『アリア』日本専用限定車の予約受注を開始〜電気自動車が日産のフラッグシップへ

日産自動車が新型クロスオーバーEV『日産アリア』の日本専用特別限定車『日産アリア limited』を発表。グローバル統一の予約サイトを開設し、日本国内で世界に先駆けて予約注文を開始しました。価格は660万円〜。91kWhバッテリー搭載の4WDモデル『B9 e-4ORCE limited』は約790万円です。

『アリア』日本専用限定車の予約受注を開始〜電気自動車が日産のフラッグシップへ

世界に先駆けて日本専用特別限定車を発売

2021年6月4日、日産自動車が新型クロスオーバーEV『日産ARIYA(アリア)』の日本専用特別限定車『日産アリア limited』を発表し、新たに開設したグローバル統一の予約サイトを通じて、日本国内での予約注文を開始しました。

搭載バッテリー容量は2グレード。66kWhバッテリー搭載車は『B6』、91kWhバッテリー搭載車は『B9』と名付けられ、それぞれ2WDとe-4ORCE(4WD)がラインナップされます。

『日産アリア limited』全国希望小売価格

駆動バッテリーサイズ グレード名価格(税込)
2WD66kWhB6 limited 6,600,000円
91kWhB9 limited 7,400,800円
4WD66kWhB6 e-4ORCE limited7,200,600円
91kWhB9 e-4ORCE limited7,900,200円

『日産アリア limited』主要諸元(日本仕様)

モデル日産アリア(2WD) 日産アリア e-4ORCE(4WD)
B6B9B6B9
バッテリー総電力量 66kWh 91kWh66kWh 91kWh
最高出力160kW178kW250kW290kW
最大トルク300Nm300Nm560Nm600Nm
0-100km/h加速
(社内測定値)
7.5秒7.6秒5.4秒5.1秒
最高速度160km/h160km/h200km/h200km/h
航続距離
(※)
最大450km最大610km最大430km最大580km
(※)航続距離はWLTCモードを前提とした社内測定値
全長×全幅×全高4595×1850×1655(mm)
車重1900〜2200kg
(モデル・装備により異なる)

※仕様は2021年6月時点の社内測定値であり、今後変更となる可能性があります。

納車は今年(2021年)の冬以降

日産ではアリアの予約注文スタートに向け、日産初となるグローバル共通のアリア専用予約サイトを開設。すでに予約注文受付を開始しています。

日産アリア特設サイト

納車は66kWhで2WDの『B6 limited』が今年の冬からを予定。その後、ほかのモデルも順次開始されるとのこと。予約サイトを見ると「2022年夏以降」と明記されています。

EVsmartブログチームでも予約しました

ついにアリア発売! の速報記事をまとめようとしていたら、EVsmartブログを運営しているアユダンテから「アリア買いました」の一報が入りました。

おお、マジですか。納車されるのが楽しみです。

チームスタッフの石井さんが選んだボディカラーはバーガンディー。この「バーガンディー/ミッドナイトブラック」と「シェルブロンド/ミッドナイトブラック」はlimitedだけの限定カラーで、今回発表されたlimitedには全5色がラインナップされています。

CLUB ARIYA『VIRTUAL ARIYA』より引用。

【ボディカラーバリエーション】
●バーガンディ/ミッドナイトブラック<特別塗装色> 88,000円
●シェルブロンド/ミッドナイトブラック<特別塗装色> 55,000円
●暁ーアカツキー(サンライズカッパー)/ミッドナイトブラック<特別塗装色> 88,000円
●プリズムホワイト/ミッドナイトブラック<特別塗装色> 88,000円
●ミッドナイトブラック<特別塗装色> 55,000円

limitedは先進運転支援技術の「プロパイロット 2.0」や「プロパイロット リモート パーキング」、また電動チルト&スライド式の「パノラミックガラスルーフ」、「ナッパレザーシート」、アリア専用の「BOSE Premium Sound System&10スピーカー」などがてんこ盛りのフル装備仕様なので、コンフィギュレーターで選べるのはボディカラーだけのようです。

オンラインイベントで『CLUB ARIYA』を紹介

6月4日に行われたオンラインイベントは、YouTubeの日産自動車チャンネルで公開されています。

【アリア】limited発表およびデジタルマーケティングの取り組み
(YouTube)

イベントではまず、星野朝子執行役副社長が登場。『日産アリア limited』を、日産の新たな「フラッグシップ」であると紹介しました。アリアを生産するのは栃木の「インテリジェントファクトリー」。日産の栃木工場は公式サイト上でも「日産の国内工場では最大の面積を誇る工場敷地内では、高級車やスポーツカーを生産しています」と紹介されているように、日産にとっては「高級車」のファクトリー。アリアはこれからの日産の屋台骨を支える高級車であることを再認識できました。

約7分半の星野氏のプレゼンテーションに続いて登壇したのは、日産自動車 Japan-ASEANデジタルトランスフォーメーション部の山口稔彦部長です。「デジタルトランスフォーメーション部」という部署があるのが、まずすごい。

山口氏は、グローバルの専用予約サイト開設は世界的に加速する顧客のデジタルシフトに対応したものであることを強調し、日本国内向けに開設した会員サイト『CLUB ARIYA(クラブアリア)』を紹介しました。

クラブアリアではコンフィギュレーターで作ったアリアの高精細3Dモデルを活用し、自宅ガレージや近隣の道路に置いた様子をシミュレーションしたり、バーチャル試乗などが楽しめるようになるとのこと。大きな目的としてデジタルシフトに対応した「新しい購入体験」を提供することを挙げ、オンラインでの「相談」「見積」「契約」、さらには納車待ち期間を楽しむためのコンテンツや、アフターサービス、オンラインサポートなどを展開していくプランを示しました。

アリアが次世代の自動車の基準になる

limitedの発表を見ていて感じたのは、電気自動車であることはアリアにとってもう当たり前。購入やアフターサービス、走りやインテリア、移動空間としての機能まで含めたパッケージングが進化していて、「アリアが次世代の自動車の基準になる」のではないかということでした。日本向けに『クラブアリア』を充実させるのは、既存のディーラー網と「デジタルトランスフォーメーション」をどう両立させるかというチャレンジでもあるのだと感じます。

日産リーフ発売から10年が過ぎ、満を持して登場したアリアが素晴らしい電気自動車、いや「次世代の自動車」であることは間違いない(まだ実車を運転したことはないですが)でしょう。フラッグシップとしてアリアが切り拓く価値観は、来年にも発売が期待されるNMKVの軽EVにも踏襲されていくのだと思います。

limited発表のリリースには『「日産アリア limited」発売後に販売を開始する「日産アリア」標準車の実質購入価格(省庁や各自治体からの補助金を差し引く)は、約500万円からとなる予定』であることも記されています。「省庁や各自治体からの補助金」は、次世代自動車振興センターが所管する「CEV補助金」なら42万円。今年実施されている最大80万円の環境省の補助金は受付が9月30日(必着)までなので使うのは難しそうですが、自治体、たとえば東京都であればCEV補助金に加えて最大45万円の助成金制度があるので、合計で87万円「差し引く」ことになります。

日産に確認したところ「あくまでも広く使える補助金を想定した概算」ということだったので、CEV補助金の42万円を差し引く550万円程度〜が「標準車」の希望小売価格になろうかと推定できます。B6 limited と B6 e-4ORCE limited の価格差が約60万円なので、標準車の B6 e-4ORCE は推定およそ610万円〜。バッテリー容量66kWhの高級車として、十二分に魅力的なところではあるでしょう。

ちなみに、今回発表された航続距離は「航続距離はWLTCモードを前提とした社内測定値」という参考値なので、あまり突っ込んでもしょうがないですが、WLTCモード値を実用に近いEPA値に換算するとおおむね8掛け。66kWhの最大450kmは約360km、91kWhの最大610kmは約488kmとなります。余裕で300kmを超える数値を前に、航続距離性能をうんぬんするのもあまり意味がないですね。

アリアは出力130kWの急速充電に対応しており、日産では今後「最大出力150kWのCHAdeMO急速充電器を公共性の高い場所に設置していく」ことが報じられています。高速道路のSAやPAに、出力150kW級のチャデモ規格急速充電器複数台設置を進めることが、アリアの魅力、ひいては次世代の自動車の利便性を高めるために重要です。

それにしても、最初の発表が昨年7月でおよそ1年後に受注を開始。さらにB6 limitedの納車開始が半年後で、ほかのモデルはまた来年の夏以降、って、あまりにも時間が掛かっているように感じます。私自身、来年末には今乗っているリーフがまた車検を迎えるので、アリアの標準車やNMKVの軽EVにはかなり物欲が動いてはいるのですが、はたして、いつになるのか。期待して待ちたいと思います。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)13件

  1. アリア、憧れちゃいますね~。今乗っているZE1でも不便はありませんが、もう10万から20万上がっても良いのでインパネとか内装にもっと凝って欲しかった。
    5年完済まで3年近くあるので、そのころにアリアの中古が手ごろな価格になっていたら乗り換えたいですが、3年後はもっと魅力的な黒船EVが出ていそうですね^_^。

    1. nan様、コメントありがとうございます。モデルYと比較はされそうですね。ただモデルYは国内導入は未発表、車幅1900mm越え、価格帯も恐らくアリアより少し上になると思います。
      若干、セグメントをずらして発表されている印象がありますし、日産様も当然意識してプライシングされているのではないでしょうか。

  2. バッテリーはパナソニックなのかCATLなのか。いずれにしろリーフのラミネートタイプではないようですが。

    アリアは開発はすでに終わってるのにだらだら発売時期伸ばしてるのは、バッテリーがリープのように自社製品でないので、価格交渉が難航してるのでしょう。テスラ・VW・GM・フォードのように中国・韓国のサプライヤーを抱き込み自社製にしないと勝ち目ない。

    これは、パナと共同出資してるトヨタもパナがEVバッテリーに撤退をほのめかしれる現在、トヨタも日産とおなじ状況です。ホンダもGMに頼ってるだけでよいのか。

    1. パナソニックはトヨタ向けリチウムイオン電池製造工場を姫路に立ち上げてますよ。
      求人も旺盛です。

  3. 高いですよ、高い。
    これが新しい基準になるなんてありえないです。
    新型軽EVにはこんな思想はやめて欲しい。
    とか言いつつ
    バンは300km走れるようにしてほしい、300万円でも構わない。
    と真逆なこと言うところが悩み多き現実です。

    1. 軽貨物 さま、コメントありがとうございます。

      はい、高いですね。私自身のライフスタイルに置いてみようとすると、今までにかなりの覚悟を決めて新車で買ったアウディA4やアルファロメオGTもたしか500万はしなかったと思うので、アリアは分不相応な高級車、ということになりそうです。

      ただ、高級車EVとして66kWhのバッテリーを搭載して推定540〜550万円くらい(540万円としてバッテリー1kWh@約8.1万円)というのは、世界で「ちゃんと売ろうとしているんだな」という印象です。

      まだGHQの展示者をいじったことしかありませんが、EVとしてのインターフェースや質感などを含めたパッケージングには、リーフの蓄積があったからこそなのでしょう、欧州メーカーのEVにはない「EVらしい新しさ」を感じました。

      「新しい基準」というのは、そうしたEVとしてのパッケージングを徹底するということを意図しています。軽EVは「高級車」は目指さないでしょうから、バッテリー容量のバリエーションを工夫するなどして、「そうそう、こういう軽EVが欲しかった」と、多くの人が気付けるような提案を期待しています。

      軽で300kmということはバッテリー容量ざっくり35kWhとして、プロパイロットとかはオプションでいい(できればソフトウェアアップデートで後付け可能とか)から、230万(1kWh@約6.1万円。高級車じゃなきゃ可能でしょ、と)で買えたらいいなぁ、なんて夢想しています。

      CEV補助金も大容量バッテリー搭載の高級車を買える人に手篤い航続距離基準だけじゃなく、庶民にうれしい「軽自動車加算」とかできないですかね。

      アリアで唯一残念に感じるのは、AC100Vのアウトプット(コンセント)を備えなかったこと。これからまた10年、ではなく、日産から多彩なEVが提案されるといいな、と思っています。

  4. EVの可能性をもっともっと広げて欲しい。

    災害に強いバックアップ電源としての働きからさらに発展して、移動ホーム、EVキャンピングカーなども開発すると良い。

    アリアの走行性能+キャンピングカーを両方楽しめるよう、アリアに牽引機能を追加。

    キャンピングトレーラーを引っ張って、アウトドアライフを楽しむも良し。トレーラーにはアリアから電気を供給。災害時にも大活躍するはず。

    アリアの可能性を広げる牽引車開発は、必ずしも日産が行う必要は無し。全国のキャンピングカーメーカーと協力すれば良い。新たな産業誕生の可能性もある。

    この分野にも、政府や自治体の補助金を付けるべき。何故なら、各自が自助努力で災害に備えることで、政府/自治体の負担が軽減できるから。

    アリア試乗を、とても楽しみにしている。

    1. e-NV200亡き後、出してほしいのがe-NV100(軽バン)とe-NV350(キャラバン)なんですよね。
      三菱自動車が軽バンを出すと表明しました、当然のこと日産からも出るでしょう。
      量産効果を考えると軽EVはヒンジドアのEKワゴンではなく、スライドドアのEKスペースだと思われます。
      以前記事で見たのはEKワゴンとEKスペースの販売比率は4:6だったとか。
      地元の販売会社で聞くと3:7ぐらいとか言ってました。
      EKスペースはキャンピングカーのベースとしてはちょっと狭いのですが車中泊仕様ぐらいは期待しちゃいます。
      そこで、キャンピングカーとなるとベースはキャラバン。
      このクラス、ハイエースが幅を利かせていますが、仕事車として配送は勿論のこと道具満載の職人さんや救急車やコミュニティバスなど幅広く利用されていますのでe-NV200よりも利用価値はありそうです。
      海外ではキャブオーバー型は嫌われているので世界展開は難しそうですがエンジンの振動がない利点がありますからね。
      無理ならカングーをOEM調達してNV200後継としているので、これのEVバージョンを国内投入してほしいですね。
      問題はやはりというか値段が気になります、e-NV200ですら500万円でしたからねぇ。

    2. 軽貨物さんと同じ答えですが、e-NV100はマジ出て欲しいですね。
      すでに日本郵便が採用してるMinicab-MiEVのOEMなら三菱も出すはず、クール宅配に必須の100V/1500W電源出力もオプション搭載可能にするんやないですか!?
      そして宅配業者の一日はいったん昼間に事務所へ帰って昼食にしますから半日持てばいいほう、冷房つけて80km走るならJC08で200km走れれば実質120kmでも何とかなりますよ。むしろ問題は充電電源の確保、一般用100/200Vの配送センターは6600V高圧受電へ転換する羽目になる営業所はついでに20kW中速充電器をつければ1時間で回復しますし、それが4台あっても2ポート40kW充電器ならば省スペースで出来ますから(新電元2ポート60kW機の出力調整措置でok)近場へしか行かないクルマは3kW普通充電でもokとか運用の決め事でも作ればどうにかなりませんかねぇ!?

      ハードよりソフト、枯れた技術の水平思考…任天堂やないですが(笑)創意工夫で何とかイニシャルコストを削減できればランニングコストの安い電気軽自動車で十分やないですか!?

  5. フラグシップ

    テスラ社は、日産自動車の失敗を教訓にしたかな?

    電気自動車EVのリーフを量産したが。
    最初から、大衆車を目指して売れなかった(泣)

    最初は、バッテリーを多く積み!高級車として売れ出せば良かったか?

    広まり次第に、バッテリー容量の少ない!大衆車を出せば良かったか?

    アリアは、一番最初に出すべき車だった?(汗)

  6. B6 Limitedは660万円、B6 e-4ORCE Limitedは720万円なので、差額は80万円ではなく60万円だと思います。

    1. Brownie さま、ご指摘ありがとうございます!

      ぶわーっと書きながら、B9の枠を見て算数しちゃってたようです。
      記事本文、修正しました。
      ありがとうございました!

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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