【元記事】Elon Musk Hints CCS Plugs Coming To Tesla Supercharger Locations In The US by Steve Hanley on『CleanTechnica』
イーロンがCCS充電ケーブルがテスラ・スーパーチャージャーの一部に導入されるかもしれないと示唆
フィナンシャル・タイムズの長いインタビュー(1時間20分のお時間があれば、YouTube上で全体を聞くことができます)でイーロン・マスクは「欧州ではすでにテスラ・スーパーチャージャーを他メーカーの電気自動車に開放していますし、これから世界でもそうするつもりです。米国は他の地域と違うコネクターを使っているので少しやりにくいんですが、スーパーチャージャーに他規格のコネクターをオプションとして付けます。電動化を押し進めるために正しいことをするため、ベストを尽くしています。たとえそれによって競合性のアドバンテージが減少しても、です」と話しました。
商取引を可能にするのが規格です。ロシアと中国では電車の線路幅が違うために、国を渡る際には国境で止まり、クレーンで車体を持ち上げて車幅をスライドさせて調整してから旅を続けなければならないのです。これで進行は間違いなく遅くなります。
車やトラックのタイヤの大きさはすべてインチで表されます。なぜミリメートルやオングストロームではないのでしょうか。理由は別の基準を使ってホイールやタイヤを生産すると混乱を招き、収益性も悪くなるからです。フィートやインチが他の単位より優れている部分はありません(メートル法には色々言いたいことはありますが)が、何はともあれ、インチは1世紀前に車やトラックのホイールの基準になり、世界の大部分で使われています。
EV充電においては、世界基準がありません。テスラは独自規格の充電プラグとともに始まりましたが、それは誰も基準を考えることに興味が無かったためです。日本ではCHAdeMOがスタンダードとして受け入れられており、中国にも独自の基準があります。ヨーロッパと英国はCCS2を採用しました。米国もCCSを採用しましたが、欧州のコネクターと微妙に違っており、北米のものはCCS1として知られています。
充電規格の違い
私はジャーナリストとして浅く広く知識を持っていますが、深く知っているものは何もありません(たぶんWordPressの使い方は例外ですが)。しかし質問に対する答えをどう見つけるかは分かっており、様々な充電規格に関する詳細な分析をしているSirEDCaLotという人物のコメントをRedditのEVフォーラムで発見しました。
欧州レベル2は『mennekes タイプ2』コネクター。三相交流をサポートしている。欧州CCSは2つのDCピンが下部についたmennekesコネクターで、CCS タイプ2もしくはCCS 2と呼ばれている。米国レベル2はJ1772コネクター。三相はあまりないので、単相交流をサポートしている。米国CCSはJ1772コネクターに2つの下部にDCピンがついていて、CCSと呼ばれている。
欧州ではテスラはタイプ2コネクターを独自技術で使えるようにしており、どの普通コネクターを使ってもL2スピードで充電できるようにしている。スーパーチャージャーからのDC充電もタイプ2コネクターで行える。米国でのテスラ車はL1、L2、DC充電をサポートしている独自コネクターを使う。J1772にも簡単に適応でき、新し目の車両ではアダプター利用でCCSも使える(古い年式のテスラ車ではこのアダプターは使えない)。
よって理想的なのはテスラの独自コネクターがなくなり、すべてのテスラ車両とスーパーチャージャーがCCSポートを使えるようになる事。個人的にはこれが最終的にテスラが向かう方向だと考えている。でも互換性は残される必要がある。
別の投稿者の「スタンダードなコネクターがCCSより、米国テスラのようなものだったら良いのに。何で(CCS)コネクターがあんなに大きくて重いのか分からない。ひどい設計だよ」という文句に対してのSirEDCaLotの回答は……
誰が設計したかの違い。テスラは主にIT業界の人に設計されていて、小さくて効率的に動く。J1772はSAE(自動車技術者協会)が大勢の電気技師と一緒に設計した。大きくて、ガッツリと絶縁したコネクターを作った。
違いはスペックを見るとさらに明瞭。例えば、テスラは車と充電器の間でCAN BUS接続をしている。車の様々な部品がCAN BUSでお互いに通信し、オフボードの充電器とコミュニケーションを取るのも簡単。したがって車と充電器は交渉ができ、例えば車から今は1kWしかいらないと教えて、残りのパワーを他のEVにまわすこともできる。
一方J1772は鈍い。充電器から出るのは矩形波シグナルで、使える電流の情報を知らせる。電圧シグナルを様々な抵抗やダイオードと合わせてEVSEに送り返すことにより、車は充電器に電流を流すように伝える。
DC 急速充電器はまた異なる。DC急速充電においてオフボードの電力変換器は車側からリクエストされた通りに正確なボルト数とアンペア数で電流を流し、バッテリー充電が進むにつれ車のスペックによって常にボルトを調整する必要がある。よってEVSEと車の間でコンスタントに多くのコミュニケーションを取る必要がある(「ここにいるよ」と伝えるだけでなく、実際のデータリンクが必要)。
CAN BUSに関しては、テスラは充電器が提供して車が受け入れるモードを1つ追加するだけで良かった。車と充電器はコミュニケーションを取り続けることができるし、車は必要電気をリアルタイムで伝えられた。
しかしCCS1では、まったく新しいコミュニケーションシステムが必要とされた。HomePlug Green PLC(電力線コミュニケーション)と呼ばれる、電力線上でデータリンクを作るもの。これがないと、DC急速充電で必要な継続的な充電器の出力調整を車はできない。
率直に言って、様々な充電プロトコルの説明としては私が見た中でベストな説明でしたので、今回シェアすることにしました。
テスラの今
この「誰でもスーパーチャージャーが使える」という話には多くの疑問が残っています。米国政府は国をまたがる充電ネットワークを改良するために大きな投資をする準備ができており、テスラもそこに手をつける気があるようです。しかし自社に忠実な顧客を困らせたくはないので、スーパーチャージャーの一部のみをCCSに改造したいようです。10機中4機が良い配分でしょうが、政府は補助金を前に数を増やしてほしがるかもしれません。
またテスラ以外のドライバーがどのように支払いをするのかも明らかに分かっていません。スーパーチャージャー用に月額払いのサブスクモデルを用意し、テスラドライバーと同じレートで電気代を払うのかもしれません。現時点ではどのようになるのか分かっていないのです。私達が知る頃には読者の皆さんも分かっていることでしょう。
明らかなのはCCSがEV充電バトルで勝ち始めたということです。そう遠くない未来に、美しくエレガントなスーパーチャージャーコネクターは消え去って、現在の欧州テスラと同じように、北米で売られる車はすべてCCSソケット付きで工場から出てくるようになるのかもしれません。それまでは、家を出る際には充電アダプターコレクションを忘れずに持ち歩くようにしましょう。
(翻訳・文/杉田 明子)