さまざまな急速充電器との互換性を一カ所で確認
電気自動車用急速充電規格の標準化と普及促進を目指すCHAdeMO協議会が、EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)などの車両とさまざまな急速充電器の互換性を確認できる「CHAdeMOマッチングセンター(以下、マッチングセンター)」を開設し、2024年3月5日、開所式が開催されました。
CHAdeMO(以下、チャデモ)規格の急速充電器では、EVの車種や充電器の機種が増えるにともなってさまざまな不具合が発生していました。マッチングセンターにはまず13機種(今年度中に3機種のほか、今後新型充電器などを最大20台まで増設可能)の急速充電器が設置され、新型EVなどの発売に先駆けて、車両と充電器の接続テストを行い、不具合が確認された場合は対策を講じることができるようになります。
今回、開所式が行われたのは三重県伊勢市のUL Japan本社です。UL Solutionsはさまざまなな安全試験などを提供するグローバルな企業で、この伊勢本社にもEV関連を含めた多くの試験設備を備えていました。チャデモ協議会では、伊勢のマッチングセンターのほかに、東京都江東区の東陽テクニカR&DセンターにEV充電テストラボを設立するなど、複数のテストセンターを設置する予定であることも発表しました。
すでに設置済み、また今年度中(8月を予定)に増設される機種は以下の通りです。
マッチングセンター設置機種リスト
メーカー | 型番 | 最大出力 (kW) | バージョン | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 新電元工業 | SDQC-50-U | 50 | 0.9 | 2024年8月設置予定 |
2 | ニチコン | NQC-A502 | 50 | 0.9 | 2024年8月設置予定 |
3 | 日本電気 | NQVC500 | 50 | 0.9 | |
4 | JFEテクノス | RAPIDAS-X-AE | 50 | 0.9 | 2024年8月設置予定 |
5 | 日産自動車 | NSQC | 44 | 0.9 | |
6 | 東光高岳 | HFR1-40B4 | 40 | 0.9 | |
7 | ハセテック | QC02-2P2W-NE | 50 | 0.9 | |
8 | ニチコン | NQC-TC503 | 50 | 1.0 | |
9 | ABB | Terra184JJ-X | 180 | 1.2 | |
10 | デルタ電子 | EVHJ104J2CB30 | 100 | 1.2 | |
11 | 新電元工業 | SDQC2F90XT4415-MBMS | 90 | 1.2 | |
12 | 東光高岳 | HFR1-50B8 | 50 | 1.2 | |
13 | 東光高岳 | HFR1-120B10-A7 | 120 | 2.0 | |
14 | ニチコン | NQD-UCX04P | 100 | 2.0 | |
15 | ダイヘン | DQC050LS | 50 | 2.0 | |
16 | 東光高岳 | HFR1-50B9 | 50 | 2.0 |
写真も紹介しておきます。長年のEVユーザーであれば、お世話になったことがあり、見覚えのある機種が並んでいると感じるでしょう。ちなみに表内の「バージョン」というのは、0.9から始まったチャデモ規格のバージョン(関連記事)です。
マッチングセンターの機種については、日本国内ですでに多く設置されている機種を選定したということで、現状設置の13機種で国内充電スポットの70%程度になる(8月の3機種増設でさらに数%向上する)ということでした。
今まで、新型EVの開発に当たっては、各自動車メーカーが各充電器メーカーと個別に連携してテストを行うなど、大きな手間と費用が掛かっていました。ことに、販売台数が限定的な輸入車にとって、発売前の充電器との互換性チェックはかなり大変な作業になっていたはずです。
正式発売前の車両などで市中に設置されている充電器を使ったゲリラ的なテスト充電を行って、あちらこちらで充電器の不具合を引き起こしたことがある、なんて話も聞いたことがあります。
開所式のセレモニーで挨拶した一般社団法人チャデモ協議会の姉川尚史会長は「実際に起きている不具合の発生率は1%に満たない程度。車両発売前のテストを行えるようになることで、この1%をさらに削っていくことができる」と、マッチングセンター開設の意義を強調しました。
公的な「お墨付き」を出すための施設ではない
市販EVなどと急速充電器の不具合については、国内急速充電インフラの拡充を担うe-Mobility Powerの公式サイトで、アップデートを繰り返しながら情報発信されています。
丁寧に情報発信されてはいるのですが、車種や充電器機種も多様に、並んでいる事例の多さと複雑さはなかなかのもの。「そろそろEVに買い換えたいな」と考える潜在的なEVユーザーにとっての不安点、また、せっかく奮発してEVを買ったのに「充電できなかった!」といった不満点のひとつになっていたことは否めません。
「マッチングセンターでテストして大丈夫だった」というのは、ユーザーにとってひとつの安心材料になるはずです。と考えて、「マッチングセンターでのテストをクリアしたことを、発売するEVの性能としてカタログに明示するような仕組みにできないのか」と質問してみたのですが……。
チャデモ協議会はメーカーなど関連団体が参加する互助会のような組織であって、マッチングセンターも各メーカーの協力を得てテストの負担を軽減するための施設であり、新たな「お墨付き」を出すようなことではないという回答でした。
たしかに、チャデモ規格や機器としての認証制度はすでに存在して機能しているので、新たなお墨付きというのは話がややこしくなるかも知れません。なにより、新型車種とチャデモ充電器との互換性を確認し、大丈夫かどうか、ユーザーと直接コミュニケートするのはEVを発売するメーカーやインポーターの役割でしょう。
この日の開所式には、充電器メーカーや関係者はもちろん、自動車メーカーの方々もたくさん参加してらっしゃいました。メーカー各社のみなさまには、ぜひマッチングセンターを有効に活用して、安心して日本中を走り回れるEVをたくさん発売してください。そして、そうした情報も、受け入れ可能な最大電力や電流値などの充電性能(30分で10〜80%!とかっていう説明は、とてもわかりにくいです)とともに、わかりやすく明示してくれるとうれしいです、とお願いしておきたいと思います。
円滑な電気自動車普及を進めるために
姉川会長のプレゼンテーションでは、2000年代、まだ市販電気自動車がない頃から電気自動車の可能性に着目し、急速充電規格を策定してきたエピソードが紹介されました。
実は、私も深く関わっている日本EVクラブ(代表理事は舘内端氏)では、2008年の北海道洞爺湖サミットに合わせて、開発中だった三菱i-MiEVとスバルR1eという試作EVで東京〜洞爺湖のキャラバンを行うイベント(古くてちゃんと表示されないかもだけど、特設サイトもありました)を行ったことがあります。この時、まだおそらくは試作段階だった急速充電器をトラックに積んで追走し、2台のEVが行く先々で充電できるように仮設するなどの陣頭指揮を執ってくれたのが、東電時代の姉川さんでした。残念ながら当時の私はSPA! でやってたグラビア連載とかの食い扶持仕事に追われて、洞爺湖には行けなかったのですが。いわば、長年にわたるEV普及のはらからです。
高出力器のケーブルが重いとか、認証が面倒だとか、チャデモの急速充電器について私自身思うところはいろいろありますが、チャデモのおかげでEVをマイカーにして不自由なく移動できるようになったのは紛れもない事実。チャデモ規格をゼロからつくりあげた姉川さんの功績に感謝しつつ、マッチングセンターの開設を祝したいと思います。
質疑応答の中でNACSやCCS についての言及もあったのですが、長くなるので別の機会に。
あとは、国内の自動車メーカーがチャデモのインフラを活かす、魅力的なEV車種をどしどし出してくれることが肝要です。急速充電も、昔の不便さを基準に考えていたのではEV普及はあり得ません。日本の急速充電インフラをより使いやすい、より便利なものにしていくために。EVsmartブログがユーザーと関連各所を繋ぐ役割を果たせるといいなとも思うので、読者のみなさんからのコメントもお待ちしています。
取材・文/寄本 好則
日本国内については現状CHAdeMO急速充電器が主流なので、いろんな車両への対応がなされる(安心して充電できる環境をつくる)ことは大切かと思います。
私の車はミニキャブミーブバン10.5kWhなので、気になっているのはニチコンのマルチアウトレット機で20kW(50A)の受け入れに制限される情報があることです(改善されたという情報は聞いていません)。
特に高速道路SA/PAでは充電速度への要求は大きいので解決の糸口になればいいなあ、と思っています。
将来的に他の急速充電システムに移行するとしても現ユーザーが困らないような仕組みは必要かと思います。
現行車や今後発売されるCHAdeMO搭載車がこのような施設でデータを収集して問題なく充電できるようになるといいですね。
あと、細かいことですがブースターモードやダイナミックコントロール機能について充電器本体に見分けの付く表示があるとわかりやすいと思います。
日本のCHAdeMOは独自の規格路線でグローバルスタンダードを狙おうと画策しているが、当初は欧州のコンバインド・チャージング・システム(通称コンボ)や北米のテスラ方式のコネクタ形状の規格と三つ巴の争いをしています。
その為、市場数では劣勢なCHAdeMOは数での勝負と単純に考えているのか?中国EVを抱き込んでCHAdeMO 2.0?3.0?として新規の形状にアップデートしようとしてますが、混乱を招くだけだと思いますかね。数で劣る現行のCHAdeMOと、中国国内で充電トラブルが頻発する中国側の利害が合致したのだと思いますが、既存のCHAdeMOユーザーはどう?対象させていくのか?その辺を明確にしていただきたい。
高速鉄道の二の舞を踏んで、いざ両国の開発によるハイクオリティな充電システムが出来上がったら、中国独自の形状に変えて海外へ売り出される気がしますがね。
そもそもが日本の電力事情が貧弱すぎて、一般家庭で100V、その上ので200V設定と海外での大容量の電圧と比べモノにならないのが、充電システムが統一化出来ない諸悪の根源ですからね。
まぁ、発火しにくい全固体電池がゲームチェンジャーになると思いますが、電圧の容量違いでも安定した充電が提供されればイイのですがね。
変な意地張ってないで日本でもNACS規格に統一して下さい。決して今からでも遅くはないと思いますので是非世界統一規格でお願いします。
まったく同意見です。
NACS規格の充電ステーションを高速SAやPAにもぜひ設置してください。
経路充電するためにも高速エリアにテスラスーパーチャージャーなどを設置できるようにしてもらいたい。
そもそもCHAdeMO規格の表現が曖昧で、誤解を生む状態であることが問題だと思います。というか、規格書自体が規格書の体をなしていないのではないか。
今からでも遅くないので、曖昧な誤解を生む文章表現を見直して誤解を生む可能性をなくした改訂版Ver.2.1(?)を出すことを優先するべきでしょう。それを基に各社チャージャーのハード、ソフトを見直し、必要ならEV側のハード、ソフトの変更をリコールする事をしないと事態の収拾がつかないと思います。
沢山の各社の充電器を並べてもどれが正しいのか判断できなければ、互換性を確保するように各機器の改修、再設計も出来ないと思いますがね。
電気自動車用急速充電規格の標準化と普及促進を目指すCHAdeMO協議会がCHAdeMO仕様に基づいたCHAdeMO標準充電器を作り、その標準機に対して各社EVメーカーが接続試験を行えば、今回のような仕様が少しづつ違っていると思われるCHAdeMO充電器との接続試験設備は不要だったのではないか?と考えます。我々が普段使用している携帯電話が基地局との接続に使用しているエアーインタフェース仕様もNTTが標準基地局(接続性試験機)を作成したので、基地局との接続性に大きな問題のある携帯電話は世に出ていない。CHAdeMO協議会が作成したCHAdeMO仕様の詳細が曖昧なために色々な仕様の充電器が出来上がってしまい。接続性に問題のあるEV車が生産されてしまったのではないか。困ったCHAdeMO協議会がマッチングセンターを作った。しかし公的なお墨付きの施設ではないと言う。今後もCHAdeMO協議会のリーダシップに期待して良いのでしょうか。
そうですね
基地局開発に向けてエアインターフェースには正常シーケンスはもちろん準正常シーケンスや異常シーケンスまで規格されていたためにイリーガルな状況にも耐えられるように設計されていました
Chademo規格には異常シーケンスがあるのか疑問に感じます