ごめんなさい『日産サクラ』! NEW YEAR EV MEET で下取り査定を受けてしまいました

日本で一番人気のEV『日産サクラ』オーナーである著者陣の中尾さんが、先日開催された「NEW YEAR EV MEET 2025」会場のスーパーオートバックスかしわ沼南で下取り査定。ヒョンデ『インスター』に買い替える? と検討する煩悩レポートです。

ごめんなさい『日産サクラ』! NEW YEAR EV MEET で下取り査定を受けてしまいました

EVは下取りが安い? それが何か?

1月末、千葉県柏市で開催された「NEW YEAR EV MEET 2025」に参加したところ、会場を提供してくれたスーパーオートバックスかしわ沼南では中古車の買取査定を行なっていると知った。愛車サクラ(と日産)には申し訳ないが、先行予約が始まった(関連記事)ヒョンデのインスターがとても気になっている筆者は、つい聞いてしまった。「遠方からの参加でありひやかしになる可能性もあるがそれでもいいか?」と確認したところ、担当者は快く応じてくれた。

一般にEVは「リセールが悪い」と言われている。買い替えの際の下取り査定が安いので購入のハードルにもなっている。これは否定できない事実だが、あえて言わせてもらえば、業者でも転売ヤーでもないならリセール価格にこだわって好きな車を選べないのは不幸である。

自身の経験による私見ではあるが、新車はよほどでなければ5年以上乗る。距離も5万キロ、10万キロといったオーダーになる。よほどの高級車、希少車でなければ新車購入でも下取りに出すときは、まともな査定はでない。車は投資の対象でもないし自家用車は生産材ではない。リースや残価設定ローンでも組まないかぎり、購入時に減価償却を考えたり、下取り価格など期待しないようにしている。

ちなみに自動車検査登録情報協会のデータ(関連情報 ※PDF)によれば2024年の平均車齢は9.34年。この数字は登録車のみで軽自動車は含まないが、ほとんどの人は、新車購入したら9年以上乗り続けている。下取りを前提に毎年新車に買い替えるのも悪くないが、そんな買い方は例外だといえる。

ヒョンデよ、なぜ私にぴったりのEVを出してくる?

サクラを新車購入して2年。仕事にも使っているが、とくに不満はない。ディーラーとの付き合いも長いため、次に買うのは「マイクラEVが出たら考えよう」くらいしか考えていなかった。

唯一の不満は、航続距離(バッテリー容量)だろう。家族旅行や仕事で片道200km以上の移動になると、外での充電回数が増える。取材などで他の輸入車EVに乗ると、どうしても一充電での走行距離を比較してしまう。

新年早々、ヒョンデが非常に気になるEVを日本市場に投入した。いわずとしれた「キャスパーEV」ことグローバル名「インスター」だ。車の詳細(関連記事)は省くが、とくにサイズが我が家の駐車場にぴったりなのだ。自宅は戸建てだが駐車スペースの奥行きがない。10年ほど前に改築したときに床面積を少し広げてしまい、大きな車が入らなくなってしまった。ZE1リーフでもきつい。

以前から、なぜ日本にルノーZOE、ダチアスプリング、VW ID 3、シーガルといった小型EVが売られていないのかと不満を持っていた。インスターの全長(約3.9メートル)なら問題ない。もともとサクラ購入はサイズで決断したようなもの。装備・価格・使い勝手のよいEVでうちの車庫にも入るとあれば、気にならない理由がない。

サクラの査定はいくらになった?

心の中で「サクラ、ごめん」といいながら「最初の車検で買い替えるなんて家族は許さないだろうな」と思いつつ、会場店舗のスタッフに査定をお願いした。査定は「簡易査定」と呼ばれるもので、タブレットで車検証のバーコードを読み取り、距離計を確認する。次にペイントメーターを使った塗装状態のチェックを行う。担当者はタブレット端末片手に、テスターをかるくタッチさせながらボディを一周する。最後にルーフの状態を測定して終了だ。

データは量販店の本部に送られ、そこで機械的な査定計算が行われる。10分ほどで結果がでるようだ。担当者が、査定額がプリントされた紙をもってきてくれた。

そこに書かれていた金額は……

1,027,000円

店頭に掲示されていたサクラの最高査定額は130万円を超えていたが、ネットなどでサクラの下取り額を検索するとだいたい100万円から120万円となっている。相場と大きく変わらない結果となった。

我が家のサクラは「G」というグレード。初年度登録は2022年10月。走行距離は約11,000キロ。ボディカラーはソルベブルーとブラックのツートン。純正15インチアルミホイールを装着している。ディーラーオプションは純正カーナビとETC2.0、ドライブレコーダー、ボディコーティングも行なっている。インパネのメーター表示だが、走行用バッテリーの劣化(セグ欠け)はない。

簡易査定のため、車両装備その他の条件はおそらく加味されていない。また、査定額はあくまで現時点での金額なので、おおまかな目安として考えるべきだ。なお、この店舗では、詳細の査定を行った場合の金額は、査定当日から5日間はロックされるという。

下取り額以外の問題〜CEV補助金はどうなる?

インスターで狙っているのは、「Casual(カジュアル)」「Voyage(ボヤージュ)」「Lounge(ラウンジ)」のうち15インチタイヤを装着した「ボヤージュ」グレード。サンルーフ、シートベンチレーション、NFCキー、17インチタイヤといった上位グレードのラウンジとの装備差にこだわりがなければ、ラウンジの205/45 R17というタイヤサイズは、電費や交換タイヤ、チェーンなどの面で車格不相応な出費となる可能性があるからだ。

インスターはボヤージュでも乗り出し価格で350万円程度となるだろうが、下取りが100万円あれば、CEV補助金とあわせて買い替えハードルは下がる。だが、他の問題もある。CEV補助金だ。CEV補助金は購入してから4年以内に車を手放すと、返金処理が発生するのだ。仮に下取りが100万円だったとしても、そのうちのいくらかはCEV補助金の返納で相殺される。

幸いにも補助金は、対象車両の購入時に何度でも申請可能だ。返金が発生したとしても新しく買う車両の補助金の支給額に影響はない。

サクラは軽自動車の満額である55万円が適用された。神奈川県だったため自治体の補助金は年度予算の枠に間に合わなかった。インスターの2025年度CEV補助金がいくらになるかは不明(2月5日現在)だ。おそらく3月に入らないと予算額や適用条件は確定しない。インスターは5ナンバーの小型乗用車だから軽自動車と同程度のCEV補助金が適用されるはず。2024年度の補助金では、ヒョンデは満額を適用された車両はない。インスターも軽自動車枠の上限より低い金額が適用されるだろう。

ヒョンデジャパンでは、現在の契約者には35万円分のオプションやサービスでの補填をするキャンペーンを展開している。

補助金返納額の計算方法はちょっと複雑

次世代自動車振興センター公式サイトより引用。

問題は、サクラを手放した場合に発生するCEV補助金の返納だ。返納額の計算方法は、補助金の適用を受けた時期によって計算方法が変わっている(関連情報)。

①令和4年度(2022年)の補正予算以降に補助金を受けた車両
補助金返納額=補助金額×残存月数/処分制限期間(48か月-経過月数)

②令和4年度補正予算より前の補助金を受けた車両
補助金返納額=売却額×補助金比率

①の場合は、給付を受けた補助金について処分制限期間をどれくらい残しているかの割合で返納額が決まる。処分制限期間は4年(48か月)だ。補助金を受けた車両を4年以内に処分すると、その分を返納しなければならない。

②の計算は少し複雑だ。売却額は下取り額と思えばよい。しかし、売却額(下取り額)が、残存簿価より低い場合は残存簿価が利用される。残存簿価は車両の購入費用を48か月の償却期間で定率法によって決定するとなっているので、多くの場合は下取り額ではなく、購入価格を48で割り、残っている月数を掛けた金額となるはずだ。

以上は、計算方法を示しただけなので、実際の返納額は、申請時に認められた金額をもとに計算される。詳しい計算方法や金額のシミュレーションについては、次世代自動車振興センターやディーラーなどに確認する必要がある。

返納額は20~25万円と予想

我が家のサクラは、契約が2022年の6月で、令和4年度本予算による補助金申請に間に合っている。そのため、②の計算方法が適用される。

CEV補助金の申請はディーラーにお願いしたので、認められた購入金額は不明である(見積や注文書と一致していない場合がある)。購入時の見積もりや記憶をベースに粗いシミュレーションをしてみた。何月に手放すかで変わるが、未償却期間がおよそ1年半残っているとして上限25万円程度となる見込みだった。いちおう計算上は、インスター購入で適用されるであろう補助金35万円より低い額となる。補助金を返納しても持ち出しはないと予想される。

とくに不自由なく使えている車を、最初の車検前に買い替えるなど、家族が許してくれる可能性は低いが、サクラの下取りが100万円前後になるなら、検討してみる価値はあると思う。家族の理解が得られれば、数か月後に実際の査定額や買い替えレポートをお伝えできるかもしれない。あまり期待しないで待っていてほしい。

文/中尾 真二

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					中尾 真二

中尾 真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。「レスポンス」「ダイヤモンドオンライン」「エコノミスト」「ビジネス+IT」などWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアをカバーする。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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