プラットフォームはエンジン車と共通
東京モーターショーのプレスデーが開催された10月23日の午後、EVsmartブログ取材班は東京ビッグサイトから六本木ヒルズ大屋根広場へ移動。開催中の『PEUGEOT SHOW 2019』の会場で、日本初公開となったプジョーの新しい電気自動車『e-208』を取材してきました。
実は、10月18日にこの会場でプレス向け発表会が行われたのですが、残念ながら参加できず。この日は広報のご担当者が会場にいらっしゃるということで、お話しを伺いつつ実車に触れて写真撮影、となった次第です。
NEW『e-208』は、会場のメインともいえる壇上に、エンジン車のNEW『208』と並んで展示されていました。当然ですが、見た目はそっくり。この新型208は、あらかじめ電動化を想定し、EVとICE(エンジン車)の両立を前提として開発された「CMP(Common Modular Platform)」と呼ばれる共通プラットフォームを使用しています。
容量50kWhの電池は、床下全面に敷き詰めるのではなく、前後の座席下とセンタートンネル部分を活用して「H字型」に配置。ラゲッジスペースやヘッドクリアランスなどの空間はEVでもほとんど犠牲にすることなく、エンジン車と同じサイズにすることができているそうです。
ひとつだけ、EVで狭くなっているのが、後席に座った時の足下、つま先部分。電池搭載スペースの関係で、1センチ程度高くなっている段差がありました。でも、ほとんど気にならない程度です。
プジョーを含むPSAグループでも、電動化は必須のテーマ。18日の発表会ではプジョー・シトロエン・ジャポン 代表取締役社長のクリストフ・プレヴォ氏が「2025年までには全ラインアップの動力源に何らかの電気を用いるようにしていく」ことを明言しています。
ただし、一概にBEVへの転換を進めるということではなく、広報ご担当者の話によると「CMP」のコンセプトが示すように「たとえばサイズの大きなモデルはPHEVを採用するなど、電動と内燃機関をバランス良く両立させていく」方針とのこと。まずは理にかなった道筋だと感じます。
エンジン車との違いはエンブレムの色と「e」マーク
NEW『e-208』とICEのNEW『208』、外見上の違いはほとんどありません。違うのは、前後のライオンエンブレムに淡いブルーのアクセントカラーが入っていること。そして、後部のサイドに「e」マークのバッジが付いていることだけです。
共通のプラットフォームを使い、違うのは動力源だけという姿勢はインテリアにも貫かれています。『e-208』ではメーターパネルに電池残量を示すイラストが表示される程度で、センター液晶の設定画面などにも「EVならでは」という表示は機能はなく、エンジン車と共通です。
EVらしさが存在価値でもあるテスラ車と比べ、ジャガーアイペイスやメルセデス・ベンツEQC、e-Golfなどでも感じるように、欧州メーカーの流れとしてはEVとはいえあくまでも「自動車」というスタンスで、『e-208』はそれがより顕著に表現されている、という印象です。
より多くのユーザーが「買える」EVに!
それにしても、欧州メーカーでも1000万クラスの大容量電池を搭載したEVの発表が相次ぐ中、なぜ、あえてBセグメントの『e-208』だったのか。広報ご担当者に質問すると、まさに「我が意を得たり」のポイントだったようで。
プジョーのCEOであるジャン・フィリップ・アンパラト氏は「1000万円を超えるようなEVばかりが増えても買える人はひと握り。(EV普及は地球環境のために必須であるにも関わらず)環境へのインパクトはほとんどない。Bセグメントで、より多くに人が買うことができるEVを用意する」と明言。『e-208』は、まさに「多くの人が買えるEV」として開発、市場に投入されたということでした。
Bセグメントなど小型車用の「CMP(Common Modular Platform)」、またCセグメント以上のより大型モデルのための「EMP2(Efficient Modular Platform 2)」という共通プラットフォームを開発し、高効率のICE、PHEV、BEVをコストパフォーマンス高く市場に投入。当面は「どれを選んでも環境には貢献」できる選択肢を用意しながら、今後、さらに社会インフラなどが整って爆発的にEVが増えたとしても動力の比率が変わるだけ。共通プラットフォームの採用は「メーカーとしてのポートフォリオでもある」というご担当者の話は、なかなか興味深く感じました。
NEW『e-208』の日本での導入は「2020年第3四半期」、つまり7〜9月を予定。価格は未定で、エンジン車よりも少し高くはなるものの「EV専用の低金利ローンなども準備中。補助金や税の優遇制度、EVの維持費の安さなどを勘案すると、3年間のトータルではエンジン車と同等程度になるようにしたい」(広報ご担当者)とのことでした。
ユーザーとして考えると、ライバルは『Honda e』?
日本ではまだ予約もできないですが、欧州ではすでに発売中。各国の価格をみるとおおむね350万〜400万円といったところです。この値段、先日東京モーターショーでの日本初登場をお伝えした『Honda e』とほぼ同じですね。
『e-208』の電池容量が50kWhに対して、『Honda e』は35.5kWh。そして、おそらくは日本発売の時期もほぼ同じになりそうです。斬新な「サムシングニュー」の個性を打ち出す『Honda e』か、伝統的で軽快な魅力を受け継ぐ『e-208』か。EV好きのクルマ好きとしては、悩ましい選択肢が増えました。
ちなみに、一充電の航続距離はWLTPで最長340km(EPA値推定約303km)。当然ですが、ホンダeより100kmほど長い。バッテリー保証は8年16万km(70%以上)、全国のプジョー販売店への充電器設置も進めていくそうです。充電カードの仕組みは現在検討中。プジョー独自の普通充電デバイスを出すかどうかも未定。また、電池の温度管理システムの有無を確認してみたのですが、現時点では不明とのこと。確認できたら改めて追記します。
あと、『PEUGEOT SHOW 2019』の期間が東京モーターショーの会期に重なっているのは「タイミングよく六本木ヒルズの会場を使用できるのがこの期間しかなかったから」で、あえてぶつけたわけではないそうです。w
(寄本好則)
容量50kWhでWLTPで340kmかぁ。
i3の42kWhでWLTPで360kmと比べるとやっぱりカーボンボディ・アルミシャシーのi3のが電費は上なんですね。
とりあえず作った感はどの会社も同じ感じですね。
EV専用プラットフォームにすると開発コストや製造コストが膨らむんでしょう
ね。
ぼぼ さま、コメントありがとうございます。
ご指摘のように「とりあえず作った感」の濃淡は、プラットフォームが専用設計かどうかということがわかりやすい指針になりそうですね。エンジンと電池などを積み替えている場合はコンバージョンEVともいえるわけで、EVとしての完成度が見劣りするのはやむを得ないでしょう。
開発コストや製造コストについては、たんに「膨らむ」ということのほか(いずれにしても新型車開発には大きな投資が必要でしょうし)に、記事中、広報ご担当者が「ポートフォリオ」とおっしゃっていたように、リスクを分散するという目的があるのだろうと推察しています。ICEで今までビジネスが成立してきたわけで、一足飛びに「EVメーカー」になるのは大冒険になっちゃうでしょうから。VWは勇気あるチャレンジに踏み出したなと、しみじみ感じます。
一目瞭然で違いを判別できるのが、テスラ流にいうと「フランク」、フロントトランクの有無ですかね。
ポルシェ「タイカン」にもしっかりフランクが備わっていました。
e-208 はフランクのないコンバージョンでしたが、インテリアなどはICEと違和感なく、プジョー好きな方にはそうした点も魅力になるのではないでしょうか。いずれにしても、EVの選択肢が増えることを編集部としては歓迎したいと思っています。
E-208面白そうですね。
同じプジョーの普及価格帯EV[iOn]と同じ路線と見受けましたが、さすがに10年のテクノロジー進化に出遅れた三菱i-MiEVのOEMではツラいんでしょうかねぇ!?
世間一般が買えるEVのコンセプトは個人的に歓迎です!ホンダeやスマートエレクトリックドライブなどライバルは多いですがクルマとしての素性の良さを追求する路線はアリでしょう…そもそも三菱アイ(i-MiEVのベース車)が軽規格でそれを追求してましたから。
電池容量は50kWhもあれば充分、日本だとそれでも多いと感じます。
ガソリンも電気も両立できるプラットフォームを用意するあたりは流石です!三菱アイがi-MiEVになれたのは偶然プラットフォームが小変更だけで電動化できたからでしょうが、プジョーはそれを見抜いて戦略を立てたんじゃないかと思えます。当然小さな自動車会社だとプラットフォームを多く用意できないから兼用設計にするんでしょうが!?
日本向けにCHAdeMO急速充電・J1772普通充電ポートを付けるのは当然としてもVtoH対応の可否は災害大国日本での売れ行きを左右しそうです…もちろん2019年問題に悩むソーラー発電家庭市場へ殴り込むには対応すべきでしょうが実施するにはそれなりの壁がありそうで難しいかもしれません!?
バッテリー空調はほしいですね…急速充電時の冷却は言わずもがな(i-MiEVはMタイプ以外標準装備)電池ヒーターは欧州向けなら付くと想像できませんか!?たぶん日本発売が未定だから曖昧な返事しか返ってこなかったと思いますよ。