※冒頭写真は1月に横浜市内にオープンしたBYDディーラー1号店。
改めて東福寺社長にインタビュー
BYDが日本乗用車試乗進出を発表した2022年7月からおよそ8カ月。BYDの戦略は、同じEVを扱うテスラやヒョンデと違い、トラディショナルかつ保守的であることも特徴だ。車両の加速性能や回生ブレーキ性能をあえて抑え、EVを特別に意識させない設計となっている。コックピットやセンターディスプレイ、センターコンソールに斬新さを見せるものの、ステアリングコラムのウィンカーとワイパーのレバーは、右ハンドルの日本車にあわせるという配慮も他の輸入車では珍しい(ヒョンデIONIQ 5の日本仕様もウインカーレバーは右側だが)。
販売戦略もディーラー網を重視し、メンテナンスやサポートも含めて対面・店舗を重視している。ガソリン車からEVへの乗り換えユーザーにとっては心強いものとなるだろう。しかし、その一方でBYDオートの参入は、国内ディーラー(輸入車含む)にとっては久しく経験することがなかった、新規OEMによる新しい販売網となる。
有体な表現をすれば、昨年の電動車販売台数世界一を誇るEV界の巨人が黒船のごとく、何年も変化のなかった日本市場にやってきたわけだ。テスラも「黒船」のひとつかもしれないが、独自の販売戦略を展開するテスラは、既存販売モデルの直接の脅威にはなりにくい。だがBYDオートのディーラー網重視の正攻法戦略は、既存の土俵での真っ向勝負となる。
幸いにも同社代表取締役社長の東福寺厚樹氏にオンラインでインタビューする機会を得た。ディーラー戦略とともに、社長が感じる自動車販売の変化について聞いてみた。
どうなる? 4月以降のCEV補助金対策と型式指定
― お忙しいところお時間いただきありがとうございます。本題に入る前に、CEV補助金について新年度(2023年度)のアップデートがありました。御社の販売にかかわる部分であり、読者も知りたい情報だと思います。3月までの納車は、2022年度のCEV補助金の適用が受けられると聞いています。4月以降の納車について、ATTO 3は、CEV補助金を受けられるのでしょうか。
東福寺社長(以下、東福寺)/はい、4月1日からは給電機能対応車種に適用される最大85万円の補助金を受け取るには車両の型式指定が必要という新しいルールができました。ATTO 3はV2L(給電機能)対応しているので、2022年度の補助金はこの適用を受けられます。3月までの納車については、現行のルールが適用されるはずなので、現在、ディーラーともコミュニケーションをとりながら納車・登録を進めているところです。
新しいルールでは、4月以降の納車はV2L追加枠の適用がなくなります。しかし、補助金の適用がはずれるわけではないので、V2L非対応車と同じ条件で補助金の対象となります。ルールなのでこの中でやっていくしかないと思っていますが、4月以降の納車については、補助金を補填できるような施策を検討しています。
― 4月すぐは無理としても、型式指定をとる予定はありますか?
東福寺/型式指定の取得は以前からの目標でもあるので、いずれかのタイミングで実施する必要があると思っています。中国とも調整しながら進めているところですが、申請から認可まで2か月ほどかかるものですし、確実に進めたいと思っています。
EVリピーターやセカンドカー市場を狙う?
― ありがとうございます。では。本題に入りたいのですが、BYDという新しいメーカー、ブランドのディーラーを展開することで、なにか市場の変化を感じることはありましたか。
東福寺/今回、BYDディーラー網に参画いただくことになった販社さんのお話を聞くと、輸入車において、とくに高級車のマーケットではEVシフトがすでに進んでいると感じます。アウディやメルセデスなどは3年ほど前からEVを投入しています。ある販売会社さんでは、EVの比率が15~20%に達したといい、一度EVに乗ったユーザーさんはガソリン車に戻らないという声も聞きます。
輸入車EVは、価格レンジでいうと700万円以上、1,000万円以上ですが、その層において2台目や買い替えもEVになっているということです。その中でATTO 3の440万円という価格はインパクトをもって迎えられていると思います。
ディーラーは新しいブランドを歓迎
― なるほど。テスラオーナーにもテスラ2台持ちや、奥さんはリーフといった人が少なくありません。国内販社もEVに関する意識は変わってきているのでしょうか。
東福寺/EVの市場シェアは数字の上では数%とまだまだですが、輸入車ディーラーは日本でもマーケットの変化を感じているようです。ボルボやアウディのようにEVメーカー化を宣言しているメーカーもあります。また一般論ですが、多くのメーカーが、新車販売においてインセンティブや奨励金の廃止を明確に打ち出してきています。
多くのディーラーがこれまでの売り方やビジネスモデルに危機意識を持っているようです。輸入車のEVシフトに合わせて先手を打ってEVラインナップを増やさなければという考えがでているところに、BYDという新しいブランド、商材がでてきた形です。予想以上に扱いたいという意欲を持った販社さんが多く、評価もしていただいている感触はあります。
― 現在、契約している販社は何社くらいになりますか。
東福寺/現時点で19社です。我々は量産の新車をディーラー経由で販売するブランドとして久しぶりの新規参入ということになります。まだ、BYDの車種は限られていますが、輸入車の中では他のEVよりも同価格帯での競合が少ないので、まだブルーオーシャンでもあると思っています。
ですが、この後たとえば長城汽車(GWM)やNIOなどが日本に参入するとなれば、さらに状況が動く可能性があります。BYD以外の選択肢ができるわけですから、うちはNIOを扱おうというところが出てきても不思議はないです。
国産ディーラーにも影響が出始めている
― 長城汽車のORA CATシリーズなどは海外で評価が高いですし、入ってきたら脅威ですね。このような動きは国産メーカーを扱う販社にも広がっているのでしょうか。報道では、静岡スバルがBYDオートジャパンと契約したという話があります。
東福寺/メーカーが直接出資しているような会社は難しいでしょうが、独立系の国産ブランドでもマルチブランドのところは存在します。スバルとポルシェはともに水平対向エンジンを持っています。整備やメカニカルな部分で共通しているためか、スバルとポルシェの両方に付き合いのある販社が少なくありません。今回の静岡スバルさんも、まったく新しいチャレンジというより、マルチブランド展開の中で追加としてEVもやってみようという感覚だったと思います。
― なるほど。国産、輸入車を問わずマルチブランド展開している販社はこれまでの延長でBYDを見てくれている感じでしょうか。
東福寺/そうですね。実際、主要国産ブランドの販社にはひととおりお話は持っていっていますし、引き合いもかなりあります。国産で強いところはそうでもないかもしれませんが、販社側も、新車やヒットに恵まれないタイミングのリスクヘッジとしてマルチブランドという戦略はあると思います。
― キャッシュフローを回すという意味では新車販売も重要ですね。最近ですと国産車は納期問題があり、輸入車のほうがすぐに売れる新車が手に入るというのもありそうです。
東福寺/ご存じのようにBYDの車両生産は垂直統合型なので、バッテリーやパワーコントローラー、半導体なども内製しています。外部調達の部品やコンポーネントで納期に大きく影響を与えるものが少ないので、当月に船積みされたものは即販売までつなげるべく短納期でいけるようにしています。
今はブルーオーシャンだが努力と警戒は怠らない
― 個人的な疑問というか希望でもあるのですが、BYDが中国で発表した「シーガル」を日本に導入する予定はありますか?
東福寺/Bセグメントでコンパクトサイズのハッチバックですね。現状、正式なプランや計画に入っていませんが、今後、ディーラーさんにはラインナップの充実は提案していかなければならないと思っていますので、その中で市場のニーズや必要があれば、本社に打診や提案していく余地はあると思っています。とりあえずは、導入した3車種(ATTO 3、ドルフィン、シール)に注力してしっかり売ることが重要ですし、当面の課題だと思っています。
― ほかに課題と感じていることはありますか?
東福寺/正規ディーラーとして1月に1号店(東名横浜店)がオープンしました。2号店は大阪の堺、その後は越谷、桜木町のショールーム、大阪の千里中央、年末に西宮と計画は進んでいますが、現状でも、ショールームの有無によって試乗予約やその後の商談、成約という流れが明らかに違うことを感じています。ショールームを持たない開業準備室でも試乗予約は可能なのですが、やはり充実した実店舗を増やしていくことが重要だと思っています。
(インタビューここまで)
EVシフトで日本国内のディーラーも変化する?
インタビューを終えての感想は、BYDオートは、やはり既存の自動車ビジネスをしっかり研究したうえで、着実に市場づくりをしていることだ。2022年7月に発表したロードマップは今のところすべて予定通りに進んでいる。公開している30数店舗の正規ディーラー以外に、最大手1社を除く主要国産OEM系の販社とも交渉が進んでいるそうだ。
ディーラーのマルチブランド展開は、海外では常識であり珍しいことではない。国内ディーラーも以前ほどケイレツや特約店縛りが強いわけではない。純粋なビジネス視点であれば、優秀な商品があり製造体制、供給体制もしっかりしていれば、それを売りたくなるのは自然である。
独自のハードウェアアーキテクチャを持ち、独自のソフトウェア戦略を展開するテスラは、自動車をスマホ化するなどと評されることもある。自動車の利用スタイルや製造方法に革新をもたらしているとも言われる。BYDも独自のバッテリー技術による革新性を持っているが、日本においては、伝統を踏襲しながらもディーラービジネスに新しい潮流を引き込んでいるのかもしれない。
取材・文/中尾 真二
最近欧米では、中国資本を自国のEV市場から排除するような施策が見受けられます。BYDが今後世界市場で成功するには、やはり徹底した現地化と、中国政府に対しては、他国への脅威とならない様な経済政策や安全保障政策の徹底を働きかけていく必要があると思います。個人的にはBYDのEVには大変興味ありますが、一党独裁政権の中国車に乗ることが、果たして持続可能な社会に貢献出来る事になるかは多少迷いがあります。
BYD
参入の勇気は、賞賛されるが。
何処の国でも!
EV補助金は、国内メーカー優先だからね!
下手に外国製EVが売れれば?
政府は、色々と制限を掛けて来るから(汗)
既に、高価格EVのEV補助金が減らされてる(泣)
外国製EVへの施策?
まあ単に国内メーカーが、EV化を進めざるを得ない為のエサか?(笑)
国内に自動車メーカーの無い国では無い!日本(汗)
BYDも、これからは色々と有るだろうな!
BYDは、散々と日本国内にEVバスを発売してたのに。
ここに来て、毒物の六価クロム問題を出してきた(;゚Д゚)!
政府の黒い施策を疑う(汗)
国内メーカーに、BYDからのOEMでは無い!自身でEVバスを開発して販売せよか?(笑)
その施策を、モロに食らった日野自動車(泣)