーターが搭載されており、バッテリーは強制水冷となっています。バッテリーの排熱も利用できるようなバルブを備えており、このあたりのシステムはテスラと同等以上でかなり効率が高いものになっています。
※テスラは暖房時はヒートポンプを使いません。

メルセデスEQC 充電ポート
メルセデスEQC 充電ポート
充電に関してですが、やはり水冷のオンボードチャージャーが搭載されており、最大7.4kWとなっています。日本では200V 30A(6kW)程度までサポートされそうで、だんだん6kW以上の普通充電が一般的になってきました。
急速充電は、CCS 2(欧州プラグ)、CCS 1(米国プラグ)、日本向けはチャデモ、中国向けはGB/Tと四種類のプラグに対応します。最大充電電力は110kW。充電時間は10%-80%までで約40分で充電できるとのことで、テスラのスーパーチャージャーとほぼ同等の充電速度を実現していると言えそうです。

メルセデスEQC インスツルメントパネル
メルセデスEQC インスツルメントパネル
最近のプレミアムカーにはつきものの運転支援機能についてですが、実は今回のリリースではきちんとは説明されていません。メルセデスにおいて運転支援機能(Driver Assistance Features)はアクティブディスタンスアシスト・ディストロニックとアクティブステアリングアシストの二つで構成されており、アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックがアダプティブクルーズコントロール(車間距離維持)、アクティブステアリングアシストがオートステアリング(車線維持)となります。リリース文では車間距離維持についてはかなり触れていますが、なぜか車線維持については記載なし。とはいえ今後はCクラスにもオートステアリングが搭載される予定ですので、GLC相当であるEQCにも搭載されるとみてよいでしょう。

EQC発表に当たり、ダイムラー会長でありメルセデスベンツのCEOであるツェッチェ氏の発言を引用しておきます。

“With the EQC – the first fully electric SUV from Mercedes-Benz – we are flipping the switch. Electric drive is a major component in the mobility of the future. We are therefore investing more than ten billion euros in the expansion of our EQ model portfolio, and more than one billion euros in global battery production.” Dieter Zetsche, Chairman of Daimler AG and CEO of Mercedes-Benz Cars

メルセデス・ベンツの初めての完全電気自動車SUVであるEQCを持って、我々は(電動化への)スイッチを入れた。電動化はモビリティの将来において主要な要素だ。そのためEQシリーズのモデルを開発・拡大していくために100憶ユーロ(約1兆3000憶円)を投資し、グローバルのバッテリー生産にも10億ユーロ(約1300億円)を投資している。

最後にメルセデスEQCと、おそらく直接の競合であるジャガーi-Pace、そして若干サイズの大きいテスラモデルX 75Dの比較を載せておきましょう。

 メルセデスEQCジャガーi-PaceテスラモデルX 75D
新車価格推定70,000ユーロ
(約907万円)
$69,500
(約775万円)
10,842,000円(税込)
バッテリー容量80kWh90kWh75kWh
EPA航続距離321km386km383km
システム最大出力300kW294kW356kW
システム最大トルク765Nm696Nm559Nm
全長 x 全高 x 全幅4761 x 1624 x 1884mm
※おそらくミラー抜き
4682 x 1565 x 2011mm
※ミラー閉じ
5037 x 1680 x 2070mm
※ミラー閉じ
車両重量2425kg2208kg2330kg
駆動方法四輪駆動四輪駆動四輪駆動
定員5名5名7名
0-100km/h5.1秒4.8秒5.2秒
急速充電110kW CCS
10-80%まで40分
100kW CCS
80%まで40分
105kW(100Dは120kW)スーパーチャージャー
80%まで40分
※実車では50分程度

メルセデスEQCとIONITY充電スタンド
メルセデスEQCとIONITY充電スタンド
まあ何とも似たようなスペックになったものですね。この三車種で大きく違うのはおそらく航続距離と、充電ネットワーク。i-PaceとモデルX 75Dは似たような航続距離(バッテリーはモデルXのほうが16%小さい)ですが、EQCは暫定とはいえモデルXより多くのバッテリーを搭載しているにも関わらず、航続距離は16%ほど少なくなっています。これはモデルXのCd値が0.24、EQCのCd値が0.30(以下)の違いによるものかもしれません。また充電ネットワークについてですが、EQCの急速充電100kWは当然ですが、110kW以上のCCS・チャデモ規格の充電ネットワークに依存します。欧州ではIONITYが、米国ではElectrify AmericaがCCSの充電ネットワークの構築を行っていますが、現時点(9/5現在)でIONITYは欧州で6か所、米国で12か所。対するスーパーチャージャーは全世界で1,332か所(日本国内に18か所)。EQCもi-Paceも既存の50kW充電スタンドを利用できるとはいえ、当然充電速度は半分になります。モデルXでも既存の50kW充電スタンドを利用可能です。
これからのIONITY, Electrify Americaの投資に期待するとともに、日本国内での超急速充電網はどうなるのか、ちょっと心配でもあります。

メルセデスEQCは来年2019年から製造を始め、発売は2020年になる模様です。

メルセデスEQC 走行中(ハイテックシルバー)
メルセデスEQC 走行中(ハイテックシルバー)

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