BYD『SEAL』試乗レポート/スポーツセダンEVで富士山五合目に駆け上ってみた

日本発売となったBYDのスポーツセダンEV『BYD SEAL(シール)』のメディア試乗会に参加。AWDで富士山五合目に駆け上り、RWDで高速道路を走ってみました。82.56kWhを誇る大容量バッテリーと高性能なパワートレインで欧州ブランドの高級EVに匹敵する余裕の走りを実感!

BYD『SEAL』試乗レポート/スポーツセダンEVで富士山五合目に駆け上ってみた

発表されたスペックの電費性能が気になる

2023年6月25日にいよいよ日本発売となった『BYD SEAL(シール)』。後輪駆動のベースグレードと、四輪駆動のAWDがラインナップされました。1000台限定の「導入記念キャンペーン価格」はRWDが495万円、AWDが572万円と発表されたのは先日の記事でお伝えした通り。

6月某日、日本発売の発表に先駆けて静岡県御殿場市の施設を拠点としたメディア試乗会が開催されて参加してきました。AWDとRWD、それぞれ2時間ずつの試乗です。限られた時間ではありますが、シチュエーションごとの「電費」を確かめるべく、まず、AWDでは御殿場市内の試乗会拠点からふじあざみラインを駆け上り、須走口の富士山五合目へ。RWDでは、御殿場ICから新東名〜清水JCT〜東名を周回して御殿場へ戻るルートを走ってみることにしました。

上りワインディングでの電力消費と、下り回生ブレーキでの回復っぷり。そして、高速道路定速巡航での電費の印象を確かめる狙いです。

ふじあざみラインの上りは約23kmで17%を消費

ボンネットは優しく閉めましょう。

最初に試乗するのはAWD。車両を受け取る際、BYDのご担当者からボンネットを閉める時は「先端を手で押さずに、少し高いところから落として閉めるように」との注意がありました。衝突安全への配慮からボンネットの鉄板が柔らかめになっているので、強引に手で押すと凹んでしまいやすいとのこと。開ける時にも、ボディとの隙間に手を突っ込んでレバーを探したりする必要はなく、運転席足もとのオープナーを2回引けばOK。ダンパー式のボンネットをそのまま押し開くことができます。

エアコンの風向などはテスラ車のようにセンターディスプレイで調節可能。

ひと通りの説明を受けて試乗スタート。ほかのジャーナリストやメディアは箱根&芦ノ湖方面を目指すようですが、私は「電費を中心としたEV性能を確認したい」と思い立ち、「ふじあざみライン」(7月10日からはマイカー規制が始まります)で、須走口の五合目駐車場を目指します。

試乗会の拠点となったマースガーデンウッド御殿場あたりの標高は400m程度でしょう。あざみラインの到達点である須走口の五合目駐車場は標高約2000mで、標高差およそ1600mを駆け上る約23kmのルートです。あまり細かく説明しても分かりづらいと思うので、端的に走行データの表を紹介しておきます。

五合目では素晴らしい雲海の光景が迎えてくれました。

BYD SEAL AWD 走行データ

時刻SOC表示
(消費電力%)
オドメーター
(走行距離)
出発時8:37100%745.4km
五合目到着時9:1883%
(17%)
768.4km
(23km)
御殿場市街帰着時9:5688%
(-5%)
786.6km
(18.2km)

ちょうど23km走ってバッテリー消費は17%、およそ14kWhなので、電費は約1.6km/kWhでした。平均でも10%、最大22%という急勾配のあざみラインを気持ちよく駆け上ったので、こんなものでしょう。

下りの帰路は、御殿場市外に戻って立ち寄ったコンビニ駐車場でのデータ。約18kmを走って、SOCは逆に5%(推計約4.1kWh)復活しています。上り下りを合算すると、12%(約9.9kWh)で41km走行できたことになるので、電費は約4.5km/kWhだったことになります。

回生ブレーキでバッテリーに戻る電気の出力を表示してくれます。アクションカメラであまり上手く撮れなかったけど、ブレーキング時には50kW以上とか急速充電並みの出力で回生していることがわかります。

ATTO3などもそうですが、BYDのEVは回生ブレーキでバッテリーに戻っている電気の瞬間出力をメーターに表示してくれるのが楽しいところ。ただし、ヒョンデやメルセデス・ベンツの車種が装備している回生ブレーキ調節のパドルスイッチはありません。パドルスイッチでコースティングを自在に使えると、もっと効率良く電力を回復できるような気がするので私は好きなのですが、まあ、アクセル調整やフットブレーキを使っても「EVは下り坂が気持ちいい!」のは同じです。

スマホのワイヤレス充電も2台分標準装備。
フランクも装備。

高速道路巡航の電費は約5.8km/kWh

後半の試乗は、RWDに乗り替えて高速道路の巡航を試してみました。コースは御殿場ICから新東名に入り清水PAでいったん休憩。新清水JCT、清水JCTを経由して東名に入り、御殿場ICに戻ってくる周回コースです。走行データはこんな感じになりました。

BYD SEAL 走行データ

時刻SOC表示
(消費電力%)
オドメーター
(走行距離)
出発時10:4089%2070km
清水PA11:2279%
(10%)
2125km
(55km)
拠点帰着時12:2162%
(17%)
2199km
(74km)

新東名の120km/h区間は120km/h巡航して、チェック(休憩)ポイントとした清水PAまでの前半はSOC10%(約8.3kWh)で55kmなので、電費は約6.6km/kWh。後半の東名は90〜100km/h程度の巡航で、SOC消費17%(約14.4kWh)で74km走行となり、約5.1km/kWhの電費となりました。御殿場ICは東名の最高地点でもあるので、巡航速度を落とした後半の電費が悪くなっているあたりも、EV活用に熟達するためのポイントです。

新東名清水PAにて。今回、充電はしていません。

全体として、27%(約22.3kWh)で129km走行となり、高速道路巡航の電費は約5.8km/kWhという結果になりました。ファーストインプレッションとしては「良くもなく、悪くもなく」といった印象です。おそらく、高速道路でのロングドライブ時の平均的には6km/kWh程度の電費性能になると思うので、一充電航続距離の実力は「6×82.56=約495km」。東京から大阪へといった長距離でも、ゆとりをもったドライブプランで楽しめる実力があると思います。

急速充電は最大105kWに対応

チャデモ規格の急速充電で、最大105kWに対応しているのもSEALの特長です。発表時の記事でも紹介したように、システム電圧が約550Vと高いので、急速充電器からの400Vを550Vに昇圧して充電する仕組みになっていて、SOC80%を超えるくらいまで、急速充電器スペック上の「高電圧×大電流」を受け入れることができるため、最近のSAPAに増えつつある最大150kW器であれば30分で45kWh以上充電できるのを確認できているとのこと。改めて、長距離試乗で急速充電を試してみるのが楽しみです。

さて、電費や急速充電のことばかり話題にしてきましたが……。BYD SEAL、パワーも乗り心地も、世界でもトップレベルのハイパフォーマンスEVであることは間違いありません。富士山五合目に駆け上るワインディングの走りは、最高に気持ちよかった(下りの回生満喫を含め)です。

コックピットのフィーリングは、競合車種と見られるテスラ モデル3というよりは、エンジン車のフィーリングを適度に踏襲したポルシェタイカンに近い印象でした。

RWDで230kW(約313PS)、AWDはフロント160kW(約218PS)+リア230kWで最大390kW(約530PS)という最大出力は、価格が1370万円のタイカン(ベースグレード)の300kWを凌駕しています。

大画面に表示されるナビの文字が、デカい。ほかの表示も組み合わせるなど、さらに洗練されたUIへの進化を期待したい。

一方で、車載ナビが大画面のディスプレイとアンバランスでちょっと稚拙に感じたり、高速道路巡航でのレーンキープアシストの動きにちょっとギクシャクする場面があったりといったディテイルは、今後、さらなるアップデートを期待したいところではありました。

BYD オートジャパンでは「#答えは試乗で」をキャッチフレーズとした試乗キャンペーンを展開(特設サイト)するほか、7月からは全国のディーラーに試乗車の配備を進めるとしています。

「ありかも、BYD」のテレビCMも好評とのこと。気になっている方は、何はともあれ一度試乗してみることをオススメします。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)4件

  1. なにこのチャイナ推し、、、
    チャイナで燃えまくったり、ブツカリまくってる。
    なぜ両論併記しないのでしょうか。
    何かBYDからもらっているんでしょうか?

  2. 「コースティングを自在に使えると、もっと効率良く電力を回復」
    は、間違っていませんか?
    コースティングは、放電も回生充電もしない状態ですよ。
    「フットブレーキを少なくし、回生ブレーキパドルだけで降るようにする」と言うべきでしょう。

    1. evファン さん、コメントありがとうございます。

      「フットブレーキを少なくし、回生ブレーキパドルだけで降るようにする」
      その通りです。

      ただ、私の感覚としては、ブレーキを少なく、というよりも、できるだけアクセルを踏む(出力を出す)のを減らしつつ、必要に応じて大きく減速する(回生で電力を稼ぐ)機会を増やしたい、というのがあって、そのためには、コースティングを操って惰性を付けられるほうがスムーズに走れる、ように思う、という感じです。

      アクセルペダルの微調整でも良いのですが、それはそれで面倒で。
      ニュアンスなので、ご理解いただけると良いのですが。m(_ _)m

  3. 電圧が高いので充電能力は高いのですね
    ではV2H等の放電はIONIQ5みたいに効率が悪いのでしょうか?
    少し気になります

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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