「東京オートサロン2026」で行われたBYDのプレスカンファレンスで、今年発売予定の軽乗用EV「RACCO」のバッテリー容量が発表されました。スタンダードが20kWh、ロングレンジが30kWhで、ヒョンデ INSTERのベースモデルが搭載する42kWhには及びません。あとは、国産勢との価格勝負です。
搭載するバッテリー容量は国産軽EVと同等

2026年1月9日、幕張メッセで開幕した「東京オートサロン2026」でBYDオートジャパンがプレスカンファレンスを実施。すでに発表されている軽乗用EV「RACCO(ラッコ)」に加え、コンパクトSUV「ATTO 2」とステーションワゴンの「SEAL 6」という2車種のスーパーハイブリッド(PHEV)を2026年に日本市場へ導入し、全8モデルの新エネルギー車(NEV)フルラインナップを揃えることを発表しました。
また、先ごろ東京で開催されたジャパンモビリティショーで初公開された軽乗用EV「ラッコ」のバッテリー容量が、ベースモデルとなる「Standard」は20kWh、「Long Range」で30kWhとなることを発表しました。

20kWhは「日産サクラ」や三菱「eKクロスEV」と同じ。30kWhはホンダ「N-ONE e:」や「N-VAN e:」と同じ容量で、先行して発売されている国産軽EVに合わせたバッテリーサイズで、すでに日本発売されているヒョンデ「INSTER」Casualの42kWh(上位モデルは49kWh)には及びません。
航続距離はスタンダードが「200km超」、ロングレンジが「300km超」の予定であることも発表されました。とはいえ、車高1800mmの軽ハイトワゴンで「10km/kWh」の電費を叩き出すのは至難の業。実用的な航続距離としてはスタンダードが「7.5km/kWh×20kWh=150km」、ロングレンジで「7.5km/kWh×30kWh=225km」程度と考えておくべきでしょう。
ロングレンジが30kWhはちょっと期待外れ
ジャパンモビリティショーの際、BYDオートジャパンの東福寺社長へのインタビュー記事で、ラッコのバッテリー容量について「廉価モデルのスタンダードがホンダのN-ONE e: などと同じ30kWh。ロングレンジはドルフィンよりも少し抑えめではありつつ、ヒョンデ インスターのカジュアルグレードに匹敵する42kWhくらい搭載してくれると素敵」という期待値を紹介しました。
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実は、ジャパンモビリティショー会場で展示されていたラッコのプロトタイプに搭載されたバッテリー容量が「224V×160Ah=約35.8kWh」であることが、この記事執筆時にもわかっていました。つまり、スタンダードかロングレンジ、いずれかのモデルがおおむね30kWh程度であることが予想できました。
控えめに予想すれば「20kWhと30kWh程度」が妥当ではあるものの、BYDには軽EVの既成概念を超越して欲しいという期待をこめて、あえて「30kWhと40kWh程度」を希望した次第です。したがって、今回発表されたバッテリー容量は「ヒョンデは軽自動車級の車体に40kWh以上搭載できてるのに、BYDにできないのはなぜ?(LFPの不利はバッテリー技術&EV専用設計の工夫で凌駕してほしい)」と、ちょっと期待外れだったのが、ひとりのEVユーザーとして正直な感想でした。
あとは、価格設定と充電性能で「常識」を超えられるか?
この記事中、さらなるラッコへの期待ポイントとして、充電性能と価格を挙げました。ことに20kWhや30kWhといった容量が小さなEVで遠出する場合の利便性は、高速道路SAPAや道の駅など経路充電スポットで行う急速充電性能が大きく影響します。日産サクラや三菱eKクロスEVの急速充電性能は最大30kW、ホンダ N-VAN e: や N-ONE e: は最大50kWに抑えられていて、急速に新設や置換が進んでいる出力90kW以上の高出力な急速充電器の恩恵を活かせません。
1時間でバッテリー容量の3倍に相当する電力を充電できる「3〜4C」くらい、つまりスタンダードで最大60〜80kW、ロングレンジで最大90〜120kW程度の急速充電性能を与えることができれば、同じバッテリー容量をもつ国産軽EVとは別次元の使い勝手を体感できるはずです。
さらに、こうなってくるとラッコが日本で売れるかどうかの最重要ポイントは「価格設定」ということになります。20kWh(スタンダード)の競合となる日産サクラは約260万円〜。30kWhで比較されるN-ONE e: は約270万円〜です。
先ごろ、CEV補助金が最大130万円(従来の90万円から40万円アップ)に増額されましたが、BYDのEVはほとんどの車種が35万円、シールだけが45万円となっていて、小さくないハンディキャップを背負っています。ただし、これは3ナンバーの「普通自動車」の設定額。小型・軽自動車のカテゴリーは最大58万円で従来と変更はありません。
日産サクラ、N-ONE e:への国のCEV補助金はともに57万4000円(令和8年1月9日現在)です。はたして、ラッコへの補助金額はいくらになるのでしょうか。ちなみに、輸入車ブランドの小型EVでは、ヒョンデINSTERが56万2000円、フィアット500eが57万4000円と、国産EVと同等、もしくは大差ありません。
とはいえ、中国製EVをOEMで輸入して発売しているアパテックモーターズの車種(関連記事)への補助金額は25〜35万円です。仮に、ラッコのCEV補助金額が35万円になった場合、国産EVに対して実質的に約20万円のハンディを抱えてスタートすることになります。
EVsmartブログ流のEVコスパ(車両価格 ÷ 搭載バッテリー容量)で考えて、「7万円/kWh」で試算するとスタンダードが「140万円」、ロングレンジが「210万円」になります。これで35万円の補助金を活用できれば、30kWhのロングレンジが200万円を切ってくるので、かなりインパクトのある実質価格となるでしょう。
BYDには、日本で広がってしまったEVへの誤解やネガティブな「常識」を凌駕して欲しいと願っています。軽自動車でこのコスパを実現するのはなかなか困難だと思いますが、42kWhバッテリーを搭載したインスターCasualは約285万円(約6.8万円/kWh)で補助金が56.2万円=実質約229万円を実現しているし、BYDへの期待を込めて、あえて高望みしておきます。
また、今年夏に発売されるラッコが日本でしっかり売れれば、次のマイナーチェンジとかで40kWh搭載の「スーパーロングレンジ(仮称)が登場するかも」と、さらなる期待をしたためておきたいと思います。
文/寄本 好則






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