ヒョンデの新型スモールEV『インスター』先行予約開始/価格は衝撃の284万9000円〜!

ヒョンデが東京オートサロンで新型スモールEV『INSTER(インスター)』の先行予約開始を発表しました。軽自動車に近いサイズに42〜49kWhという十分な容量のバッテリーを搭載しながら、約285万円〜という価格が衝撃的です。

ヒョンデの新型スモールEV『インスター』先行予約開始/価格は衝撃の284万9000円〜!

車両価格が200万円台の小型EV登場

2025年1月10日、Hyundai Mobility Japan(ヒョンデ)は千葉県の幕張メッセで開催中の東京オートサロン2025のプレスカンファレンスで、小型EVの『INSTER(インスター)』を日本に導入することを発表しました。

カンファレンスではヒョンデ本社のジョン・ユソク副社長(右)が冒頭挨拶で日本市場へのさらなる注力を表明。新たに就任したヒョンデモビリティジャパンの七五三木敏幸社長(左)がインスターのプレゼンテーションを行いました。

インスターは、発表当日の1月10日から先行予約を開始。先着300人限定で、5年目までの車検の基本料金が無料になるなどの特別プログラムが適用されるキャンペーンを実施します。デリバリーの開始は2025年の春(4〜5月頃)になる見込みとのこと。

現在は型式認証の申請中で、一充電航続距離など詳細なスペックの一部は未公表ですが、搭載するバッテリー容量などは明示されています。日本向けに用意されるグレードは、最も装備が簡易でバッテリー容量が42kWhの「Casual(カジュアル)」、バッテリー容量が49kWhでミドルクラスの「Voyage(ボヤージュ)」、同じくバッテリー容量が49kWhで装備充実の「Lounge(ラウンジ)」の3種類です。

●ヒョンデ『INSTER(インスター)』グレードと価格
Casual(カジュアル)/バッテリー容量:42kWh 284万9000円(税込)
Voyage(ボヤージュ)/バッテリー容量:49kWh 335万5000円(税込)
Lounge(ラウンジ)/バッテリー容量:49kWh 357万5000円(税込)

税込の車両価格は、カジュアルが驚きの284万9000円〜です。V2L(Vehicle to Load)に対応(AC100Vアクセサリーコンセントや、普通充電口から給電する屋外V2Lアダプターを標準装備)しているのでCEV補助金が35万円になると仮定すると、バッテリー容量42kWhのEVが約250万円で購入できることになります。

室外V2Lにも対応。

安いです。日産『リーフ』の40kWhモデルが408万1000円〜なので、42kWhのカジュアルと比較すると車両価格が100万円以上違います。49kWhでフル装備グレードのラウンジでも価格は357万5000円なので、ぱっと見はバッテリーが2割増しで価格は約50万円安いということになります。お買い得感がマシマシです。それにバッテリー容量が50kWhのプジョー『e-208』は512万4000円〜なので、49kWhで350万円を切ってきたボヤージュやラウンジの価格には目を見張ります。

実質250〜300万円程度で42〜49kWhと十分なバッテリー容量をもつ車種が登場したことで、価格的には国産のエンジンやハイブリッドのコンパクトカーと大差ないレベルになり、使い勝手の違いはあるものの乗り心地などEVならではの商品性を考えると、市場拡大の芽が出てきたと言えそうです。

なお先着300名限定で、国のCEV補助金額がもし35万円以下になった場合に最大35万円までヒョンデが支援する「INSTER Exclusive Care」と、5年目までの車検基本料金が無料になるなどの先行予約特典が用意されているのも魅力です。

また、時期は未定ですが装備やデザインをアウトドア風にしたモデルとして「インスター・クロス」を追加する予定であることも示されました。すでに発売されているイギリスのヒョンデ公式HPを見ると、インスター クロスのバッテリー容量は49kWhで、装備は日本のラウンジグレードに近い感じです。これもまた楽しみです。

貴重な5ナンバーの小型EV

インスターの特徴は、なんといってもサイズだと思います。プレスカンファレンスでヒョンデの七五三木(しめぎ)敏幸社長も、インスターの特徴のトップに、デザインと車両サイズを挙げていました。

サイズは、全長は3830mm、全幅は1610mmで、5ナンバーの枠に収まります。日本の道路事情にピッタリです。コンパクトカー万歳です。このサイズにするにあたり、乗車定員は思い切って4人に設定しています。とはいえ後席は2分割でリクライニングができるほか、前後の調節も可能でゆったりと座れそうです。

航続距離当てクイズを実施中

繰り返しますが、インスターのバッテリー容量は42kWhと49kWhの2グレードと十分なスペックを確保しています。日本仕様の一充電航続距離(WLTCモードの国土交通省審査値)は認可申請中なのでまだ出ていませんが、先行して発売しているイギリスではWLTPモードで、42 kWh仕様が約325km、49kWhの15インチタイヤ仕様が約366km、同じく49kWhの17インチタイヤ仕様が約357km になっています。

いずれにしても実用域で300km前後は走ることができるのではないかと思います。これだけ走れば、EV初心者のオーナーさんでも不安は感じないのではないでしょうか。というか、長距離の移動も楽にできると思います。

ところでこの一充電航続可能距離について、ヒョンデは「ボヤージュ」の数値(今後発表されるWLTCモードのカタログスペック)を当てた人の中から抽選で1名に、インスターをプレゼントするクイズを実施しています。車1台をプレゼントとは豪勢です。ふるって応募してみてください。応募期間は1月10日〜3月14日です。詳細は公式サイトで確認してください。

ここで航続距離のヒントを少し。インスター「ボヤージュ」は前述したように英国のWLTPモードでは約366kmです。ところで日本で販売されているKONAのカジュアル(カタログ値のバッテリー容量48.6kWh)のWLTCモードでの航続距離は456kmですが、英国仕様で同様のスペックのKONA「Advance」のWLTPの航続距離は376kmです(当初、234kmとしていたのはマイル表示でした。お詫びして修正します)。

WLTPとWLTCの違いはこんな感じなので、参考にしてみてください

急速充電性能はコナより上?

前述したように、インスターは現在型式認証の申請中であり急速充電の性能もまだ公表していません。とはいえ、すでにIONIQ5やKONAの実績があるので、チャデモ規格への適応作業に大きな問題があるとは思えません。

実はインスター発表のプレスカンファレンス終了後、現行のKONAよりも急速充電性能が上がるのではないかという耳寄り情報をゲットしました。

KONAは、急速充電の最大受け入れ電流が230Aです。インスターの急速充電性能がKONAより良いとするなら、もしかすると最大270Aとか出るのかもしれません。もしそうなら、49kWhを搭載するグレード2車種のシステム電圧は310Vなので、最大350A流れる150kW器なら80kW以上で充電できる、かもしれません。

ちなみに寄本編集長のマイカーであるKONA(カジュアル)の急速充電性能は「そこそこ」という感想でしたが、補助金を入れて300万円を切りそうなインスター(ボヤージュ)の急速充電性能がKONA(Casual)を上回るようなら、「そこそこ」より上の「なかなか」になりそうな予感です。

【関連記事】
ヒョンデ『KONA Casual』で初の長距離~懸念した急速充電性能は「まあ、そこそこ」(2024年2月3日)

コンパクトだけどシートアレンジなどの使い勝手は良さそうです。

カジュアルは装備と機能に差がある

室内V2Lなどはカジュアルでも標準装備。

ここからはグレードによるスペック、装備の違いを見ていきます。大きな違いはバッテリー容量で、これに応じて最大出力も違ってきます。

もうひとつのわかりやすい違いはタイヤサイズで、最上級グレードのラウンジのみ17インチ、カジュアルとボヤージュは15インチです。このため、同じ49kWhのバッテリーを搭載しているボヤージュとラウンジですが、タイヤサイズの大きいラウンジの方は電費が少し落ちるはずです。またホイールは、カジュアルだけは鉄ホイールで、ボヤージュとラウンジはアルミホイールが標準です。

安全装備は3グレードとも同じで、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグを含む7つのエアバッグが標準装備されています。

装備関係での大きな違いと感じたのは、廉価版のカジュアルだけシートヒーターがないことと、エアコンがヒートポンプシステムではないことです。冬場にエアコンを使うと電費が厳しいEVにとって、シートヒーターはありがたい快適装備です。シートが暖かいとエアコンの使用量が減るので、電費向上が期待できます。

さらにヒートポンプはシステム効率を上げるためには、近年は必須とも言える重要パーツのひとつだと、筆者は思っています。ヒートポンプの有無で使用時のエネルギー消費量がかなり違うのは間違いありません。だからバッテリー容量が少なめのグレードでヒートポンプなし、シートヒーターなしは、とくに冬場の電費への影響の大きさが懸念されるのです。まあ、実際にどのくらい違うのかはテストしてみないとわかりません。同じ車種でヒートポンプの有無があるのは珍しいように思うので、機会があればテストしてみたいところです。

その他、カジュアルだけ高速道路での前方車追尾などのアシスト機能(高速道路ドライビングアシスト/HAD)、およびナビベースでの運転支援機能がありません。

という感じで、カジュアルは装備や機能が他の2グレードに比べるとだいぶ簡素化されていることがわかります。300万円を切る車両価格にはこうした要因もあるので、装備の違いは要検討事項ではないかなと思います。

そのほか、ボヤージュとラウンジのタイヤサイズ以外の違いは、ラウンジには電動スライド式サンルーフ、前席シートのベンチレーション、200V充電ケーブル、アンビエントムードランプ、スマホワイヤレスチャージ、デジタルキー(NFCカードキー付)などが標準装備になっていることです。価格差は20万円ほどなので、タイヤのインチアップによる電費低下の可能性はあるにしても、装備としてはラウンジがお買い得な気がします。

ともあれ、正式発売開始までの先行予約には特典もいろいろあります。気になる方は早めに要チェックです。

ヒョンデ『インスター』公式サイト

CasualVoyageLounge
全長×全幅×全高3830×1610×1615mm
ホイールベース2580mm
最低地上高144mm
車両重量1300kg1360kg1400kg
最小回転半径5.3m
定員4人
タイヤ(前・後)185/65R15205/45R17
駆動FWD
最高出力71kW/4800-13000rpm85kW/5600-13000rpm
最大トルク147Nm/0-4600rpm147Nm/0-5400rpm
一充電航続距離(※)203miles(324.8km/UK)229miles(366.4km/UK)223miles(356.8km/UK)
交流電力量消費率(WLTC)申請中
駆動バッテリー
種類リチウムイオンバッテリー
総電圧266V310V
総電力量42kWh49kWh
V2L対応
充電可能電力未定未定未定
車両価格(税込み)284万9000円335万5000円357万5000円
※航続距離などは型式認証の認可申請中のため未確定。表中はUK仕様(WLTP)を参考表記

取材・文/木野 龍逸

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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