買い物から仕事まで活躍する我が家のEV〜「サクラ」の使いこなし方

初めて自己所有する電気自動車、日産サクラが納車され半年以上が経過した。日々の足としてすっかり生活に馴染んできたが、買い物や旅行、仕事に使っていると、いろいろ欲がでてくる。本記事では、まず、EVとしてのサクラの使いこなし方についての気付きをまとめてみた。

買い物から仕事まで活躍する我が家のEV〜「サクラ」の使いこなし方

自宅普通充電での運用が最強のサクラ

サクラの20kWhのバッテリーは、買い物や普段の移動なら家の普通充電だけでまったく不自由はない。サクラの普通充電は2.9kWまでに制限されているので、40A以上の契約ならばEVのために電力契約を変更する必要はおそらくない。自宅は40Aの電灯線B(夜間割引あり)の電力プロバイダのプランを利用している。エアコンや炊飯器の利用に注意すれば昼間でもEV充電は可能だ。半年の運用でブレーカーが落ちたことはない。評価試乗で借りたプジョーe-208やフィアット500eなど輸入車を自宅で充電したときはエアコン稼働中だとブレーカーが落ちることがあった。

自宅ガレージのEV充電用200Vコンセント。

外充電もなるべく普通充電を探すようにしている。仕事や旅行ではDC急速充電が欠かせないが、バッテリーの保護を考えると急速充電だけの運用は避けたいからだ。また、サクラの場合、大出力の急速充電器の性能を生かせず(後述)、単位時間あたりの充電料金が高めになる。

結局、自宅充電がコスト(40円/kWhとしても満充電で800円)および使い勝手もよいことになる。自宅普通充電を基本に、外出先では普通充電ができる場所を探す。急速充電は仕事や旅行などに温存するようにしている。最近では、EV用普通充電器の有無が店や駐車場を選ぶ基準にもなっている。

自分が契約した日産の充電カード(ZESP3 プレミアム10)は、eMP、エネチェンジの普通充電器が月額料金のみで何回でも使えるので、商業施設や駐車場の普通充電器がもっと増えることに期待している。
(編集部注※日産ZESP3は9月1日以降、料金の改定が発表されました。プレミアムプランの普通充電は月額料金内で600分が上限となり、以降は分単位で都度課金となります。詳しくは関連記事をご参照ください)

サクラと急速充電の微妙な関係

サクラは、バッテリー容量が小さく急速充電受入出力の制御を行っているので、コンビニの25kW充電器でもディーラーの90kW充電器でも30分で8~9kWhくらいしか入らない。CHAdeMOの課金システムは出力従量ではなく時間従量なので、大きいバッテリーで車両側の充電能力があれば充電器の出力が高いほど、同じ料金プランでも多く充電できることになる。サクラの30分9kWh分とアリアの30分36kWh(関連記事)が同じ料金ということだ。

そう考えるとサクラでの急速充電はバカらしいとさえ思えるが、逆にいえば、残量0でも1時間あればほぼ満充電まで可能な計算となる。実際、これまでの運用では、残量30%以上あれば充電器を選ばず30分で80%以上までの充電が可能だ。充電器の出力や機種を気にせず安定した充電結果が予想できるのは、長距離移動でメリットと言える。

旅行や長距離移動も慣れてくると、経路充電、目的地充電の勘所がつかめるので、いまのところ不便を感じない。月数回の仕事での利用でも、前日に100%にしておけば片道100キロ前後なら経路充電1回を目安に茨城、千葉、埼玉あたりは問題なくこなしている。城里(茨城県)のJARIテストコースまで147kmの往路を無充電で遠征したこともある(天候条件もよく、事前にテストコースの充電器が利用できることを確認していたので)。

サクラのような、小容量のバッテリーのEVは、絶対的な航続距離がとれない。EVとしての性能は低いと言わざるを得ない。しかし、日本の住宅事情、電力規格、インフラ事情は逆説的にサクラ向きともいえる。個別車種のユーザーとしてはうれしい半面、EV市場全体を考えると、これはむしろ憂慮すべき事態で、日本の風土に見合ったEV市場だと手放しで喜べない。貧弱なエネルギーインフラを運用と工夫で対処するのも重要だが、経済や産業という側面では、インフラ強化を目指さないと国際競争力は育たない。

プロパイロットは特性を理解すれば快適そのもの

買い物の足以外、仕事や旅行などにもサクラを使い始めると、いろいろ不満もでてくる。とはいえ、車両の運動性能にとくに不満はない。ブレーキフィールはリーフより良くなっているし、アクセルオフ(回生ブレーキ)の減速感も安心感がある。200Nmのトルクは、3名乗車・旅行バッグ2つ載せた状態でも筑波山をストレスフリーで登っていった。

なお、筆者は完全停止e-Pedalが好みなので、サクラが採用しているクリープがあるe-Pedalはちょっと残念だった。普段はBモード+e-Pedalオン+自動ブレーキホールドオンで運転している。

内装やボディまわりなど軽自動車の域を出ない部分はあるが、モータートルクの運転のしやすさ、静粛性、プロパイロットの利便性でトレードオフできる範囲だ。高速道路では80km/hから100km/h以下の設定でプロパイロットを積極活用すると、本当に疲れないで長距離移動ができる。

ただ、プロパイロットの制御はもう少し街中でのシチュエーションを考慮してほしい。安全性担保の問題もあるが、信号で停止車両が見えているのに、車間距離があるため加速または速度維持しながら、衝突警報を出して減速するのはいい制御とはえいない。個人的には、前方車両を検知してからの減速制御やブレーキングが少し遅い気がする。ACCやLKAの制御は各社のクセや特性、設計ポリシーがあるので、これはドライバーが特性を理解して使う必要がある。私見だがADAS、レベル3までの自動運転(支援)はそういうものだと理解している。

アクセサリーやユーティリティ

アクセサリーやユーティリティでも欲がでてくる。付けてよかったと思うパーツ・オプションは、新車ボディコーティングとドアハンドル部分のプロテクターだ。

軽自動車にボディコーティングはもったいないと思うかもしれないが、施工車は、その後の洗車や手入れが極めて簡単で塗装やボディの痛みも違う。4~5年間のワックスがけ等の手間・コストを考えたら見合う投資だと思う。プロテクターは、ドアハンドルまわりの傷を保護する樹脂カバー。グリップ式のドアハンドルのあるあるは、爪でボディに無数の傷を作ってしまうこと。掃除や補修もしにくい部分なのでプロテクターをつけておいて損はない。

運転席まわりでは、センターコンソールがないこと、スマホホルダーを取り付ける場所がないことも運転していて不便を感じた点だ。全幅が1480mmという軽規格のため、ユーティリティ類が制限されるのはいたしかたないが、個人的には運転席のひじ掛けをつけるなら、コンソールボックスやトレーをつけてほしかった。なお、コンソールボックスの代わりとして、オプションでシート中央の下に引き出し(シートアンダードロー)がある。

改造前のスマホトレー。

スマホは、センターパネルにあるトレーに置けるようになっているが、ワイヤレス充電(Qi=チー)器になっていない。これもオプションでQi対応のトレー(15W)を追加できるが、価格が34,800円もする。量販店で2000円も出せばワイヤレス充電器が手に入るのに、3万円オーバーでは、センターパネルトレーにぴったり収まる純正デザインとはいえ手が出しにくい。

次回記事では、この不満を解決するために行ったDIYについてレポートしたい。

文/中尾 真二

この記事のコメント(新着順)5件

  1. 40Aの契約では充電時に10.5Aの余裕しかなく、「エアコンや炊飯器の利用に注意すれば昼間でもEV充電は可能だ。」とあるように、充電時のその時の電気の使用状況で主幹ブレーカー落ちます。
    輸入車も普通充電ケーブルは200V15Aが通常ですので、サクラなので大丈夫ということではないと思います。(車の車載充電器が200V30A(6kW)に対応しているからといって、普通充電ケーブル(200V15A)を使った場合は3kWでの充電です。)
    50A以上の契約にしたほうが安心なのかな?

  2. プロパイロットは高速道路や自動車専用道路で使用するもので、街中で使用することは想定していないと思います。

  3. 「輸入車を自宅で充電したときはエアコン稼働中だとブレーカーが落ちることがあった」と記事にありますが、基本的に200Vの普通充電器は他の機器とは独立して配線(専用回路)とするようにメーカーの仕様書には記載されているはずです。
    https://www.mitsubishi-motors.co.jp/lineup/minicab-miev/utility/pdf/ev_phev_charger_set_201910.pdf
    「サクラの普通充電は2.9kW」とあるように200Vなら14.5Aですから、許容電流20Aの配線、分岐ブレーカーで施工されるはずです。
    輸入車は6kWに対応していて30Aを要求して個別の分岐ブレーカーが落ちたのか?エアコン稼働中にブレーカーが落ちるということは、主幹ブレーカーが落ちたのか?
    専用回路を引いていれば、エアコンの有無にかかわらず、主幹ブレーカーが落ちることはありません。このあたり補足が必要かと思います。

  4. 本日(2023年5月22日)一般公開するブログなら、下記部分には一般公開前に注釈を追記してから一般公開するべきではないですか?
    >自分が契約した日産の充電カード(ZESP3 プレミアム10)は、eMP、エネチェンジの普通充電器が月額料金のみで何回でも使える
     
    参考アドレス:2023年5月20日
    EV充電カード「日産ZESP3」サービス内容改定/3年定期割引はなくなります
    https://blog.evsmart.net/nissan/ev-charging-card-nissan-zesp3-service-content-revised/
     
    これからEVの購入を行う方へ。
    自宅充電、職場充電だけしか行わないのなら良いですが、自宅や職場以外で一定以上充電する可能性が有るならクルマだけでなく、充電会員も考慮して検討を行った方が良いと思います。
    軽乗用BEVの場合、(今後は)サクラを購入しないと契約出来ない「日産ZESP3」と(今でも)eKクロスEVを購入しないと契約出来ない「三菱電動車両サポート」も含めて検討した方が良いですよ。

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この記事の著者


					中尾 真二

中尾 真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。「レスポンス」「ダイヤモンドオンライン」「エコノミスト」「ビジネス+IT」などWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアをカバーする。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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