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3代目新型「日産リーフ」は470万円スタートと予想/アメリカの価格から日本の価格とコスト競争力を考えてみた

3代目新型「日産リーフ」は470万円スタートと予想/アメリカの価格から日本の価格とコスト競争力を考えてみた

日産がアメリカで新型リーフの価格を公開。なんと、現在発売されている新車EVで最安となる価格設定を実現してきました。もうすぐ発表されるであろう日本国内の価格を予想しつつ、競合車種と比較しながらその魅力や競争力を考察します。

目次

S+グレードはアメリカで最も安価な新車EVに

まず、アメリカ市場における新型リーフのグレード別価格設定とEV性能を確認しておきましょう。

バッテリー容量は55kWh(使用可能なネット容量は52.9kWh)と77kWh(ネット容量75.1kWh)の2種類が設定されます。ただし、今回発表されたのは77kWhバッテリーを搭載するS+、SV+、そして最上級Platinum+の3グレードの価格です。55kWhのSグレードは2026年春以降に納車スタートということで、表内で紹介したのは参考としての予想価格です。

注目すべき価格設定。まず最上級Platinum+グレードが38,990ドル(約575万円※1ドル147.5円で換算)、中間グレードのSV+グレードが34,230ドル(約505万円)、そしてS+グレードが29990ドル(約442万円)を実現してきました。実は現在、インフレやEV関連の原材料コスト高騰によって、アメリカ国内で3万ドル以下で発売中のEVは存在していません。よって新型リーフは、アメリカ国内で発売されている最も安価なEVとなっています。

一充電走行距離はEPA基準で最長488km

77kWhという大容量バッテリーが搭載されるS+グレードの一充電走行距離(航続距離性能)は実用に近いとされるアメリカのEPA基準で488kmを実現します。とはいえ19インチタイヤを装着するPlatinum+グレードでは417kmに低下することから、日本国内におけるグレード別の装着タイヤやホイールの種類も気になるところです。

ちなみに日本のWLTCモードにおける航続距離は最長で600km超とアナウンスされており、約700kmともいわれています。たとえばテスラ モデル3ロングレンジが706kmであることをイメージしてみると、初代リーフのような航続距離の制約からは解放されて、途中充電をあまり気にせず長距離を走行できるようになったといえます。

急速充電はNACSポート搭載で最大150kWに対応

北米仕様の新型リーフの急速充電はNACS(North American Charging Standard)ポートを搭載。最大150kWに対応し、SOC 10-80%を約30分で充電可能となっています。充電ポートはフロント側の運転席側フェンダーに普通充電用、左側に急速充電用のポートが装備されており、普通充電用のポートは従来通りJ1772(タイプ1)となっています。

日本仕様の急速充電はCHAdeMO規格になるでしょうから、北米仕様と同様の最大150kW対応になるかどうかは未知数です。

普通充電ポート。

動力性能や積載容量は先代モデルと同等

動力性能は最新の3-in-1パワートレイン(モーター・インバーター・減速機を一体化して小型・高剛性化を実現)を採用しており、0-100km/h加速は7.6秒(77kWh搭載の全グレード共通)と、重量がだいぶ増えているものの先代モデルと同等の加速性能を実現しています。

収納スペースは420Lのトランク容量と、先代モデルと全く同等の積載性を確保しています。最小回転半径は5.3m、最低地上高は135mm(アメリカ仕様)です。

日本発売の価格を予想

これまでのリーフは北米市場分をアメリカ国内で生産していたものの、新型では日本の栃木工場で日本市場分と一括生産するという体制に変更されています。よって輸送費とともにトランプ政権による合計15%の関税が適用されることを踏まえると、日産がアメリカ市場における新型リーフに強気の価格設定を行ってきたことがわかります。

ちなみに先代リーフでは、40kWhバッテリー搭載グレードが28,140ドルであり、今回の新型ではバッテリー容量や装備内容が大幅に充実したにもかかわらず、ほとんど値上げしてこなかったことになります。しかも2026年春に投入予定のSグレードはさらに値下げされ、おおよそ28,000ドル弱程度で発売される見込みです。つまり先代モデルよりも実質的に値下げされる見通しなのです。

日産としてはトランプ政権下ということもあり、自動車の追加関税12.5%分をしっかりと回収するためにリーフを不用意に値上げしたりすると、トランプ政権から目をつけられることを恐れて、強気の価格設定を行ってきた可能性が考えられそうです。

とはいうものの、このアメリカ国内で強気の価格にする分だけ、日本国内における価格設定が想像以上に高額となってしまうのではないかという懸念が出てきます。

アリアを参考にすると470万円〜程度か?

ここで参考になるのが日産アリアの価格でしょう。アリアはリーフと同様にアメリカ市場分も栃木工場で生産しています。現在アリアは4万ドル(約590万円)未満で発売中であるものの、アリアに対してはキャッシュインセンティブとして1万ドル分の購入補助が適用されます。よってアリアは現在アメリカ市場で3万ドル(約442万円)未満で購入することができます。

日産アリアの生産ライン。

一方、日本国内でアリアは660万円から発売中であり、日米の価格差は200万円以上。キャッシュインセンティブを考慮に入れずとも日本よりおよそ70万円も安価にアメリカで発売されているのです。

アリアの日米価格差を踏まえると、新型リーフはアメリカ価格の50〜60万円程度増しとなり、エントリーグレードの55kWhバッテリー搭載の「B5」グレードでも、400万円台後半、具体的には470万円程度からのスタートになるのではないかと推計できます。89万円のCEV補助金が新型リーフにも適用できたとすると、実質購入金額でなんとか300万円台に乗せてくるようなイメージです。

ちなみに、日本での新型リーフのモデル名は、55kWhバッテリー搭載モデルが「B5」、77kWh搭載モデルが「B7」となる見込みです。77kWhバッテリー搭載のエントリーモデルとなるS+のアメリカ価格は日本円で約442万円ですから、同様に50〜60万円程度増しにすると、日本での「B7」の価格は500万円前後〜と予想できます。

日本市場での競争力は?

次に、現在までに発表されている情報を総合して、新型リーフが日本国内で競合と目されるスズキe VITARA、BYD Atto 3、ヒョンデKona、ボルボEX30などのコンパクトSUVと比較してどれほどの競争力を実現しているのかを比較していきましょう。

電費性能や急速充電性能は新型リーフが一歩リードか

すでに電費が一律で判明済みの欧州WLTCモードを参照すると、リーフB5が最も優れた電費性能を実現しており、効率性の高さがアピールされています。さらに急速充電性能も105kWに対応しており、競合をリードしています。

車両サイズについて、とくにコンパクトな印象があるe VITARAと比較しても、実はあまり差がないことが見て取れます。とはいえ収納スペースにはだいぶ差がついていることから、後席空間をはじめとする車内スペースがどれほどの差を感じるのか、実用性については両車をそれぞれ比較する必要がありそうです。

価格の割高感は否めない?

そして値段設定について、やはり同列に比較するとe VITARAが国産EVとして、輸入EVに引けを取らないコスト競争力を実現していることがわかります。もしリーフB5の値段設定が予測通りの470万円程度だった場合、CEV補助金を含めてATTO3やKONA Voyageと同等の実質購入金額となりそうです。

とはいえBYDやヒョンデ大幅値引きキャンペーンなどを直近で実施しており、実質380万円だと競合と比較してやや割高感が強いのは否めないでしょう。

ここで予想する470万円という価格設定を評価する上でポイントになるのが標準装備内容です。すでにアメリカ市場のグレード別の詳細な標準装備内容は公開済みで、エントリーグレードのS/S+グレードの装備内容を、箇条書きでピックアップしてみます。

●215/55R18のスチールホイール。
●車載スクリーンは12.3インチのデュアルディスプレイ。
●USB Cポートはフロント側に2つ装備、リアは非搭載。
●ワイヤレス充電は非搭載。
●トランクは手動開閉。
●シート素材はファブリック。
●前席は6方向手動調整。
●リアシートも含めてシートヒーター非搭載。
●ステアリングも手動調整、ヒーターも非搭載。
●アンビエントライトは白の一色のみ。
●ヒートポンプやバッテリーヒーターは非搭載。
●ガラスルーフは非搭載。
●プロパイロットは標準装備。
●V2L機能はAC充電口から最大1.5kW対応。
●音響システムは4スピーカー。
●リアサスペンションは先代モデルのトーションビームからマルチリンクに変更。
●エアバッグは10エアバッグシステム。

装備内容を細かく見ていくと、エントリーグレードであることを踏まえても装備内容が貧弱であることを感じます。

バッテリー容量としては55kWhで必要十分だと考える人であっても、こうした装備の貧弱さによってSグレードをチョイスすることが実質的に難しくなるわけです。

はたして日本国内仕様の装備内容も同じようになってしまうのか。個人的には、運転席のパワーシートやシートヒーター、ハンドルヒーター、ヒートポンプシステムとバッテリープレコンディショニングシステム、プロパイロットくらいはS/X/Gグレードの全グレード標準装備にしてくれないと、基本的な装備内容を網羅する競合と比較しても勝負にならないと思います。

仮にB5が470万円程度からの価格だとしても、上記の装備内容が標準で搭載されるかどうかが、日本国内で新型リーフのコスト競争力を評価する際の最も重要な指標になると思います。

日本仕様の価格発表はもう近い?

このように、新型リーフのアメリカ国内における値段設定が判明し、非常に競争力のある値段設定を実現してきた一方で、日本国内における値段設定、標準装備内容がどれほど充実しているのかにますます注目が集まっています。新型リーフは10月下旬のジャパンモビリティショーまでに日本仕様の価格などが正式発表されて、2026年初頭に納車がスタートすると言われています。

とはいえ直近の一部報道によれば、AESCからのバッテリー供給制約の問題で、この秋に生産される新型リーフが大幅に減産されるとも伝えられています。アメリカ市場向けの供給を優先しようとすると日本導入が後ろにズレたり、納期が長期化する恐れも考えられます。こうなると今年度のCEV補助金が適用できなくなることから、実質380万円という予測の前提が崩れることになります。10月4日に開票を迎える自民党総裁戦において、候補者によってはEVに対するCEV補助金が減額される可能性も出てきています。新型リーフの購入をすでに固めていた方は最新情報に注視していく必要があるでしょう。

文/高橋 優(EVネイティブ※YouTubeチャンネル

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この記事を書いた人

免許を取得してから初めて運転&所有したクルマが電気自動車のEVネイティブ。

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