ボルボが中国の工場で再生可能エネルギー100%を達成〜世界の企業が目指すのは?

ボルボが中国の成都工場が使用する電力を「100%再生可能な電力とした」ことを発表しました。『RE100』としても知られる、企業の再生可能エネルギーへのシフトは、電気自動車普及と合わせて世界のトレンドになりつつあります。

ボルボが中国の工場で再生可能エネルギー100%を達成〜世界の企業が目指すのは?

100%再生可能エネルギーをアピール

2020年6月5日、スウェーデンのボルボ社(Volvo Cars)が、『ボルボカーズの成都(せいと/英語では Chengdu)工場は100%再生可能電力を利用しています』と発表しました。

ボルボ成都工場。
電力を調達している成都の水力発電所。

同社のニュースリリースによると、今までにも成都工場では使用する電力の約70%が水力、太陽光、風力などの再生可能エネルギー由来であったのですが、今回、新たな契約によって残り30%も再生可能エネルギー由来の電力となって100%を達成したということです。工場で使用する電力が100%再生可能エネルギーとなることで、年間で1万1000トン以上のCO2排出削減となり、ボルボ社の全世界における再生可能エネルギー比率は80%になるとしています。

さらに、CO2排出削減へのアクションは中国の大きな方向性とも一致していることを強調。ボルボ社の製造品質管理などの責任者である Javier Varela氏が「私たちの目標は、具体的な行動を通じてCO2排出量を削減することです。中国でも最大規模の発電所の完全に再生可能な電力供給を確保することは、私たちの取組にとっても重要なマイルストーンとなります」といった主旨のコメントを寄せています。

ボルボでは早くからCO2削減へのアクションに取り組んでおり、2008年から「気候に中立(climate neutral)」な電力の調達を開始。スウェーデンのシェブデにあるエンジン工場では2018年に再生可能エネルギー100%を達成。同じ2018年には、ベルギーのゲント工場に1万5000枚の太陽光発電パネルを設置するなどのアクションを実践してきました。

Volvo Cars’ manufacturing plant in Ghent.

ボルボでは、2025年(今から5年後!)には世界の新車販売台数の50%を純電気自動車とする目標も発表しています。

『RE100』への取組は世界的な流れ

『RE100』という国際イニシアティブをご存じでしょうか。『The Climate Group』という環境NGOの呼びかけによって始まった、事業運営に必要なエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目指すグローバル企業が加盟した運動です。

世界全体で、GAFAをはじめとする名だたる企業241社(2020年6月14日現在)が参加。参加する日本企業の数も、ざっと数えたところ31社になりました。昨年はじめ、「気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative)」代表を務める国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問の末吉竹二郎氏を取材した際には「2019年2月末時点で164社、日本企業は14社になった」という話題があったので、1年ほどで世界で約80社、日本企業も20社近く増えたことになります。

『RE100』は、国連で採択された「SDGs」を具体化するためのアクションのひとつです。RE100に参加する企業は、企業活動に使うモビリティを100%ゼロエミッションにすることを目指す『EV100』など関連する国際企業イニシアティブにも賛同し、社会を進化させるためのアクションに取り組んでいるケースが多いことも知っておくべきでしょう。

気候変動を抑制し、持続可能な社会にしていくためには、電力だけ、モビリティだけの改革ではなく、全てを一緒に前進させる必要がある、ということですね。

『EVsmartブログ』では電気自動車普及を応援していますが、電気自動車がゼロエミッションという長所で地球環境に貢献するためにも、生産過程はもちろん日常的に走行する電力も、すべからく再生可能エネルギーにシフトするべきなので、再生可能エネルギー普及も一緒に応援しています。

ヨーロッパで新車販売におけるEVの比率が急上昇していることについて「大都市の乗り入れ禁止や、各メーカーごとに排出するCO2に厳しい基準と罰金が決められたから」という主旨の意見に出会うこともありますが、「だからEVなんてほんとに普及することはない」と結論付けるのはあまりにも近視眼的な発想だと思います。

そもそも、EUが「European Green Deal」を制定したり、ヨーロッパの各国が厳しい規制を具体化しているのは、モビリティだけを見ているのではなく、もっと広い視野で気候変動対策やSDGs実現のために必要な社会改革を捉えた上での施策です。

自動車メーカーは化石燃料とあまりにも深く結びついているからでしょうか。RE100に参加しているのは、BMWとGM、インドのTATA MOTORSの3社だけ。でも、イニシアティブには参加せずとも、ボルボはRE100に匹敵する施策を具現化して実績を上げています。すでに、事態は着々と進みつつあるのです。

興味を抱いていただけた方のために、記事中で紹介したいくつかの組織やイニシアティブへのリンクを貼っておきます。

RE100(The Climate Group)
気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative)
EV100(The Climate Group)

前述の取材時、印象的だった末吉氏の言葉を引用しておきます。

(RE100を日本国内で中小企業が実践しようとしても現実的ではないという問いかけに対して)
たとえば、ある(世界的なサプライチェーンをもつ)大企業がRE100を目指すとしたら、下請けや協力会社にもRE100を要求するはずです。RE100が一夜にして世界の共通ルールになるわけです。日本ではできませんなんて言い訳は通じません。「できません」と答えたら「グッドバイ」なんです。

末吉氏に取材したのは2019年、小田原の鈴廣蒲鉾代表取締役副社長で、一般社団法人エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議代表の鈴木悌介氏の著書である『エネルギーから経済を考える SDGs 実践編』(扶桑社)の中で、鈴木氏と末吉氏の対談を私が編集担当としてまとめた際のことです。

ルールを作るのは、「世界的なサプライチェーンをもつ大企業」だけではありません。世界の自動車ユーザーから「グッドバイ」を突きつけられることがないよう、日本の自動車メーカーには奮闘していただきたいですね。

(文/寄本 好則)

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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