電気自動車で日本市場復活を果たしたHyundai Motor Groupが「2025国際ロボット展」でお披露目した自律型モビリティプラットフォーム「MobED(モベッド)」を見てきました。テスラのオプティマスのようなヒューマノイドではないものの、完全自律型の運用が可能で使い方はいろいろ。電気自動車から広がる「電気移動体」の可能性を改めて感じたのでした。
量産モデルを東京開催のイベントで発表

2025年12月3日〜6日に東京ビッグサイトで開催された「2025国際ロボット展(iREX 2025)」に、韓国のHyundai Motor Groupがブースを出展。自律型モビリティプラットフォーム「MobED(モベッド)」の量産モデルを発表しました。
MobEDとは「Mobile Eccentric Droid」を意味しており、2022年のCESで初披露。その後、さらにAI活用などの開発が進み、量産体制が整った完全自律型モビリティロボットプラットフォームとして、今回、東京でアンベールされました。
MobEDの基本的な機能は、電動で自在に移動すること、です。何を載せてどう使うかはアイデア次第。用途に応じたモジュールを組み合わせることで「配送や研究、物流、映像制作など、幅広い産業分野での活用が可能」です。

自立走行用のセンサーなどの有無によって、次の2モデルがラインナップされています。言葉で説明してもややこしくなりそうなので、会場で撮影してきたデモンストレーションの動画(YouTubeの個人アカウントにサクッとアップしました)をご覧ください。
●MobED Basic
研究開発の基盤として設計されており、事前に自律機能を搭載せず、ユーザーが独自のアプリケーションを構築できるような柔軟性のある環境を提供します。
●MobED Pro
高度な自律性を備えており、LiDAR-カメラフュージョンや「フォローミー」モードなどの追加のセンサーと機能が統合されています。自律走行の信頼性が求められる屋外または商業用途に最適です。
MobED Proのデモ終了後、搭載されているタブレットを見せてもらったら、必要に応じてコース攻略案内や、動画でスイングアドバイスしてくれるなどの機能がありました。自律走行でプレイヤーに付いてきてくれるってのがちょっとカワイイ。私は典型的な下手の横好きゴルファーですが、なんなら、パターのラインを読んでくれたりすると、セルフプレーで大助かりです。日本でもこれを導入してくれるコースがあれば、話のネタになりそうだし「キャディロボットフィー(?)3000円くらいなら払っちゃうよ!」という感想でした。
さらに欲張りなことを言うと、セグウェイみたいに自分もこれに乗って移動できたら最高です。

2モデルはまずは韓国で2026年上半期に販売開始予定
MobED ProとMobED Basicモデルは、まずは韓国で2026年上半期に販売開始予定とのこと。価格などはまだ非公表です。
モジュールや用途別のプログラム開発はどうするんだろうといった点もまだ謎のままですが、今回の展示会では「なんだか賢いモビリティ」の可能性を実感することができました。
Robotics LAB の公式サイトにスペックが紹介されていたので引用しておきます。

さらに詳細な技術情報などに興味がある方は、Robotics LAB 公式サイト(英語ページ)をお訪ねください。
日本での発売などはまったく未定。もし日本発売される場合は、電気自動車を扱っているHyundai Mobility Japanが扱うことになるのでしょう。カスタマーエキスペリエンスセンター横浜で、MobEDがコーヒーを運んでくれる姿が目に浮かびます。
電気エネルギーで動くモビリティの可能性

MobEDを見て改めて感じたのが「これは、内燃機関じゃあり得ないモビリティ」であることでした。「モビリティ」は「乗り物」という意味もあるので、「電気移動体」と表現してもいいでしょう。
ヒューマノイドのオプティマスは当然電気エネルギーで動きます。先日、三菱ふそうの工場取材に伺った際、工場内で活躍していたAGV(Automated Guided Vehicle=無人搬送車)だって、当たり前に電動でした。このMobEDが、エンジンの唸りと排気ガスを出しながら動くことも、あり得ないと感じます。
自動車のEVシフトは「脱炭素」や「カーボンニュートラル」の文脈で語られることが少なくありません。でも、日本EVクラブの活動などで長年EV普及を応援してきて実感するEVシフトの大きなメリットは「モビリティの多様化」です。エンジンが電気モーターに置き換わり、騒音や排気ガスを出さず、スムースで自在な動きが可能となることで、内燃機関ではあり得なかった用途が広がっていくのです。
カーボンニュートラルは、電動化がもたらす恩恵の「ひとつ」に過ぎないということですね。
日本では「モビリティのカーボンニュートラルが目的」としてEVシフトにはこだわらず、マルチパスウェイを標榜し、代替燃料開発への注力などが、EVシフトへの消極姿勢に対する免罪符のようにアピールされるケースが少なくありません。でも、電動化のポテンシャルは自動車をICEからEVへ置き換えるといった狭義の成果だけでなく、20世紀的な内燃機関時代には想像できなかった「新しいモビリティ」を創出していくはずです。
今では街を席巻している電動キックボードや、KGモーターズがもうすぐ量産開始を予定している原付ミニカー規格で1人乗りEV『mibot(ミボット)』なども、そうした「新しいモビリティ」の先駆けです。また、MobED Proが搭載する自律運転システムの進化や量産化は、乗用車の自動運転技術の前進と普及にも貢献してくれるのではないでしょうか。
はたして、MobEDはどんな新しい世界を見せてくれるのか。また、MobED以外にも幅広く研究開発が進められているHyundai Motor Group Robotics LABのさらなる成果に、今後も注目していきたいと思います。
取材・文/寄本 好則







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