EV充電エネチェンジが月額2,980円の定額プラン発表〜基礎充電の新たな選択肢

電気自動車の普通充電サービス「EV充電エネチェンジ」を展開するENECHANGEが、月額2,980円の定額プラン「エネチェンジパスポート」を開始することを発表しました。近くにステーションがあれば基礎充電の新たな選択肢になりそうです。

EV充電で日中の電力活用を促す仕組み

2024年5月16日、出力6kWの普通充電を中心としたEV充電サービス「EV充電エネチェンジ」を展開するENECHANGE株式会社が、月額2,980円(税込)で充電回数などに制限がない定額プラン「エネチェンジパスポート」を6月3日正午から提供開始することを発表しました。

エネチェンジパスポートの概要

月額:2,980円(税込)
●充電利用時間や回数は無制限。概算で月間330km走行分(電費が6km/kWhの場合)以上充電すればエネチェンジアプリでの都度利用などと比べてもおトクになります。
※一部対象外のスポットがあります(事前にアプリやサイトで確認可能)。
※利用開始から30日ごとの支払いとなります。
※走行利用を目的とした充電にご利用ください。

利用可能時間:7時〜16時
●CO2を排出しないクリーンなエネルギー源として注目される太陽光発電が活発な日中の時間帯に、動く蓄電池であるEVに充電をして電力を貯めることで、エネルギーの効率的な利活用を促す仕組みというコンセプトから、この時間帯に限定されています。

エネチェンジパスポート特設ページ

利用(充電)時間無制限の定額サービスということで、おトクさばかりに注目してしまいがちですが、日中の電力活用とEV充電の融合サービスとして利用可能時間を7時〜16時としている点は、エネルギーテックであるエネチェンジならではのユニークな視点と言えるでしょう。

9時間以上充電すれば都度課金よりおトク

もちろん、おトクさ加減は気になります。EV充電エネチェンジの6kW普通充電は、通常の都度課金で55円/10分(税込)です。割り算すると約540分=約9時間(充電量としては約54kWh程度)充電すれば、月額料金2,980円の元は取れることになります。

発表会の資料でも、電費が6km/kWhとして、おおむね月間(30日間)に330km以上走行分を充電すればおトクになることが示されました。

記者発表会資料より引用。

記者発表会で強調されたのは、この「エネチェンジパスポート」は住まいが集合住宅で拠点ガレージに充電設備がないEVユーザーの基礎充電代替の役割を担うのを想定していることです。

エネチェンジパスポートの対象となる充電器は、全国で約2,400口(2024年3月末現在)のEV充電エネチェンジの普通充電器のうち、1,800口以上となり、今後どんどん拡大する予定とのこと。自宅マンション駐車場などに充電器がなくても、近所のよく行く施設にエネチェンジの対象充電器があれば基礎充電代替の充電器として活用できるほか、対象充電器がある全国のショッピングモールやレジャー施設などに滞在する際の充電も定額料金で利用できることになります。

近年、市販EVが搭載するバッテリー容量が大きくなって一充電で300km以上走れる車種が拡がり、「経路の急速充電をあまり使わなくなった」というのもよく聞く話。高速SAPAや道の駅などでの経路充電は「せいぜい月に1〜2回程度」というEVユーザーであれば、経路の急速充電はビジター利用すると割り切って、月額2,980円のエネパスを、新たな基礎充電方法として賢く活用できる可能性が高いでしょう。

ただし、そのためには自宅の近所に、便利に使えるエネチェンジパスポート対応の充電スポットがあることが重要です。「エネチェンジパスポートを利用したいけど、近くにエネチェンジの充電器がない」という方は、かねて実施している設置場所リクエスト(関連記事)を送れば、担当者が希望施設にコンタクトを取って設置を推進することも紹介されました。

EV充電器設置リクエストフォームはこちら。

とはいえ、実際にエネチェンジパスポート対応の充電器が設置されるには、目的地充電スポットとして一定の利用者が見込める場所であることが大切なはず。質疑応答で「どんな施設がベター?」と質問したところ、発表会のプレゼンテーションを行ったEV充電サービス事業部長/執行役員の内藤義久氏から「滞在時間が長い複合型のショッピングモールや、ロードサイドの複合施設などが有望」との説明がありました。また、一連の説明の中で、ユーザーが日常的に利用するスポーツ施設や温浴施設、レジャー施設などが見込まれることも示されました。

記者からの質問に応える内藤氏。

自宅充電できても利用する意義があるプラン

EVsmartブログでは、集合住宅の大規模駐車場への全区画設置など、補助金を濫用して使われない充電器を増やすことを批判的に取り上げてきました。今回のエネチェンジパスポートは、公共の目的地充電インフラを効率良く活用することにも繋がるアクションだと感じます。エネチェンジパスポートの効果で設置した充電器の稼働率が上がれば、便利な場所の設置口数がさらに増えていく動きが生まれてくることでしょう。

このエネチェンジパスポートは、戸建ての自宅ガレージに充電用200Vコンセントがある私自身のこととして考えても魅力的に感じます。

ポイントのひとつは、月額2,980円という価格。今、我が家では東京電力の電化上手というプランで契約していて(すでに新規加入は不可)、午後11時〜朝7時まで、30円弱/kWhの夜間料金時間に充電するのがルーティンになっています。充電は週1〜2回。おおむね残量が30〜40%程度になったら80%まで、約18〜23kWh程度を充電します。1回20kWhとして、多めに走って月間5回充電すれば、約30円×100kWhで3,000円。それ以上充電する場合は、自宅充電よりもエネチェンジパスポートがおトクな計算になります。

もうひとつは、日中のEV充電が環境の負荷を軽減するアクションにつながるという点です。エネチェンジパスポートは利用時間を制限し、電力の需要に合わせて需要側(つまり利用する私たち)が電力の使い方を工夫するという仕組みであり、電力プランを変更しづらい我が家でも「基礎充電はエネチェンジパスポートで」という選択には少なからぬ魅力を感じます。現在加入している日産ZESP3の契約はあと2年ほどで切れるので、その後は充電カードを契約せずに、エネチェンジパスポート&ビジター経路充電で行こうかな、と思うくらいです。

悩ましいのは、我が家近くの日常的によく行く場所にはエネチェンジの充電器がないこと、なのですが。よく行くゴルフ練習場とかに対応充電器が付いてくれたらベターです(さっそくリクエストしておきました)。

エネチェンジはこのEVsmartブログの運営会社でもあるのですが、贔屓目抜きに、設置場所リクエストなどEVユーザーの声を聞き届け、EV充電インフラのあるべき姿を実現するための取組に注力する姿勢を応援したいと感じています。

エネチェンジパスポートの利用登録は、6月3日正午のサービス開始以降、EV充電エネチェンジのアプリから簡単に行えるとのこと。集合住宅住まいで基礎充電設備がないという方、また、自分の場合おトクかもと心当たりがある方は、スマホにアプリをインストールして、対象施設(特設サイトのマップはこちら)を確かめておく、場合によっては早々に設置リクエストを送ってみるなどの準備を整えて、その日を待ちましょう。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)5件

  1. 毎日通勤でエネチェンジの充電器を経路充電して月7000円近く支払ってるからこれはいい!と思ったら時間帯制限があったり対象スポット限定だったりあんまり使い勝手が良くない感じ。
    対象スポット確認したら充電器がeMP認証対応の充電器のみっぽい。エネチェンジアプリ認証限定の充電器は軒並み対象外。普段使うスポットはアプリ認証のみの充電器で使う時間帯も17頃だから定額契約のメリットは感じないなぁ。

  2. 日中限定ですので休日に混み合いそうなところが気になります。
    企業とタイアップして従業員用の駐車場に設置ができれば良さそう…
    尤も、企業がエネチェンジを介さずに積極的に充電器を設置すれば済むことなのですが。

  3. EVの充電時間に慣れた人であれば魅力的だと思います
    ただ今までもそうだったように無料だったり定額や無制限と言うのはマナーの悪さが目立つようになります
    無制限なら占拠してしまう人も居るだろうし更にユーザーが増えた場合はトラブルも増える危険もあります
    予約者がいる場合は既に充電している人に対して時間制限を設けるなどトラブルを減少する工夫を施して欲しいと考えます

  4. 良いと思います!
    ZESP3で普通充電メインで使っている人が、600分で足りないとか3年契約切れたとかで乗り換えるかもしれません。
    が、現状普通充電の設備がまだ少なく、特にエネチェンジの充電器は私はほとんど利用しないビジホ、ゴルフ、パチンコに偏って設置されているイメージです。
    ショッピングモールや映画館等、家族で数時間の滞在が見込める施設への普及をお願いしたいです。(設置リクエストはしています。)
    また、充電終了後の放置対策のために充電中以外の駐車料金適用もご検討いただきたい事項です。

  5. 東電の電化上手はお宝プランだと思って海外駐在時も基本料金払って維持して来ましたが、いまやまちエネの毎晩充電し放題プランの方がお得です。
    1時から5時まではEV充電だけでなくそれ以外も無料です。基本料金が60Aで4200円と高いですが、燃料調整費も東電よりも1.4円程安く、現状では1時5時に電気を使えば使う程電気代が安くなります。みなし電力量というのがありますが、それ以上にエコキュート等で消費するので、オール電化住宅の方はほぼ確実にメリット出ると思います。
    現在HPでのシミュレーションが出来なくなっていますが、重要事項説明書や約款を読んで内容を理解出来る方は検討した方が良いかと思います。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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