「赤いマルチ」を使うために中央道経由を選択
ボルボ・カー・ジャパンが開催した雪上試乗会「Volvo EX30 Winter Drive」に参加。案内でいただいた試乗枠には、現地で雪上試乗するパターンと、東京〜上越市もしくは上越市〜東京へ試乗車を運ぶ長距離試乗の選択肢があり、EVsmartブログではあえて長距離試乗を希望。2月21日、上越市から東京・南青山の「Volvo Studio Tokyo」へ走ることになりました。
出発は上越妙高駅のホテルから。上信越自動車道〜関越自動車道を経由するルートが約300kmと最短で、満充電近くからスタートすればおそらく無充電で走り切れるでしょうが、それではちょっと味気ない。現地で雪上試乗をしっかり取材するのに加え、中央自動車道の談合坂SAに開設されたばかりの新型150kW急速充電器、いわゆる「赤いマルチ」を使ってみたいという狙いもあって、あえて約360kmと遠回りになる中央道経由のルートを走ることにしたのでした。
まずは、行程を紹介していきます。
朝9時前、前泊した上越妙高駅前のホテルを出発。SOCは約90%でした。EX30が搭載するバッテリー容量は69kWh。使用可能な電力量は64kWhであることがすでに報じられています。WLTCモードの一充電走行距離は560km。スタート時のディスプレイには380km程度の航続可能距離が表示されていたので、その通りに走れるとするなら中央道経由でも東京まで到達できるかも、って感じです。
とはいえ、新潟県内では雪道、さらに高速道路走行であり、表示通りの距離が走れるとは最初から想定していません。私が思い描いていたのは、最大90kWで複数口(6口)の急速充電器が並ぶ諏訪湖SAでトイレ休憩を兼ねて少し充電。そこからさらに120kmほど走った談合坂SAで、設置されたばかりの最大150kWの新型急速充電器(赤いマルチ)4口と最大90kW2口で計6口の高出力急速充電器がある談合坂SAで食事を兼ねて30分充電。あとはそのまま南青山へ向かう計画でした。
それぞれ、どのくらいの余裕を持って走れるのか。また、赤いマルチでの急速充電性能の実感がどうなのかといったあたりを確認したい狙いです。
雪上性能もしっかり確認するために、試乗会スタッフがおすすめしてくれた妙高市内の高原へ。条件のいい雪原があったので、同行したライターの木野さんとともに、EX30で子犬のように走り回ってしまいました。
EVの緻密な制御の恩恵で、RWDであってもEX30での雪道走行は不安なく気持ちいいというのは、先日紹介した木野さんのレポート(関連記事)の通りです。
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ナビ設定すると充電場所などをアドバイス
妙高を出発時のSOCは69%。談合坂SA上り線をナビで目的地設定すると残量14%という見込みとともに、諏訪湖SAで10分間充電のオススメが表示されました。奇しくも私の思惑通りのアドバイスです。
眺望抜群の諏訪湖SAに到着。下り線は最大90kW×4口の青いマルチと、最大90kW 2口器1台。上り線は最大90kW×2口器が3台並んで、上下線ともに合計6台が同時充電可能です。
SOC28%で充電スポットに到着すると「48%以上まで充電してください」というアドバイス。
納得できるアドバイスだったので、指示通り48%まで充電。トイレに行ってコーヒー買って戻ったら終了って感じで、所要時間は約10分でした。この時点でも充電出力は日本仕様のEX30の最大値に近い83kWを維持していました。優秀です。
談合坂上りで赤いマルチを初体験
バッテリー残量の心配をすることもなく流れに乗って中央道を快走。新潟県内は雪模様だったけど、中央道ルートは快晴で、素晴らしい富士山の姿を眺めながらのドライブとなりました。
SOC18%で談合坂SAに到着。最大150kWで4口のストールが並ぶ「赤いマルチ」を実際に使うのは初めてでした。赤いマルチと並んで、90kW×2口器が設置されていて、先客のi-MiEVが充電していました。
i-MiEVの急速充電性能は最大50kWですから、150kW器を使うことさらのメリットはありません。お声がけなどはしませんでしたが、オーナーさんはそれを理解した上で90kW器を選択してらっしゃるのだと思います。さすがです。
フードコートでちょっと遅めのランチを食べて、約30分で充電器表示38.7kWhを充電。SOCは76%、航続可能距離表示は323kmとなりました。南青山のゴールまでは70kmほどですから、もう何も考える必要はありません。
少しムムッと感じたのは、充電出力がわからないこと。ニチコン製の赤いマルチ(90kWの青いマルチも)は、充電器の液晶画面に出力が表示されません。EX30のディスプレイでいろいろ探してみたのですが、やはり充電出力の表示は見当たらず。専用のスマホアプリ(今回試乗では不使用)で確認できるのかもしれないですが、充電時の出力表示はセンターディスプレイでわかりやすく見えるほうがスッキリします。
とはいえ、結果的に30分で38.7kWh充電できたということは、おおむね80kW程度の出力を維持していたと推察できます。
これが、90kWの複数口器や青いマルチだった場合、最大90kW(200A)の出力で充電できるのは15分のみ。以降は最大50kW(125A)に制限される「ブーストモード」が搭載されているので、30分間で充電できる電力量は少なくなってしまいます。ちなみに、150kW器(赤いマルチ含む)も15分で最大90kWに制限するブーストモードを搭載しているものの、現状、日本国内で市販されているEVでそれがデメリットになる車種はほとんどありません。
EX30の急速充電性能は最大80〜85kW程度ということなので、90kW器で十分、150kW器じゃなくていいのでは? と思う人がいるかも知れないですが、ブーストモードを回避するという意味で、150kW器を使う意義があるということですね。
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ちなみに、談合坂上りの新しい充電区画。SSの前と聞いていたので大型車区画を通ってショートカットしようと思ったら、標識は今まで通り小型車区画へ誘導してて。到着して納得。大型車区画からは逆走しないと入れなくなっていました。ご注意ください。充電後、本線への出口は近いです。
高速道路のロングドライブはとても便利になりました
今回の長距離レポート。結果的に充電(休憩)2回で、いろいろ細かいことを説明しましたが、「EX30のナビの案内通りに走れば、快適なロングドライブが楽しめると実感できた」というのが総括的な感想です。極論すると、ドライバー自身は充電計画などほとんど何も気にすることなく気持ちよく走りきることができました。
2回の充電にしても、1回目はトイレ休憩、2回目はランチ休憩であり、ただ充電終了を待つ時間は皆無でした。逆にエンジン車の給油であればそれぞれ休憩終了後にSSに立ち寄る必要があるわけで、むしろ「面倒ですね」と感じます。
つまり、EX30くらいのバッテリー容量や航続距離性能、ナビシステムなどの性能があれば、また、高速道路SAPAの急速充電インフラの拡充によって、EVのロングドライブにおける航続距離や充電への不安は劇的に解消されつつあるということです。
かつて、高速道路SAPAにも急速充電器が1台1口設置が当たり前だった頃は、充電待ちのリスクを避けるためにいろいろ工夫する必要がありました。でも、90kW以上の高出力複数口設置が増えてきた今はほとんど心配ありません。
今回走った中央道ルートには、レポートで紹介した諏訪湖SAや談合坂SAだけでなく、双葉SA、釈迦堂PAなどいくつもの高出力複数口スポットがあります。
談合坂に新設された赤いマルチを使いたかったので今回は走らなかった上信越道〜関越道ルートにも、90kW以上の高出力複数口スポットが存在しています。地域によってややばらつきはあるし、e-MobilityPowerとNEXCO各社には引き続き経路充電インフラ拡充を進めていただきたいと応援していますが、首都圏〜関西圏あたりの高速道路網では「充電への不安はほぼ解消された」といっていいのではないでしょうか。
EVへのライフスタイル転換。そろそろ「時は来た!」(古いな……)って感じです。
取材・文/寄本 好則