トヨタ連合の「商用軽EV」2025年度中の導入を明示/納得できる性能と価格に期待

トヨタ、ダイハツ、スズキの3社が共同開発を進めている商用軽バン電気自動車について、2025年度中に各社それぞれの導入を目指すことが改めて発表されました。一連の認証不正問題で合弁会社「CJPT」を脱退していたダイハツが復帰したことを受けた動きで、商用軽EVの普及促進が期待されます。

トヨタ連合の「商用軽EV」2025年度中の導入を明示/納得できる性能と価格に期待

商用軽バン電気自動車の導入時期を決定と各社が発表

2025年1月29日、スズキ株式会社(スズキ)、ダイハツ工業株式会社(ダイハツ)、トヨタ自動車株式会社(トヨタ)が、合弁会社の Commercial Japan Partnership Technologies 株式会社(CJPT)で開発中の商用軽バン電気自動車について、2025年度中にそれぞれの導入を目指すことを決定したことを発表しました。CJTPを含めた各社からのニュースリリースは同じ内容となっています。
※冒頭写真は「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」に展示されていたスズキの軽バンEVコンセプトモデル。

【リリース全文】

スズキ株式会社(以下、スズキ)、ダイハツ工業株式会社(以下、ダイハツ)、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、商用軽バン電気自動車(以下、BEV商用軽バン)について、2025年度中にそれぞれの導入を目指すことを決定しました。

このBEV商用軽バンは、スズキ、ダイハツの小さなクルマづくりのノウハウとトヨタの電動化技術を融合し、3社で共同開発した軽商用車に適したBEVシステムを搭載しています。企画にあたってはCommercial Japan Partnership Technologies 株式会社も参画することで、効率的なラストワンマイル輸送に最適な仕様を追求した車両です。

今後3社は、配送業等のお客様ニーズにお応えできるBEV商用軽バンを供給することで、実用的で持続可能な移動手段を提供し、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを推進してまいります。

(リリースここまで)

トヨタ仕様
ダイハツ仕様。
スズキ仕様

ダイハツの認証不正問題で発売延期

この「商用軽バン電気自動車」はCJPTを通じてスズキ、ダイハツ、トヨタが共同開発。ダイハツが生産した車両を、各社それぞれの仕様で2023年度内に発売される計画でした。ところが2023年にダイハツの認証不正問題が発覚。2024年2月にはダイハツがCJPTを脱退し、発売できない状況が続いていました。

今回、同じ1月29日にCJPTが「ダイハツがCJPTへ復帰」というニュースを発信。晴れて発売(導入)に向けた動きが本格化したという経緯です。

バッテリー容量や価格などはまだわからない

共同開発の商用軽バン電気自動車について、まだ搭載するバッテリー容量や販売価格などの詳細は発表されていません。わかっているのは、2023年のG7広島サミットで開発中のプロトタイプが展示された際、「一充電当たりの航続距離は200km程度を見込んで」いるとアナウンスされた程度です。

2024年10月に発売されたホンダ『N-VAN e:』のカタログを確認すると、バッテリー容量が29.6kWhでWLTCモード(国土交通省審査値)の一充電走行距離は245kmとなっています。電費としては約8.3km/kWhです。3社が導入する商用軽バンEVの電費が「8km/kWh」程度だとすると、航続距離200kmのカタログスペックとするためには25kWh程度のバッテリーであると推測できます。

とはいえ、複数記事で検証の結果としてN-VAN e: はバッテリー容量のマージンを大きく取ってあるようで、実質的に走行に使える容量は23kWh程度であり、実用上の一充電走行距離は日産サクラなど20kWhのバッテリーを搭載した軽EVと大差ないことがわかっています。

はたして、2025年度中に導入されるという3社の商用軽バンEVは、どのような性能と価格で登場してくるのでしょうか。

すでに開発は最終段階でしょうから「今さら言っても」ということは承知の上で、いくつか期待を込めたお願いを挙げておきます。

車両価格は200万円以下を実現してほしい

まずは車両価格です。先だって先行予約が開始されたヒョンデ『インスター』のベースモデルである「カジュアル」は、バッテリー容量42kWhで約285万円です。3社の商用軽バンEVのバッテリー容量が25kWhだとすると、インスターカジュアルの約60%ですから、車両価格も285万の約60%となる170万円程度を目指してほしいところです。

少なくとも200万円以下を実現してくれたら、環境省や経産省の補助金を使った車両価格はエンジン車の軽バンと同等になり、ラストワンマイルのEV普及に大きな動きが生まれることでしょう。

正しく誠実な情報提供をしてほしい

ホンダ『N-VAN e:』試乗記【木野龍逸/後編】実質的なバッテリー容量は22kWh程度か? という記事で提起している問題点は、航続距離の短さがどうこうという点ではなく、実質的に22〜23kWh程度しか使えないのに「29.6kWh」というバッテリー容量がアナウンスされていて、ユーザーにも詳細な情報が知らされていないことです。

EVを実際に運用するために、バッテリー容量や残量のSOC(%)表示はユーザーにとってとても重要な情報です。そんなこんなを含めて、後発となる3社には「EVは高くて航続距離が短い」なんてようなステレオタイプな思い込みにとらわれることなく、ぜひ正しく誠実な情報提供をしてくださいとお願いしておきます。

ほかにも、急速充電は50kW、普通充電6kWに対応してほしいとか、エアコンはヒートポンプ採用がいいなとかの「願わくば」はありますが。なにはともあれ、トヨタやダイハツ、スズキといった国内自動車販売台数の大きなシェアを占めるブランドからいよいよ商用軽バンEVが登場することには期待しかありません。

1日も早い発売の発表を待っています!

文/寄本 好則

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

執筆した記事