欧米メディアの注目点は様々
ドイツのメルケル首相が発表したコロナ禍に立ち向かうための追加の経済刺激パッケージは、1300億ユーロ規模。発表された文書にはさまざまな施策が列記されていますが、欧米メディアが注目しているのは以下のようなポイントです。
●子供一人につき300ユーロ(約3万7000円)を支給。
●付加価値税を一時的に軽減。
●電気自動車購入への補助金を、現在の3000ユーロから6000ユーロに倍増。
●エンジン車への購入補助金は見送り。
欧米の各メディアの最大の注目ポイントは、家族に対して子供一人につき300ユーロが支給される支援策。そして、自動車産業支援策として、エンジン車(ガソリンおよびディーゼル車)への購入補助金が見送られたことへの失望を伝える論調が目立っていました。
今回の経済刺激パッケージは、すでに3月に発表されていた1.1兆ユーロ(約136兆円)の大規模な経済救済パッケージに追加されるものです。メルケル首相は「経済が再び成長するための足がかりを見つけるのに役立つ」と述べたことが伝えられています。経済復興への施策が急がれる中、電気自動車への優遇を促進する姿勢を貫いたことには、コロナ禍に押しつぶされることなく、環境改善を視野に入れた変革を推し進めようとするメルケル首相の、そしてドイツ社会の強靱な思いを感じます。
全ガソリンスタンドに電気自動車充電器設置を義務化
また、同じ6月4日のロイターの報道によると、今回の経済刺激パッケージの一環として、ドイツ国内の全ガソリンスタンドに電気自動車用充電器の設置を義務付けることが発表されました。
2019年のドイツでの新車登録台数における電気自動車の割合はわずか1.8%(日本よりも格段に多いですけど)に過ぎなかったものの、ガソリンスタンドへの充電器設置義務化によって航続距離への不安解決に役立ち、電気自動車の普及拡大を後押しするだろうという見解が示されています。
フランスのマクロン大統領も電気自動車への大型支援を発表
ロイターの記事では、ドイツの今回の発表について「マクロン大統領が発表した電気自動車産業を支援するフランスの計画に続く」と評しています。
フランスのマクロン大統領が、総額80億ユーロ(約9900億円)の自動車産業支援策を発表したのは、2020年5月26日のこと。電気自動車(EVとPHEV)に対する購入補助金を引き上げ、10万カ所を目標とする充電インフラ整備の目標を2022年から2021年に前倒し。また、ルノーやPSAグループ、自動車部品メーカーなどを支援して、2025年までに電気自動車など電動車の国内生産を年間100万台に増やす目標を掲げています。
アフターコロナに向けた社会の再構築に、サステナビリティの視点は不可欠でしょう。10万円の特別定額給付金はありがたいですが、国民全員に配布されるのは羅針盤のないお金。社会改革につながることはありません。
はたして、日本はどこを目指すのか。電気自動車に対する取り組みのあり方は、10年後の近未来を占う国の抗体検査でもあるように感じます。
(文/寄本 好則)
BEVへの補助金に関しては、前回リセッション時のスクラップボーナスでドイツ国外自動車メーカーの車が売れてしまい金が国外に流れたという事例があったようで、ドイツ政府もかなり慎重になっていたようです。
今回の補助はコロナ前にEUが策定した欧州グリーンディールがベースにあり、コロナを社会変革の好機と捉え一気に構造改革を進めると思われます。コロナのような厳しい状況にあっても、事態をポジティブに推進する姿勢はスゴイ!の一言です。
ガソリンスタンドに充電器を設置義務化は分かりますが
新型コロナと電気自動車の補助金は関係無いと思いますが?
軽貨物 様、コメントありがとうございます。
今回の補助金の増額は、ドイツ政府のコロナに対するパッケージ(経済刺激策)の一部として発表されたものです。どうせ投資するなら、無くなってしまう食べ物や宿泊などの労働力でなく、長期的に国力を増加させることに投資する、という指導者の考え方の現れではないでしょうか。
中国でも再び補助金が増える方向に舵が切られるかもしれませんね。