BYDオートジャパンが国内導入モデル第5弾となるスーパーハイブリッドSUV「BYD SEALION 6」の日本発売を発表しました。価格はFWDが398万2000円。AWDが448万8000円と競争力の高い設定です。東福寺厚樹社長は「EVに不安を感じていた新しいユーザー層を切り拓きたい」と高性能PHEVモデル投入への期待を示しました。
ミドルサイズSUVのPHEVとして競争力高い価格設定

2025年12月1日、BYDオートジャパンがスーパーハイブリッドのミドルサイズSUV「BYD SEALION 6(シーライオン 6)」の日本発売を発表しました。前輪駆動(FWD)と四輪駆動(AWD)の2グレード展開で、同日から日本全国のディーラーで販売開始。納車開始はFWDが2026年1月末ごろ、AWDは2026年3月ごろを予定しています。
「スーパーハイブリッド」という呼称は、BYDが「電動主体」をコンセプトとして独自に開発、2008年のデビュー以来進化を続けてきた「DM-i(デュアル・モード・インテリジェンス)」搭載であることを示しており、外部から充電可能なプラグインハイブリッド(PHEV)を意味しています。
メーカー希望小売価格は、FWDが398万2000円(価格はすべて税込)と400万円以下を実現。AWDも448万8000円と、競合車種と比較して競争力が高いプライスとなっています。
| 車種 | BYD SELION 6 | TOYOTA RAV4 | 三菱 アウトランダーPHEV | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| グレード | ー | AWD | Z | M | G | P |
| 価格(円) | 3,982,000 | 4,488,000 | 5,661,700 | 5,294,300 | 5,910,300 | 6,344,800 |
| バッテリー容量 | 18.3kWh | 18.3kWh | 18.1kWh | 22.7kWh | 22.7kWh | 22.7kWh |
| 駆動方式 | FWD | 4WD | 4WD | 4WD | 4WD | 4WD |
日本での正式な認証取得は年明けになる予定のため、国のCEV補助金額は未定です。
なぜ、日本にスーパーハイブリッドを導入するのか
BYDオートジャパンでは今までの4モデル、ATTO 3、ドルフィン、SEAL、SEALION 7と、すべて完全な電気自動車=BEVだけを日本に導入してきました。スーパーハイブリッドという名のDM-i搭載モデル、つまりPHEVは日本初導入となります。
EV普及によって「地球の温度を1℃下げる」と明示するBYDが、なぜ先進国の中でとびきりEV普及が遅れている日本でPHEVを発売するのでしょうか。
発表会におけるBYDオートジャパン、東福寺厚樹社長のプレゼンテーションは、まさにそのポイントを説明する内容でした。
端的に紹介すると、日本で広がっているEVに対するイメージの「3つの壁」を打ち破るためです。
BYDでは、ブレードバッテリーなどの技術を活かしつつ、ラインナップするEV車種の性能や魅力を高め、EVへのネガティブなイメージに対して「大丈夫ですよ」というメッセージを発信してきました。

【BYDがEVで実現してきた「壁を打ち破る」ポイント】
航続距離
↓
400〜600km超の一充電走行距離を実現。
充電環境
↓
短時間で充電できる高い受電性能を実現。
車両価格
↓
300万円以下で買える手頃なEVラインナップを実現。
とはいえ、日本におけるEVへのネガティブイメージは、なかなか払拭されません。世間に広がる「EVはまだ時期尚早」という懸念を払拭するために、スーパーハイブリッド=PHEVのポテンシャルが有効ではないか。それが、BYDが日本でPHEVを発売する理由です。
【スーパーハイブリッドによって「壁を打ち破る」ポイント】
航続距離
↓
ガソリンと電気を合わせて1000km超という安心の走行距離。
充電環境
↓
市街地などでは電気での走行を主体にしながらガソリンでも電気でも走行可能。
車両価格
↓
バッテリーに強いメーカーだからこその車両価格を実現。
すでにEVの魅力をご存じの方にとって、航続距離や充電環境といった懸念の「壁」は案じるほどのことではないとご承知のはず。でも、EVが気になりつつ、こうした壁に阻まれている方の数は少なくありません。東福寺社長は、スーパーハイブリッド=PHEVというわかりやすいソリューションで壁を打ち破り、日本の電動車普及を促したい、そして、日本社会の脱炭素化実現に貢献したいという思いを語ってくださいました。
PHEVは一過性の技術ではない

大容量バッテリーとともにエンジン(どちらも重い!)を搭載するPHEVは、本格的なEVシフトに向けたどっちつかずのプロダクトではないかと、個人的に感じています。適度な走行距離性能と、それなりの充電環境さえあればEVで何も不自由はありません。逆に、PHEVでは走っている途中でエンジンが始動したり、燃料補給のためにガソリンスタンドへ行かなければいけないことをストレスに感じてしまうことがあります。
発表会後の立ち話でそんな思いを伝えてみると、東福寺社長は「将来的にモビリティがEVにシフトすることは間違いない」としながらも「PHEVは今後も長期間にわたってNEV(新エネルギー車)の選択肢として必要かつ有効な技術であり続けるのではないか」という見通しを語ってくれました。
都市部には集合住宅住まいで自宅に基礎充電環境をもてない人も少なくありません。また、日常的に長距離ドライブが必要な方など、一定の自動車ユーザーにとってPHEVは電動車の可能性を拡げるツールとなる可能性があるということです。
FWDで400万円を切る価格は、今後決定するCEV補助金を勘案するまでもなく、ミドルサイズSUVとして「ほぼエンジン車並み」といっていいでしょう。日常的なシーンではかなりの割合でEV走行することができるスーパーハイブリッドが、どのように日本市場に受け止められるのか注目です。
東福寺社長によると、来年にはさらに2車種程度のPHEVを日本で発売する計画があるとのこと。BYDによるスーパーハイブリッド攻勢が続きます。
また、以前からEVsmartブログでも注目していたコンパクトEVのシーガルについても、日本専用開発されている軽EVの発売との兼ね合いもあって「すぐにではない」としながらも、軽EV「ラッコ」と「ドルフィン」の隙間を繋ぐコンパクトEVとして日本導入の可能性について「中国の本社と検討を重ねているところ」ということでした。
2026年、BYDの電動車選択肢がさらに拡大しそうです。
急速充電の最大受入電力は18kW程度

発表会から間を置かず、シーライオン 6 のメディア向け試乗会が開催されます。乗り心地などの印象はそのレポートにご期待いただくとして、発表会で気になった細かいところをいくつか速報しておきます。
まず、充電は最大6.6kWの普通充電とともに、CHAdeMO規格の急速充電にも対応することが示されました。急速充電性能は「30〜80%まで30分」という説明のみ。よくわからないので、発表会で商品概要を説明したBYDオートジャパン商品企画部長の新道学氏に確認すると、CHAdeMO規格急速充電での最大受入性能は18kW程度とのこと。総電力量を考えれば、十分な性能だと思います。
CHAdeMO規格による「V2H(Vehicle to Home)」にも対応。さらに駆動用バッテリーから100Vの電気を取り出す「V2L(Vehicle to Load)」にも対応しています。ただし、V2Lは普通充電口から電気を取り出すアダプターによる給電のみ。車内にアクセサリーコンセントは装備されません。
魅力的な価格と性能の「スーパーハイブリッド」の登場が、日本のEV普及を盛り上げてくれることを期待しています。
取材・文/寄本 好則






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