国内テスト走行中のテスラ「FSD Supervised」をモータージャーナリストの塩見智が助手席で体感。いわゆる「自動運転」との違いを整理しつつ、その完成度の高さ(運転の上手さ)を実感したレポートです。
※この記事はAIによるポッドキャストでもお楽しみいただけます!
事故や違反はドライバー(運転席に座っている人)の責任
テスラが日本国内の公道で「FSD Supervised(スーパーバイズド)」のテスト走行を繰り返している。今回、メディアを対象にしたデモ走行を助手席で体験する機会を得た。
FSDとはフル・セルフ・ドライビングの頭文字で、ナビで目的地を設定すると、運転操作全般が自動化される。ドライバー(というか運転席に座っている人)は、車両の挙動に問題がないかをスーパーバイズ(監視)するだけ。問題が生じれば即座にステアリングホイールやアクセルペダル、ブレーキペダルで対処する必要がある。したがってこれは自動運転ではなく、高度な運転支援(いわゆるレベル2)であり、違反や事故はドライバーの責任となる。
FSDはすでにアメリカ、カナダ、中国、メキシコ、プエルトリコ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国の8カ国でサービスが開始されている。日本や欧州をはじめテスラが販売されている多くの国で、9カ国目となるべくテストが行われている。
断っておくと、日本でいつからFSDスーパーバイズドを使えるようになるかはまだわからない。とはいえ、間違いなくカウントダウンは始まっている。
FSDを実装したモデルYで約15分間の試乗体験
この日我々が体験した内容は、東京都のテスラ新宿を拠点とした、距離にして数キロ、所要時間約15分の周回コースを、現在市販されているのとハードウェア的な装備は同じモデルYで走行するというものだった。つまり、ソフトウェアでFSDの機能を解き放てば、すでに日本の道を走っているテスラ車でも「ほぼ自動運転」が可能になるということだ。
コースには、西新宿の交通量の多い幹線道路、複雑な交差点、路上駐車車両も多い狭い道路などが含まれる。運転席にはテスラのFSDエンジニアが座った。
はじめにエンジニアがメインディスプレイに普段ユーザーが見ることのない設定画面を表示させ、何らかの設定をしたのち、走行開始。路肩からウインカーを出して発進し、交通の流れに乗る。
再びウインカーを出して車線変更し、しばらく走行して赤信号で停車した。運転席のエンジニアは両手を膝に載せ、足はフロアに置いているだけだ。青信号になると右折を始め、曲がった先の横断歩道の手前で停止し、歩行者をやり過ごしてから発進する。
とうとう体験したぞFSD。テスラのFSD Supervised国内テストに同乗した(YouTube)
発進、旋回、停止のすべてがきわめてスムーズ。記事に埋め込んだソルトンTVの動画を見ていただければわかるが、キュッと発進してキュッと止まるようなことはなく、運転に感じる安心感はベテランドライバーレベルだ。
※記事中画像は動画からキャプチャ引用。
FSDの運転を「乗ってすぐに受け入れられた」ことに驚き
すでに海外でのFSDの挙動を紹介した動画などをたくさん見てきたので驚きはしないが、ここまですぐに自分が慣れる、というかFSDによる運転を受け入れるとは思わなかった。1分か2分もすると車内で雑談してしまったほどだ。
ある時、我々の乗る車両が2車線あるうちの左側を走行中、前方にタクシーが停車していた。右車線を別の車両が並走している。すると速度を下げ、隣の車両を先行させて車線変更し、タクシーをかわし、元の車線に戻った。1車線ずつの対面通行の区間では、必要に応じて対向車線にはみ出し、路上駐車している車両をかわしながら走行した。

狭い道で路上駐車&対向車の難しい局面もスムーズに走り抜けた。(動画から引用)
狭い道路から幹線道路へ出てすぐに車線変更して右折レーンへ入る際の、適度に大胆な振る舞いは見習いたいほど。当然のことながらFSDは黒塗りの大型車に対し必要以上に慎重な距離をとることもなければ、軽自動車の前に強引に割り込むこともない。
一度だけ、左折した先の横断歩道で、かなり遠くから歩行者が来ているにもかかわらず、十分に距離があり先行しても問題ないと判断したのか、歩行者の通過を待たずに先行した。FSDの肩をもつわけではないが、歩行者は横断歩道へ進入はしていたが、かなり先だった。自分が運転していても同じような判断をしたと思う。
人間でも難しい「歩行者優先」の判断が課題?
近ごろ、警察は横断歩道での歩行者優先を以前よりも厳格に取り締まる運用をするようになった。高齢者からの「先にどうぞ」というジェスチャーを確認したうえで先行したケースでもドライバーを取り締まった例もある。テスラによれば、こうした国ごとの傾向をFSDに対応させるべくテストを行うため、国ごとにサービス導入のタイミングが異なるそうだ。
ちなみに現時点ですでに一般道でのハンズオフを含む高度なアシストに法的な障害はない。FSDに備わるDCAS(ドライバー・コントロール・アシスタンス・システム)は国連協定規則(UN-R171)が規定する要件を満たしていればよい。
【運転支援国際協定規則の主な要件】
●周囲の交通流に適応して安全に走行すること(車線変更時、後方接近車両に急減速させない)
●何かあった時にドライバーが安全に操作を引き継げるよう設計されていること(急な不具合でもドライバーが操作に移行できる時間を確保する)
●速度制限遵守(システムが認識したその区間の制限速度をドライバーが把握できるよう表示する)
●ドライバーモニタリング機能を備えていること(ドライバーの前方を注視していないことを検知したら警告ののちに停止する)など
NOAを日本で実現する一番乗りは?
ところで高度な運転支援はテスラだけが取り組んでいるわけではない。たとえば日産は新型リーフなどでプロパイロット2.0を選択できる。自動車専用道路に限ってハンズオフドライブが可能。トヨタ、スバル、BMWなどの一部モデルも、上限速度が異なるものの、同様の機能を備えている。これらはハンズオフが可能という点で現在市販している現状のテスラ車に備わる「オートパイロット」よりも進んでいるといえる。
また、現段階の日本で利用できるオートパイロットは、目的地を設定すれば監視義務は伴うものの事実上の自動運転をしてくれるNOA(ナビゲート・オン・オートパイロット)ではない。日産やホンダもFSDに相当するNOAの実装を目指していると言われ、日産は次期エルグランド(発売と同時にではない)に実装すると言われている。はたしてテスラと日産、日本でNOAを実装するのが早いのはどちらか。楽しみだ。
ともあれ、テスト段階とはいえ、自分が生きている間にドライバーが何も操作しないクルマに公道、しかも混み合った都心の一般道で乗れる日がくるとは(最近まで)想像しなかったので、FSD体験には素直に感動した。もうすぐクルマ移動のフェーズが変わる。長く生きていれば面白いことがあるものだ。
取材・文/塩見 智(ソルトンTV ※YouTubeチャンネル)






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