『Japan EV Meetup 2021』箱根大観山で開催〜タイカンやモデル3の試乗が大人気

「電気自動車オーナーの、電気自動車オーナーによる、電気自動車オーナーじゃない方のための」イベント、『Japan EV Meetup 2021』が、箱根の大観山駐車場で開催されました。今回は同時に『EV Test Drive Powered by EVsmart』として試乗会も実施しました。会場の様子をリポートします。

『Japan EV Meetup 2021』箱根大観山で開催〜タイカンやモデル3の試乗が大人気

富士山と芦ノ湖を望む大観山にEVが集合!

2021年11月7日(日)、ちょっと曇った空と冷たい風が吹くターンパイク箱根の大観山駐車場で、「WE LOVE EV」を合言葉に電気自動車(EV)の楽しさを知ってもらうイベント、『Japan EV Meetup 2021 Hakone』(JEM)が開催されました。

昨年に続き2回目の開催となるこのイベントの特徴は、EVオーナーたちが自ら集まり、EVオーナーではない人たちに向けて情報発信し、普及を目指していること。「電気自動車オーナーの、電気自動車オーナーによる、電気自動車オーナーじゃない方のため」の手作りイベントなのです。

だから参加費は、EVに乗っている人は2500円で、内燃機関(ICE)やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車の人は無料です。とにかく「EV乗りではない人」に手厚いんです。

昨年(第1回)のJEMでは、EVで「WE ♡ EV」の車文字を描くのがメインイベントでしたが、今年はもっと直接的にEV普及につながる内容になりました。

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第2回のテーマは、ズバリ、「体感(TAIKAN)」です。EVに乗ったことのある人なら感じると思いますが、知らない人にはまず、乗って「体感」してもらうのが一番効果的ですよね。ということで、今回はEV試乗会として『EV Test Drive Powered by EVsmart』が併催されました。

試乗会は名前の通り、『EVsmart』(運営会社のアユダンテ)が全面協力。テスラの『モデル3』2台を試乗車用に提供しました。さらにポルシェジャパンは『タイカン』を試乗用に持ち込んでくれたのでした。『タイカン』を体感できる機会なんて、そうそうあるものではございません。文字通り「大観山でタイカンを体感」です。

EVsmartブログ編集部も、代表の安川さん、編集長の寄本さん以下、箱守さん、石井さんと、筆者・木野が現地に集合しました。編集長と筆者は『Honda e』の広報車を借りて行ったほか、箱守さんは自前の『i-MiEV(SCiB搭載)』で参集。石井さんは自前のテスラ『モデル3 パフォーマンス』を試乗車にも使い、盛況だった試乗会のアテンドも務めたのでした。

それにしてもターンパイク頂上の大観山駐車場の一角を占有して、ターンパイクで試乗会までやってしまった主催者、ハマーさん(Twitterアカウント @hammernocar)を中心とした有志グループの人たちには敬服します。そう思ってハマーさんに聞くと、「勇気があればできますよ」と、少しの気負いも感じさせないコメントが返ってきました。

その勇気に触れると、気温8度、風速5m弱、体感温度3度の大観山駐車場が、なんとはなしに少し暖かくなったような気がしたのでした。

EVsmartもブースを出展

イベント開始時間の午前9時になると、来場者用の駐車場は早くも満車状態でした。車種はテスラ『モデル3』が圧倒的に多く、次は日産『リーフ』、他には三菱『i-MiEV』やホンダ『Honda e』も1台だけ来ていました。

来場した車は、EVと内燃機関の車を合わせて、午前と午後に各50台。駐車場の関係で、チケットはこれで打ち切りだったそうです。

実のところ、日本ではマツダ、アウディ、メルセデス・ベンツ、プジョーなどいろいろなEVが販売されているので、今年は去年以上にバリエーション豊かな車種が集まるかもしれないと期待していたのですが、なかなか厳しいのかもしれないなあと、この点はちょっと残念ポイントでした。

これからも車種は増えるので、もっともっといろいろなEVが集まって、日本のEV市場が活性化していることが見えるといいなあと思います。来年以降に期待したいところです。

イベントのメイン会場は、大観山の頂上『アネスト岩田スカイラウンジ』の対面に位置する駐車場です。駐車場には昨年同様、イベントの協力企業がそれぞれのブースを出していました。

EVsmartもテントを出して、『EVsmart』アプリの説明をするのと同時に、箱守さんはi-MiEVからミーブパワーボックスで電気を取り出して焼き芋を作り、寄本編集長は『Honda e Advance』が装備している100V/1500Wのコンセントを使って、コーヒーメーカーでコーヒーを提供しようと奮闘していました。こういう時には100Vコンセントがすごく重宝します。

展示会場にはほかに、EVsmartブログではお馴染みと言っていい、課金できる普通充電器を販売している『ジゴワッツ』、マンションに充電器を設置する『ユアスタンド』、充電設備周辺のおいしいお店をシェアするグループ『EVごはん』、ユビ電のEV充電サービス『WeCharge』、テスラ用オリジナルパーツを開発、販売しているビーライトの『TBR』、車用品からオフィス用グッズまで幅広い商品を扱う『オンリースタイル』などがブースを出して展示などをしたほか、ポルシェジャパンが『タイカン ターボS』(2468万円〜!)を展示して注目を集めていました。

このほか来場者用駐車場では、テスラオーナーのための企画『TESLA Mobile Service Gathering』として、テスラのモバイルサービスカーが来場。実際にテスラのメンテナンスを実施していました。モバイルサービスの対象範囲ではないオーナーさんには嬉しい企画ですね

大盛況だったEV試乗会

さて、併催の試乗会『EV Test Drive Powered by EVsmart』は、予想通り大盛況でした。試乗車は、前述のようにEVsmart提供の『テスラ モデル3』が2台と、ポルシェジャパン提供の『タイカン』の、合計3台です。

試乗車は、自分で運転することもできますし、助手席などへの同乗もOKでした。コースはアネスト岩田ターンパイク箱根を、大観山から下っていって、途中の駐車場でUターンして戻ってくる、15分程度のルートです。通常、ターンパイクはUターン禁止ですが、特別に許可を取って実施しました。

さすがに自由にアクセルを踏むのは危険なので、先導車について走るスタイルです。それでも午前9時の試乗会開始から、どの車も試乗枠がどんどん埋まっていきました。実は筆者も密かに『タイカン』に乗ろうかと思っていたのですが、来場者だけで満員でした。

試乗会に一番乗りをした年配の男性は、『タイカン』に乗るためにイベントに来たと言っていました。普段は『モデル3』に乗っているそうです。その前はBMW『435i』だったそうですが、『モデル3』に試乗してすぐに、WEBサイトで「ポチりました」とのこと。

初めて『タイカン』に乗った感想は、「いいですねえ」。欲を言えば、もっとアクセルを踏み込んでみたかったそうです。まあそれは、木更津にできたPECへ行くとか、またの機会の楽しみにとっておいていただきましょう。

EVsmartで『モデル3』の試乗会を担当した石井さんに様子を聞くと、試乗会で乗った人のうち、半分くらいがEVは始めてだったそうです。イベントの目的がちゃんと達成できている感じです。

ポルシェジャパンのタイカンのナンバーが「800」なのは、システム総電圧の800Vにあやかっているそうです。

ほかは、リーフに乗っている人や、テスラの納車待ちの人が多かったそうです。試乗枠は、午前が5組、午後が5組なので、『モデル3』には合計20組の人たちが試乗したことになります。『タイカン』とあわせると30組の人に、EVを「体感」してもらうことができました。

石井さんによれば、「テストドライブは、ふつうは市街地なので、ターンパイクで走れたのはいい機会だったという人が多かった」と言います。確かに街中で乗るのとターンパイクでは、車の印象がまったく違うのかもしれません。山頂からの上り下りなのでEV特有の回生ブレーキの感じも味わえますし、なんといっても景色と空気がいいですからね。

ハワイからのYouTuberや旧車好きの若者まで幅広い来場者

今回、大観山で開催したことによる最大のメリットは、通りがかりの人がふらっと立ち寄ってくれたことかもしれません。東京から来たという社会人2年目の若者4人組は、4人それぞれが別々の車で大観山に来て、ほんとうは紅葉が見たかったそうですが、いまいち紅葉してなかった代わりに『JEM』に遭遇したそうです。

乗っている車は、初代コペンがATのほかはいずれもMT車で、『WRX』『NDロードスター』、それに平成元年式の『ローレル』とのこと。どれだけ車好きなんだろうと思います。4人組と話をしていた寄本編集長はちょっと嬉しそうに、「君たちみたいな若い人がEVを買うようになるといいんだよね」と言っていました。まったく同感です。

4人組の若者たち。手書きボードの意味は、後日別記事でレポートします。(寄本)

来場者の中での変わり種は、ハワイからやってきたYouTuberの、「れすちゃん」でしょう。本来はカメラマンなのですが、コロナ禍の中で仕事が「100%なくなって」しまい、かといってなにもせずにいるわけにはいかないので、自分のスキルアップを兼ねてYouTubeチャンネル『Teslaloha – Tesla & Hawaii Life テスラとハワイライフ』を始めたそうです。乗っている車はテスラの『モデルY』とのこと。

今回は、JEMに出展もしている『EVごはん』の主催者の方からイベントがあると聞き、来たそうです。もちろんイベントのために来日したわけではないのですが、JEMの前日に隔離がとけて、ギリギリで来場できたことをとても喜んでいました。レスちゃんによれば、ハワイにはこうしたEVだけのイベントはないので、とても新鮮だったそうです。れすちゃんは、カメラを手に一所懸命に展示ブースを回って説明を聞いていました。

来年以降のJEMの進化に期待がふくらむ

第2回のJEMは、会場の広さの関係で規模こそ昨年よりこじんまりとしていましたが、多くの人にEVを見てもらうという意味ではとてもいい場所だったように感じました。主催者のハマーさんによれば、大観山は月に1回の定例オフ会『EV朝箱』の集合場所だそうで、土地勘があったこととともに、「試乗は体感だよね、ターンパイクがおもしろいんじゃないのっていう話になった」そうです。

それで管理会社に使用料などを聞いてみると、「値段も回せそうだったので、じゃあ、やっちゃおう!」ということになったそうです。

『JEM』のイベントなので、もちろんメインコンセプトは昨年同様に、「電気自動車オーナーの、電気自動車オーナーによる、電気自動車オーナーじゃない方のため」(of the EV owner by the EV owner for the non EV owner)のイベントなのですが、来年からはもう少し形を変えていくようです。

主催者のハマーさん。

ハマーさんによれば、来年からは「地方型のイベントをやろうかなと思っています」とのことです。

「大きな所で年に1回やるスタイルはキープしたいと思っているのですが、それ以外に、もっと短いスパンで、あまり大きくしないで試乗会をメインにしたイベントをやりたいと思っているんです。試乗中心のイベントにEVオーナーが来る感じですね。関係者からは、地方の市場を開拓したいというご意見もあります。首都圏は情報網やディーラーがありますが、地方は少ないですから。メーカーさんもそういう方向に目を向けているのではないかと思うんです」

加えて、場所についてもハマーさんには目論見があるそうです。

「EVの充電器がある場所ではなくて、『ここにあったらいいな』っていう場所を積極的に選んでいきたいんです。テスラーオーナーさんだとスーパーチャージャーの近くがいいんでしょうけど、そうではなくて、あったらいいなっていう場所ですね」

「それから普通充電器設置の啓蒙もしていきたいと思っているんです。こんなに電気自動車がいるんですよ、だから普通充電器を5台くらい並べるのはどうですかっていうのを伝えたい」

ハマーさんはまた、無料充電に行きがちな風潮も変えていきたいと言います。

「お金が回らないと絶対に長続きしない。充電事業者にも儲かってほしいし、設置するレストランにも儲かってもらわないといけないから、そのためにはお金を使う事の意識付けが重要じゃないかという思いがあるんです」

だからJEMでも、EVオーナーはあえて有料にしているそうです。そうして「みんなでお金を使いつつ仲間を増やして、オーナーが増えれば充電器が増えます。それが回り出して、やっぱりみんなお金使って増えた方がいいよね、充電器付ければお客さん増えるねっていうサイクルの、最初を推したいですね」と、ハマーさんはこれからのことを語ってくれました。

ところで、昨年の富士の朝霧高原といい、今回の大観山といい、山の上のイベントはEVには厳しいのではないかとも思ったのですが、ハマーさんは「あまり考えてないですね。富士山にこだわって2年間という感じです」とスルーでした。

そしてハマーさんは最後に、「体験、体感し、みんなでお金を使って、みんなで経済を回したい。みんなで使いやすいインフラ環境をゲットしていきたいんです」と明るく宣言しました。明るい未来はここから見えてくるのかもしれません。これからの『JEM』の進化に期待大なのです。

(取材・文/木野 龍逸)

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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