ジャパンモビリティショー2025でKiaの電気自動車「PV5」の日本発売が発表されました。商用バンの「カーゴ」と後部座席を備えた「パッセンジャー」をラインナップ。価格は589万円~。ラストワンマイルの配送やキャンピングカー、キッチンカーなどに活躍しそうな、待望のワンボックスEVです。
久しぶりに日本に登場したワンボックスEV

PV5カーゴ
スムーズで力強い加速やメンテナンスの面倒が少ないこと。拠点に充電用コンセントがあればガソリンスタンドに行かずとも空き時間にエネルギーを補給できることなどなど。EVとしてのメリットを最大限に発揮できるのが、商用バンなどのワンボックス、そして畑や港で活躍する軽トラックだと思っています。
EV時代の到来が当然のこととなった印象があるジャパンモビリティショー2025(JMS)のプレスデー初日、KiaのワンボックスEV「PV5」の日本発売が発表されました。日産「e-NV200」が2019年に日本向けの生産・販売を終了して以来、日本ではまったく選択肢がなかったワンボックス(ミニバン)EVが久しぶりに登場した(正確には ID.Buzzに続いて、ですが)のです。

JMSでカンファレンスのプレゼンテーションを行うKia PBVジャパンの田島社長と、PV5パッセンジャー。
PV5は韓国のKiaがPBV(Platform Beyond Vehicle)としてグローバル展開している次世代EVバンのシリーズで、日本向けには商用バンの「PV5カーゴ」と、後部座席を備えた乗用の「PV5パッセンジャー」がラインナップされます。
【関連記事】
KiaのEVバン『PBV』が日本上陸へ/日本の商用電気自動車普及に向けた新しい風(2024年10月8日)
PBVシリーズはEV専用設計で自由度の高いプラットフォームを活用して、用途に合わせたカスタマイズに対応できるのが特長です。JMSのブースでも、PV5パッセンジャーをベースにした車いす仕様「PV5 WAV(Wheelchair Accessible Vehicle)」や、PV5カーゴにゴージャスな後部室内空間やキッチンスペースを備えたキャンピングカー仕様が展示されていました。


ちなみに、パッセンジャーはテールゲートが跳ね上げ式、カーゴは観音開きになっています。

カーゴのリアゲートは観音開き。荷物の積み降ろしには両方開ける必要がありそうです。
そもそも、カスタマイズ対応の自由度の高さを特長としているだけに、キャンピングカーやキッチンカーのベース車両にうってつけ。今年6月に発売されたフォルクスワーゲン「ID.Buzz」(関連記事)とともに、街やキャンプ場の風景を彩るEVになってくれるポテンシャルを感じます。

キャンピングカー仕様の室内。ゴージャスです。
価格は、期待より100万円以上高かった……

搭載する駆動用バッテリーは、パッセンジャーが51.5kWhまたは71.2kWhの三元系(NMC)リチウムイオン電池で、カーゴには43.3kWhリン酸鉄(LFP)リチウムイオン電池のグレードも用意される予定とのこと。
一充電走行距離(WLTCモード)は、71.2kWhバッテリー(ロングレンジ)のパッセンジャーが521km、51.5 kWhバッテリーのカーゴで379km(71.2kWhモデルは528km)と発表されています。
気になる価格は、PV5カーゴが589万円~(価格はすべて税込)。PV5パッセンジャーは679万円~と発表されました。展示されていたロングレンジのパッセンジャーには769万円という価格が表示されていて、679万円は51.5 kWhモデルの価格とのことでした。カーゴの価格も51.5 kWhモデルです。
ということは……。EVsmartブログ恒例のコストパフォーマンスを試算してみると、カーゴが「589万円÷51.5kWh=約11.4万円/kWh」、パッセンジャーは「679万円÷51.5kWh=約13.2万円/kWh」。ロングレンジモデルで「769万円÷71.2kWh=約10.1万円/kWh」ということになります。
先日、新型bZ4Xの記事で紹介したように、乗用EVの界隈では「8万円/kWh」あたりが相場になってきています。グループであるヒョンデのIONIQ 5 は、Lounge AWDという上級グレードでも約7.3万円/kWhというコストパフォーマンスを実現しています。仮に、PV5カーゴが8万円/kWhだったとすると「8万円×51.5kWh=412万円」なので、期待していたよりも「100万円以上高かったなぁ」というのが正直な印象ではあります。
<参考グラフ>

とはいえ、競合(?)車種のID.Buzzは900万円~と高額であり、ことに事業用としての登録であれば環境省などの手篤い補助金が活用可能になるはず(CEV補助金を含めて補助金額は未定)。PV5が現在の日本市場におけるワンボックスEVとして強力な選択肢となることは間違いありません。
クルマとしての基本性能やEVとしての装備に信頼感

JMS会場で実際に見て触れたPV5。運転席まわりの細かな収納スペースなどがよく工夫されていて、しっかり作り込まれていることを感じました。ステアリングの奥に配置されたセレクターレバーや空調関連の物理スイッチなど、クルマとしてのUIは私のマイカーであるヒョンデKONAと共通する点が多くありました。

運転席前のダッシュボードにも収納が。
日本国内で配送業者などが商用EVバンを導入する際、今までは中国メーカーからOEM供給を受けたモデルの選択肢があったものの、ブレーキ性能や乗り心地など、クルマとしての基本性能はそれほど高くはない印象がありました。
実際の走行性能や航続距離&充電性能などは改めて試乗できる機会を待ってレポートしますが、PV5を作るKiaは、トヨタ、フォルクスワーゲンに次ぐ世界第3位の乗用車販売台数を誇る Hyundai Motor Group の中核をなす自動車メーカーです。ZEVのみのラインナップで日本市場に再進出したヒョンデのEVと同等の基本性能を備えているとすれば、毎日の仕事で使う、また自然の中でレジャーを楽しむワンボックスEVとして、日本市場ではまさに独走のクオリティ&コストパフォーマンスということになるでしょう。

運転支援のフィーリングはお好み。
マイカーとしてKONAに乗っていて感じているのが、日常使いで満足度が高いクルマとしての基本性能の高さです。高級EVと比較すれば搭載するバッテリー容量や遮音性、足回り性能の上質感などはおよばないものの、ADASの信頼感は1000万円クラスのEVにも匹敵する高さです。
ヒョンデのEV車種と同じく、日本仕様のPV5はV2H(Vehicle to Home)やV2L(Vehicle to Load)も標準装備とのこと。カーゴの荷室にはしっかりとAC100Vのコンセントが装備されていました。屋外でキャンプする時、あるいはキッチンカーの屋台として活用する場合にも、気軽に使えるAC100V電源は大活躍するでしょう。

カーゴの荷室に設置されていたACコンセント。

センターコンソールにもコンセント!
大手商社の双日が設立した「Kia PBV ジャパン」が販売
PV5は、大手商社の双日が Kia PBVシリーズの販売代理店として設立したKia PBV ジャパン株式会社が販売します。発売は2026年春の予定。JMSのプレスカンファレンスで、Kia PBV ジャパンの田島靖也社長は、2026年に1000台、2年目の2027年には2000台の販売を目指すことを示しました。販売拠点は初年度に全国8カ所のディーラーを開設。100カ所以上のアフターサービス拠点を設ける計画です。
まだ正式な日本発売までは半年ほどもあるにも関わらず、今回のJMSではBYDやヒョンデと並んで大きなブースを出展して気合い十分。PV5が、日本のEV普及に新しい風をもたらしてくれることを期待しています。
取材・文/寄本 好則






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