県営都市公園で初めてのEV用充電器設置
充電器メーカーとしてEVユーザーにはおなじみの日東工業は、本社所在地が愛・地球博記念公園(愛称はモリコロパーク)のある長久手市。 寄贈は地元への貢献ということですね。式典では、同社の黒野透社長から愛知県の大村秀章知事に目録が贈られ、引き換えに感謝状を贈呈した大村知事は「あいち自動車ゼロエミッション加速化プランへの協力として心から感謝しています」と話しました。
あいち自動車ゼロエミッション加速化プランは、愛知県でEV・PHV・FCVの新車販売割合を2030年度に30%に引き上げることや、再エネ導入拡大でエネルギーの脱炭素化を進める目標を掲げています。にもかかわらず、11ヶ所ある県営都市公園にはこれまで1台もEV用充電器がなかったとのこと。これが第一歩ということのようです。
設置場所は愛・地球博記念公園の北1駐車場。贈呈された充電器は日東工業の主力器である「Pit-2Gシリーズ」の通信対応型が4台。出力電力は6kW(30A)。まだEV充電エネチェンジなどの充電スポットマップには掲載されていません(7月30日現在)が、一般向けの運用開始になる9月初旬までには登場するはずです。
公園には東西南北に駐車場があるそうですが、北1駐車場は、磁気浮上式リニアモーターカー「リニモ」の愛・地球博記念公園駅に近い、いわば玄関口にあたります。しかも駐車場の中でも、案内所や交流センター、コンビニに最も近い区画です。EV充電器というとなんだか隠されるように隅っこに追いやられている印象がありますが、ここはドーンと目立つ場所。ゼロエミッション加速化プランのPRにも貢献しています。
目的地充電が主用途でしょう。家族で遊びにきて、駐車している間に充電するような使い方ですね。目的地充電というと、これまでは3kWの充電器が多かった印象ですが、これは6kW。4時間でざっくり24kWも入るわけですから、場合によっては、来る前よりも帰りの方が増えちゃった、なんてこともあるかもしれません。
ジブリパークにも便利な立地
愛・地球博記念公園=モリコロパークは、「自然の叡智」をテーマに2005年に開催された愛知万博のレガシー施設。長久手会場の跡地が公園として再整備されたものです。万博のサブテーマには循環型社会も掲げられていました。ということで、公園となってからも、太陽光発電による施設への電力供給や、屋上・壁面緑化による電力削減、グリーン電力の導入など、脱炭素化に向けた取り組みを進めてきました。と、挨拶した大村知事もアピールしていました。なのでEV用充電器が設置されるのも納得できますね。というか、これまでなかったのが不思議なぐらいです。
おっと、忘れちゃいけません。この公園の最大の特徴は昨年開設されたジブリパークです。スタジオジブリ作品の世界を表現したテーマパークで、公園のあちこちに施設が点在しています。いまのところ「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」というのがあって、11月以降に「もののけの里」「魔女の谷」ができて、グランドオープンの運びとなるそうです。
つまり、全国から来場者を集めている公園なのでした。ジブリパークは完全予約制ですが、「もし当日券があったら、駅前のコンビニで発券できます」という耳寄り情報を得ました。でも残念ながらこの日は売り切れ。夏休みですもんね。北1駐車場も車で埋まっていました。
実際に充電も試してみました
贈呈式の終了後、実際に充電器を使わせてもらいました。人気ユーチューバーのEV Life Japanさんも日産アリアで取材に来られていて、せっかくなのでアリアと私のHonda eを一緒に充電器につなぎました。
隣にはユアスタンドさんの社用車であるテスラ モデル3、さらにその向こうには愛知県の公用車のトヨタbZ4Xが並んでいます。充電できるのは最大4台ですが、せっかくなので日東工業さんの乗ってきた日産リーフも並べて、5種5台で整列! なかなか壮観です。市販されているEVが増えていることを実感させてくれる風景でした。
さっそく充電コードをつなぎます。車室の間に置かれたスタンド1基から充電ケーブルが2本出ているので、ちょっとややこしいかもしれません。課金する前に、QRコードに付された番号と充電ケーブルに記された番号が一致しているか確認することをお勧めします。
ケーブル長は7メートル。充電口がフロントにあるHonda eをバック駐車しても届きました。EV Life Japanさんはアリアの右前部にある充電口に左後ろから伸ばしていましたがこちらも問題なし、でした。
さて、つないだところで、いよいよユアスタンドの認証サービスです。私は自宅マンションの共用充電器がユアスタンドなので、いつものアプリを使えばいいかと思っていましたが、ここの充電はQRコードを使った新しい認証システムでした。
スマホのカメラを、充電器に貼ってあるQRコードにかざすと、ブラウザが起動します。操作感はとっても軽め。「愛・地球博記念公園3」と充電器の名前と番号がさくっと表示されます。充電料金を3kWと6kWで選べるのはいいですね。料金は3kWなら1時間120円、6kWなら同240円です。1kWhあたり40円。なかなかリーズナブルですね。
日産サクラなど最大充電出力が3kWの車で6kWの料金を払うのはもったいないです。Honda eは6kWを受け入れてるので6kWをセレクト。続いて予定充電時間を選びます。とりあえず30分にしました。
続いて支払い方法ですが、「PayPay」「au PAY」「メルペイ」など一般的なキャッシュレス決済が選択肢にでてきて、ポチッとするだけで選べます。クレジットカードもありましたが、いろいろ入力するのが面倒なので、私は「Apple Pay」で試してみました。いつものスマホなので顔認証でチーンと支払い完了。すぐに充電が始まります。
しかも、途中で充電をやめたら、1分単位で再計算して差額が戻ってくるそうです。Apple Payを使いこなせていない私は返金されているかどうかすぐわからなかったのですが、同じように途中で充電を打ち切ったEV Life Japanさんは「おお、182円戻ってきた!」とおっしゃっていました。
目的地充電では、たまたま訪ねた先に置かれているさまざまな充電器を使う状況が生まれます。専用アプリのダウンロードや事前登録などは不要で、好きなキャッシュレス決済を選べて、分単位で使った分だけ支払える。利用する前はアプリの方が便利かもしれないと思ったのですが、このシステムなら文句ありません。不特定多数の「一見さん」を対象にしたソリューションとして、かなりよくできています。
利用料金については、立地条件や顧客層、利用度を考えながら、システム側で自由に設定できるそうです。ユアスタンドの担当者の方は「充電スポットを、ガソリンスタンドを運営していくように経営できるようになりますよ」と話していました。
愛知県としては、県営公園に充電スポットを増やしていくかどうかは、利用度などをみながら考えたいとのこと。目的地充電の拡充はEVユーザーにとってはありがたい話ですが、使われなければ無駄になります。そういう意味では、使い勝手の良さはとっても大事。一般運用が開始されてからの利用率にも要注目ですね。
取材・文/篠原 知存