アウディ『Q4 e-tron』試乗レポート〜充電インフラ拡充にも本気です

アウディ ジャパンは2022年11月、日本で販売する電気自動車のラインナップに『Audi Q4 e-tron』が加わったことを発表するのと同時に、日本での充電インフラ拡充に向けた取り組みの詳細について説明しました。アウディ ジャパンの狙いと併せて、『Q4 e-tron』の試乗レポートをお伝えします。

アウディ『Q4 e-tron』試乗レポート〜充電インフラ拡充にも本気です

危機感を持って変わる必要があることをディーラーにアピール

年明け早々、インフルエンザに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と感染症が大流行の気配を見せていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

このような状況になる少し前の11月下旬に、アウディ ジャパンはメディアやアウディのディーラーなどを対象にしたイベント『Audi Q4 e-tron Dynamic Launch』を開催。電気自動車(EV)の『Q4 e-tron』を新規に市場投入するとともに、充電インフラを含めた日本市場での取り組み方針などを発表しました。

まずはアウディ ジャパンが重視するポイントが見えた発表会からいきましょう。

『Audi Q4 e-tron Dynamic Launch』が行われたのは、八王子市にある産業交流センター『東京たま未来メッセ』でした。メッセのエントランスにはアウディの新型EVが勢揃いしていて、中に入ると、日本導入が始まった『Q4 e-tron』をはじめとするe-tronシリーズの電気自動車がたくさん並んでいました。わずか数年で、アウディだけでもこれだけの種類のEVが増えたと思うと感慨ひとしおです。

特徴的なのは、会場に集まった人の約半分がメディアで、残りはアウディのディーラー関係者だったことです。発表内容が、販売店に対する重要な説明になることが想像できました。

『Audi Q4 e-tron Dynamic Launch』のメインプレゼンターは、フォルクスワーゲン グループ ジャパンの社長も兼務するアウディ ジャパンのブランドディレクター、マティアス・シェーパース氏でした。シェーパース氏は流ちょうな日本語で、長期計画の『Vorsprung 2030』を軸に日本市場で何をしていくかを話しました。

アウディは2021年9月、長期計画『Vorsprung 2030』を発表し、2026年以降に新たに発売する車はすべてEVにすること、内燃エンジンの製造は2033年に終了することなどを明らかにしています。

この計画についてシェーパース氏はこう説明しました。

「我々の子どもが今後もモビリティーをエンジョイできるようにするためには、電気自動車がマストです。そのため、2026年以降は電気自動車しか発表しないという、大きなメッセージを出しました。それを通して(アウディが)本気であること、社内、社外に対して、危機感を持って変わらなければいけないという考え方を仕込んだのです」

冒頭から変革への危機感を語ったことからは、アウディ ジャパンが同様のことを何度も販売店に対して語ってきたことが伺えました。

Audi Q4 e-tron Dynamic Launch プレス発表会(YouTube)

充電インフラへの積極的な関与

プレゼンテーションの中で改めて重要だと感じたのは、充電インフラへの積極的な関与が必要であるとアウディが考えていることでした。すでに欧州や北米では充電インフラ拡充に取り組んでおり、日本でも、ポルシェやフォルクスワーゲンと連携した急速充電ネットワーク『プレミアム チャージング アライアンス』を進めています。

まず欧米での取り組みに関しては、350kWの超急速充電インフラを手がける合弁会社、IONITYやエレクトリファイアメリカへの出資のほか、開発用のEVから取り外したバッテリーを電力貯蔵用に再利用する都市型充電ステーション『Audi charging hub』を増やしていくこと、太陽光発電所の設置を進めることなどで、会社としてカーボンニュートラルを目指すために実施している内容の説明がありました。

『Audi charging hub』は、自宅で充電できないユーザーのための基礎充電設備という位置づけです。これまでにニュルンベルクの第1号店のほか、チューリッヒやザルツブルクにも設置したそうです。充電ステーションは基本的にグリッドに接続せず、再エネからの電力供給と蓄電で賄うことを計画しています。

日本でもこうした取り組みが進むといいなあと思うのですが、アウディ ジャパンでは、自社の販売店をそうした基礎充電に位置付けて充電に対する不安を払拭しようとしていることが、シェーパース氏の囲み取材でわかりました。

プレミアム チャージング アライアンスにVWも参加

「プレミアム チャージング アライアンス」アウディ オフィシャルサイトから引用

アウディ ジャパンとポルシェジャパンは、ディーラーや都市部で150kW急速充電器を展開し共同でユーザーにサービスを提供する『プレミアム チャージング アライアンス(PCA)』を進めています。2022年11月にはフォルクスワーゲン・ジャパンも加わり、3ブランド合計で2022年末までに210拠点、222基の設置を目指すという発表がありました。

公式ホームページを確認すると、12月31日時点で急速充電器は207拠点、218基が設置されていることがわかります。おおむね計画通りと言えそうです。

急速充電器の内訳は、ポルシェが67基、アウディが52基、フォルクスワーゲンが99基です。充電出力は最大150kWに対応していますが、アウディのEVでは今のところ最大90kW対応に制限されていています。2023年春以降にソフトウエアのアップデートで150kW対応になる予定です。

なおこの150kW器は定格の最大出力が最大180kWで、2台同時に90kW充電が可能なシステムになっています。

このほかアウディとして、2024年までに8kW対応の普通充電器を、全国に300カ所、600基を目標に設置していきます。PCAは3ブランドのユーザーしか使うことができませんが、普通充電器はすべてのEVユーザーが使えるものになります。

普通充電器の設置は、アウディ単独で進めるだけでなく、さまざまなインフラ事業者と協力して進めることも検討中だそうです。

充電インフラ拡充に必須だったディーラーとの信頼性強化

充電ネットワークに関しては、発表会後のシェーパース氏の囲み取材でもう少し詳しいことがわかりました。

まずアウディ販売店に急速充電器を設置する費用は、基本的にすべて販売店が負担するそうです。大規模ネットワークなのでアウディ ジャパンがなんらかの負担をするのかと思っていたのですが、違いました。だとすると販売店はどのように説得したのでしょうか。シェーパース氏はこう話しています。

「我々は継続的に考え方を説明しています。透明性をもって説明しているつもりです。ディーラーの賛同を得るためのことをそれなりに時間をかけてやっていて、非常に良い関係性を保っているので、賛同は自然に得られたと言う表現がいいと思います」

このようにディーラーを重視する考え方は、発表会のプレゼンでも強調していました。シェーパース氏は、「ディーラーがいらないと考えている自動車OEMもあるが、アウディとしては、この思い切った変換(自動車産業の枠を超えた環境変化)はディーラーと一緒にやりたいし、ディーラーは我々のビジネスモデルの一部だと理解している」と話し、こう続けました。

「それをどうするのか、なぜ(変換を)するのかを(ディーラーの)みなさんと議論してきた12か月だった」

販売店にしてみたら、日本市場にほんとうにEVが受け入れられるのか、使い勝手はどうなのかなど、現状は不安要素満載だと思います。補助金も含めて、ガソリン車を売るのとは大きく違うスキルも要求されます。

そんな空気感の中、急速充電器の設置というコストのかかる施策を受け入れてもらうまでに何があったのか、想像するのは容易ではありません。『e-tron 資格認定制度』を導入するなど販売店研修に力を入れていることも、ユーザーへのサービス向上だけでなく、販売店との関係強化の一環につながっているのかもしれません。

日本の販売店対応がEV普及の鍵か

そして囲み取材では、販売店に急速充電器を設置してもらう目的について、次のような追加説明がありました。

「都心のディーラーに設置する急速充電器は、プレミアムブランドには良いショールームがあるので、家で充電ができない人たちに来ていただき、良いコーヒーを飲んでゆっくりチャージしてもらえば、ガソリンスタンドよりいいのではなかという考え方です。それはディーラー離れの防止ということも含んでいます」

急速充電器を基礎充電のひとつと考えることで、販売店とユーザーの距離を縮めるということのようです。それなら販売店も取り組むメリットが、十分ではないでしょうが生まれそうです。

ところで急速充電器の出力は、どこまで上げればいいのかは議論の余地があります。あまり上げてもバッテリーへの負担増、イコール環境負荷増になりかねません。かといって出力不足では利便性が下がります。350kWは、見方によってはオーバースペックですが、充電器に「並んでいる人が出るのは話しにならない」(シェーパース氏)のも確かで、アウディはまず利便性向上を図ったことになります。

このあたりは、設置場所、設置数、EVの数、利用頻度などのバランスが見えてくるまでは、いろいろな考え方が出てきそうです。

日本の自動車メーカーも販売店網に急速充電器の設置を進めてきましたが、設置から年数が経過し、故障しているものがあったり、そもそも出力が最大で50kW程度が中心という今となっては微妙なものになっていたりします。そろそろ交換時期とは思うのですが、なにしろ日本の経済全体が落ち込んだままで、急速充電器の入れ替えは容易ではありません。

それでも、EVが本格的に増えそうな時に、インフラに不備があることで普及にブレーキがかかるのでは、それこそ話になりません。そして今の日本の経路充電は、休日に滞留時間が増えるなど微妙な雰囲気を漂わせています。

そんな中で、使えるのは自社ブランドユーザーだけとはいえ、大出力の急速充電器が増えるのは車の販売にもプラスになると思われます。テスラが通ってきた道、そのものではありますが、この点を各自動車メーカーがどう考えるか、今後の動向に注目です。

なんの問題があろうか『Q4 e-tron』

というわけで、ようやく『Q4 e-tron』の試乗です。日本では2022年1月に市場計画が発表されていましたが、2022年秋に販売がスタートしました。

当初の予定台数は2023年中に2000台です。なのですが、この2000台、すべて完売したそうです。シェーパース氏によれば、「発表前に2000台以上の受注があった」そうです。これがほんとの青田買いです。

アウディとしては低価格帯ではあるけれども、庶民にとっては手が出にくいクラスで、実車を見る前に車がなくなるというのはレアケースかもしれません。なお、納車までの時間はかかるものの受注は停止しません。また日本で販売できる数は、世界の他の市場との取り合いなので確実ではないものの、可能なら増やしたいとアウディ ジャパンでは考えています。

シェーパース氏は、「600万円台の車がそうなる(年間の予定数を発売前に売り切る)のは珍しい。需要が思った以上にあった」と話し、「それが『Q4 e-tron』のポテンシャルを物語っているのではないか」と車の良さを強調しました。

そのことは、乗ってみて実感できました。

試乗したのは、八王子市内からあきる野インターチェンジに向かい、圏央道を経由して中央高速の八王子インターまで戻ってくるというコースです。途中、けっこうな交通量があったこともあり、細かな機能の確認などはできなかったのですが、ざっくりと感じたことを紹介します。

試乗したグレードは『Q4 Sportsback 40 e-tron advanced』(車両価格税込み683万円+オプション)です。

足回りのことやNVHがどうかというのは、ここでは触れません。余程のことがない限り、道の良い高速道路をちょっと乗っただけで問題点を見つけるほど、筆者の評価スキルは高くないのであります。

でも『Q4 e-tron』がとてもしっかりしていることはわかります。走行音も静かです。一般道を走っている分には大きさは感じません。とても乗りやすい車です。プレミアムな価格帯の車としての基本性能は十分に備えていると感じました。

やっぱり回生ブレーキのコントロールは必須で希望

感覚的な乗りやすさをアップさせてくれたのは、パドルシフトで回生ブレーキのコントロールができることでした。いちばん弱めるとコースティングになります。今回も、基本的にはコースティングで走り、下りのコーナーなど必要な時にパドルシフトで回生ブレーキを強くするという乗り方に、運転しやすさを感じました。

ほんとにもう、回生ブレーキの調整はEVの必須機能にしてほしいです。特にコースティングはスムーズに走るためにとても有効です。高速道路での燃費向上のためには必須だし、普段でも郊外の道路ならとても便利に使えます。ハンドルにいろいろなスイッチを付けるのであれば、まずはこれがほしいと思います。

それにアクセルのオン/オフによる前後Gを減らせるので乗り心地を向上できます。同乗者にとってアクセルオフでの減速Gは、あまり気持ちのいいものではありません。1ミリ単位でアクセルをコントロールすれば別ですが、そんなことを続けたら脚がつります。

インパネ周りはオーソドックスで、とくに目新しいデザインや表示はありません。それでも必要十分な情報は得られます。センターコンソールは小さめで、前席への圧迫感はありません。

ACCの操作スイッチは、ステアリングではなく、昔ながらの専用レバーについています。クルーズコントロールだった頃によく見かけたタイプで、コスト削減のためかもしれません。でも操作性が悪いわけでもなく、個人的にはそれほど気にはなりませんでした。

ちょっと気になったのは、低速での擬音の音量が少し大きいかなということでした。音量調整がついているのかどうか確認できなかったのですが、試乗車は割と大きめで、最初は何か異音かと思って耳をすましてしまいました。

というわけで、少し時間が経ってのレポートになってしまいましたが、アウディ ジャパンのインフラ戦略と『Q4 e-tron』でした。

最後になりましたが、アウディはクリスマスが過ぎた12月26日に発表した新しい計画の中で、2029年までに世界すべての生産拠点でEVを生産することを明らかにしました。同時に2033年までに工場の生産コストを半分にする目標を掲げています。

バッテリー供給が逼迫する中、生産コストをこれからどこまで下げることができるのかは不透明な部分もあります。でも自動車が100年に1度の大変革期にある中で、車の作り方にも大きな変化の波が来ているのは間違いありません。

21世紀の工場がどうなるのか、コストを外部化することなく透明性のあるカーボンニュートラルを達成できるのかは全自動車メーカーの課題です。アウディだけでなく、各社の取り組みに2024年も引き続き注視していきたいと思います。

主要諸元

 Q4 40 e-tronQ4 40 e-tron
advanced
Q4 40 e-tron
S line
Q4 Sportsback 40 e-tron
advanced
Q4 Sportsback 40 e-tron
S line
全長(mm)4,590
全幅(mm)1,865
全高(mm)1,630
ホイールベース(mm)2,765
車両重量(kg)2,100←※1←※1←※1←※1
乗車定員5
駆動方式RWD
最小回転半径(m)5.4
航続可能距離(WLTC)594km
最高出力(kW)150
最大トルク(Nm)310
総電圧(V)352
総電力量(kWh)82
タイヤ(フロント)235/55R19235/55R19235/50R20235/55R19235/50R20
タイヤ(リア)255/50R19235/55R19235/50R20235/55R19235/50R20
価格(税込)620万円683万円710万円709万円737万円
※1 パノラマサンルーフ装着車は30kg増

取材・文/木野 龍逸

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 2ヶ月前試乗しましたが、ヘッドレストの高さが全く私の背(173cm)に合わず非常に苦痛でした。
    特に日本仕様というわけではないそうなのですが、ドイツ人がでかすぎるんでしょうか?
    実家のVWもヘッドレストが高すぎて苦痛です。
    VWグループのシートは皆こんなもんなんでしょうか。

    一方以前BMWに乗っていて、今はテスラに乗っていますがどちらのシートも快適です。

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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