アウディが日本市場初の電気自動車『Audi e-tron Sportback』発売を発表/価格は1327万円〜

アウディがブランドとして日本市場で初めての電気自動車となる『Audi e-tron Sportback』の発売を正式に発表しました。電池容量は95kWh。2020年モデルは装備を奢った「1st edition」のみで、価格は1327万円(税込)〜。9月17日のオンラインプレスカンファレンスを受けて、自動車評論家の諸星陽一氏がレポートします。

アウディが日本市場初の電気自動車『Audi e-tron Sportback』発売を発表/価格は1327万円〜

クーペスタイルのスポーツバックから導入

2020年9月17日、アウディジャパンのホームページではずいぶん前から、その存在が紹介されていた電気自動車「e-tron(イー・トロン)」が日本で正式に発表された。この日、発表されたはe-tron Sportback(スポーツバック)のみ。ホームページ上には『e-tron SUV』の画像も掲載されているが、こちらの詳細については未発表。日本では「欧州でもより需要の高いクーペスタイルのスポーツバックから」(フィリップ・ノアック社長)導入されることになった。

ちなみに「tron(トロン)」はアウディのなかでは新世代のエネルギー源を用いたモビリティに与えられる名称で、電気自動車の「e-tron」のほかに、天然ガスを燃料とする「g-tron」と、水素FCV(燃料電池車)の「h-tron」が存在している。

e-tronスポーツバックは全長4900mm、全幅1935mmのどっしりとしたボディながら、全高は1615mmに抑えられたクーペルックをもつ5ドアのSUVスタイル。アウディのSUVシリーズではQ5とQ7の中間に位置するサイズで、ホイールベースも両モデルの中間となる2930mmとなっている。

アウディらしい大型のシングルフレームグリルを備えるフロントエンドまわりのデザインを採用するが、EVはエンジンモデルにくらべて必要となる冷却が少ないため、開口部を減らすとともに電動モーターによってルーバーを開閉、空気抵抗を減らすように作用する。e-tronスポーツバックは非常に高効率な回生ブレーキを採用、通常はフットブレーキ(油圧ブレーキ)を使うことなく減速が可能で、シチュエーションによっては消費エネルギーの約7割の回収ができるという。しかしながら、急坂の下りなどでフットブレーキが必要なシーンも存在するのもまた事実で、そうした場合にはルーバーやダクトが開放されブレーキシステムを冷却するというシステムも搭載されている。

2モーターの4WDシステム『e-quattro』を採用

モーターは前後にアクスルにそれぞれ配置される2モーターの4WDで、アウディではこれを“e-quattro”と呼んでいる。前後のモーターを連携してコントロールすることで、駆動力を必要とするタイヤに瞬時(30ミリ秒)に駆動力を伝達することが可能。前後のモーターのシステム総合出力は265kW。これがブーストアップ時には最大300kWまで出力をアップすることが可能。0→100km/h加速はSモードで5.7秒、Dモードで6.6秒を実現している。

通常は最大165kWのリヤモーターのみで走行することでエネルギーをセーブしている。床下に搭載されるリチウムイオンバッテリー95kWhの容量を持ち、一充電航続距離はWTLCモードで405km(※EPA値は218マイル=約351km)となっている。ちなみにバッテリーの重量は700kgにもなり、e-tronスポーツバックの車両重量2560kgの30%近くにもなる。重量物をフロア下配置するのは重心低減に大きく寄与し、クルマの走行性能を向上するのは明確である。

サスペンションは前後ともにウィッシュボーン式(カタログにはウィッシュボーンと書かれているが、おそらくはアウディが4リンク式と呼ぶダブルウィッシュボーンであろう)で、一般的な金属&油圧ダンパーではなく自動車車高調整機能付きアダプティブエアサスペンションとなる。車高を下げることでハンドリング性能の向上とともに空気抵抗係数を減らすことも目的としていて、もっとも車高が下がるポジションは標準よりも26mmも低い位置となる。また、サスペンションアームの周囲にはカバーが取り付けられ、空気抵抗を減らすとともに静粛性の向上も図られている。

空気抵抗減少にはさまざまなアプローチが行われているが、そのなかでも特徴的なのがバーチャルエクステリアミラーと呼ばれる装置。これは旧来のドアミラーをカメラ&モニターに置き換えたもので、通常のドアミラー装着部にL字型をしたアームに取り付けられたカメラを装備。車内のドア部分にモニターを配置して車両サイドの後方部分(つまりドアミラーでの視界カバー範囲)を映像として映し出すもの。夜間だと実像は後方車両のライト類ぐらいしか確認できないが、バーチャルエクステリアミラーの場合は映像が調整されより明確に周囲の確認が可能となる。また、雨天時などでドアミラーの視界を妨げることになるサイドウインドウの雨粒なども影響しないことからゼロ次安全性の向上には大きく役立っている。

チャデモ急速充電は最大出力50kW対応

さて、EVオーナーがもっとも気になるであろう充電についてだ。家庭用として用意される標準チャージャーは3kWで、オプションとして8kWのチャージャーも用意。アウディジャパンではe-tron導入による購入サポートとして、充電設備の設置費用サポートも予定されている。パブリックな充電設備は普通充電、急速充電合わせて全国2万1700カ所以上の拠点に対応する。アウディジャパンではe-tronチャージングカードという充電設備利用カードを発行、通常は月会費が5000円、DCチャージ(急速充電)のみ15円/分の従量課金制だが、e-tron購入者は月会費、従量課金とともに無料で利用できる。

e-tronが利用できる急速充電器は50kWまでとなる。ただし、バッテリーの温度マネージメントが優れているので、高速走行の直後でも高い急速充電性能を発揮できることがアピールされていた。e-tronの冷却ユニットは、熱伝導性が高い新開発の接着剤を使ってバッテリーハウジングに取り付けられる。各モジュールとハウジングの間には充填材を注入、同様に各セルモジュール下のスペースには、熱伝導性の高いゲルも注入される。ゲルはセルが放出する熱をバッテリーハウジング経由で均一にクーラントへと伝えることで効率的にバッテリーを冷却、25~35℃にバッテリーの温度を保つことで高い充電効率を実現している。

欧州で発売されているe-tronは150kWにも対応するので、このあたりの充電、冷却マネージメントはかなり高性能で緻密なものなのだろう。なお、質疑応答のなかでフィリップ・ノアック社長は「日本導入にあたり50kWとしたのは日本のインフラについて調査した結果、CHAdeMOの急速充電インフラがほとんど最大50kWなのでそれに合わせた」ことを説明。「VWグループとしてさらに高性能な急速充電器への対応についても考えている」と発言した。

アウディとしてさらなる電動化推進をコミット

柴崎コウさんをAudi e-tron サポーターに任命。アウディと柴咲コウさんのコラボレーションフィルム「サステイナブルな未来へ」には、このために書き下ろした新曲『ひとかけら』が使われている。

【Audi e-tron × 柴咲コウ Special Movie】
サステイナブルな未来へ (Full Ver.) [アウディ ジャパン]

今回、e-tronスポーツバックの発表会はコロナ禍でということもあり、オンラインで開催された。その発表会の冒頭ではアウディジャパン代表取締役社長のフィリップ・ノアック氏がスピーチした。そのスピーチによれば、アウディは電動化に向かって舵を切っており、単に電動化に着手するのではなく長期的に電動化を推進すると明言しているという。2025年までに世界中で20を超えるEVモデルの投入が予定されており、全世界販売台数の40%は電動モデルになる計算だという。自動車の電動化は環境問題の最終解ではないとしながらも正しい道のりの第一歩と位置付け、アウディのお客様はそうしたライフスタイルをリードする存在だとしている。

そうした流れは世界中で起こり、2020年前半だけでも世界中で1万7700台のオーナーに納車された。またノルウェーではe-tronが乗用車カテゴリーでトップセールスを記録、アメリカでは前年比50%の販売となっているという。日本での販売予定台数は今年に関しては残り3カ月ということで200台、2021年は500~600台をねらっていきたいという。

アウディでは国連の定めるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)を重視している。e-tronが製造されるブリュッセル工場は公的機関からカーボンニュートラル認証を取得。これはプレミアムブランドの生産工場としては初の取得になる。アウディでは2019年中に世界中の工場で7万1000MWh以上の電力を節減、二酸化炭素排出量に換算すると1万8000トン以上になるという。ドイツではアルミの完全リサイクルを完了、プレス行程時などに廃材となるアルミはサプライヤーに戻されふたたび原材料にしているという。

オンラインプレスカンファレンスでは、全体的に環境への配慮やサステナブルな理念が強調されていた印象だ。e-tronを購入したユーザーには普通充電器設置費用をサポートするほか、自然電力との提携により、自然エネルギー100%による電力を提供するプランが用意されていることも説明された。

(文/諸星 陽一)

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					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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