【集合住宅EV用充電設備事例】賃貸マンション住人が家主さんの承諾を得てコンセントを設置

集合住宅への電気自動車用充電設備設置事例紹介シリーズ。今回は埼玉県の賃貸マンションに住むテスラオーナーのケースです。賃貸住宅の場合、物件所有者との交渉次第で充電設備を設置できますし、自宅ガレージで充電ができるとEVの利便性が格段に向上します。

【集合住宅EV用充電設備事例】賃貸マンション住人が家主さんの承諾を得てコンセントを設置

充電器の設置に至るまでの経緯

テスラ モデル3パフォーマンスのオーナーであるLさんは2019年9月に納車された、いわば日本のモデル3「一期生」です。2018年にテスラの購入を検討していた頃は販売台数の少ないモデルSやXの情報しかなく、また、賃貸住宅に住んでいる方の情報発信も少なかったため、ご自身が不便なくEVを活用できるのか判断する情報がほとんどないまま、賃貸EVの人柱としてテスラライフを始めることになりました。

Lさんのマンションには駐車場がありますが、購入当初は自宅ガレージに充電設備がなく、1~2週間に1度近所の日産ディーラーで充電をしたり、遠出をしたあとは帰路の途中にあるスーパーチャージャーに立ち寄るスタイルでした。

しかし、2020年中頃からマイカー通勤に変更になったことで走行距離が増えただけでなく、ご近所にもEVが増えてきて前述の日産ディーラーで「充電渋滞」が発生することも多々あり、マンションの所有者に直接充電器の設置を交渉することになりました。

念願の自宅充電

設置工事や補助金申請、設置後の利用料金収受などの運用については、Lさん自身が事前に情報収集をしてユアスタンドにサポートを依頼しました。今回のケースでは、Lさんが利用する駐車区画にEV用の200Vコンセントを設置して、専用の電線を引き込む方法を選択。ユアスタンドの担当者の協力も得て、マンションオーナーさんとの交渉を始めます。

マンションのオーナーはご年配の方で、あまりEVや充電設備についてご存知なかったようですが、GT-Rにも乗っていたほどの車好きのため、Lさんやユアスタンド担当者の熱意が通じて、充電設備設置への理解を得ることができました。

電線の引き込み工事自体は6~9週間で完了します。ただし、Lさんのケースではプランニングや交渉の時間も掛かったために、ユアスタンドに相談してからコンセントへの電気が開通するまで実に8ヶ月を要したということです。

専用の電線を引き込んで配電盤を取り付けたり、課金用のコントローラーを介してコンセントを設置するなど、今回の工事全体ではおおむね77万円程度のコストが掛かった(補助金活用後は30万円程度)ということです。配線の距離や設置するコンセントの数などで大きく異なるので一概には言えませんが、ユアスタンドによると「平面駐車場に専用線を引き込んでコンセントを設置する工事の場合、補助金を活用すれば、実際に設置者が負担する金額はおおむね30万円程度が目安となるだろう」ということです。

実際に完成したEV充電専用コンセントがこちらの写真です。植え込みがあったため、モデル3の充電口とは反対側という、Lさんには少し不便な位置にコンセントのポストが設置されました。それでもお世話になった日産ディーラーにも通う必要がなくなり、スーパーチャージャーすらほとんど立ち寄らなくなるほど便利になったそうです。

「欲を言えば雨風をしのげるカーポートがあるとうれしい」とLさん。

急速充電器はいくら急速とは言え、1~2週間に1度、充電器まで出かけて30~60分そこで時間をつぶすことになります。うまく食事や買い物、運動など絡めて充電できるなら日常生活で気になることはありませんが、帰宅したらサッと挿すだけで翌朝には充電が完了している生活はガソリン車以上に快適で、EVならではの魅力の一つです。

基礎充電には簡素なシステムで充分

マンションオーナーに充電器の設置を相談すると、設置費用と維持費が莫大な急速充電器を想像されて尻込みされる(というか断られる)という話を意外なほどよく聞きます。しかし実際は先程の写真のように、植え込みの隣にひっそりと佇む200Vコンセントと、付近の電柱に制御ボックスが備えられるだけです。

世間の方が想像するEV用充電器はこんな感じ?

Lさんのマンションでは現在、一人しか使用しないため3kVA(kW)の容量を引き込んでいます。今回設置したシステムは拡張性があるため将来的に20kVAほどに引き上げることで5台同時に充電できるようにしたり、自動的に電力を分配できるシステムを実装しているので、充電をする車両を順番に切り替えて多くの車を充電したり、電力のピークシフトに配慮した充電を行うことも可能です。

2004年の調査という少し古いデータですが、国交省によると自家用車の年間平均走行距離は10,575km(1日あたり29km)です。Lさんの設備ですと、2時間弱で29km分の充電ができるため、深夜電力の時間帯が23時~7時の8時間と仮定すれば、一晩で4台のEVが1日走行するための電力を充電できることになります。

毎日長距離を走行するフリートをもつ企業などであれば、契約容量を上げたり、6kWといった出力の高い充電器を設置する必要があるかも知れません。それでも、ガレージで充電する設備としては20kWを超えるような出力をもつ急速充電器は必要なく、3〜6kW程度の出力で「寝ている間に充電が完了する」簡便なシステムで充分です。

自宅充電への追い風

昨年12月にトヨタ自動車がEVへの本格参戦を表明しました。一気に15車種ものEVコンセプトモデルを披露したシーンは覚えている方も多いと思います。国内最大手メーカーが動くと「そろそろEVを買ってもいいのかな」と思うようになった方も増え、日本のEVに対する意識が大きく前進したと感じました。そんな中、マンションオーナーの間でも充電器を設置したほうが入居者を獲得しやすいと認識されれば一気に導入が進むでしょう。

また、これまでは敷地内に電源を2系統引き込む際に規制があったのですが、これも特別措置により、柔軟な対応が可能になりました。集合住宅への充電器の設置には手厚い補助金も出ており、申請はユアスタンドが代行してくれるため、補助金がある今のうちが絶好のタイミングだと私は思います。

賃貸住宅の場合、充電設備はEVオーナーだけが受益者となるため、「誰がお金を出すのか」と「退去時はどうするのか」が焦点となります。Lさんのように賃貸の集合住宅におけるケースでは、今後、他の住人への拡張性があり、EV普及に伴って物件の付加価値ともなるのですから、物件オーナーさんへの理解が広がることを期待しています。
(今回ケースの負担割合などは非公開です)

ちなみに、私が戸建賃貸住宅に住んでいた頃は、私しか利用できない設備のため、設置と撤去にそれぞれ4万円(配電盤の切替+外構工事)自己負担したことがあります。

このようにケースバイケースではありますが、次に買うマイカーはEVとお考えの方は、賃貸でも諦めることなく、開通までのリードタイムも考慮して自宅充電のご準備をされることをオススメします。

グサッと挿して寝ているだけで翌朝には充電完了。

(取材・文/池田 篤史)

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この記事の著者


					池田 篤史

池田 篤史

1976年大阪生まれ。0歳で渡米。以後、日米を行ったり来たりしながら大学卒業後、自動車業界を経て2002年に翻訳家に転身。国内外の自動車メーカーやサプライヤーの通訳・翻訳を手掛ける。2016年にテスラを購入以来、ブログやYouTubeなどでEVの普及活動を始める。

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