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海老名サービスエリアに最大「350kW器」を日本国内初設置へ/「EV超急速充電」時代の幕開けか?

海老名サービスエリアに最大「350kW器」を日本国内初設置へ/「EV超急速充電」時代の幕開けか?

高速道路SAPAのEV充電インフラを拡充するe-Mobility Powerが、2026年中に東名高速道路海老名SAの急速充電ステーションをリニューアル。上下線ともに最大出力350kWの超急速充電器を設置するとともに、90〜150kW器を含む8口の複数口設置となることを発表しました。EV超急速充電時代の幕開けに向けて、気になるポイントを整理しておきます。

目次

海老名SAの上下線に東光高岳製の350kW器を国内初設置

2026年2月18日、株式会社e-Mobility Power(eMP)が2026年中に東名高速道路 海老名サービスエリア(上り/下り)のリニューアル工事を実施して、一口最大出力350kW(最大電圧1000V)の「SERA-400」を含む急速充電器3基 (8口)を設置することを発表しました。
※冒頭写真はプレスリリースのリニューアルイメージ図。

今回のリニューアル工事は、経済産業省の令和7年度「充電設備補助金」(年度またぎ事業)の交付を受けて実施されるもので、上り線は2026年夏頃、下り線は2026年冬頃の完成予定となっています。

SERA-400

「SERA-400」はEV急速充電器メーカーとして大きなシェアをもつ東光高岳と、日本国内の高速道路SAPAにおける急速充電ステーションを網羅するeMPが共同開発を進めてきた次世代器で、2025年5月に完成してお披露目。公共用充電ステーションとして、海老名サービスエリア(SA)が日本国内初設置となると思われます。

【関連記事】
チャデモ規格で世界初の最大350kW超急速充電器を初公開/懸架アームや大画面UIで操作性を追求(2025年5月16日)

お披露目発表会のレポート記事でお伝えしたように、「SERA-400」は大画面液晶による優れたユーザーインターフェースや、懸架アームによる吊り下げ式の新型軽量ケーブルを採用するなど、EVユーザーにとって歓迎すべき特長を備えた次世代急速充電器です。いよいよ、高速道路SAPAにこの機種の設置が始まるという点だけでも、日本国内のCHAdeMO(チャデモ)規格EV急速充電インフラの進化と評することができるでしょう。

高出力器の複数口設置も歓迎したいポイント

東名高速の起点となる東京ICから約32kmに位置する海老名SAは、国内最大級の利用者数を誇り、現状でも上下線に各3基(口)の急速充電器を設置。多くのEVユーザーが利用する人気の充電ステーションです。3基目となる90kW器が設置されたのは2020年7月(関連記事)で、SAPA充電ステーションの「高出力&複数口化」をいち早く実現してきた象徴的な場所でもあります。

一方、利用者数が多い、つまり充電器の利用頻度が高いこと、また充電区画にトラックなどが駐車するケースが頻発するなどの要因で「充電待ち」に遭遇することが多い場所でもありました。

海老名SAでは充電区画をふさぐトラックにしばしば遭遇(写真は2020年7月)したことがあります。

今回のリニューアルでは、チャデモ規格最強となる350kW器が登場するだけでなく、90~150kW器を含む計8口(上下線それぞれ)の複数口設置となることも、東京に暮らすEVユーザーとして歓迎したいポイントです。

設置予定の充電器(上下線共通)

機種名一口最大出力基数/口数2口以上同時充電時
東光高岳製
HFR1-120B10-AB
90kW
※最大15分
1基/2口最大で合計120kW
※各口出力は動的制御
ニチコン製
NQ M-UCB04P
150kW
※最大15分
1基/4口2口同時は各最大150kW
3口以上の場合1口最大90kW
※同時充電台数によって制御
東光高岳製
SERA-400
350kW
※最大15分
1基/2口各最大200kW

設置されるのは上下線ともに、東光高岳製の90kW器(2口)と、ニチコン製の「赤いマルチ」と呼ばれる150kW器(4口)、そして東光高岳製の新型350kW器(2口)です。2台以上が同時に利用できるいわゆる「マルチ器」では同時充電時の最大出力が制限されますが、もっとも出力が小さい90kW器でも2口合計で最大120kW(60kW+60kW)の出力を確保。利用するEVそれぞれの充電量(要求する出力)に応じて分担量を「70kW+50kW」など動的に制御するパワーシェアリング機能を備えています。

また、3機種はすべて最大出力を発揮できるのが充電開始から最大15分間に制限される「ブーストモード」を採用しています。急速充電性能が優れたEV車種で利用する場合、15分で出力が落ちてしまうのを不便に感じるケースを懸念する方もいることでしょう。とはいえ、設置機種の構成が「150kW(最大350A)が4口」「350kW(最大400A)が2口」となっているのが強力。軽EVから高級EVまで、幅広いユーザーが便利に使える充電スポットになるはずです。

350kW器の恩恵を満喫できるのは現状では「IONIQ 5」だけ

欧州などでは早くからCCS2(コンボ)規格で350kW超の出力をもつ超急速充電インフラ整備が進められています。海老名SAへの設置で「いよいよ日本でも350kW器が!」と喜びたいところではありますが……。

350kW器「SERA-400」は、EV用急速充電器の電圧に関する規制緩和によって、従来のおおむね450Vから「1000V仕様」にパワーアップ。最大電流は400Aの仕様となり、1口使用時は最大350kW(350A×1000V)、2口同時使用時でもそれぞれ200kW(200A×1000V×2口=400kW)の最大出力を実現しています。つまり、350kW級の超高出力で充電できるのは、1000V仕様の高電圧に対応したEVである必要があります。

日本で発売される市販EVのほとんどは、いわゆる「400Vシステム」を採用しているため、「SERA-400」は最大350Aで充電できる150kW級の急速充電器ということになります。

ややこしいので端的にまとめると、「チャデモで350kW級」の恩恵を享受できる市販EVは、今のところヒョンデ「IONIQ 5」(800Vシステムを搭載)だけしかありません。

SERA-400のお披露目会でもIONIQ 5とタイカンがデモカーとして登場していました。

ポルシェ「タイカン」やアウディ「e-tron」などフォルクスワーゲングループの「J1」プラットフォームを採用する一部車種も800Vシステムではあるものの、チャデモ規格での高電圧充電には未対応。350kWの恩恵を満喫するためには、メーカーのアップデートが必要です。

こういうと、「対応車種が少ないのに、なぜ350kWを設置するのか?」と疑問を感じる方がいるかも知れません。でも、これは充電インフラでよく語られる「ニワトリが先か、タマゴが先か」の議論ですね。インフラが先にあるからこそ、次世代の高性能EVが普及するという相関で、EV社会の進化に繋がることを期待します。

これは急速充電に限った話ではありません。先だって、筑波サーキットに出力9.6kWの普通充電器が設置されたこと(関連記事)をお伝えしましたが、日本で市販されている、ことに国内メーカー製EVの普通充電性能が最大6kWにとどまっているのはもったいない。充電インフラと市販EVがきちんと連携して進化していってくれることを望みます。

「充電料金体系」のアップデートにも期待したい

充電スポットの高出力化が進むほどに、eMPの充電料金が、会員カードをもたないビジター利用の場合、最大出力50kW以下の場合が「55円/分」(料金はすべて税込)、50kW超は「77円/分」となっている料金体系も気になります。

たとえば、急速充電性能が最大30kWの日産サクラで30分間のビジター利用をした場合、90kW超の高出力器だけが並ぶ新しい海老名ではどの充電器を選んでも料金は「77円/分」。30分で12kWh充電できたと仮定(現実的には10kWh程度だと思います)すると「77円×30分=2310円」で「2310円÷12kWh=192.5円/kWh」という高価な電気を買うことになります。

もし50kW器があって「55円/分」だとしても30分で1650円、137.5円/kWhなのでまあまあ高い……。さらに、ビジター充電を行う際の手順が面倒なのも課題です。

車種ごとの充電性能の違いによる不公平感を緩和するためには、今、eMPで検討などが進んでいる従量課金(充電結果のkWhに対する課金)の導入が待たれるところです。その場合、安さばかりを求めるのは持続可能ではないので、なんとか「100円/kWh」くらいの充電料金を実現してくれるといいなと思っています。

また、eMPの会員になって充電カードを所有すれば、急速充電料金は出力に関わらず「27.5円/分」になります。これなら、30分で825円。68.75円/kWhという納得感の高い充電料金になります。ただし、月額料金が4180円となかなかの高額です。月に1回しか急速充電を利用しないケースを想定すると、「825円+4180円=5005円」で、417円/kWhになって論外です。

今後、日本のEV普及促進のためにも、月額料金をせめて税込2000円以下にしてほしい。あるいは、ビジター充電の認証が手軽にできる無料のカードを発行するなど、幅広いユーザーの利便性を高める料金体系の改善を、eMPには強く希望しておきたいと思います。

350kW器を「どんどん設置して」とは言いません

急速充電はより高出力なのが正義といった意見もあります。とはいえ、設置費用やランニングコストがかさむ超高出力器は、それなりの利用頻度やニーズが見込める場所に「きちんと」整備されるべきです。こんな場所に増えるといいなと考える例を挙げておきます。

●高速道路網の主要SAPAに200km間隔程度でマルチ器と併設

超高出力器のパワーが最も必要とされるのは、長距離ドライブ時の経路充電。おもに、高速道路網の主要なSAPAでのニーズが高いでしょう。今回の海老名SAがそうであるように、赤いマルチなど複数口設置の充電ステーションを増強するようなスタイルで、おおむね150〜200km間隔くらいを目安に「350kW器もある複数口スポット」が増えてくれるといいですね。

●EVユーザーが多い都市部のハブ的な充電拠点

高出力器のニーズが高いもうひとつのケースが、マンションなどに住んでいて基礎充電環境がもてないEVユーザーの利用です。都市部の人流が多いスポットであれば、通りすがりのEVを含めた高い利用頻度を期待することもできるでしょう。ただし、充電待ちのリスクが高いのは不便。350kW器とともに、複数口設置を拡充して、より安心して便利に利用できるハブ的な充電拠点とするのが理想だと思います。

なにはともあれ、350kW器の初設置は日本のEV充電インフラがまた一歩前進することを示す朗報です。日本の自動車メーカーからも、高電圧急速充電に対応した魅力的な高級EV車種が登場することに期待しています。

文/寄本 好則

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この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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