パートナーの販売会社も中国から日本初進出
2024年4月19日(金)、BYDにとって日本で24店舗目のディーラーとなるBYD AUTO目黒(以下、目黒店)をオープンした。目黒店は都内で5店舗目、輸入車需要が高い目黒区や世田谷区などのエリアでは初出店となるBYD正規ディーラーだ。この店舗が面する目黒通り沿いは、アウディ、フォルクスワーゲン、レクサス、メルセデス・ベンツ、ボルボ、シトロエン、プジョー、MINI、マセラティ、ランボルギーニ、トヨタ、ホンダ、三菱と、輸入車と国産車ディーラーがひしめくエリアだ。
目黒店に続き翌日の4月20日(土)にはBYD AUTO岡山がグランドオープンし、正規ディーラーは25店舗、試乗や購入に関する相談及び購入後のアフターサービスを受け付ける「開業準備室」は27拠点、合計52拠点となった。
BYDオートジャパンは2025年末までに100カ所の営業拠点を設ける目標だ。2022年7月に日本での乗用車EV参入の発表、2023年2月に1店舗目のディーラー「BYD AUTO東名横浜」がオープン(関連記事)、そして1年2ヶ月で52拠点に拡大させてきた。目標達成に向けて、着実な歩みを進めているようだ。
目黒店は昨年11月に設立されたHarmony Auto Japanが運営する。親会社のHarmony Autoは中国(拠点は鄭州および香港)でなんと下記の14ブランド、79店舗を展開する企業だ。ロールス・ロイス、ベントレー、フェラーリ、ランボルギーニ、マセラティ、BMW、MINI、レクサス、ボルボ、リンカーン、ジャガー、ランドローバー、アウディ、アルファロメオなどなど。Harmony Autoが本気を出せば、目黒通りのすべてのディーラーを運営できるかもしれない。いよいよ販売においても中国から本気の企業がやってきた。
それと同時にBEVの販売が伸びていない日本にわざわざ中国から進出してきたということは、まだまだ日本市場のポテンシャルに一定の評価をしていて、BEVのシェアが伸びていくのを見越していることの表れでもあるのだろう。
なお、Harmony Auto Japanは日本ではBYDブランドしか扱わない。日本でBYDディーラーを展開する販社では初めての外資系だ。
目黒店は3フロア構成
目黒店は、1階が2台分の展示スペースと新車の引き渡しスペース、お客様駐車場、2階が3台分の展示スペース、3階はアドバイザー2名が常駐するサービス受付に分かれている。店舗裏の駐車スペースには50kW出力の充電器を設置する。充電器のキュービクルは屋上に配置して駐車スペースの最大化を図っていた。
同店に整備工場はないため、整備は当面、委託会社にお願いする形を取るが、将来的には自社運営の整備工場を設けることを目指している。店舗についても目黒店に留まらず、拡大を目指しており、候補地についてはBYDオートジャパンと話し合いを進めているそうだ。
ひと月の販売目標台数は当面のところ20台程度とのこと。定休日は月曜と火曜なので、営業日にはほぼ毎日1階の引き渡しエリアで納車が行われることになるかもしれない。
現在のBYDのラインナップは『ATTO 3』と『ドルフィン』の2車種、そこに間もなく「年央発売」予定の『シール』が加わる。試乗車はATTO 3を3台、ドルフィンのスタンダードとロングレンジを各1台の5台を用意している。
Harmony Auto Japanの夏(カ)社長は挨拶で「BYDオートジャパンの中で日本一のディーラーになること」との目標を高らかに宣言した。
また BYDジャパンの劉(リュウ)社長は、今回の目黒店、岡山店のオープンに続き、5月には金沢、新潟、広島、埼玉でも正規ディーラーがオープンする予定であること、またBYDの電気バスが東急バスに納入され、5月から目黒通り沿いを走る予定であること、そして6月にはシールを「公開」すると発表した。さらに中国では4月1日から14日の2週間の販売台数で新エネルギー車(BEV、PHEV、FCEV)のシェアが50%を超えたことに言及した。
BYDは、BEVに加えPHEVの販売が2023年は前年の6割増しの301万台と絶好調なので、量産効果による価格競争力は今後も高次元で維持される可能性が高い。
認定中古車制度をスタート
BYDオートジャパンは、目黒店のオープンと同日に認定中古車制度を開始し、BYDのホームページ内にも「認定中古車専用サイト」を開設した。
BYD認定中古車の適用条件は、初度登録から4年未満かつ走行距離が5万km以内、新車登録から整備記録簿があり、修復歴・改造がない、レース使用車は不可、BYDオートジャパンが正規に輸入した車両、正規ディーラーで定期点検・車検を受けていることだ。
BYD認定中古車の保証は、新車保証+1年となり最大で初度登録から5年間保証、走行距離は無制限(高電圧部品を除く)、保証内容は新車延長保証に準ずる、とされている。
バッテリーやモーターなどの高電圧部品は8年間または15万km以内で保証される。バッテリー保証の詳細は、保証期間内にバッテリーの容量が初期容量の70%(SOH70%)を下回った場合に、バッテリーを修理または交換する。SOHはState of Healthの略で、バッテリーの健全度や劣化状態を表す指標。交換の場合のバッテリーは再生部品のため、新品相当の状態までの容量は復元しないとされる。
ただしBYDの各車種はバッテリー温度管理のシステムを備えており、0%から100%の充放電を繰り返す実験で4500回もの耐久性を確認しているそうだ。この回数はドルフィン・ロングレンジの場合21万km超の走行距離に相当し、仮に毎日1回の満充電を繰り返しても12年以上の年月になる。つまり8年間または15万km以内というのはかなり余裕を持った設定であることが分かる。普通に自家用で使っている限りSOH70%を下回る可能性は低いといえる。
BYDは、4月12日からは長澤まさみさんを起用したテレビCMを放映、現在は日本全国を回る「Hello! BYD Caravan」を開催している。電気自動車の購入を検討している方は、BYDのディーラーやこういったイベントでBYDを見て、触れて、試乗してみてはいかがだろうか。
取材・文/烏山 大輔