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テスラ2025年第2四半期の台数速報/納車台数大幅減で浮かび上がる新型車待望論

テスラ2025年第2四半期の台数速報/納車台数大幅減で浮かび上がる新型車待望論

テスラ社が2025年第2四半期の生産台数と納車台数の速報を発表しました。生産台数は前年同期から微増だったものの、納車台数は大幅に減少し、厳しい状況が続いていることを示しました。

目次

納車台数は大きく減少

2025年7月2日(現地時間)、電気自動車(EV)メーカーのテスラ社が2025年第2四半期(4~6月)の生産台数と納車台数の速報値を発表しました。生産台数は『モデル3/Y』が39万6835台、『その他』が1万3409台、合計41万244台で、前年同期の41万0831台から0.1%の微減でした。
※冒頭写真は2025年第一四半期決算資料から引用。

【生産台数推移】

納車台数は『モデル3/Y』が37万3728台、『その他』が1万394台、合計38万4122台で、前年同期の44万3956台から13.5%の減少でした。

【納車台数推移】

エネルギー貯蔵設備の導入量は9.6GWhで、前年同期の9.4GWhからとほぼ同等でした。

テスラ社のリリースでは、車両の台数とエネルギー貯蔵の導入量の実績を記しているだけで、納車台数の減少理由などについて説明はありません。

株式市場は織り込み済みか

株式市場は販売の伸び悩みを織り込んでいたようで、発表前の6月23日から7月1日にかけて348.68ドルから300.71ドルまで大きく下げましたが、発表後の7月2日は315ドル台まで戻しています。

なお、この1年のテスラ社の株価はジェットコースターのようでした。昨年、トランプ政権に入ることが判明してから株価は大きく上げ、最高479.86ドルまでいきましたが、今年3月10日には222.15ドルと、ほぼ半値になっていました。

その後、イーロン・マスクCEOが政権を離れてからは少しずつ上げていて、5月27日には362.89ドルと直近の最高値となっていました。

発表前から厳しい予想

テスラ社の販売状況については、発表前から厳しい見方をする報道が相次いでいました。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は6月25日に、欧州自動車工業会(ACEA)が公表している統計から、2025年5月のテスラ社のEU全体の新車登録台数が2024年比で40.5%減、英国、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスを含めると約28%の減少だったと報じました。

WSJによれば、テスラ社の月次販売台数は、それぞれ前年比で、4月に約53%、3月に約36%、2月に約27%、1月に約50%の減少でした。

ACEAによれば、5月のEUでの電気自動車(EV)販売台数は2024年比で25%増えています。新車市場全体の伸びは約1.6%と小幅でしたが、EVのほか、ハイブリッド車(HEV)は16%、プラグインハイブリッド車(PHEV)は46.9%の増加でした。

なおEVの市場シェアは、EU域内で15.4%になっています。2024年同期は12.1%でした。このように電気駆動の車に注目が集まっているにもかかわらず、テスラ社は台数を伸ばすことができていません。

ACEAのプレスリリースより引用。

またロイターは7月1日に、速報値では四半期の納車台数が減少すると予想していました。納車台数のアナリスト予想は、WSJは38万9000台、ロイターは39万4380台と見ていました。実際の台数は38万4122台だったので、いずれの予想よりも下回っていました。

ラインナップの老朽化は早期に解決すべき課題

減少の理由は、各メディアでほぼ一致しています。ひとつはマスクCEOの政治的言動への反発です。ただこれは、政権を離れたことや、マスクCEOとトランプ大統領の蜜月関係がどうやら崩壊していることなどから、時間の経過で沈静化する可能性もあります。

より大きな問題なのは、競争の激化と、ロイターが指摘するラインナップの老朽化ではないでしょうか。

前期の速報値の記事で触れたように、中国では新型『モデルY』の投入もあってテスラ社の販売台数は2月から3月にかけて156.9%増でした。それでも前年からは減少しています。

年々拡大している中国のEV市場で、EV専業メーカーのテスラ社が前年比マイナスというのはゆゆしき事態です。

テスラ社のタネジャ最高財務責任者(CFO)は1月の決算発表時に、2025年には「複数の新商品を投入する計画」で、その後もラインナップの拡充を続けて、2025年の生産台数を2024年比で60%増にすると述べました。

テスラ社もラインナップの課題は認識しているということでしょう。とはいえ、すでに8月が見えてきました。新型車の発表はまだ、ありません。小型で安価なモデルがいつ出てくるのか、今はじっと待つしかありません。

ギガファクトリー上海のデリバリーイベント。(2025Q1決算資料より引用)

EVが伸びる欧州

ここで欧州市場の様子を見てみます。前述したように、欧州ではEVの販売が伸びています。5月の販売台数は14万2776台で、前年は11万4231台でした。自動車の市場規模が大きい国で伸びが大きいのは、ドイツの44.9%、デンマークの51.4%、イタリアの40.8%、スペインの104.1%(倍増!)などです。

EU域外では、英国が25.8%増、ノルウェーが69.6%増などでした。

ちなみにマイナスになったのは、フランス(18.7%減)、ルクセンブルク(10.3%減)、クロアチア(79.2%減)、ルーマニア(42.7%減)、エストニア(54.6%減)です。ただフランス以外は市場規模が小さいので、台数の変動は数十台から200台程度です。

EVの販売台数が伸びたのは5月だけではありません。EUでは2025年1〜5月の5カ月間でも26.1%増でした。一方でICE車は、ガソリン車の登録台数が20%以上減少しました。

中国メーカーも台頭で競争激化か

拡大するEV市場の中で、競争が激しくなっている理由はなんなのでしょうか。ひとつは中国メーカーの伸びです。

調査会社JATOダイナミクスが6月24日発表した欧州市場の分析結果によれば、中国メーカーの5月の販売台数は6万5808台、市場シェアは5.9%に達しました。前年の2.9%から倍増しています。この数字を元にJATOダイナミクスは、欧州市場の成長を牽引したのは中国の自動車メーカーだと評価しています。

JATOダイナミクスのグローバルアナリスト、フェリペ・ムニョス氏(Felipe Munoz)は声明で、「EUが中国製電気自動車に関税を課しているにもかかわらず、中国自動車ブランドは欧州全域で引き続き、力強い成長を遂げている」と述べています。さらにその理由について、「彼らの勢いは、プラグインハイブリッド車やフルハイブリッド車などの代替パワートレインの車をこの市場に投入する決断をしたことが大きい」という考えを示しました。

なかでも注目なのは、BYDの登録台数が5月に前年同期比で397%になり、テスラ社に40台差と迫ったことです。4月には、BYDはテスラ社を超えたため、この傾向は続くのかもしれません。

ちなみにJATOダイナミクスは、EVのメーカー別登録台数ランキングを公表しています。それによればテスラ社は5位、BYDは12位です。BYDはEVよりPHEVの販売台数が多いので、トータルでは差がなくなります。欧州市場で中国メーカーがテスラ社を追いかけているとは、ちょっと予想外でした。

ここで本筋の欧州メーカーを見てみると、EV市場の競争激化の様子がさらによく見えてきます。

JATOダイナミクスのデータによれば、モデル別登録台数のトップはテスラ『モデルY』ですが、2位は昨年発売のコンパクトEV、シュコダ『Elroq』が入っています。続いてフォルクスワーゲン『ID. 7』『ID. 4』『ID. 3』と続き、新型車の起亜『EV3』、アウディ『Q6 e-tron』も上位です。

新型車は他に、シトロエン『C3』、ルノー『5』など、上位25モデルのうち8台を占めています。

こうしてみると、モデルチェンジをしたとは言え、『モデルY』が苦戦を強いられるのもわかります。欧州市場でこれだと、テスラ社の販売台数が多い中国市場の競争がさらに厳しいのは明白です。

テスラ社の新型車はいつ出るのでしょうか。発表はいつになるのでしょうか。第2四半期の決算発表は7月23日(現地時間)の予定です。

文/木野 龍逸

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この記事を書いた人

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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