エネチェンジが運営する公共用EV充電器稼働実績を公表〜健全な充電インフラ拡充へ

補助金を活用して設置した公共用EV充電器がどのくらい使われているか。エネチェンジが自社で設置し運営する普通充電器の稼働実績を公表しました。2024年Q1(2024年1月から3月)の1口1カ月あたりの稼働時間は888分。前四半期比で約17%利用時間が増えています。

エネチェンジが運営する公共用EV充電器稼働実績を公表〜健全な充電インフラ拡充へ

フェアな情報発信のために稼働実績を開示

2024年4月19日、電気自動車用普通充電インフラの拡充に取り組むENECHANGE株式会社(以下、エネチェンジ)が、投資家向けのIR情報として、同社が設置して運営する公共EV充電器の稼働実績を公表(URL)しました。

2023Q4
2023年10〜12月
2024Q1
2024年1〜3月
増減率
設置口数2,1072,399113.86%
総充電電力量(kWh)306,881.11410,060.06133.62%
総充電時間(分)4,806,1186,387,801132.91%
充電回数34,78647,495136.53%
月平均利用回数5.56.6119.92%
1回あたりの充電時間(分)13813497.34%
1口1カ月の充電時間(分)760888116.73%
1口1カ月の充電電力量(kWh)4957117.36%

実績開示は今回からですが、2024年1〜3月の第1四半期(2024Q1)と合わせて、2023年10〜12月の第4四半期(2023Q4)の数値も公開されました。

設置口数(基数)はQ4の2,107口から2,399口へ14%の増加。充電サービスが持続可能かどうかのポイントになる「1口1カ月あたりの充電時間」も、Q4の760分からQ1は888分と、約17%の増加となっています。

888分ということは約15時間。普通充電サービス事業としては、月30時間程度が採算ライン、できれば50〜60時間の利用時間が望ましいというのは、以前、エネチェンジCEOである城口洋平氏の連載でも紹介されている通りなので、さらに利用されるようにするための取組は不可欠です。とはいえ、日本国内ではEV車種バリエーションの拡大が停滞し、新車販売シェアも伸び悩む中、かなり健全な稼働実績を積み上げつつあると評価して良いと思います。

今後、街を走るEVの数が増えていくほどに、充電器の稼働回数や時間はどんどん増えていくことでしょう。

エネチェンジの中の人に聞いてみた

EV好きな読者のみなさんであればご承知のように、エネチェンジはEVsmartブログの運営会社でもあります。EVユーザーとしてこんなに興味深いニュースを前にして、知りたいことはいろいろなので、エネチェンジのEV充電サービス事業部副事業部長である中村さんにいくつか質問してみました。

Q. 設置口数は着実に増えてきてますね。

多くの施設で、エネチェンジを選んでいただくことができ、大変ありがたいです。
設置数を増やすことだけを最優先にするのではなく、利用者数が多い施設、普通充電に適した滞在時間の長い施設を中心に設置して、利用者や施設の方に喜んでいただけることも大切にしています。

Q. 前四半期と比べても充電時間が増えている理由は?

第一四半期では、アプリの口コミに「エンジン車が止まっていて充電できなかった」というコメントがあった施設に対し、先行してEV充電優先スペースであることを示すコーンの送付を進めました。設置前と比べ、充電時間は103%、充電回数は105%、利用ユーザ数は111.9%となり、最も変化が現れた施設では設置後の充電時間が171%、充電回数は136%、利用ユーザ数は228%となりました。利用できないという障壁を、施設ご担当者のご協力を得て改善できたことが充電時間の増加に寄与していると考えています。
私たちは日々口コミに目を通しておりますので、お気づきの点やご要望などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

Q. 稼働実績を開示した目的は?

充電サービス事業者のなかでは、e-Mobility Powerが以前から稼働実績のデータを公表しています。EV普及がまだ進展の入口にある現状では国の充電インフラ補助金を活用して展開している事業でもありますし、設置した充電器の場所など(専用アプリで情報提供中)はもちろん、稼働実績をきちんと公表していくのは充電サービス事業者の責務だと考えて、今回の情報開示となりました。今後は四半期ごとに情報を開示する予定です。

【関連情報】
四半期ごとの充電器データ(e-Mobility Power)

ほかの充電サービス事業者も追随すべき

使いやすい、ちゃんと使われる充電インフラを広げていくことは、日本のEV普及を推し進めるためにも大切なポイントです。2013年ごろからの手篤い補助金で整備された充電インフラは、低出力の急速充電器が多かったり、ひとつの駐車場への過度な普通充電器設置の例があったりと「ちゃんと使われる」ための配慮が足りなかったのが大きな反省すべき点でもあります。

2024年3月15日に発表された充電インフラ補助金の「令和6年度募集要項」では、目的地充電の普通充電器については「設置口数の上限を4口又は駐車場区画数の2%、かつ50口以下」とすることと併せて、この数を超過して設置するための条件として「一口当たりの月平均稼働率(時間)が60時間以上」とすること。さらに「稼働率の公表やユーザーへの情報提供の改善について検討」することが明示されました。

エネチェンジのEV充電サービスチームが、充電サービス事業者のアプリを活用して「実際にどのくらい充電されているか」を定点観測してみたところ、「事業者によっては月に1時間未満しか使われていない例もある」(中村さん)のがわかったとのこと。

補助金を浪費して使われない充電器を増やすのは、日本のEVユーザーにとって切ない不幸の繰り返し。ほかの充電サービス事業者も補助金を活用した充電設備の稼働状況の情報を公開しつつ、使われる充電器を増やしていってくれるよう期待しています。

取材・文/寄本 好則
※冒頭写真はホテル三日月(千葉県)のEV充電器。(画像提供/エネチェンジ)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 外出先で充電するばあい、各充電器の専用カードがほぼ必須なのが超面倒くさい。 
    VISAやMasterカード等のクレジットカードを、ダイレクト使用出来るようにしてもらえないかと思う。 
    まあ、一部の充電器で連絡したうえで認証できるのもあるらしいが、そうでは無く今現在専用カードを使うような感じで、クレジットカードを直接認証できるようにすれば、もう少し使用率も上がるのではないかと思う。 
    逆に何故、クレジットカードの直接認証ができる機器が無いのかが不思議だ…。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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