BMWが『X3 xDrive30e』を発売してPHEVモデルを拡充

ビー・エム・ダブリュー(以下、BMW)は2020年4月9日に日本で、BMW X3の新ラインナップとしてプラグインハイブリッド(PHEV)の『BMW X3 xDrive30e』を発売しました。グレードは4種類で、価格は税込778万円から836万円です。

BMWが『X3 xDrive30e』を発売してPHEVモデルを拡充

BMWは昨年12月に日本で、プレミアムクラスのプラグインハイブリッドSUV『X5 xDrive45e』の第2世代バージョンを発売しています。先代に比べてバッテリー容量が増えたほか、エンジンが直列4気筒から直列6気筒にアップグレードされています。

そして今回、X3シリーズに初めてプラグインハイブリッド車(PHEV)の『X3 xDrive30e』が加わりました。X3 xDrive30e は日本だけでなく、世界市場で同時に発売されています。さらにBMWは、2020年中に、X3 xDrive30e も含まれるプレミアムミッドクラスのSUVに、純粋な電気自動車(EV)モデルを追加する予定になっています。

バッテリー容量は12kWhで44kmを走行可能

まずEVsmartブログの読者諸氏としては電気系に関心があると思いますので、そこから見ていきましょう。ここでは日本のリリースと国際版のリリースを見ながら紹介していきます。海外メーカーにありがちなことなのですが、日本のリリースだとスペックのデータがときどき抜けていることがあるので、不足分を欧州発表のデータで埋めてみます。

X3とX5のスペック比較表(※欧州発表データ参照)

X3 xDrive30eX5 xDrive45e
内燃機関
ガソリンエンジン直列4気筒/1998cc直列6気筒/2997cc
動力性能
モーター最大出力80kW(109hp)/3170rpm83kW(113hp)/3170rpm
モーター最大トルク265Nm/0-3170rpm265Nm/0-3170rpm
エンジン最大出力
135kW(184hp)/5000-6500rpm210kW(286hp)/5000-6000rpm
エンジン最大トルク300Nm/1350-4000rpm450Nm/1500-3500rpm
システム最大出力215kW(292hp)290kW(394hp)
システム最大トルク420Nm600Nm
加速性能
0–100km加速6.1秒5.6秒
最高速度210km/h235km/h
電動のみでの最高速度135km/h135km/h
バッテリー
容量12kWh24kWh(Net/20.9kWh)
電圧354V354V
航続距離と燃料消費率
燃費(WLTC)11.8km/L10.3km/L
電動のみの航続距離(WLTC)44km79.2km
※EPA換算推計値約39km約71km
サイズ
全長4720mm4935mm
全幅1890mm2005m
全高1675mm1770mm
ホイールベース2865mm2935mm
車両重量2060kg2500kg

まずX3 xDrive30eのモーターのパフォーマンスは、最高出力109PS(80kW)/3140rpm、最大トルク265Nm/1500rpmです。モーターの最大トルクは0回転から出るので、欧州表記だと0~3170rpmで最大トルクを発揮することになっています。

最大出力の回転数は、日本リリースだと3140rpmなのですが、欧州版では3170rpmと微妙に違っています。これは日欧の測定器の違いによるものかもしれません。欧州のデータはドイツの計測器を使用しているようです。

リチウムイオンバッテリーの容量は12kWh。日本では交流の普通充電で、3.5時間で0%から80%、4.3時間で0%から100%まで充電可能です。欧州で230V対応の地域の場合は、満充電まで2.6時間となっています。また、バッテリーだけで走行可能な距離はWLTCモードで44kmです(日本リリース)。

300馬力で11.8km/Lは低燃費といえそうです

X3 xDrive30eの燃費は、WLTCモードでは11.8km/Lになります。最大出力が300馬力近い動力性能を考えると燃費がいいと言えるのではないでしょうか。とはいえ、PHEVとして考えると少し微妙な数値かもしれません。

ところで上級グレードの X5 xDrive45e は、最大出力が400馬力近いにもかかわらず、燃費は10.3km/Lで、動力性能に対して明らかに燃費がいいと言えそうです。またバッテリーだけでの航続距離は79.2kmと、かなり長くなっています。最大の要因は、バッテリーの容量が24kWh(初代リーフと同じ!)と2倍になっていることだと思われます。

実は X5 xDrive45e は、昨年12月に現行モデルが出るまでは、バッテリー容量は12kWhでした。2020年モデルになって容量が倍増しています。そう考えると、今後のBMWのPHEVは上級グレードになるほどバッテリー容量が増えていくようになるのかもしれません。

ちなみに、日本でいちばん売れているPHEVである三菱アウトランダーPHEVは、WLTCの燃費は16.4km/L。バッテリー容量は13.8kWhで、バッテリーだけでの航続距離は57.6kmです。さすがに車格も価格も違うので比較してもしょうがないとは思いつつ、エネルギー効率面から見るとやはり、上を行くのがわかりますね。

話を元に戻して、X3 xDrive30e と X5 xDrive45e を比べると、バッテリー容量の違いがトータルのエネルギー効率にはっきり影響していることが見てとれます。車のサイズにもよりますが、一定程度まではバッテリー容量が大きい方が何かとメリットがあるPHEVの特徴を、よく表しているように思いました。

もっとも価格も、X3 xDrive30e は税込み価格778万円からなのに対して、X5 xDrive45e の価格は税込み1028万円からと、かなり違っていて、もちろんグレードの違いはあるにせよ、バッテリー搭載量の違いも反映されているのだろうと思われます。

電動モーターで135km/hまで加速可能

X3 xDrive30e はセンターコンソールにある「eDrive」ボタンで、完全にモーターだけで走行する「MAX eDrive」モード、走行状況に応じて自動的にモーターとエンジンを使い分けたり併用する「AUTO eDrive」モード、ドライバーが任意に設定したバッテリーの充電量になるまでエンジンで走行する「Battery Control」モードの3つを選択できます。

モーターだけの「MAX eDrive」モードでは、最高135km/hまで出すことができます。また「AUTO eDrive」の場合は110km/hでの巡航が可能です。

ところで、バッテリー充電量を自由に設定できるのは、ちょっとうれしい機能です。ちょっと工夫すれば、普段はモーターだけで走行して、必要な時だけレンジエクステンダーのようにエンジンを使うようなことも考えられそうです。そうやっているうちにだんだんモーター走行に慣れてきて、「もしかしてエンジンっていらなくない?」なんて思うようになったら、次は電気自動車(EV)が欲しくなるかもしれませんね。

ところで、X3 xDrive30e と X5 xDrive45e はともにアメリカのサウスカロライナ州スパルタンバーグにある工場で作られています。この工場は昨年8月に、従来からあったバッテリーの組み立てラインを拡充し、生産能力を2倍に引き上げるために1000万ドルを投資した上、X3 xDrive30e と X5 xDrive45e という2つのPHEVの生産拡大のためにさらに1000万ドルを投資しています。

BMWは昨年来、バッテリーの供給確保のためにサムソンSDIやCATLとの提携を拡大したり、自前の開発センターを新設するなど、電動化への動きを加速しています。バッテリーの調達量や電動車両の生産計画の詳細は明らかになっていないので、どこまでのものかはまだ見えませんが、今は、2020年中に新しいEVが登場するという計画を楽しみにしていたいと思います。

(文/木野 龍逸)

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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