※冒頭写真は公式サイトから引用。
会員登録などが不要の新しい充電サービス
2023年1月26日、南海電設株式会社(本社:大阪市、以下南海電設)が、EV普通充電サービスの新ブランド「CHARGE CONNECT(チャージコネクト)」を立ち上げ、PayPayなどのスマホアプリやクレジットカードなど、幅広い手段でのキャッシュレス決済でEV用普通充電器を利用できるサービスを開始することを発表しました。
大阪が本社で南海電設と聞くと、鉄道会社である「南海電鉄」の子会社? かと思ってしまいそうですが、さにあらず。分電盤大手でEV用充電機器も発売している日東工業株式会社(本社:愛知県長久手市)が株式の100%を取得しているグループ会社です。
サービス開始のニュースリリースで浮かんだ疑問点など、南海電設と日東工業のご担当者にメールでいくつか質問して回答をいただいたので。EVユーザーとして理解しておくべきチャージコネクトのポイントについて紹介します。
専用アプリや会員登録は不要
まず、利用者目線で注目したい最大のポイントが、専用アプリのインストールや会員登録などは不要で、その場で充電器に掲示されている二次元バーコード(QRコード)をスマホで読み込み、表示されるウェブサイトを操作するだけで充電できて、PayPayなど自分が利用しやすいキャッシュレスサービスで決済できること。
決済システムにはQRコード決済サービスの「elepay」や「OneQR」と連携しているとのことで、多様なキャッシュレスサービスのほか、事前にスマホに登録したクレジットカードで決済することも可能です。会員登録などはしないので、もちろん月額基本料なども不要です。
利用方法は充電器にステッカーで掲示
利用方法の案内は、充電器固有のQRコードとともに、充電器にステッカーで掲示するとのこと。「こんな感じ」という画像を送っていただきました。まだローンチ前の写真なので、細部が変更になる可能性はありますが手軽に利用できることがわかります。
手順としては以下のようになります。
●充電器のケーブルを車両の普通充電口にさし込む。
●充電器に掲示されたQRコードをスマホで読み込む。
●表示されたサービスページで充電時間や支払い方法を選択。
●充電開始!
シンプルですね。
課金は1分単位で、充電器の設置者が設定する仕組み。南海電設の特設サイトに例示されているスマホ画面の例によると、事前に充電時間を選択して希望の方法で決済。途中で充電を停止した場合は、充電しなかった時間分の残額が自動的に返金されるとのことです。
画面例の画像では、充電時間が最大5時間までになっています。宿泊施設などで利用する場合にはもっと長時間充電したいケースが多いと思うので、このあたりは今後アップデートされるのでしょう。
3.2kWと6kWの出力を選択可能
さらなる注目ポイントが、充電の出力を「3.2kW(200V16A)」と「6kW(200V32A)」の2通りから利用者が選択できるようになっていることです。
チャージコネクトで設置される普通充電器は、通信機能を備えた日東工業の「Pit-2Gシリーズ」(商品サイト)の通信モデル限定で、出力は最大6kWまで(3kWの機種もあります)ラインナップしています。
とはいえ、日産サクラや三菱eKクロスEVの普通充電は2.9kWだし、日産リーフでもe+以外は最大3kW(ZE1の40kWモデルはオプションで6kW対応も可能)でしか充電することができません。また、6kWで充電できるEVでも、宿泊施設などでバッテリー残量によっては「3kWでいいから朝までゆっくり充電したい」といったケースも想定できます。充電出力が選択できて、出力に見合った料金設定になっているのは、ユーザーフレンドリーなサービスといえます。
2023年1月23日には、エネチェンジの充電サービスが6kW出力の普通充電サービスで、3kW(16A以下)でしか充電できないEVに対して「充電出力に応じた料金」システム導入を発表したばかりですが、早々に追随するサービスが登場してきました。日本の普通充電インフラでは「これが当然」になってくれることを望みます。
充電インフラ補助金も活用可能になる予定
ここからは充電器を導入する設置事業者にとって気になるポイントを含めて紹介します。
チャージコネクト(特設サイト)は、EV充電器の購入から設置工事、補助金の申請サポート、キャッシュレス課金サービスの提供、設置後の保守対応までがパッケージになったサービスです。
充電料金は設置者が自由に設定可能。おおむね「3kW=4円/分、6kW=6円/分」が目安とのことでした。チャージコネクトの月額サービス料金は2980円(2023年9月30日までのキャンペーン価格。通常価格は3960円)で、充電したEVユーザーが支払う利用料は、決済手数料(おおむね3〜4%程度かと思います)を引いた金額が、設置者の収益となります。また、システム導入時の初期費用は1万円。
設置した充電器は設置事業者の所有となるので、充電器の購入費や工事費用、運用時の電気代などは設置者の負担となります。ただし、商業施設や宿泊施設、集合住宅、事業所の駐車場、月極駐車場など、基本的に個人宅以外の場所にEV用充電設備を設置する際には、国の「充電インフラ補助金」を活用することが可能です。
補助率は令和4年(2022)度の場合、機器費用が50%(上限7〜35万円)、工事費用は100%(上限95〜135万円)。次年度の補助金申請受付はまだ始まっておらず、詳細未定ではありますが、おそらく同様の補助制度が設定される見込みで、充電器導入の初期コストはかなり抑えることができるはずです。
と、実は、日東工業の「Pit-2G」は優れた普通充電器なのですが、充電インフラ補助金の補助対象充電設備に認定されるために必要なJARI認証を取得できておらず、補助金を使うことができないというウィークポイントがありました。でも、今回の発表では「Pit-2Gシリーズは国の補助金対象充電器となるために必要なJARI認証の取得を本年2月に予定しており、補助金を活用した導入をして頂ける見込み」と明記されていました。
認証取得が難航したことについてご担当者に伺うと「ある電源部品が、JARIでは日本特有のガラパゴス基準が要求され、グローバルに流通している国際認証取得部品ではこれに合致せず、合致するものの調達に難儀した」と、2021年春のPit-2Gシリーズ発売以来、悩ましい課題だったJARI認証取得のメドが立ったということでした。
南海電設では、チャージコネクトによるEV用普通充電器を、2023年中に1000台、2025年までに3000台(累計)設置することを目標にしています。
EVユーザーのひとりとして、宿泊施設やレジャー施設などに、使いやすくてパワフルな充電器がどんどん増えることを期待しています。
取材・文/寄本 好則