東京都では集合住宅のEV充電設備を2030年までに6万口設置する目標を掲げてさまざまな支援策や助成金を用意しています。八王子市で「無料相談会」が開催されたので取材に行ってみました。発案から設置、運用開始まではどうしても時間が掛かります。早めに動いて、補助金などの支援策を上手に活用するのがオススメです。
「第7回」の無料相談会ではV2Lの実演も披露

2026年2月1日(日)、東京都八王子市で「第7回 マンションEV充電設備設置に関する充電サービス事業者と管理組合との個別相談会(以下、無料相談会)」が開催されると聞いて取材に行ってきました。
東京都では、集合住宅にEV等用充電設備を2030年までに6万口、2035年までに12万口設置する目標を掲げており、さまざまな支援策や助成制度(補助金)を実施しています。この無料相談会は既設集合住宅(マンション)の管理組合や管理会社、オーナーなどを対象としたもので、都が用意しているマンションにおけるEV充電設備設置への支援、助成金などの内容を紹介するとともに、マンションでの充電設備設置に実績のある充電サービス事業者を紹介、個別ブースで無料相談をすることができる「マッチング」の機会を提供しています。
第1回の無料相談会が開催されたのは2023年3月のこと。EVsmartブログでは『東京都が集合住宅のEV用充電器設置のための相談会開催/補助金も増額』という記事でレポートしています。
あれからおよそ3年で7回目となった今回の相談会では、広い会場内で都の公用車であるトヨタ「bZ4X」からのV2L(Vehicle to Load=電気自動車のバッテリーから給電すること)による災害時を想定したデモンストレーションが実施されていました。

急速充電口からのV2Lに使用されていたのは、これも都の備品であるホンダ「Power Exporter 9000」という機器。実物を見るのは初めてでしたが、なんと、出力は「9kVA=9kW」というパワフルな1台です。操作部を覗いてみると、「100V/1500W」のコンセントがしっかり6つ並んでいました。ただし、現在は製造を終了していて、出力6kWの「Power Exporter e: 6000」になっています。余談ですけど、ホンダのEV関連製品はここでも「e:」推しなんですね。

第1回の無料相談会は100席ほどの会場がほぼ満員御礼の盛況でした。今回は、その第1回に参加したマンション管理組合などが最近になって設置が完了したEV充電設備を紹介して、無料相談会の成果を感じる内容ではあったのですが、参加者は20名ほどと少し寂しい印象でした。
東京都の環境局気候変動対策部マンション環境性能推進担当課長の矢嶋圭氏に聞くと、2030年までに6万口という目標に対して、設置されている口数は2024年度末で約7300口とのこと。2030年まであと4年と考えれば、1年に1万3000口くらいは増やしていかなければいけない計算で、なかなか「ペースが上がっていないのが現状」と捉えることができます。
計画から設置、運用まで丁寧なサポートを用意

東京都の取り組みについて説明する矢嶋圭課長。
東京都では2050年までにCO2の実質排出量を実質ゼロとする「ゼロエミッション東京」という目標を掲げ、2019年に策定&公表した「ゼロエミッション東京戦略」に基づいて既設マンションへのEV充電設備設置にさまざまな支援や補助金を用意しています。新築マンションについては、EV充電設備の設置を義務化する条例を定め、すでに2025年4月から施行されています。
つまり、EV充電設備がない既設マンションは、新築物件と比べて資産価値でもハンディキャップを抱えることになってしまいます。こうした無料相談会や支援、補助金制度を活用しないのは、なんとももったいないことではないでしょうか。
既設マンションへのEV充電器設置には、東京都だけではなく国の充電設備補助金も用意されています。とはいえ、ことに補助金を活用した充電設備の設置実現には、おおむね2年程度という時間が掛かり、さまざまなノウハウが必要です。少しでも早めに始動して、補助金などの支援策を上手に活用するのがオススメ! ということで、いくつかのポイントを紹介しておきたいと思います。
EVなんて普及しないんじゃね?
いまだに日本国内では根強い盲信ですが、2035年までに国内の新車販売台数の100%を電動車にするという国の目標に変更はありません。さらに、東京都では「2030年にZEV比率50%(脱ガソリン車100%※ハイブリッドを含む)」を目指しており、2050年に100%をZEVとする目標は変わっていません。
国のCEV補助金が増額されて、実質400万円台以下で買えるEV車種のバリエーションが激増しているのも既報(関連記事)の通り。国内自動車メーカーが発売するEV車種も増えていて、EV普及拡大は日本でも着実に前進しています。
EVを便利に使うためには「基礎充電」がとても大切
EVの充電には、自宅ガレージなどで行う「基礎充電」のほか、ロングドライブの途中で行う「経路充電」、宿泊施設などの長時間滞在先で行う「目的地充電」などの方法があります。また、充電設備がないマンションに住むEVオーナーが日常的に近隣の急速充電器を利用することを「基礎充電代替」などと呼びます。ただし、基礎充電代替ではあたかもエンジン車に給油するようにわざわざ「充電しに出かける」必要があり、充電料金も基礎充電で一般的な普通充電に比べて高くなります。
余計な手間なく、拠点ガレージに停めている間に充電できる基礎充電環境は、EVを便利に活用するためにとても大切なポイントなのです。今はEVに乗っていなくても、近い将来「EVに買い替える」という選択肢を広げるためにも、既設マンションであってもEV充電設備を設置しておくべきであることは間違いありません。
何から始めていいかわからないって人は……

どんな充電器を設置すればいいのか? 管理組合総会での合意形成は? 設置後の課金システムなどはどうすればいい? などなど、既設マンションへのEV充電設備設置や運用にはいくつものハードルがあります。
東京都では、以下のようなさまざまな段階に応じた支援策や補助金を用意しています。
① 検討段階:どのように充電設備を設置するか検討する段階
② 設置段階:充電器をマンションに設置する段階
③ 運用段階:設置した充電器をご利用いただく段階
たとえば検討段階では、今回紹介した無料相談会開催のほか、無料で何度でも利用できる「マンション管理アドバイザー派遣」を実施しています。
補助金についても、実際の設置に必要な費用はもとより、現地調査費や提案書作成に必要な経費、さらにはEV充電設備のための新たな電力契約に対する電気基本料金などランニングコストへの補助制度まで用意されています。
こうした情報は、東京都環境局の「東京都マンションEV充電器情報ポータル」で紹介されています。「うちのマンションにもEV充電器を付けたいけど、何から始めればいいのかわからない」って方は、まずはこのウェブサイトを要チェック。次回開催日時などは未定ながら、無料相談会に参加してみることをオススメします。
最後に、私の個人的な体験から改めてお伝えしておきます。「基礎充電できると、EVってほんとに便利で気持ちいい乗り物」ですよ。
取材・文/寄本 好則







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