韓国でテスラオーナーが主催するテスラのライトショー「K-Light Show」を見学し、すでに解禁になっているFSD(フル・セルフ・ドライビング)を体験してきた。韓国の新車販売台数については160万台程度と日本の3分の1程度であるが、BEVの割合は約13%で総じてテクノロジー採用は進んでいる印象を受けた。連続レポートの初回として韓国で体験したFSDについて報告したい。
モデルXでFSDによる隊列走行を体験
今回はライトショーを運営するメンバーのモデルXでFSDを体験させてもらった。イベントではライトショーとその前にFSDの隊列走行があり、その合間を縫って会場周辺を45分程度FSDで走行した。

FSD体験をしたモデルXとソクチョの山並み。
イベント会場のソクチョ(속초 / Sokcho)は、日本語では「束草(ソクチョ)」と表記される観光地で、韓国の東海岸に面したリゾート都市。雪岳山の麓に位置し、自然がとても豊かでソウルから車で2時間半かかる。リゾートホテルが多く(イベント会場もその駐車場)道路にはまだ雪が残っていた。
韓国のFSDには最新のV14が搭載されており、ステアリングホイールのスクロールボタンを押すことで目的地に設定したホテルの駐車場までドライブできた。途中は高速道路も通って目的地に向かったが、左ハンドルのFSDは昨年テキサスのオースティンでかなりの距離をドライブしてきたので全く違和感はない。
高速道路は安定して走行し、途中のラウンドアバウト(ヨーロッパにあるような信号機のない環状交差点)も問題なく通過した。オーナー曰く、普段はFSDを基本的に使っていて、日常使いには全く問題ないとのことだった。Xに走行動画をアップしたので紹介しておく。
V14ということで、ドライブモードを選択することができる。V13までは3段階であったが、V14からは自動運転モードに従来のチル(Chill)、スタンダード(Standard)、ハリー(Hurry)に加え、スロース(Sloth)とマッドマックス(Mad Max)が追加された。途中でMad Maxに変更したが下道ではあまり差はないが、高速道路に入るとやはりスピードを出して走行する挙動になる。
もう1つ、V14のポイントは目的地の駐車オプションを選べることだ。走行中でも駐車場、路上、敷地内、車庫または路肩などから選ぶことができる。特にユーザーが指定しない場合は推論で最適な駐車方法を選んでくれる。今回の目的地で設定したホテルの駐車場はとても入り口が狭かったが、丁寧に侵入し(前方にも車がいたため)バックで駐車してくれた。テスラの自動駐車の挙動は素早く、切り返しとハンドル捌きも人間以上だ。
韓国では2025年11月に解禁されたテスラFSD
テスラのFSD (監視付き) は、韓国で2025年11月下旬に正式リリースされ、世界で7番目の市場(アメリカ、カナダ、中国、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランドに次ぐ)となった。韓国はアジアで中国に次ぐFSD導入国となり、E2E(エンドトゥーエンド)自動運転のスケーラビリティの高さを示している。AI4(最新自動運転ハードウェア)搭載のモデルSとモデルXからスタートし、サイバートラックにも対応している。
韓国とアメリカにはFTA(KORUS FTA / Korea-U.S. Free Trade Agreement)が存在し、安全基準相互承認条項がある。アメリカで生産された車両は、アメリカの連邦自動車安全基準(FMVSS)を満たしていれば、韓国の国内安全基準(KMVSS)の追加認証を一部免除、または簡素化できる規定がある。これにより、アメリカ製車両は「規制の抜け道」的に運用可能になった。つまり、テスラのモデルSやXは韓国のフルスケールの安全審査を受けずに運用可能でFSDが使えるようになった。OTAについてもアメリカ車両は国内認証のハードルが低いようだ。
私自身のこれまでの自動車メーカーでの経験からも韓国市場は新しいテクノロジーの採用に積極的でテスラの売れ行きも良い。最近ニュースになったのはモデルSとXを中心としたFSDの装着率は86%以上(*1)あり、ダントツの世界最高レベルだ。
(*1)韓国の議員へのFSD説明動画を参照。
前回のテスラの四半期決算のQ&AセクションでテスラのタネジャCFOは全世界でFSDの累積車両保有台数に対する有料FSDユーザー(購入済みとサブスク登録)の割合は約12%と述べていたので、その装着率の高さがわかる。
一方、大多数を占めるモデルYとモデル3については全て上海工場製の車両。そのため、これら車両は韓国の国内安全基準(KMVSS)の追加認証が必要で、FTAの特別ルートが使えず、審査プロセスを通す必要があるようだ。

カンナム(江南区)を走るモデルYとタイカン。
韓国で大人気のテスラ
現在、韓国ではテスラが売れまくっている。世界で見てもアメリカ、中国に次ぐ世界第3位の国となった。2025年の実績は販売台数: 5万9,916台で前年2024年の29,750台から約2倍増となっているし、2026年累計(1~2月)も9,834台と前年同期間比341%もの増加で爆発的な人気だ(*2)。2月は輸入車の販売台数ランキングで1位を獲得した。
(*2)韓国輸入自動車協会(KAIDA)のデータを参照。
このペースが続いてモデルYや3にもFSDが展開されると、2026年で10万台超も現実的だろうとライトショーの参加メンバーも話をしていた。10万台とはすごい数字だ、前述の国内販売台数が160万台前後を考えるととても高いシェアになる。
自動車会社勤務時代にアジア各国のマーケティングディレクターが会合する機会が何度かあったが、韓国はアメリカのカルチャーやテクノロジーに敏感で適応や採用がとても早い。もちろんヒョンデやKIAという強い国内ブランドも存在するが、日本よりイノベーター/アーリーアダプターの層が多いと感じる。
テスラはアジアでは日本が最初にローンチしたが、後から立ち上がった韓国の成長がとても速く、アメリカ本社から発破を掛けられたテスラジャパン時代の思い出が蘇ってきた。いずれにせよ、韓国のテスラや自動運転の状況は注目に値する。
日本でもFSDのテスト走行を体験
韓国に飛んだその日には、テスラ新宿でもテスラ・ジャパンが行うFSDの国内テストに同乗することができた。新宿駅周辺をモデルYで25分ほど走行。日本でも昨年の8月から国内テストが開始されており、横浜のみなとみらい周辺を走行する動画が公開されていた。
同乗テストのアテンドをしてくれたテスラ本社の自動運転チーム担当者からは、現在、日本国内の交通法規などローカルルールを学習している最中であり、今年末の認可を目指しているとの説明があった。私自身、ひとりのテスラオーナーとして期待している。
新宿で同乗走行を体感したバージョンは13でV14の展開はこれからだと説明を受けたが、車や人通りの多い新宿駅周辺でのFSD走行もとくに問題は感じなかった。また、右ハンドルの日本の道路環境でも止まる、曲がるなどの挙動はとてもスムーズであった。あとは日本で学習を重ね、当局へ安全性を確実に説明できるかが鍵だ。

イベント会場では最新オプティマス!? が出迎えてくれた。
文/前田 謙一郎(x.com)






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