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世界EV販売レポート ― 過去最高の月を記録!!! 【CleanTechnica 翻訳記事】

世界EV販売レポート ― 過去最高の月を記録!!! 【CleanTechnica 翻訳記事】

グローバルの市場で電気自動車(EV)販売はどんな状況なのでしょう。アメリカのメディア「CleanTechnica」が紹介している世界のEV販売レポートを全文翻訳でお届けします。2025年9月はプラグイン車の登録台数が過去最高を記録しました。

【元記事】Global EV Sales Report — Record Month!!! by José Pontes on 『Clean Technica

目次

9月の登録台数は過去最高を更新

2025年9月のプラグイン車(EVとPHEV)登録台数は210万台を超え、過去最高を更新しました。BEV(純電気自動車)は、世界で販売された新車のうち5台に1台を占めています。

2025年9月の世界のプラグイン車(BEV+PHEV)登録台数は、2024年9月と比べて22%増加しました。登録台数は210万台を超え、過去最高を更新しています。BEVは前年比32%増の140万台という記録的な数字に達した一方、PHEV(プラグインハイブリッド車)はわずか6%増の約70万台にとどまりました。

ただし、この成長鈍化は中国におけるPHEV需要の減速だけが原因であることは強調すべきです。もし中国を集計から除けば、PHEVの販売は実際には44%増となり、20万1千台という過去最高を記録します。また、9月の米国での販売ピークも影響していません。中国と米国の両方を除いた場合、PHEVはさらに速い50%の成長となります。

つまり、中国ではPHEV販売が「ピーク初期」に差し掛かっているように見えるものの、世界の他の地域では、依然としてPHEVが成長できる余地が大きいということです。

最終的に、BEVは自動車市場全体の21%(PHEVを含めれば31%)を占め、年初来ではBEVシェア17%(PHEV+BEVでは25%)という結果になっています。

9月の世界EV販売トップ20ではテスラが1位と2位を独占

9月のベストセラーはテスラが1位と2位を獲得したことが大きなニュースですが、それだけではありません。両モデルとも「9月として過去最高」の販売台数を記録しました。首位のModel Yは約14万1千台、Model 3は6万7千台を超えています。クロスオーバーのModel Yは前年比16%増(そして2023年3月以来の最高記録)、セダンのModel 3は前年比8%増(2023年6月以来の最高記録)となりました。

それでは、毎四半期が新記録の連続だった、2023年の古き良き時代に戻ったのでしょうか?

まあ……そこまで単純ではありません。実際、テスラの米国国内市場(7,500ドルの税額控除終了により第3四半期に販売ピークが発生)を除外して見ると、Model Yは約7%の成長でプラスを維持したものの、Model 3は前年比15%以上の減少となっています。

つまり、Model 3は徐々にモデル末期に近づいてきており、一方のModel Yは1月のリフレッシュの恩恵をまだ受けています。ただ、もしテスラが何もしなければ、来年はこのクロスオーバーも下降線に入っていたでしょう。

しかしテスラは止まりませんでした。Model Yには7人乗り仕様が登場し、現時点では中国限定ですが、世界展開されても全く不思議ではありません。また、両モデルにより安価な「スタンダード」仕様も投入されました。これで販売減少を止められるのか?それは分かりません。とはいえ、もし今後も販売が落ち続けるようなら、テスラに向けて提案したいアイデアがあります。

テスラは、両モデルにさらに安価で、必要最低限だけを備えた“超ベーシック版”を作ることだってできます!

名前はこうです――「サブスタンダード」。
※訳注:英語のサブスタンダードは「標準以下」や「低水準」といった、期待した水準に達していないニュアンスを含む。

やることは分かっていますよね。小さなホイール、小さなバッテリー、出力の弱いモーター、手回し式の窓、スクリーンの撤去(スマホのTeslaアプリを使えば問題ありません)、断熱材の削除(EVなので断熱は不要です!)、そしてむき出しの金属(車内の色が外装と同じになる ― これ、最高にクールではありませんか?)、など、など、など。

こうした仕様は、Uberドライバーにとても喜ばれるでしょう…。

話が脱線してしまいましたね。

5位から12位までBYD艦隊が並ぶ

その他の競合を見ると、今回の銅メダルは小型のWuling Mini EVが獲得しました。登録台数は5万4千台超えで、2021年12月以来の最高記録となっています。

その結果、Geely Xingyuanはトップ3から外れましたが、販売は引き続き増加しています。また、一部市場での輸出が始まったことで、第4四半期を通じてさらに成長すると見られています。したがって、2026年にかけてトップ3の候補になるでしょう。

この小型Geelyの下には、いつものBYD艦隊が並び、5位から12位までのすべての順位を深センのBYDが占めています。

その中でも特に注目すべきなのは、BYD Songの失速です。現在は5位で、販売台数は4万6千台、前年比28%減となっています。国内市場での販売崩壊は、急増する輸出台数によって見えにくくなっており、今やこのミドルサイズSUVの販売の53%が海外向けとなっています。

ただ、BYDにとって暗い話題ばかりではありません。新型のBYD Sealion 06は約3万1千台の登録を記録し、10位のBYD Yuan Upも過去最高となる2万9,693台を達成、11位のBYD Dolphinも2023年12月以来の最高となる2万8,422台を記録しました。

そのほかの注目モデル

そのほかにも、触れておくべきモデルが4つあります:

● 見た目がキュートなChangan Luminは、2万3,575台という過去最高の記録となり、13位に入りました。

● Xiaomiのスポーツ系クロスオーバー「YU7」は順調に販売を伸ばし、2万2,387台で14位に到達しました。

● VW ID.4は、米国市場での販売ピークに支えられたおかげで約2万台を記録し、2023年12月以来として最高の月となりました。このドイツ製クロスオーバーは、アメリカでの(EV税額控除の終了による)販売ラッシュの恩恵を受けた複数モデルのひとつです。

● 最後に、MG 4は登録台数が急増して1万6,342台となり、同車として過去最高を更新し、19位にランクインしました。

これはなかなか興味深い話で、「同じモデルを世界のどこでも成功させるのがいかに難しいか」をよく示しています。MG 4が2022年に登場した当初は、シャープなデザインにRWD(後輪駆動)/AWD(四輪駆動)を持ち、ハンドリング性能も優れていたため、ヨーロッパではすぐに成功を収めました。要するに、もしフォードが電動Focusを作っていたら占めていたかもしれない市場のポジションを、MG 4が見事に埋めたのです。

ところが、アジア、特に中国での評価は予想外に低いものでした。そこで、初代モデルの登場から3年たった今年、MGはFWD(前輪駆動)のみの新しいプラットフォームを採用し、室内空間や伝統的なデザインを重視した全く新しいモデルを開発しました。これが中国の消費者に刺さり、販売がかつてないほど急増したのです。

さて、ここで気になる疑問が生まれます:MGは次にどう動くのでしょうか? 新型モデルを主力として前世代を置き換えるのか(その場合、ヨーロッパなどの市場で販売が落ちるリスクがあります)、あるいは前世代モデルを人気のある地域では残すのか、それとも両方を併売し、新型には別の名前を付けるのか。まさに、決断のときです…。

Hyundai IONIQ 5 などもアメリカで過去最高を記録

ランキング外での注目点としては、まずDeepal S05の継続的な伸びがあります。コンパクトクロスオーバーである同モデルは1万2,378台に達しました。また、NIOの大衆向けブランド「Onvo」が大型SUV L90を1万997台販売し、スタートアップメーカーにとって本格的な量販モデルになりつつあります。

アメリカではEV税額控除の終了を前に販売ラッシュが起きており、その影響で一部モデルが9月に記録的な台数を叩き出しました。たとえば、Hyundai IONIQ 5は過去最高の1万3,484台、Audi Q6 e-tronも過去最高となる1万1,303台を記録しています。

では、アメリカの地元メーカーはどうなのか? というと、基本的に北米だけでEVを販売しているため、世界ランキングに姿を見せることができません。さらに、Ford Mustang Mach-Eのような世界販売モデルであっても、9月は9,274台にとどまり、注目される基準とされる“1万台ライン”に達していません。

年初来ランキングで Geely Xingyuanが4位に浮上

年初来のランキングでは、Tesla Model YとBYD Songがそれぞれの順位を維持しており、今年も例年どおり1位と2位の位置で終える見込みです。

その下では、3位のTesla Model 3が9月の時点で4位のGeely Xingyuanに対して十分な差を確保し、年末の最後の四半期で守りきれそうに見えます。確かに、2025年の残りの月ではModel 3の販売は届かないでしょうが、4万7千台というリードは、小型ハッチバックのXingyuanを寄せ付けないのに十分かもしれません。GeelyのEVは、Tesla Model 3の「表彰台ポジション」を奪いに行けるのでしょうか? それを賭けるなら、判断は11月末になりそうです。

万が一そのような事態が起きれば、Model 3は2018年以降で初めて表彰台を逃すことになります…。

4位以降では、最初の順位変動はBYDに有利に働きました。BYD Dolphinが兄弟モデルのYuan Plusと順位を入れ替え、ハッチバックのDolphinが10位に上昇しました。また、Yuan Upは過去最高の販売を記録したことに加え、Li Xiang L6の販売が鈍かったことも追い風となり、1つ順位を上げて13位に浮上しました。

その他の順位変動としては、VW ID.4が18位から16位へジャンプアップし、このドイツ製クロスオーバーは今年のトップ20入りを確実にしつつあります。また、Changan Luminもいくつか順位を上げ、この段階で17位にランクインしています。

上位のブランドとOEM ― Leapmotorが輝く

9月もBYDは首位の座を維持しましたが、PHEVの販売が引き続き減少したため、販売台数は前年比で減少しました。BYDはピークに達したのでしょうか? 少なくともBYDのPHEVはピークを迎えたように見えます。同社のPHEV販売は前年比26%減となり、これで6か月連続の減少となりました…。

時間が経てば分かりますが、長期的には、単独のOEMが市場シェア10%を超えることはないと私は思っています。現在のBYDは、その2倍のシェアを持っていますが……。

予想どおり、表彰台に残った2位のテスラは好調で、前年比11%増の記録的な21万2,401台を登録しました。これは、米国国内市場での販売ラッシュによるところが大きいでしょう。一方、3位のGeelyも再び6桁を超え、12万台という過去最高を達成しました。

4位のWulingは8万3,000台で、今年最高の結果となりました。続くVWは6万7,672台を記録し、2022年12月以来の最高値となっています。そのすぐ後ろにつけているのが、2025年で最も勢いのある新興メーカーLeapmotorです。

今年は他社を次々と飛び越えるように伸びており、9月は前年比97%増の6万6,657台を記録しました。このペースなら、2026年には月10万台の壁を突破しても全く驚きません。

8位のXiaomi、9位のXpengも、Leapmotorに負けじと急速に増加しており、上昇傾向が続いています。

ドイツ御三家も好調で来年は勝負の年に

そのほかでは、11位のメルセデスが過去18か月で最高の結果を出しました。このドイツメーカーはいま、攻勢に出ています。新型のCLA BEVが増産を始め、来年にはGLCとCクラスのBEVも登場するため、三つ星ブランドにとって2026年は大きな成長の年となりそうです。またBMWも2026年に大きな転換期を迎えると言われており、来年はこの2つのプレミアムドイツOEMにとって勝負の年になるでしょう。

同じくドイツ勢では、15位のアウディが3万3,539台という過去最高を記録しました。これはアメリカでの販売ラッシュの影響が大きく、同じくその追い風を受けた韓国メーカーのHyundai(12位、3万4,569台)とKia(16位、3万3,066台)も記録を更新しています。

17位のフォードも3万2,055台という過去最高を記録し、こちらもアメリカの追い風の恩恵を大きく受けた形です。

その下では、MGが3万2,038台という過去最高を記録し、珍しく18位でトップ20入りしています。これは新世代MG4が中国で好意的に受け入れられたことが大きな要因でしょう。

トップ20の外では、記録的な結果を出したブランドが3つあります。まず、Geely傘下のLynk & CoはSUVの成功に支えられ、2万6千台超を納車しました。同じくSUVに強いブランドであるBYDのFangChengBaoも、2万4,121台という過去最高を記録しています。

さらに、VW傘下でコスパ重視のブランドであるSkodaも、2万1,073台という過去最高を記録しました。そのうち1万427台は好調なElroqで、これによりフォルクスワーゲングループ全体としても記録的な月となりました(9月だけで14万8千台超を登録)。

年初来の順位表では、上位について特に大きな変化はありません。現在減速傾向にあるとはいえ、BYDは他社を大きく引き離しています。2位のテスラも3位のGeelyに対してしっかりとしたリードを持っており、Geelyも4位のWulingに対して同様の優位性を保っています。

2025年の表彰台は決まったようなもの

つまり、今年の表彰台はすでに固まったようなものです:

1位/BYD
これで4年連続の世界販売トップとなり、2015年の初受賞以来では通算7回目になります。
2位/テスラ
テキサスのこのブランドは、4年連続となる銀メダルを獲得します。
3位/Geely
信じ難いかもしれませんが、これがGeelyにとって世界販売での初めての表彰台になります。きっと、今後も続くはずです…。

テスラの実績について補足すると、年初来の販売は前年比6%減となっています。このペースだと、テキサスの同社は年間約167万台で終わる見込みです…そして、これは2年連続の販売減少になります。

しかも、これは第4四半期に予想されているアメリカでの販売減少をまだ考慮していません。

テスラが巻き返すために必要なのは……

2026年は巻き返せるのでしょうか?

そうですね……スタンダード(そしてサブスタンダード)の追加よりも、テスラには2つ必要なものがあります。「量販モデル」と、「完全新設計のModel 3/Y」です。

前者については、テスラは2人乗りCybercabにステアリングとペダルを付ける可能性を示唆しています。しかし仮に実現したとしても、小型クーペはニッチな市場であり、テスラが必要としている「量販モデル」にはなりません(もちろん、第二世代ロードスターほどニッチではありませんが、それでも年間10万台に達するだけで大仕事になるでしょう)。

テスラが必要としているのは、後部座席と2つのドアを追加し、本格的なハッチバックにすることです。しかしそれを実現するには、まずペダル付きCybercabが2026年に発売される必要があります(これ自体かなり不確実です)。そうなると、ハッチバック版が登場するのはおそらく2028年頃になります。

その頃には、Model 3は11年目、Model Yは8年目になります。

そこで出てくるのが、2つ目の重要ポイント―新世代のModel 3/Yの必要性です。Model Yはまだ競争力がありますが、Model 3は販売減が示すように、古さが目立ち始めています。

つまり、テスラが今日からでも主力モデルの新世代開発に着手し、Cybercabより優先させない限り、2027年も2028年も販売減の年になり続けるでしょう。スタンダードやサブスタンダードをどれだけ追加しても、状況は変わりません。

Xiaomiがトヨタを抜いて12位に浮上

話をランキングに戻すと、順位変動は1つだけでしたが、これは大きな動きです。スマートフォンメーカーのXiaomiがEV販売を始めてまだ2年未満にもかかわらず、自動車大手のトヨタを抜いて12位に浮上しました。すごい話ですよね?

OEM別の登録台数を見ると、1位のBYDは引き続きシェアが下落し、9月は0.4ポイント減の22.3%となりました。それでも首位の座は依然として盤石です。8月の10.8%から10.7%にやや低下した2位のGeelyに対し、11.6ポイントものシェア差を持っています。

テスラは、アメリカでの販売ピークの恩恵を受け、シェアが8.3%に上昇しました。

とはいえ、8.3%という数字は前年比で2.8ポイントの大幅な減少であり、販売問題は依然として続いています。これとは対照的に、Geelyは2024年9月の7.9%から現在の10.7%へと上昇しており、真逆の動きを見せています。

表彰台の下では、4位のフォルクスワーゲングループ(+0.1ポイントで7.1%)と5位のSAIC(6.6%)がそれぞれの順位を維持しました。6位のChangan(4.5%)は差が大きいため、両社のトップ5の立場が脅かされることはなさそうです。

BEVに限定して見てみると……

BEVに限定した年初来のブランド別ランキングです。BYD(16.7%)は首位の座を安定して維持し、2位のテスラ(12.6%、8月比+0.5ポイント)は3位のGeely(10.8%、−0.3ポイント)に対して地位を維持しています。

とはいえ、この2社を1年前と比べると、状況は大きく変わっています。2024年8月時点ではテスラが17.5%で首位に立っており、3位のGeelyはわずか7.8%でした…。

4位はSAICがフォルクスワーゲングループを退けていますが、この2社の差は1万3千台ほどしかなく、年末に向けて争いがどのように展開するのか注目されます。

【訳者あとがき】

日本国内の販売数だけを見ているとEVは2023年をピークに減少しているかのような錯覚に陥りますが、世界全体では10月に過去最多を記録し、安定して成長していることがわかります。

国内メーカーが手をこまねいている間にも新興メーカーの成長は止まらず、2025年第3四半期に納車開始から僅か19か月で単期の黒字化を達成したXiaomiは、2025年1月から9月のEV販売数でトヨタを上回りました。

ここ数ヶ月は国内外を問わず多くの既存メーカーがEV計画の縮小を発表していますが、このような新興メーカーにシェアを奪われないため、そして日本の基幹産業を維持するためにも、迅速なキャッチアップに期待したいと思います。

翻訳・文/八重さくら

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この記事を書いた人

現在は主にTwitterや自身のブログ(エコレボ)でEVや環境に関する情報を発信。事務所の社用車として2018年にテスラ モデルX、2020年に三菱アイ・ミーブを購入し、2台体制でEVを運用中。事務所には太陽光発電とテスラの蓄電池「パワーウォール」を設置し、車と事務所のほぼすべての電力を太陽光で賄うことを目指しています。

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