浜松SAには全部で8台分の急速充電器がズラリ
2023年3月2日、ようやくこの日が訪れました。新東名高速道路の浜松SA(上下線)と、駿河湾沼津SA(上下線)に最大出力150kWの新型急速充電器が設置されました。さらに、浜松SA(上下)にはニチコン製のマルチプラグ器(最大90kW)6口を併設。駿河湾沼津SAでも、下り線にはニチコンのマルチプラグ器を4口、上り線にはABB製の最大56kW×2口器を2基併設。浜松SAでは全部でEVなど8台分(既設器を入れると当面9基)、駿河湾沼津では6台分の急速充電器が並ぶことになったのです。
まず、2カ所のSAに設置された最大150kW器は、ABB製のTerra184という機種です。定格出力は180kWでマルチプラグ(ケーブル2本出し)になっており、1台で使用時は最大150kW、2台同時充電器にはそれぞれ最大90kWの出力となります。ただし、ケーブルは90kW器と同じ仕様で、最大150kWの出力が得られるのは充電開始から最大で15分間に制限するブーストモードが採用されています。
お披露目セレモニーで快適な急速充電環境実現を実感
3月2日正午からの運用開始を前に、浜松SA下り線でメディア向けの事前公開(お披露目セレモニー)が開催されたので取材に行ってきました。今回の急速充電器は、NEXCO中日本と株式会社e-Mobility Power(eMP)が設置したもので、セレモニーではeMPの四ツ柳尚子(よつやなぎ しょうこ)社長が「高出力で充電したいというニーズに応え、充電待ちの不安を解消するための施設を実現できた」と挨拶したのに続き、ABBのE-mobility事業部長兼フィールドサービス部長の片岡幸朗(ゆきお)氏と、ニチコンのV2H・急速充電器グループビジネスグループ長の関宏氏が自社製急速充電器の機能説明などを行いました。
NEXCO中日本からは広報課課長代理の野口哲史氏が臨席。関係者のみなさんの晴れやかな笑顔が印象的なセレモニーとなりました。東京〜大阪間の大動脈路線を管轄していることもあるのでしょうが、NEXCO中日本は2010年代前半のEV普及黎明期から、全国の高速道路会社の先陣を切ってSAやPA(パーキングエリア)へのEV用急速充電インフラ拡充に取り組んできてくれています。
浜松SAに新設された充電スペースには、8台のEVが同時に充電できる高出力急速充電器がズラリ。日本のEVユーザーにとっては、まさに夢見た光景が出現しました。関係者のみなさん、ありがとうございます。そして、今後はさらに全国各地のSAPAで「高出力器複数台設置」が進んでいくことを願っています。
挨拶と機種解説に続いて、150kW器による充電のデモンストレーションもありました。日産が用意したアリアB9 e-forceは、120kW以上。eMP社員の方のマイカーというBMW i4では、140kWを超える出力で充電できていることが確認できました。
新設された急速充電器についてのTIPS
当面はそうそう充電待ちの心配はないだろうというスポットなので、いろんなプラグイン車がどんどん充電すればいい話であり、大きなお世話気味ではありますが。新設された急速充電器について、EVユーザー目線でいくつかの留意点というか、使用時の注意事項を挙げておきたいと思います。
サクラやアウトランダーPHEVではニチコンを優先的に
まず、日本では初設置というABB製の150kW器。これは、急速充電器の最大出力が150kW級(400V×350A)ということであり、充電する車種によって受入可能な出力は異なります。したがって、急速充電出力が最大30kWに抑えられている日産サクラや三菱eKクロスEV、また、最大電流が105A程度の三菱アウトランダーPHEVや、最大50kW以下に制限されている旧型リーフ、三菱アイミーブなどで充電しても、車両側で受入可能な出力でしか充電できません。150kW器の恩恵を得られるのは、日産アリアや輸入EVの一部など、90kWを超えるような高出力急速充電に対応した車種ならではということは理解しておきましょう。
ニチコンのマルチプラグ器が空いているのに、急速充電性能が低いEVやPHEVが150kW器を使っていて、後から高出力対応のEVが入ってきたら少し気の毒(せっかくの高出力急速充電性能を発揮できない)なことになります。自分のEVがどのくらいの出力で急速充電できるのかということを確認しておき「90kWは無理」な車種であれば、できるだけ150kW器は空けておいてあげるよう配慮(もちろん、他が満車なら気にする必要はないですけど)するのがスマートです。
ABB製新型器はヒョンデIONIQ 5も対応済み
新設された150kW級急速充電器はABB製です。高速道路でABB製の急速充電器というと、今回、駿河湾沼津SA上り線にも設置された56kW×2口器と同じものがあちこちに増えつつあって、ヒョンデ IONIQ 5 でエラーが出て充電できないという事例を耳にしていました。というわけで、取材にはエニカで IONIQ 5 を借りて行き、ABB150kW器での充電を試してみました。
結果は問題なし。30分間ほぼぶっ通しで80kW以上(おそらく200Aの最大電流)出て、30分間で40kWhほど充電できました。
eMP関係者にヒアリングしたところ、ABB製マルチプラグ器と IONIQ 5 で起こる不具合の原因は判明していて、新設の150kW器では充電器側ソフトウェアのアップデートなどで対応済み。既設の120kW器(56kW×2口器)も、順次アップデートしていくということでした。
さらに、120kW器は現在最大出力56kWでの運用となっていますが、充電器自体のポテンシャルは120kWであり、今後は1台充電時には最大90kW出力へアップデートしていく計画もあるとのこと。コストパフォーマンス良く高出力器複数台設置を進めるためのひとつの策だと思います。期待しています。
「ニチコンマルチプラグ器使えない」問題も解決へ進行中
浜松SA上下線や駿河湾沼津下り線に設置されたニチコンのマルチプラグ器については、一部車両で充電できない不具合が確認(eMPのリリース)されました。今後、同型器が各地に増えてくるのですから、どうなの? は気になるところです。
これも、現地で関係者に確認したところ、現状で充電できないポルシェタイカンとアウディe-tron GTについては、車両側のソフトウェアアップデートで対応できる見込みということで、解決に向けて進んでいるようです。Honda-e も車両側のソフトウェアアップデートが必要なので、オーナーの方はディーラーに確認してください。
また、複数台充電時に出力を制御するダイナミックコントロールへの対応で、テスラ車やミニキャブミーブで出力が20kWしか出ないという不具合もありました。ミニキャブミーブの場合、まあ20kWでもいいんじゃないかという気もしますが。テスラ車のダイナミックコントロール対応については、まだとくに動きはないようです。とはいえ、今回の2カ所の場合は併設の150kWを使えば、CHAdeMOアダプターが対応する最大50kW(125A)で充電可能。そういう意味でも、ニチコンマルチプラグ器に150kW器併設の意義は大きいですね。
ただし、今、eMPでは各地のSAPAにニチコンマルチプラグ器の新設を進めていますが、全ての場所に150kW器を併設するわけではないとのこと。まあ、テスラオーナーのみなさんは高速SAPAより自前のスーパーチャージャーを利用すればいいってことではありますが……。これから増えてくる充電器なので、自分のEVでちゃんと使えるのかどうか、いざというロングドライブ時のために、あらかじめ確認しておくのがいいですね。
eMP採用機種をテストできる施設も用意
ニチコンのマルチプラグだけでなく、チャデモ規格の急速充電器機種によっては、一部の車種で充電できないなどの不具合が起こることも報告(eMPのリリース)されています。充電器も車両も同じ規格を守って作られてるのに、どうしてこんなことが起こるのか不思議なところではありますが……。
この点も関係者にヒアリングしたところ、現在、eMPが新設や置換を進めている急速充電器は機種を限定していることもあり、すでに、新型車がeMPの急速充電器機種を全部まとめてテストできる施設を用意しているということでした。既設充電器の不具合は「車両メーカー、充電器メーカーと共に、原因解明と不具合の解消に向けて取り組んでいる」としか言えないところもあるようですが。新設器への置き換えが進むにつれて「チャデモ規格、大丈夫か?」の懸念が徐々に薄らいでいくのかも知れません。
4台同時充電でありがたさを痛感
浜松SAからの帰り道。東京まで戻れる電池残量はあったのですが、できるだけバッテリー残量多くシェアカーを返却してあげたかったこともあり、せっかくなので同時に運用開始された駿河湾沼津SA上り線で急速充電を行いました。
駿河湾沼津SA、下り線は浜松へ向かう往路で立ち寄ってみて、ニチコンマルチプラグ器と150kW器併設であることを確認していました。上り線は、150kW器1基(2口)と、ABBの120kW器2基(各2口)が設置されていました。
すると、EVsmartブログにも寄稿してもらっているライター篠原さんのHonda-e、そしてセレモニーに出席していた日産関係者のアリアが2台。合計4台のEVが同時に充電するというシチュエーションになったのでした。以前から、EV関係のイベントに参加するとルート上で充電渋滞は覚悟の上! が当たり前でした。でも、6台分とか8台分の充電器が並んでいれば、同時に4台なんてへっちゃらです。本当に、高出力器複数台設置のありがたさを実感できました。
ニチコンのマルチプラグ器や150kW器。eMPから正式に運用開始が発表されたのは浜松と駿河湾沼津だけですが、常磐道友部SA、関越道上里SA、山陽道吉備SAなどにも続々と設置されていて、EVsmartで検索するとすでに利用可能になっているスポットもあるようです。正式に発表されたら、改めて記事にしたいと思います。
浜松SAや駿河湾沼津SAで実現した急速充電器の風景が、日本の高速道路基幹SAPAでは「当たり前」になる日が、一日でも早く訪れますように。
取材・文/寄本 好則
以前公表のあった「充電不具合」への対応は済んだのでしょうか?
その進捗が気になっています。
もし、未済または一部対応済みでしたら事前に判断できるような手段が必要かと思います(車両と不具合の詳細をスポット情報に付記するなど)。
個人的には複数同時接続を朗報だと思っているほうですが、
ブースターモードやダイナミックコントロール等の説明は利用者にとって大切な情報でもありますのでこちらについても理解を促す方策を提示していただけると幸いです。
ようやく重い腰が持ち上がったのでしょうか。昨日(3/7)中央道双葉SA上り線で充電後、本線入口近くに3基6口の急速充電器設置工事中を発見しました。おそらく1、2ヶ月以内には稼働しそうな様子でした。ただ、動線上もう本線に向かうしかない辺りだったので、設置位置の問題はありますが。
「どんなBEVでも充電器を差せば利用可能な最大容量で充電できる」という状態が「理想」ではなく「当然」となるべきなのでしょうが、チャデモにはユーザーが解決できない「クセ」があり、腕組みをしてしまうケースも少なくありません。
ガソリンスタンドでは、店員さんに「満タン」といえば給油してくれて、現金をはじめ様々な支払方法がありますが(セルフ給油でも現金決済可能)、急速充電ではスマホや充電カードが必須の場合がほとんどで、現金で決済できるケースは非常に稀です。ITの活用で便利になったようで、人によっては利用することさえできません。
BEVの普及を促すには、そういうところにも目を向けていかなければならないように感じます。
マルチプラグ機は相変わらず50kW用のケーブルなんでしょうか?
将来性考えるとせめて90kW用のケーブル使ってもらえないかなあと思います
ケーブルが重く太くコストも高くなるのはわかりますが……
まあ、数が多いリーフとサクラがマルチプラグ機使えばそうそう150kW埋まらないからそんなに困らないかもですが
ただマルチプラグ機のみ設置される予定のところもあるようなのでやっぱり15分ブースト仕様はいただけないかも
アイオニック5でビジター充電です。
駿河湾沼津SA下りニチコン4口は問題なく充電できましたが、浜松SA上りニチコン6口は何度やってもダメで、となりのABB150kwは問題なく充電できました。
コンビニのABB2口56kwはやはりダメでした。
浜松SA下りニチコン6口は充電エラーというより、サーバーとの通信に問題があるようでした。アプリは普通に動作するのに充電器自体の反応が全くなく、別の充電器に移動しても同じです。なんとなく充電カードなら問題なく使えそうな気がします。
ニチコンマルチプラグ器と各種テスラの相性はどうなんでしょうか?普通に充電可能なのでしょうか?