BMWの電気自動車がV2X機能を搭載/販売店数十カ所にパワーXの超急速充電器も!

BMWが日本で販売するEVにV2L&V2H機能を搭載することを発表。また、パワーエックスから「BMW・MINI販売店数十拠点」に最大出力150kWの超急速充電器を設置することが発表されました。BMWのEVシフトが着々と本気モードに進んでいます。

BMWの電気自動車がV2X機能を搭載/販売店数十カ所にパワーXの超急速充電器も!

ほとんどの日本発売モデルにV2X機能を搭載

2024年8月1日、ビー・エム・ダブリュー株式会社(以下、BMW)が、日本で発売する電気自動車(BEV)のほとんどのモデルに、車両に蓄えた電気を電気機器に利用できるV2L(Vehicle to Load)、車両に蓄えた電気を家庭用電源に利用できるV2H(Vehicle to Home)機能を搭載することを発表しました。

V2LやV2H(総称してV2Xと呼ばれます)は、日本が主導して策定された急速充電方式である「CHAdeMO(チャデモ)規格」に準じたもので、今回BMWが発表した対応内容の場合、ニチコンの「パワー・ムーバー」(V2L)、「EVパワー・ステーション」(V2H)など別売の外部機器を利用してクルマから電気を取り出すことが可能になります。

急速充電口からの「給電」機能はチャデモ規格の特長でもあり、欧米で多いコンボ(CCS)規格やテスラ規格では長年軽視されてきました。その影響か、輸入車ブランドの多くは日本に導入するEV車種にチャデモ規格の急速充電機能を搭載しても、V2Xには非対応であることがほとんどでした。最近になって、ヒョンデやBYDが対応し、メルセデス・ベンツでもEQSやEQEなどの一部モデルで対応するなど、少しずつ様子が変わりつつあるところです。

今回、BMWがV2X搭載を決めたのは「V2L/V2Hのニーズが高まったと判断」(BMW広報ご担当者)したのが理由とのこと。今後、「BMWが導入するBEVモデルには基本的にすべてV2X機能を搭載していく方向」です。

フルモデルチェンジを控えた『i4』や『iX3』は非対応

V2X機能を搭載するのは、BMWおよびMINIブランドの日本で発売される完全な電気自動車、ほぼすべてのモデルが対象です。ただし、『i4』と『iX3』については「数年後にフルモデルチェンジが控えているため」(BMW広報ご担当者)ということで対象外。プラグインハイブリッド(PHEV)モデルも対象外となっています。

V2X機能搭載対象モデル

<MINI>
●MINI COOPER E
●MINI COOPER SE
●MINI ACEMAN E
●MINI ACEMAN SE
●MINI COUNTRYMAN E
●MINI COUNTRYMAN SE ALL4
<BMW>
●BMW iX1 eDrive20
●BMW iX1 xDrive30
●BMW iX2 xDrive30
●BMW i5 eDrive40
●BMW i5 M60 xDrive
●BMW i5 eDrive40 Touring
●BMW i5 M60 xDrive Touring
●BMW i7 eDrive50
●BMW i7 xDrive60
●BMW i7 M70 xDrive
●BMW iX xDrive40
●BMW iX xDrive50
●BMW iX M60

MINIブランドの各モデルは発売当初からV2X機能を搭載。BMWブランドの各モデルについては、2024年7月以降の生産分にはすべて搭載。それ以前に生産されたモデルはソフトウェアアップデートが必要になる場合があるため、正規ディーラーに問い合わせるようアナウンスされています。

V2Hによる家庭への給電は災害等による停電時に限定

EVとV2H機器を組み合わせれば、たとえば自宅の太陽光発電による電気でEVを充電して(V2H機器が対応機種であれば、ですけど)、夜間の家庭用電力をEVから供給することで、電気代を節約しつつ、家庭の電力の脱炭素化を進めることができるのが魅力です。

ただし、今回のBMWのニュースリリースには「V2H機能による家庭の電源ネットワークへの給電は、災害等による停電時に限られます」という注釈がありました。

BMWに制限した理由などをメールで質問したところ、「どうやって災害による停電であることを検知するのか」とか、「給電開始は手動で操作?」といった細目については回答をいただけなかったものの、停電時限定とした理由については「電気自動車への負荷を考慮して、今回V2H機能による家庭への給電ネットワークは災害時のみと限定しました。車両に搭載されております電池は走行用であり、家庭への給電を目的とした電池ではないことをご理解ください」という回答をいただきました。

自宅太陽光発電の電気で充電はできるので、走行時の電力をよりクリーンにすることには役立ちます。とはいえ、EVを「走れる蓄電池」として日常的な電気代節約を図ることはできません。その場合、たとえばニチコンの新型EVパワー・ステーション「VSG3シリーズ」といったトライブリッド(太陽光発電、蓄電池、EVを連携させるシステム)対応機器と大容量定置型蓄電池を導入する必要があります。

もっとも、EVを電気代節約のためのV2H電池として使うことには、個人的に「クルマとして使いにくくなる」し、電気の出入り(直流=交流の変換など)でロスが大きいことから、反対とはいわないまでも「自分ちではやらなくていいか」って感じなので、BMWの「(EVは)家庭への給電を目的とした電池ではない」という回答にはある程度共感できます。

でも、V2L対応も重くて高価な外部機器が必要という点はちょっと残念。車内にAC100Vが取り出せるアクセサリーコンセントを装備したり、ヒョンデやBYD、トヨタが出してるような(ホンダからも N-VAN e: 用の純正コネクターが出ましたね)、普通充電口からACが取り出せるコネクターやアダプターがあると、より手軽&便利にEVの電気を活用できます。BMWにさらなる進化を期待したいポイントとして挙げておきます。

全国の販売店にパワーエックスの超高出力器を設置

そんなこんな、BMWへのいくつかの確認を経てこの記事を出そうとしていた8月5日、パワーエックスから「BMW・MINI販売店に超急速EV充電器の導入開始」という発表がありました。

まずは兵庫県神戸市の「BMW/ MINIハーバー神戸」に、最大出力150kW(2台同時充電時120kW)の「PowerX Hypercharger」1基(2口)を設置、運用が開始されたということです。

充電料金は「Try! PowerX」キャンペーンにより当面無料(年内目途のキャンペーン終了後は従量課金制になる予定)。BMWグループ以外のEVでも利用可能で、パワーエックスのアプリを通じて予約もできるのは、そのほかのスポットと同様です。

BMWではすでに全国数カ所の販売店などに90kW以上の超急速充電器設置を進めています。パワーエックスのリリースによると、神戸を皮切りに「全国各地の数十拠点」に設置を進めるということなので、高速道路以外の超急速充電ステーションとして、BMW販売店が大きな存在感を示すことになりそうです。

パワーエックスの広報ご担当者にモーニングコールして確認したところ、BMWの数十拠点は「年内をメドくらいのスピード感で設置を進めていきたい」とのこと。先日「まちかど超高出力器」への疑問(関連記事)を提示したばかりですが、BMWのEVオーナーサービスという手堅い利用ニーズをもつ高級EV販売店への設置はアリだと思います。

また、e-Mobility Powerによる公共充電インフラが2025年までには従量課金制(おそらく時間課金併用の制度になるでしょう)を導入し、自動車メーカー各社の充電カードの仕組みが大変革期を迎えるはず。低圧受電で蓄電するメリットを活かして、競争力が高い従量充電料金を設定してくるであろうパワーエックス Hypercharger の選択は、かなり賢明ではないかと感じています。

お盆には兵庫の実家に帰省する予定なので、神戸のBMWで充電を試してみようかな、と。

ともあれ、iX3ではメーターパネルにバッテリー残量の%表示がないなど「エンジン車ベースでEVもなんとか頑張ってます」という印象があったBMWですが、さまざまな点でEVシフトへの本気度が高まっている印象です。

『i4』や『iX3』のフルモデルチェンジも気になるし。今後のBMWやMINIのEVに、ますます注目していきたいと思います。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)4件

  1. >先日「まちかど超高出力器」への疑問(関連
    >記事)を提示したばかりですが、BMWのEV
    >オーナーサービスという手堅い利用ニーズを
    >もつ高級EV販売店への設置はアリだと思います。

    ディーラに設置されてる急速充電器って本当に必要ですか?
    整備等たまにしか行かない&県外や他メーカーEVだと使いづらいので、正直そのロジックは苦しいなあと思いました笑
    一方で過去にEVSmartで投稿された『「トヨタ系全店に急速充電器設置」で考えた「EV充電インフラ」の理想像」』
    https://blog.evsmart.net/charging-infrastructure/quick-charger/five-thousand-toyota-dealers-to-install-ev-quick-chargers/
    では、トヨタに限らず、ディーラーへの急速充電器設置に補助金を補助金使うのは、無計画なバラマキになってないか?とキレッキレで論じられていたので、一貫性が無いなあ、と読んでて残念に思います。
    (BMWが補助金を使わずに設置するのであれば、大変失礼しました。設置する店舗は大変な負担でしょうが、好きに進めてください)

    1. リーフX乗り さま、コメントありがとうございます。

      ご指摘の点、まさにどう書くか悩みつつだったところです。今回記事で表現した「アリ」は、記事中にも書いたように「まちかど超高出力器」の置き場所、および機種選択として、とご理解ください。

      ディーラーネットワークへの急速充電器設置に充電インフラ補助金を使うのは一考したほうがいいのでは、という持論に変わりはありません。日産ディーラーさんにはEV普及草創期からとても助けていただいて感謝してますが、今後は例外ではない、とも思いつつ。

      神戸のケースでは他社EVにも開放ということなので、補助金を活用しているのではないか、と想像しつつ。お盆休み(店舗が営業していれば、ですけど)に充電の使い勝手などを試しつつ、そのあたり含めて取材を進められれば、と思っているところです。

      以前の記事を記憶にとどめていただいていて、ライター冥利に尽きるご指摘だとも感じました。

      今後とも、ご愛読ください!

  2. 一部で期待されている従量課金制には課題があります。
    SOCの上昇に伴い充電電力の低下した状態で継続して充電を続けるユーザーが増えます。
    PHEVのように元々受入能力の低い車両が高出力充電器を長時間占有するユーザーが増えます。
    現状の時間課金は、高出力の美味しい部分だけ利用して必要なだけ充電したら30分の終了を待たずに切り上げて次の人に譲るという全体最適を促す一面があります。
    (ZESP2やM社などの料金の安い充電プランはそれを阻害していますが。)
    従いまして時間電力併用料金(詳細は要検討)とか、最大電力別時間単価による時間課金が良いのではないかなと考えます。
    もちろん、充電終了後の車両放置はペナルティ課金を設定することも必要だと思います。
    行動を促すデザイン、行動を促す課金システムを考えていただきたいです。

    1. コメントありがとうございます。

      ご指摘の点、
      おそらく時間課金併用の制度になるのでしょう
      を追記しました。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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