プレミアムなEV充電体験を! 誰でも利用可能な「アウディチャージングハブ」オープン

アウディジャパンがEV用超急速充電器4口を備えた「Audi charging hub紀尾井町」を開設しました。世界で7番目、欧州以外では初めてとなるプレミアムな充電体験を提供する施設。6月30日まで、すべてのEVユーザーが無料で充電できるキャンペーンを実施します。

プレミアムなEV充電体験を! 誰でも利用可能な「アウディチャージングハブ紀尾井町」オープン

急速充電30分無料体験キャンペーンを実施

アウディジャパンがホテルニューオータニに近い東京都千代田区内の一等地に「Audi charging hub(アウディチャージングハブ)紀尾井町」を開設。2024年4月26日にオープンしました。

「アウディチャージングハブ」は、プレミアムブランドであるアウディにふさわしい充電体験を提供する施設として、本国のドイツをはじめとするヨーロッパで設置が進められてきました。紀尾井町は世界で7番目、欧州以外では初めてのアウディチャージングハブとなります。

設置された急速充電器は、2台が同時充電可能なパワーエックス「Hypercharger」が2基。合計で4台のEVが同時充電可能なステーションになっています。最高出力は1台だけの充電時は150kW。2台同時充電時は120kW×2口となります。

欧州のチャージングハブは最大350kWで蓄電池を装備。日本では最大150kWとなるものの、蓄電池を備え、再エネや需要が低い時間の電力を効率良く活用できるパワーエックスのソリューションがあったからこそ、欧州以外で初めてのチャージングハブ開設が実現するポイントになりました。チャージングハブの屋根には、太陽光発電パネルが設置されています。

チャージングハブは年中無休で24時間充電可能。メーカーを問わず利用できますが、「すべてのEVユーザー」が充電できるのはステーションに向かって左側の2口のみ。右側の2口は、アウディ、ポルシェ、フォルクスワーゲンのEVユーザーが加入するプレミアムチャージングアライアンス(PCA)会員専用になっています。また「すべてのEVユーザー」向けの2口もテスラ車やフィアット&アバルト500eなどが採用するCHAdeMOアダプターは使用不可(すべてじゃないじゃん、てな野暮な突っ込みは控えておきます)なのでご注意ください。

場所はアウディの正規ディーラーであるAudi City紀尾井町の向かい側。ディーラーの営業時間内であればショールームで過ごすのもOK。隣にはコンビニエンスストアがあって、真夜中でも充電時間を過ごしやすい立地です。当面の充電料金などは以下の通り。

Audi charging hub紀尾井町

場所:東京都千代田区麴町5-7-15
利用時間:年中無休24時間利用可能
利用方法:充電器に表示されている二次元バーコードを読み取って操作
<充電料金>
PCA月額会員:75円/分(月額基本料金などが別途必要)
PCA都度会員:200円/分
ビジター:250円/分

まずは分単位の時間課金でスタートですが、今後は「従量課金や予約システム導入も検討していきたい」(マティアス・シェーパース氏)とのことでした。

また、4月26日のオープンから6月30日までの期間、「急速充電30分無料体験キャンペーン」を実施。一人2回までの限定で、チャージングハブでの高出力急速充電を無料で体験することができます。キャンペーンを利用して充電する際の手順なども、充電器に表示されています。

PCAの独自ネットワークは順調に拡大中

オープン前日の4月25日には記者発表会を開催。フォルクスワーゲングループジャパン社長で、アウディジャパンブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏がプレゼンテーション。アウディがプレミアムブランドとして展開するチャージングハブを日本で実現できたことを喜ぶとともに「チャージングハブの開設はアウディジャパンの電気自動車推進に対するコミットメントを表している」ことを強調しました。

マティアス・シェーパース氏。

また、紀尾井町に続き芝公園(東京都港区)にも日本で2カ所目となり、カフェのような休息スペースを備えたチャージングハブを開設する予定であることを示しました。

発表会後の囲み取材では、シェーパーズ氏のいろんな思いを伺うこともできました。まず、東京で2カ所開設するチャージングハブは、都市部におけるプレミアムなEV充電体験を提供するための施設であり、今後、全国各地に展開するものではないということでした。

PCAの充電器は会員限定なので充電インフラ補助金は利用せず。ディーラー各社が投資して設置されています。

急速充電ネットワークとして全国を網羅するのは、ポルシェやフォルクスワーゲンブランドとともに展開しているPCAのミッションであること。そして、PCAの急速充電ネットワークはすでに全国のディーラーなど356拠点に広がっていて、アウディブランドの97拠点ではすべて150kW器へのアップグレードを完了していることが説明されました。

アウディのe-tron GTやポルシェタイカンは、欧州では350kWを活用できる高電圧システム採用の車種でもあり「ぜひ、フォルクスワーゲングループが先頭に立って日本でも350kW級のネットワークを広げてほしい」と、これは私からお願いしておいた次第です。

別の記者の方が「日本でEV普及をさらに進展させるための改善点」を尋ねた質問への回答で、「高速道路の充電インフラも、われわれがやりたければ投資できるような環境があれば、おそらくもっと早く進むのではないか」という指摘もありました。

高速道路SAPAの急速充電ネットワークに「e-Mobility Power以外のサービサーも」という議論がありますが、超高出力の充電サービスだけでは採算が合いづらく、高性能EVを販売するOEMの貢献が必要不可欠だと、私は考えています。もちろん、高電圧の規制緩和や従量課金の仕組みが整ってからとはなるでしょうが、基幹SAPAにはeMPのマルチプラグ器とともに、VWグループが設置する350kW器複数口が並んでいる光景が実現することを期待しています。

普通充電器の無料設置を断る宿泊施設も……

ちなみに、PCAの急速充電スポットは会員限定の施設であり、充電スポット検索アプリなどでは表示されないので、アウディ公式サイトの「e-tron Charging Map」を確認してみると、Audiディスティネーションチャージング(普通充電)を含めて、着実に全国へ広がっていることがわかります。

クリックすると公式サイトにリンクします。

アウディジャパンでは昨年から、全国の宿泊施設50カ所に各2基、計100基のアウディ純正普通充電器(8kW)を無償設置する取組を行っています(関連記事)。チャージングハブやPCAとともに素晴らしい取組であると思うので、その進捗と今後のさらなる展開は? と尋ねてみると……。

ディスティネーションチャージャーの拡充はどんどんやっていきたいし「戦略と予算は継続して進めている」とした上で、「私たちが無償で設置しますよと言っても、そんなの要らない」と言われてしまうケースがあって驚いたとのこと。

「10年ほど前、補助金で充電器を設置したもののほとんど使われなかったネガティブな経験が障壁になってしまっているのでは」という指摘でした。市販EVのパイオニアであった日本ですけど「残念なことですが、ちょっと早過ぎてEVの足りない部分への認識が広まってしまったのではないか」とシェーパーズ氏。まさに、日本のEV普及がぶち当たっている大きな壁を痛感するエピソードでした。

だからこそ、アウディ、そしてフォルクスワーゲングループのプレミアムなEVや充電環境が広がっていくのは大切なことでもあります。なにより、日本法人のトップであるシェーパーズ氏自らがEVへの深い知見と理解をもって取り組んでいらっしゃることがよくわかり、とても心強く感じる取材となったのでした。

充電ネットワークばかりでなく、150kW以上の急速充電性能をもつ魅力的なEVラインナップの拡充も明言してくれたシェーパーズ氏。

東京近郊、もしくはGWなどで東京に遠征予定があるEVユーザー(テスラやフィアット以外)のみなさま、なにはともあれアウディチャージングハブ紀尾井町でプレミアムな充電を体験してみてくださいまし。

取材・文/寄本 好則

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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